“IT プロフェッショナル企業として新技術に挑戦し、新たな価値を創造することを通じ、サントリーグループの成長、並びに豊かな社会の発展に貢献する”を経営理念とするサントリーシステムテクノロジー。IT イ ンフラは新規システムの構築を中心に 2016 年ごろからオンプレミスからクラウドにシフトし、適材適所で各種クラウドサービスを採用しています。AWS のサービ スは、BtoC のデジタルマーケティング領域から適用が始まり、これらをモデルケースにグループ会社向けの業務アプリケーショ ンや、IoT、AI を用いたデジタルサービスまで拡大しています。「AWS はサービスメ ニューの豊富さを評価して採用しました。 現在は、新規システムの開発時に迷ったらAWS を優先する方針で進めています。」と語るのはビジネスサービス部 事業サービスグループ マネージャーの齋藤陽氏です。 システム開発・構築を支える IT 人材の育成 については、社員の技術レベルやキャリアに応じて、オンライン学習、集合研修、外部 研修、自習環境での操作復習、資格取得支援 などのカリキュラムや制度を用意。さらに年間の業務時間のうち 5% を自己研鑽のために使う『5% ルール』を設けて自発的な 学習を支援しています。
クラウドシフトが進むとシステム開発の概念が変わり、従来にない新しい教育カリ キュラムが求められるようになりました。 品質管理部 マネージャーの長谷川壽延氏 は「それまで技術者はアプリケーション、インフラの技術領域ごとに業務を行い、全社 で確立した標準プラットフォーム上で開発を進めてきました。これがクラウド化に よって、アプリケーション開発者はミドルウェアを含めたインフラまで意識すること が求められるようになり、インフラやネッ トワークの技術者もクラウドの運用に関する高度な知識が不可欠となりました。」と語ります。 そこで同社は、クラウド時代のシステム開発に対応するため、全社員必修の教育カリキュラムに AWS の知識習得を組み込むことを決断し、AWS トレーニングの採用を決めました。
AWS トレーニングは、BtoC のWeb コンテンツ制作で AWS 上での開発を先行していたデジタルマーケティング部マネージャーの黒田祐介氏をはじめ担当社員数名と、業 務アプリケーションを開発するビジネス サービス部の齋藤氏など一部社員を加えて開始しました。2017 年にAWSの製品やサービスなどの基礎知識を学ぶ AWS Technical Essentials 1、AWS Technical Essentials 2 と、アーキテクチャの設計やクラウドアプリケーションの開発手法を学ぶ Architecting on AWS や Developing on AWS などを受講。2018 年は初級編を全社員の約 70% に相当する約 150 名(経理、 人事などの管理部門も含め)が受講し、中・ 上級編は開発者を中心に 13 名が受講しています。
「初級編は、所属部署に関係なく全社員を対象としました。社長を含めて多くの社員が受講したことで AWS のサービスや思想を全員が腹落ちした形で理解し、会議の場でも共通認識を持って議論ができるようになりました。中級編以降は、本人の希望、将来のキャリア、マネージャーの推薦などを踏まえて受講者を決定しています。成果を明 確にするため、AWS の認定資格の取得を条件にしました。」(長谷川氏) 受講費用は全コース会社負担で、条件や制限はなく、社員なら誰でも受けることがで きます。受講後も AWS アカウントを使い、 自ら復習できるハンズオンの環境を構築し、知識定着やスキルアップに活用しています。
すでに効果は現れています。AWS を用いた BtoC の Web コンテンツ制作に向けて先行して受講した黒田氏は次のように語ります。 「初級編の受講とハンズオンを通じてアプリケーション開発者がサーバー構築やネットワーク設定などが体験でき、インフラに対するハードルが下がりました。アプリ ケーションの知識だけでも十分に理解できる内容で、AWS のアーキテクチャを直接体感できることがメリットでした。」 従来は技術領域ごとに縦割で組織が構成され、インフラについては“餅は餅屋”に任せる状態でした。現在は開発者自身で管理コンソールを見ながらサーバーやネットワークの状態を分析することが可能になり、開発におけるモチベーションも向上しています。その結果、新しいサービス開発を通して事業に貢献していきたい、システムの運用を通して貢献していきたいなど、関心や適性に応じてスキルセットを考え直すきっかけになったといいます。
