Amazon Web Services ブログ

週刊生成AI with AWS – 2024/11/25週

みなさん、こんにちは。AWS ソリューションアーキテクトの木村です。

今週の 12 月 2 日 – 6 日 はついに AWS re:Invent 2024 ですね。このブログを執筆している12 月 2 日時点ですでに多くの update が発表され、いよいよ始まる雰囲気を感じています。ライブで見る方もそうでない方も 1 年に一度のお祭りを楽しみましょう。

12 月 6 日 (金) の 12:00-13:00 に毎年恒例の「新サービス・新機能の全てを1時間でサクッとお伝えするWebinar」を開催しますので、ぜひご参加ください。

それでは、11 月 25 日週の生成AI with AWS 界隈のニュースを見ていきましょう。

さまざまなニュース

サービスアップデート – 生成AIを組み込んだ構築済みアプリケーション

    • Amazon Q Appsでプライベート共有機能を開始
      Amazon Q Apps とは、組織独自の生成 AI アプリケーションを自然言語で構築することが可能なサービスです。今回、Amazon Q Apps にてプライベート共有機能が追加されました。この新機能により、アプリ作成者はアプリへのアクセスを特定の Amazon Q Business ユーザーに制限できるようになり、組織内での使用をより細かく制御できるようになりました。
    • Amazon Q Apps がデータ収集機能を開始(プレビュー版)
      Amazon Q Apps が、データ収集機能のパブリックプレビューを開始しました。組織データを収集するためのフォームベースのアプリを作成できるようになり、チームサーベイ、新入社員のオンボード進捗追跡、プロジェクトの振り返りなどに活用できます。収集したデータに対して生成 AI で実用的なインサイトを得ることができるようになっています。
    • Amazon Q Developer Pro にて、ユーザーアクティビティに関する新しいダッシュボードが利用可能に
      Amazon Q Developer Pro 向けに提供されているユーザーアクティビティを管理するダッシュボードが新しくなり、より詳細な情報が見れるようになりました。これまで閲覧できていた 生成コード行数等の情報に加えて、チャットのメッセージ数や最終アクティビティ日などが見れるようになっています。
    • Amazon Q Developer が Oracle から PostgreSQL への埋め込み SQL の変換をサポート開始
      Amazon Q Developer は、アプリケーション内の Oracle SQL を PostgreSQL に変換する機能をサポート開始しました。これまで DB の移行には SQL を手動で変換する必要がありましたが、Amazon Q Developer が DMS Schema Conversion からメタデータを取得し、互換性のあるバージョンに自動で変換します。
    • Amazon Q Developer が自然言語によるコスト分析機能を提供開始
      Amazon Q Developer にコスト分析機能が追加されました。ユーザーは「前四半期で最もコストがかかったサービスは何ですか?」といった AWS コストに関する質問を自然言語で行うことができます。各回答には、Cost Explorer でデータを可視化するためのリンクが含まれており、透明性の確保も可能になっています。現在は英語のみのサポートとなっています。
    • Amazon Q Developer がコンソールのコンテキストに基づいてよりパーソナライズされたチャット回答を提供可能に
      Amazon Q Developer は、ユーザーが現在閲覧している AWS サービスと、操作しているリージョンに基づいて、問い合わせを動的に理解し応答することが可能になりました。このアップデートにより、見ているページの情報をユーザーが入力することなく質問ができるようになるため、より迅速に欲しい情報を得ることができます。
    • Amazon Q Developer の Eclipse IDE 向けプラグインがパブリックプレビューで利用可能に
      Amazon Q Developer の Eclipse IDE 向けプラグインがパブリックプレビューで利用可能になりました。この機能により、Eclipse の開発者は、IDE 内で Amazon Q Developer とプロジェクトについてチャットを行い、インラインのコード提案機能を使用してより迅速にコーディングを行うことができます。
    • Amazon Q Developer が Java アップグレード変換 CLI をパブリックプレビューでローンチ
      Amazon Q Developer にて Java アップグレード変換 CLI のパブリックプレビューを開始しました。これまで、IDE を通じて Java 8・Java 11 から Java 17 への変換が可能でしたが、CLI では上記に加えて、カスタム変換機能をサポートします。カスタム変換機能で、コードベースや内部ライブラリに特化した独自の変換を定義できるようになりました。
    • Amazon Q Java transformation がステップバイステップのアップグレードとライブラリアップグレードをサポート開始
