データアノテーターが利用しやすいように
クラウドでデータを一元化
既存のアノテーションツールを組み込んで従来のプロセスを維持することで
デベロッパーの時間的負担を軽減
新しいデータセットを
大規模に追加
機密性の高い医療情報の
プライバシーを保護
規制要件への対応能力を
改善
概要
機械学習 (ML) は、医療従事者が画像技術から得られるデータを利用して患者の転帰を改善する方法を変えつつあります。しかし、高品質の ML モデルには、広範囲かつ正確なアノテーションが必要です。アノテーションとは、モデルがデータの特徴を認識し、それに基づいて動作するように、人がタグ付けやラベル付けを行うプロセスのことです。世界的なヘルステクノロジー企業であるロイヤルフィリップス (フィリップス) は、顧客への大規模なインサイトの提供を加速させたいと考えています。フィリップスは、Philips HealthSuite Platform の構築における Amazon Web Services (AWS) との長年の関係の一環として、2D および 3D イメージングとラベリングツールをクラウド上で最新化およびスケールする方法を調査しました。この共同の取り組みで、フィリップスと AWS は、ML アルゴリズム学習に必要な膨大な量のデータにアノテーションを付けるという時間のかかる分散型ワークフローを効率化し、ML モデルによって得られた関連するインサイトをフィリップスの顧客により速く、より良く提供する方法を検討しました。
機会 | クラウドのデータ活用による患者転帰の向上
フィリップスは、健康的な生活や予防から診断、治療、在宅ケアまで、健康の一連の流れに有意義なイノベーションをもたらし、人々の生活を向上させることに焦点を当てたヘルステクノロジー企業です。同社は 2014 年から、ヘルスケアやライフサイエンス企業が患者ケアの向上に利用する数十の AWS サービスをオーケストレートする Philips HealthSuite Platform をお客様に提供しています。Philips HealthSuite Platform は、規制当局の承認を受けたヘルスケア対応のプラットフォームで、デバイスの接続、データの解放、コラボレーションの促進により、医療インフラとデータサービスをクラウドで提供することに重点を置いています。HealthSuite Platform の一環として、フィリップスは Amazon SageMaker を使用した新しいエンドツーエンドの人工知能 (AI) 開発/デプロイプラットフォームに取り組んでおり、データサイエンティストやデベロッパーがほぼすべてのユースケースに対して ML モデルを構築、トレーニング、デプロイできるよう支援しています。フィリップスは、アノテーションツール群を構築し、オンプレミスのインフラを利用して運用していました。同社は、HealthSuite 上の新しい AI 開発/デプロイプラットフォームの一環として、既存のアノテーションツールの使用をオンプレミスの機能以外にも拡大し、データアノテーションプロセスをクラウドに集中させることで、時間とコストを節約すると同時に、医療に関する機密情報のセキュリティとプライバシーを保護したいと考えました (フィリップスデータ原則による優先事項)。従来は、病院などのアノテーターがいる場所まで車で行き、アノテーターにデータを手渡して、完成したアノテーションを回収する必要がありました。
フィリップスの新しい AI 開発/デプロイプラットフォームにおけるアノテーションソリューションは、Amazon SageMaker Ground Truth というデータラベリングサービスを中心に構成されており、サードパーティーベンダーや独自のプライベートワークフォースを介して人間のアノテーターを柔軟に使用しながら、データに簡単にラベル付けを行うことができます。フィリップスは、既存のアノテーションアプリケーション (Windows または Linux ソフトウェア上で動作するオンプレミス型と、時には分離したインスタンス上で動作するウェブベースのもの) を引き続き取り入れることができます。フィリップスのソフトウェアアーキテクチャリードである René van Erp 氏は、次のように述べています。「このプロジェクトは、データを一元化し、既存の AI アノテーションツールをクラウド環境で使用することで、アノテーターがクラウドベースのストレージに接続されたブラウザからデータにアクセスできるようにするためのものです。
Amazon SageMaker Ground Truth の使用を通じて、既存のツールでクラウドベースのアノテーションワークフローにはるかに速く移行できるという明確な利点があります」。
René van Erp 氏
ロイヤルフィリップスソフトウェアアーキテクチャリード
ソリューション | AWS を使用して Philips HealthSuite で革新的なアノテーションソリューションを構築
AWS 上にネイティブに構築された Philips HealthSuite Platform は、アノテーションや ML モデルトレーニングのために収集したデータを、Amazon Simple Storage Service (Amazon S3) 上に構築されたデータレイクに保存します。Amazon S3 は、どこからでも任意の量のデータを取得できるように構築されたオブジェクトストレージサービスです。データを読み取り、ウェブベースのアノテーションツールにプッシュするために、フィリップスはサーバーレスのイベント駆動型コンピューティングサービスである AWS Lambda を使用しています。これにより、デベロッパーはサーバーのプロビジョニングや管理をしなくても、事実上あらゆる種類のアプリケーションやバックエンドサービスのコードを実行できます。これが完了すると、追加の Lambda 関数を使用してアノテーションが HealthSuite データレイクにプッシュバックされます。Lambda へのウェブリクエストのルーティングには、Amazon API Gateway を使用しています。このサービスは、デベロッパーが API の作成、公開、保守、監視、セキュリティ保護をほぼあらゆる規模で簡単に行えるようにするフルマネージドサービスです。フィリップスのデータおよび人工知能プログラムマネージャーである Frank Wartena 氏は、「既存のアノテーションツールを利用でき、ウェブベースにするために一から作り直す必要がないことが非常に重要です」と述べています。AWS 上に構築されたソリューションは、アノテーションツールを書き換える必要がないため、デベロッパーの時間と労力を削減し、フィリップスはその労力を医療成果を向上させるための革新的なソリューションに費やすことができるようになります。
