AWS トレーニング活用事例 | 株式会社ディー・エヌ・エー

AWS トレーニング活用事例 - 2020

新卒向け AWS トレーニングをオンラインで実施
「気付き」を与えるカリキュラムで一体感を醸成

「永久ベンチャー」を掲げ、EC、ゲーム、スポーツ、オートモーティブなど多角的に事業を展開する株式会社ディー・エヌ・エー(DeNA)。オフラインで実施を予定していた2020 年度のAWS トレーニングの新卒研修は、新型コロナウイルスの影響で急遽オンライン開催へと方針転換し、5 月 18 日から 22 日までの 5日間で 27 名を対象に実施。研修は座学とハンズオンを中心とするコースでありながらも、AWSのアーキテクチャ図を描くワーク(お絵かき)やモブプログラミング(モブプロ)などの工夫を凝らした結果、大きな成果を上げました。その内容を人事担当者と研修参加者、配属先の先輩社員に座談会形式で話していただきました。
(司会: AWS シニアテクニカルトレーナー 吉田 慶章)

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「お絵かき」などのアーキテクティングを深めるイベントで、実践に役立つ手法を学べたのは有意義でした。
オンライントレーニングで活用したチャットでの双方向コミュニケーションはポジティブな影響があるので、引き続きオンライン研修は続けたいと思っています。

平子 裕喜 氏
株式会社ディー・エヌ・エー
システム本部CTO室

Web 会議ツールやチャットを活用し、リアクション重視のトレーニングを実施

吉田:まずは、新卒研修をフルオンラインに切り替えるにあたり、どのような狙いで、どのように設計されたのかをお聞かせください。
平子:新卒研修全体のコンセプトを「一緒に船を漕ぐ仲間になる」と定め、「自走力」「つながり」「面白がり」の 3 つをテーマとしました。多種多様な事業を展開する DeNA において、新卒はどの事業部にも配属される可能性があるため、新しいことにチャレンジする気持ちを高めて欲しいというのが新卒研修の狙いです。技術者向け新卒研修はコンピュータサイエンスの基礎から始めて、AWS トレーニングも含めて、システムデザインやアプリ開発に進んでいきました。

吉田:御社の場合、入社式からオンラインで実施されたそうですが、新卒研修をすべてオンラインに切り替えるうえで工夫をしたことはありますか?
平子:研修は受け身になりがちなので、講師と研修生が場を共有し、一緒に空間を作っていくことは強く意識しました。研修生には「今の感想とか思っていることをつぶやいてくれるだけでも、やりやすくなる。講師も不安でさ。」と、講師側も弱みを開示することで、発言を促しました。

吉田:コミュニケーションではどのようなツールを使いましたか?
平子:Web 会議ツールとビジネス向けのチャットツールを活用しました。ブレイクアウトルームを別途立てることもありました。
放地:Web 会議ツールはブレイクアウトルーム以外に、コミュニケーションパスに応じて 5 個くらいを並列にしたり、小さなチームごとに使ったりして、コミュニケーションを極力活性化する方向に持っていきました。
平子:研修生は、チャットツール上でリアクションの種類を自分たちで独自に作って積極的に追加していたようです。
吉田:御社のみなさんはチャットの使い方が上手くて、私が講師の時にも「これやばい」「ぜんぜんわかんない」「草生える」といったノリもあったりしてやりやすかったです。
平子:コール&レスポンスになるような形は徹底していて、「888888(賞賛を込めた拍手)」みたいなノリでもいいからとハードルを下げていく工夫は心掛けていました。

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座談会もオンラインで開催

(参加者)
システム本部 CTO 室 平子 裕喜 氏(中央下)

システム本部技術開発室 放地 宏佳 氏(右下)

ゲーム・エンターテインメント事業本部ゲーム事業部ディベロップメント統括部技術部第六グループ 海老沼 健一 氏(右上)

システム本部IT統括部IT基盤部第一グループ 熊谷 圭遵 氏(左下)

AWS シニアテクニカルトレーナー 吉田 慶章(中央上)

配属後のシステム理解を進めるため、「運用」トレーニングを意図的に追加

吉田:今回は AWSトレーニングに加えて、「運用」に特化した特別ワークショップを取り入れました。新卒研修では珍しいケースですが、放地様があえて「運用」を軸にした狙いをお聞かせください。
放地:新卒者の事業部への配属後、最初は既存システムの運用や改修に携わることがほとんどです。また、アーキテクチャを最初から作る際も、運用のことを理解して作る必要があると考えています。何が動いているかわからない状態で改善することはありえないので、今のシステム理解を進めるためには運用の知識が必要だと判断しました。受講者は「何のため?」といった疑問はあったと思います。新卒者目線では、研修段階ではイメージが付きにくかったかもしれませんが、配属されてから現場で「使える」知識を先にインプットしておくことが重要だと考えました。