      Amazon Q Developer Java アップグレード変換機能が、ステップバイステップのアップグレードとJava 17 アプリケーション向けのライブラリアップグレードをサポート開始しました。ステップバイステップのアップグレードでは、コード変更の各差分を開発者が確認しながらテストができるようになっています。また既に Java 17 を使用しているアプリケーションのライブラリを最新にアップグレードできるようになり、メンテナンスにかかる時間と労力を節約できるようになりました。
    • Amazon Q Businessにて、ドキュメント内の画像からインサイトを抽出する機能をサポート
      企業システム内のデータに基づいて、質問への回答や要約が可能な Amazon Q Business にて、ドキュメント内に埋め込まれた画像情報からインサイトを抽出し質問に答える機能を提供開始しました。この新機能により、PDF、Microsoft PowerPoint、Google Docs などのテキスト情報だけでなく、埋め込まれた図表・チャートなどの情報も照合できるようになりました。
    • Amazon Connect Contact Lens にて、生成 AI を使用してコンタクトを自動分類可能に
      Amazon Connect Contact Lens は、生成 AI を使用してコンタクト (顧客とコンタクトセンターの間で行われる1回のやり取り) を自動的に分類する機能を提供するようになりました。Contact Lens は、コンタクトに自動的にラベルを付け、会話のポイントがわかるようにします。また、これらのラベルに対して検索が可能です。この機能は英語に対応しており、米国東部(バージニア北部)および米国西部(オレゴン)の2つのAWSリージョンで利用可能です。
    • Amazon Connectにて、Amazon Q in Connect 向けの AI ガードレールを発表
      コンタクトセンター向けの生成 AI アシスタントである Amazon Q in Connect にて、AI ガードレールを設定できるようになりました。コンタクトセンター管理者は、Amazon Q in Connect 向けに企業固有のガードレールを設定し、有害・不適切な応答のフィルタリング、機密性の高い個人情報の編集などの制限を行うことができます。
    • Amazon Connectにて、顧客セグメント向けAIアシスタントとトリガーベースのキャンペーンを発表
      Amazon Connect は、AIアシスタントを使用することで、自然言語クエリを使用して顧客セグメントを作成し顧客データの傾向に基づいた推奨事項を受け取ることができるようになりました。例えば、前四半期にサポートケースが増加した顧客や、先月購入が減少した顧客などのセグメントを容易に特定できます。また顧客イベントに基づくトリガーベースのキャンペーンを数回のクリックで実施できるようになりました。ショッピングカートの放棄や特定のヘルプページへの頻繁な訪問などの行動をトリガーに、即座にコミュニケーションを行うことができます。
    • Amazon Connectにて、会話型 AI ボット作成の簡素化を発表
      Amazon Connect で、会話型 AI ボットの作成、編集、継続的な改善が、数回のクリックでできるようになりました。Amazon Connect のドラッグアンドドロップ式ワークフローデザイナーを使用することで、コードを書くことなくパーソナライズされた体験を簡単に提供できるようになります。
    • Amazon Connect Contact Lensにて、生成 AI を活用したエージェントの自動パフォーマンス評価機能を提供開始
      Amazon Connect Contact Lensは、生成 AI を使用してエージェントのパフォーマンス評価の入力を自動的に行う機能を提供開始しました。管理者は自然言語で評価基準を指定することが可能です。顧客とのやり取りの一部または全てを生成 AI を使用して自動評価し、エージェントの指導のために会話の特定のポイントを参照しながら、自動評価の背景と根拠も提供します。東京リージョン含む 8 つのAWSリージョンで利用可能です。
    • Amazon Q in Connect にて生成 AI 搭載のセルフサービスを開始
      コンタクトセンター向けの生成 AI アシスタントである Amazon Q in Connect にて、自動音声応答(IVR)やデジタルチャネルを通じたエンドカスタマーのセルフサービス対応をサポートするようになりました。Amazon Q in Connectは、エンドカスタマーと直接会話し、意図を理解して正確な回答を提供します。この機能により、顧客満足度とファーストコンタクト解決率を向上させることができるようになります。
    • PartyRockにて、アプリ検索機能の改善と、無料日次利用枠を発表
      これまで 50 万以上のアプリが作成されている PartyRock にて、アプリ検索機能が改善されより簡単に見つけたいアプリが探せるようになりました。ホームページの検索バーを使用して、公開されているすべての PartyRock アプリを探索できるようになっています。また、現在の無料トライアルに代わり、2025 年からは無料日次利用枠を通じて PartyRock アプリにアクセスし実験できるようになります。