齋藤氏は次のように話します。
「AWS トレーニングとハンズオンを通して 体系化された知識が習得できたことは個人的にとても役に立ちました。開発者を束ねる立場としては、今後に向けて AWS のサービスを使ってより品質の高い業務アプ リケーションを構築したり、品質をチェックしたりするためのポイントをメンバーとともに共通認識として理解、整理できたメリットは大きいと感じています。」
AWS トレーニングの受講以降、すでに社員の経費精算用アプリケーションや、スーパー店頭のお酒の写真を収集して解析するシステムなどが具体化しています。今後も AWS の知識習得と最新技術へのキャッチアップを通して事業に貢献していく考えです。
「ビジネスの最前線にいる製造、営業、マーケティングの部隊から日々寄せられる、画 像を使って何かをしたい、AI や IoT を使って何かをしたいといった要望に対して即座に議論ができるように、今後も AWS の サービスに関する知識を身に付け、目利き力を高めていくことが目標です。もう一方 で、既存システムのコストダウンや安定化に貢献していく意味でも AWS で何ができるかを考えていきます。」(齋藤氏)
AWS で先行しているデジタルマーケティング部でも新たなアーキテクチャの構築に取り組んでいく方針で、黒田氏は「サーバーレスや画像圧縮など、新たな技術を追いかけながらレスポンスの高速化に挑戦していきます。先行部隊としてデプロイの自動化 などにも取り組み、新たな開発ルールの策定や人材育成を進めていきます。」と話しています。
AWS の次々生み出されるサービスが、新たな価値創出やビジネス貢献の基盤になると考えるサントリーシステムテクノロジー。 現在は、AWS 版の人材育成用カリキュラムの整備を進め、社内レベルの平準化に取り組んでいます。今後に向けて、AWS マネー ジドサービスも活用し、開発から運用のライフサイクルを革新することで DevOps も採り入れ、早期のビジネス貢献を目指していく考えです。
長谷川 壽延 氏
齋藤 陽 氏
黒田 祐介 氏
サントリーシステム テクノロジー株式会社
サントリーグループの唯一の IT 会社として、業務アプリケーションの開発・運用、情報通信基盤の構築・運用、先端技術開発、デジタルマーケティング、サービスデスク、データ分析など のソリューションを提供
- 設立年月日: 1990 年 3 月 29 日 / 資本金: 2,000 万円 / 従業員数: 211 名(2018 年 4 月現在)
受講中の主なトレーニング
- AWS Technical Essentials 1 (Amazon Web Services 実践入門 1)
- AWS Technical Essentials 2(Amazon Web Services 実践入門 2
- Architecting on AWS
- Developing on AWS
- Systems Operations on AWS
- Advanced Architecting on AWS
- Migrating on AWS
ビジネスの課題
- 新規構築のシステム環境がオンプレミ スからクラウドへシフト
- アプリケーション開発者に求められるスキルにインフラの知識が必須に
- インフラ開発者もクラウドやネットワークの高度な知識が必要
AWS トレーニングを選択した理由
- 初級編から中・上級編までレベルに合っ た教育プログラム
- 経営層や管理部門も含めて全社員の受講が可能
トレーニング開始後の効果と今後の展開
- AWS のサービスに対する体系的な知識の習得
- 開発メンバー間のクラウドに対する知識 や意識の共通化
- 技術領域ごとの縦割からの脱却による エンジニアのモチベーションの向上
- IT 基盤変革に応じたスキルセットの見直し
- 継続的な技術習得新サービス提供によるグループのビジネスに貢献
- 運用ライフサイクルの革新と DevOps への転換