吉田:Amazon CloudWatch、AWS Systems Manager、AWS Config、AWS CDK、Observability(可観測性)などの名前を知っているだけでも違うと思いますし、引き出しになります。運用はリリース後のイメージがありますが、最近はシステムができる前からモニタリングできる仕組みを作っておいてそこからコードを書く動きもあります。
放地:どれだけモダンなアーキテクチャでも運用目線なしで作られたものはいいシステムとはいえず、大抵は失敗します。どんなシステムでも不具合はあるものですが、その原因追及ができなければもちろん復旧ができません。原因追及の視点やノウハウを学べたことは価値あることだったと思います。

DeNA 新卒研修内 AWS トレーニングスケジュール(クリックして拡大)

吉田:新卒の 2 人はいかがでしたか。運用のトレーニングについて正直な感想をお聞かせください。
海老沼:私は以前から CloudWatch を少し触っていたので、すっと入っていけましたが、AWSを触ったことがない人には少し難しかったかもしれません。私自身も実際にアプリとどう紐付くかがわかりにくいところはありました。ただ、今の放地さんの狙いを聞くと、なるほどこういう意図だったのかと納得しますね。
熊谷:研修前半でこのサービスではこういうことができるといった話があり、最後に運用の視点から見つめ直したといった解説があればイメージがしやすかったと思います。

吉田:平子さんにお聞きしますが、新卒研修のアンケート評価が下がるリスクはあったと思いますが、運用をトレーニングに組み込むことに迷いはありませんでしたか?
平子:将来の投資である新卒研修において、一般的な人事部門の KPI(研修満足度)だけにとらわれていては、本来の目的から外れてしまいます。アンケート結果から次年度への改善には活かしますが、例えその場での研修満足度が高くなくても、配属後に現場で役立つ「運用」のようなテーマは、私としても残しておきたいという思いが強くあります。

 

講師と 1 対 1 でしゃべっている感覚は オンラインならではのメリット

吉田:次にオンライントレーニングはそもそもありなのかをお聞きします。一般的にはオフラインの学習効果を 100% とした時、オンラインは 60% なのか 80% なのかといった議論をされますが、私としてはオンラインには 120% 以上の効果が出せるポテンシャルがあると考えており、それをみなさんに届けたいという思いで臨みました。今回は、チャットを Twitter のように使って積極的につぶやいてもらうことをお願いして、研修中は気軽に声をかけていただきました。私のテンションもいつもの 1.5 倍増しでした。受講者は YouTube を当たり前に見ている世代なので、私も前日までトップ YouTuber の動画を何十時間も見て研究しました。効果のほどは疑問ですが、いかがでしたでしょうか?

海老沼:オンラインはありだと思います。吉田さんの説明がめちゃめちゃわかりやすかったし、学んだ内容がすっと入ってきました。オフラインの場合、大人数に対して講師が 1 人だと距離を感じますが、オンラインは講師と 1 対 1 でしゃべっている感覚になります。
熊谷:私はまだオフラインが優位だと思いますが、2 つはベクトルが違うもので、それぞれのよさがあります。オンラインだと心のつぶやきをチャットに書いてもらうことができるので,講師が拾って細かく説明してもらえるところまで発展していく。グループディスカッション中に講師がふらっと参加して、議論の中で出た疑問を拾ってくれたり、オフラインなら出てこないところまで教えてもらえたりするのはよかったです。今回、吉田さんの説明が体系立ててわかりやすく、こちらの発言のハードルを低くしてくれるフレンドリーさもよかったです。
放地:講師が受講者の疑問を拾いやすくなるのはオンラインならではだと思います。あと今回は、講師に加えて、AWSからサポーターが 1 ~ 3 名入っていただき、講師が拾えない質問やトラブルに対応してもらえたことはとてもありがたかったです。

トレーニング内で作成したアーキテクチャ図(お絵かき)(クリックして拡大)

「お絵かき」、モブプロ、自由課題の実施は

現場配属後の業務でも効果を発揮

吉田:今回の研修では、座学とラボの演習だけでなく、「VPC お絵かき」「ラボ完成図お絵かき」などアーキテクティングを深めるイベントも実施しました。その効果はありましたか?
熊谷:個人的にはめちゃめちゃ効果がありました。研修後に AWS の資格を取ったのですが、勉強を進める中で研修中に図を書いたことが役立ちました。インターネットゲートウェイやネットワークの外側を知らなかったので、こういう構成になっていることを理解できたことも効果があったと実感しています。
海老沼:私も効果があったと思います。特に後半は知らないことも多く、図に起こしたことでこのサービスは Amazon VPCの中にあるのか外にあるのかの理解がしやすかったですね。