サービスアップデート – アプリケーション開発のためのツール

    • Agents for Amazon Bedrock の新機能 InlineAgents を発表
      Agents for Amazon Bedrock に InlineAgents という新機能が追加されました。開発者は事前に Agents のリソースを作成することなく、基盤モデル、アクショングループ、ナレッジベースをその場で指定して呼び出すことができるようになりました。この機能により、様々なエージェント機能を試したり、エージェントが利用できるツールを動的に更新したりすることが可能になりました。
    • Amazon Bedrock Agents がカスタムオーケストレーションをサポート
      Amazon Bedrock Agents は、エージェントのマルチステップタスクの処理方法や複雑なワークフローの実行方法を制御できるカスタムオーケストレーションに対応しました。この機能により、エージェントのオーケストレーションロジックを開発者が定義できるようになり、特定のユースケースに合わせてエージェントの動作をカスタマイズできるようになりました。
    • Amazon Bedrock Knowledge Bases がカスタムコネクターとストリーミングデータの取り込みに対応
      Amazon Bedrock Knowledge Bases が、カスタムコネクターとストリーミングデータの取り込みに対応し、開発者は直接 API コールを通じてナレッジベースにデータを追加、更新、削除できるようになりました。この新機能により、ユーザーは、S3 等の中間ストレージを使用せずに直接データの取り込みができるため、これまで発生していた中間ストレージの運用コストを削減できます。この機能は、Amazon Bedrock Knowledge Bases がサポートされているすべてのリージョンで利用可能です。カスタムコネクター機能の使用に追加コストはかかりません。
    • Amazon Bedrockにて、RAG アプリケーションの精度向上のため Rerank API をサポート開始
      Amazon Bedrockは、リランカーモデルである Amazon Rerank 1.0と Cohere Rerank 3.5 モデルの提供を開始しました。リランカーモデルとは、RAG においてユーザークエリへの関連性が高い文書順に並び替えることによって、RAG の精度向上に貢献するためのモデルです。Amazon Bedrock Knowledge Base を利用する場合は、Retrieve および RetrieveAndGenerate API にてリランカーの有効化が可能です。これらのモデルは、東京リージョン含む 4 リージョンで利用可能です。
    • Amazon Bedrock Model Evaluation にて LLM-as-a-judge 機能を追加(プレビュー版)
      Amazon Bedrock Model Evaluationでは、ユースケースに最適な基盤モデルを評価、比較、選択することができます。今回、Model Evaluation に新しい評価機能である LLM-as-judge がプレビュー版として追加されました。LLM-as-judge では、LLM の出力を人間ではなく評価用 LLM が評価することができます。「正確性」「有用性」などの評価基準をユーザーが設定するとその項目に沿って LLM が評価を行うことができます。これにより人間による評価の何分の一かのコストで人間に近い評価品質を得ることができるようになります。
    • Amazon Bedrock Knowledge Bases が RAG 評価機能をサポート開始(プレビュー)
      Amazon Bedrock Knowledge Bases にて RAG アプリケーションを評価する機能の提供をプレビューで開始しました。この機能では、情報検索のみ、または検索と回答生成の両方を評価することができます。評価は LLM-as-a-Judge テクノロジーによって実行され、開発者は評価モデルを選択することができます。検索評価では、コンテキストの関連性やカバレッジなどの指標、検索と回答生成の評価では、正確性、忠実性(ハルシネーション検出)などの品質指標や、有害性、回答拒否などの責任ある AI 指標から選択ができます。ローンチ時点では英語のコンテンツ向けに最適化されていますが、他の言語でも機能します。また東京リージョンでもサポートされています。詳しくはこちらのブログを参照ください。
    • Amazon Bedrock Knowledge Bases にて、検索精度向上のための自動生成クエリフィルターを提供開始
      Amazon Bedrock Knowledge Bases にて、RAG アプリケーションの検索精度向上のための自動生成クエリフィルター機能を提供開始しました。この機能により、複雑なフィルター式を手動で記述することなく、ドキュメントのメタデータに基づいてフィルタリングされた検索結果を受け取ることができます。例えば、「ワシントンで請求を申請する方法」というクエリに対して、「ワシントン」という州が自動的にフィルターとして適用され、関連するドキュメントのみを取得することが可能です。複雑なフィルター式を手動で構築する必要なく検索精度を向上させることが可能になります。東京リージョンでもサポートされています。
    • Amazon Bedrock Knowledge Bases がストリーミングレスポンスに対応
      Amazon Bedrock Knowledge Bases にて、ストリーミングレスポンスを実現するための RetrieveAndGenerateStream API のサポートを開始しました。この新しいストリーミング API により、完全なレスポンスを待つことなく、LLM が生成する応答をリアルタイムで受け取ることができるようになります。現在すべての既存の Amazon Bedrock Knowledge Base リージョンでサポートされています。

