1946年の創業以来「ものづくり」へのこだわりを持ち続ける化粧品を中心とする『美の創造企業』。過去には業界初の美容液や水乾両用のファンデーション を開発し世に送り出した実績を持ち、1991年に CI を行い「株式会社コーセー」に。以降、多様な付加価値を持つブランドを最適なチャネルに配置し、市場 での存在感を高めてきています。主なブランドとしては、コスメデコルテ、プレディア、雪肌精、エスプリーク、ヴィセ、ファシオ、ジュレームや、ジルスチュ アートやポールスチュアートなどのライセンスビジネスなども手掛けています。現在は日本国内にとどまらず、海外14の国と地域に進出し、2020 年には 「世界で存在感のある企業」を目指しています。
店頭にて使用する顧客情報管理システム及び、店頭・社内の PC から蓄積した情報を検索するシステムの二つからなる店舗支援システムの構築を検討するにあたり、店舗からの流動的なアクセスにどのように対応するかに加え、下記の点で検討が必要でした。
- 顧客情報管理システム
顧客情報や商品売上、在庫情報などを一元管理する店頭支援システム。専門店、百貨店、GMS など全チャネル約 600 店舗に導入したクライアントーサーバ型のシステムであり、全てのサーバがクラウド環境で動作可能であること。
- 顧客情報検索システム
蓄積した情報から、管理帳票の検索・印刷、自由検索などを実現するシステム。顧客情報 40 万レコード以上、売上情報も 110 万レシート以上を蓄積するスケーラビリティが必要。また、使用するデバイスを選ばない運用が求められる(店頭で使用している iPad に加え、PC からも使用可能であること)のに加え、下記への対応が必要とされました。
- 主要通信キャリアの接続インフラが整備されていること。
社内ネットワークとの接続、外部からの VPN 接続など主要通信キャリアのサービスインフラが整備されており、回線の準備がスムーズに実現できる点。
- 高いスケーラビリティを有すること。
ディスクの容量不足や CPU の一時的なパワー不足が発生しても、対応を時間ごとに増強できる高いスケーラビリティを有する点。
- ハードウェア保守期限からの解放されること。
問題なく稼働しているハードウェアであっても、保守期限切れにより代替しなければならない案件が多数あるため、今回のシステムでは保守期限からの解放を目的とする。
- 運用コスト削減。
外部からのピークアクセスを前提としたデータセンター費用を含めたサーバ環境の維持管理が高コストであり、これの削減を実現するため。
このようなトラフィックに対応した事例や、課題に対する対処方法の多さからクラウドサービスの利用を検討するに至りました。ただし、個人情報を扱う為、クラウドサービスの選定は慎重を期しました。特にセキュリティーに関しては最優先項目であり、 様々なクラウドサービスを検討した結果、AWS のセキュリティーの高さや、Amazon.com での運用実績等を評価し AWS の採用を決定するに至りました。また、社内閉域網との専用線接続が可能というのもセキュリティーやトランザクション処理でのパフォーマンスの点で大きな魅 力でした。専用線接続については、ソフトバンク様による接続ができた点も選定の評価となりました。
2012 年 6 月より開発に着手。サーバ環境の構築は開発元に委託しましたが、AWS でのシステム構築は実績が多数あり、スムーズに環境構築を実現することができました。システム稼働開始は 2013 年 4 月、最終リリースは 2013 年 9 月に完了しています。
「コーセー様 K-PAD 検索システム構成図」
オンプレミス提案との AWS クラウド利用時におけるコスト比較は 5 年総投資金額比較で、20 %程度コストが安くなるという試算でした。実際の運用においては、サーバの負荷を監視しながら、スペックの変更をスムーズに実施することで、コストの最適化が図れるだけでなく、ビジネス機会を損失しないことに より、IT 部門が経営に貢献できるものとなりました。
この特性を利用する事でオンプレミスを採用した場合に必要であった余剰ハードウェアを保有することが不要になったため、運用コストは確実に削減でき ています。今後の他システムの移行も踏まえ、リザーブドインスタンスやアカウント集約することにより、更に大幅なコスト削減が可能と考えています。
また、Amazon VPC と Direct Connect による専用線 VPN 接続により、社内ネットワークと同じ環境でクラウドの利用ができることもセキュリティと可用性の上で大きなメリットでした。
今後の展開として、社内システムの AWS 環境への移行できるものを選定し、随時移行を予定しています。
すでに、コスメデコルテ、雪肌精などの多数のブランドサイトもAWS 環境への移行を完了しているほか、今後はコーポレートサイトの移行を進めていく予定です。また、DR サイトや、既存 DWH 等も AWS クラウドへの移行も検討しています。
AWS の利用においては、AWS 特有の設定項目(バックアップの設定や通信の設定)など、新規で構築する際には従来とは異なる知識が必要なケースも ありますので、マニュアルの充実など更なる情報提供に期待したいと思います。しかしながら、Time to Market での IT 部門の経営に対する貢献や、必要なインフラが全て揃っている点、コスト削減といった観点では、AWS 利用は、大変有効と感じております。
- 株式会社コーセー 情報統括部 課長 小椋敦子様