吉田:平子さんや放地さんは、「お絵かき」のような研修が現場配属後に役立つといった印象はありますか。
平子:ものづくりにおいて自分の考えを形にして相手に伝えることはとても重要です。特にアーキテクチャの構成を伝えていくことは今後も増えていくと思うので、「型」を学べたのは有意義でした。
放地:VPC やネットワークを教えてもらえるのはいいと思っています。直接 AWS に関係しないネットワークの一般知識までフォローしてもらえたのは助かりました。

吉田:今回、チームの中で知識を高めあったり、チームで同時に実装したりするためのプラクティスとしてモブプログラミングを採用しました。
海老沼:自由課題はよかったです。特に Amazon Rekognition、Amazon Cognito などは概要を知っていても実際に使ったことがなかったので、手を動かして作る作業ができたことは有意義でした。モブプロはすでに前のエンジニア研修で経験済みで、チームで議論をしていく中で理解が深まった気がします。
熊谷:私の場合はいろいろな感情がありました。自由課題では、何を作るかの議論に時間をかけすぎて時間が足りませんでした。モブプロについてもメンバーと議論ができるのはよかった反面、開発に入ってコンソールをポチポチしているのを全員で眺めるのは少し違和感を覚えました。

オンラインのメリットを活かし 来年以降も継続していきたい

吉田:新卒のみなさんはすでに配属されて 1 ヶ月以上経っていますが、5 日間のトレーニングで学んでおいてよかったことがありますか?
熊谷:私はネットワークの理解が進んだことです。「お絵かき」をしましたが、今は現場で「お絵かき」に近いことをしており、あの時にやっておいてよかったと実感しています。
海老沼:監視を学んでおいたのはよかったです。今の配属先は運用業務が多い部署で、SRE 本の輪読会をしています。負荷試験をしているメンバーと情報を共有した時も、研修で学んだ監視のアンチパターンは役立ちました。

吉田:最後の質問です。今後も AWS を利用していただくとして、来年の新卒研修に向けて提案や改善したいことはありますか?
平子:チャットでのコミュニケーションはポジティブな影響があるので、オフラインと並行してオンライン研修も引き続き続けたいと思っています。

吉田:新卒だけでなくて既存社員でもオンライン研修がマッチしそうな印象はありますか?
平子:ありますね。これからスペシャリティを伸ばしたい、クライアントサイドからサーバーサイドにチャレンジしたいといった人が出てくると思うので、そういう人には有意義な研修になるかもしれません。

吉田:今回の研修を振り返ってみて、先輩社員として放地さんが入ってくれたのは効果的だったと思います。新卒研修を受けた方が 1 年後にアドバイスを送ることは、研修効果をより高める方向に働くと思いますので、海老沼さんや熊谷さんも受け継いでいってもらいたいと思います。本日はありがとうございました。

 


カスタマープロフィール:株式会社ディー・エヌ・エー

  • 設立年月日: 1999 年 3月 4 日
  • 資本金: 103 億 9,700 万円 (2020 年 3 月末時点)
  • 従業員数:連結: 2,558 名(単体: 1,622 名)(2020 年 3 月末時点)
  • 事業内容:AI 事業・研究開発、ゲーム事業、オートモーティブ事業、ヘルスケア事業、ソーシャルLIVE事業、エンターテインメント事業、Eコマース事業、スポーツ事業、新領域・その他

ビジネスの課題

  • 研修コンセプト「一緒に船を漕ぐ仲間になる」に基づく、チャレンジ人材の育成
  • 「自走力」「つながり」「面白がり」の 3 つをテーマに設定
  • 新型コロナウイルスの影響で、新卒研修をリアルから急きょオンラインへ方針転換

受講した AWS トレーニング

新卒エンジニア向け AWS トレーニング(オンライン)

  • AWS Technical Essentials 2
  • Architecting on AWS
  • Build Your First Serverless Web Application with Mob Programming
  • AWS 運用 特別ワークショップ

AWS トレーニングを選択した理由

  • 「お絵かき」、グループディスカッション、モブプログラミングなどオンラインならではの工夫
  • 5 日間のトレーニングの 5 日目に運用の特別ワークショップを追加
  • トレーナーの説明のわかりやすさ、講師以外のサポートメンバーの参加

導入後の効果と今後の展開

  • Web 会議ツールやビジネス向けチャットツールを駆使し、研修中の対講師、対仲間とのコミュニケーションを活性化したことでお互いに助け合いながらトレーニングができた
  • 「お絵かき」、グループディスカッション、モブプログラミングなどアーキテクティングを深めるイベントの実施で、オンライン研修でも理解がより深まった
  • 運用監視のトレーニングを実施したことで、現場配属後にその効果が実感できた
  • 「お絵かき」やモブプログラミングの経験は現場でも役立っている
  • 来年もオンライントレーニングを検討


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