サービスアップデート – 生成AI開発のためのインフラストラクチャー

    • Amazon SageMaker で、マルチアダプターモデル推論をローンチ
      Amazon SageMaker で、1 つのエンドポイントに複数のファインチューニングされた LoRA(Low-Rank Adaptation)モデルアダプターを配置し、リクエストに基づいてアダプターを動的に読み込むマルチアダプターモデル推論を提供開始しました。 この機能により、共通のベースモデル上に構築された複数の LoRA アダプターを効率的にホストでき、高いスループットとコスト削減を実現しやすくなりました。デプロイ方法はこちらのブログを参照ください。
    • Amazon SageMakerにて、AI推論のコスト削減を支援する「Scale Down to Zero」を提供開始
      Amazon SageMakerにて、非アクティブ時にエンドポイントをゼロインスタンスまでスケールダウンする Scale Down to Zero 機能を提供開始しました。この機能により、AI モデルを使用した推論の実行コストを削減でき、特に変動の大きいトラフィックパターンを持つアプリケーションに有益です。
    • Amazon EC2 キャパシティブロックにて、即時開始と延長をサポート開始
      Amazon EC2 の機械学習向けキャパシティブロックにて、即時開始と延長という新しいオプションをサポート開始しました。開発者は、GPU および機械学習チップインスタンスのキャパシティブロックを数分で開始することができます。また、機械学習ジョブが予想以上に長引いた場合にキャパシティブロックを延長することができるようになりました。さらに、より長期間のプロジェクト向けには、最大 6 ヶ月間のキャパシティブロックを予約することも可能になっています。

サービスアップデート – その他関連アップデート

    • AWS Marketplace にて、AI による製品サマリーと比較機能を提供開始
      AWS Marketplace にて、生成 AI により製品情報と顧客レビューを要約する機能と、類似の SaaS 製品を推奨する機能を提供開始しました。これにより、ソフトウェア購入の意思決定をより迅速に行うことができるようになります。
    • AWS DMS スキーマ変換にて 生成 AI の利用が可能に
      AWS Database Migration Service (AWS DMS) にて、生成 AI を活用したスキーマ変換が利用可能になりました。この機能によって、Microsoft SQL Server などの商用エンジンから Amazon Aurora PostgreSQL 互換エディションおよび Amazon RDS for PostgreSQL へのデータベーススキーマ変換が可能です。特に、ストアドプロシージャ、関数、トリガーなど、通常は手動での変換が必要な複雑なコードオブジェクトの変換に役立ちます。

来週の週刊生成 AI with AWS は、特別号として re:Invent で発表されたビッグなアップデートをピックアップして紹介する予定です。

著者について

Naoto Kimura

木村 直登(Naoto Kimura)

AWS Japan のソリューションアーキテクトとして、製造業のお客様に対しクラウド活用の技術支援を行なっています。最近は生成 AI と毎日戯れており、特にコード生成と LLM エージェントに注目しています。好きなうどんは’かけ’です。