デスクトップアプリケーションとしてインストールされたアノテーションツールは、Amazon AppStream 2.0 (リモートで業務にアクセスできる、フルマネージドで非永続的なデスクトップおよびアプリケーションサービス) で動作し、SageMaker Ground Truth を使ってレンダリングされます。Wartena 氏は、「ウェブ以外のアプリケーションを Amazon SageMaker Ground Truth に取り込むことは、これまで行われていなかったことで、ヘルスケア業界に関連するだけでなく、他の業界にとっても価値があります」と話しています。 また、AWS のワークフローにより、機密データに接触した人の完全な記録をフィリップスが簡単に保管できるようになりますが、これは重要な規制要件でもあります。
さらに、アノテーターは現在クリニックで使用している方法を変更する必要がないという利点もあります。例えば、CT スキャンを扱う医師は、フィリップスでアノテーションを行うのと同じ方法で、日々の業務で画像のラベリングを行い、既存のユーザーエクスペリエンスとワークフローの大部分を維持することができます。また、オフラインのアノテーションプロセスをクラウドに移行することで、フィリップスはプロセスを高速化し、開発中の ML プロジェクトの総リードタイムを短縮し、市場投入までの時間を短縮しています。「Amazon SageMaker Ground Truth を使用することで、既存のツールからクラウドベースのアノテーションワークフローへ、より迅速に移行できるという明確なメリットがあります」と van Erp 氏は説明しています。
SageMaker Ground Truth を使用することで、フィリップスはより多くの有能なグローバル人材にリーチし、新しいデータセットを大規模に継続的に追加することができるため、データアノテーションの配布と量がより拡大します。これらのデータセットで学習した ML モデルは、より正確な予測を行うことができ、医療従事者が癌や感染症などの病気をより適切に診断できるよう支援します。また、アノテーションのプロセスを高速化することで、ML プロジェクトのスループット時間を短縮し、インサイトを大規模かつより早くお客様に提供することが可能です。
成果 | 医師の意思決定に役立つように AWS の機能を拡大
フィリップスは、AI 開発/デプロイプラットフォームの開発において AWS と緊密に連携しており、このプラットフォームには、Amazon SageMaker の機能が追加される予定です。アノテーションの他、モデルのトレーニング、バリデーション、モデルのデプロイとモニタリングなどが含まれます。その結果、フィリップスは、医師が時間を節約し、より適切な判断を下せるよう、支援できるようになるのです。「Amazon SageMaker Ground Truth を使用することで、特に当社の完全な AI 開発/デプロイプラットフォームの中で、より効率的なプロセスを実現することができます」と van Erp 氏は言います。「これは効率と生産性の向上であり、リードタイムと全体的なコストに多大な影響を及ぼします」。
詳細については、https://thinkwithwp.com/sagemaker/data-labeling/ をご覧ください。
ロイヤルフィリップスについて
1891 年に設立され、アムステルダムに本社を置くロイヤルフィリップスは、人々の健康増進とより良い患者転帰の実現に注力する世界有数のヘルステクノロジー企業です。
使用されている AWS のサービス
Amazon S3
Amazon Simple Storage Service (Amazon S3) は、業界随一のスケーラビリティ、データ可用性、セキュリティ、パフォーマンスを提供するオブジェクトストレージサービスです。
Amazon SageMaker Ground Truth
SageMaker Ground Truth は、データのラベル付けを簡単に行うことができるデータラベリングサービスで、Amazon Mechanical Turk、サードパーティーベンダー、または独自のプライベートワークフォースを介して人間のアノテーターを使用するオプションを提供します。
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Amazon AppStream 2.0
Amazon AppStream 2.0 は、フルマネージドで非永続的なデスクトップおよびアプリケーションサービスです。リモートで業務にアクセスすることができます。
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Amazon API Gateway
フルマネージドサービスの Amazon API Gateway を利用すれば、デベロッパーは規模にかかわらず簡単に API の作成、公開、保守、モニタリング、保護を行えます。
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