バリュードリブンのリーダーシップ

Baxter の元 CEO である Harry Kraemer 氏との対話

このエピソードでは...

Baxter の元 CEO であり、現在は Kellogg School of Management の教授である Harry Kraemer 氏は、内省、バランスのとれた視点、真の自信、真の謙虚さという 4 つの主要な柱を通じて、バリューベースのリーダーシップについて語ります。Kraemer 氏は、150 億 USD 規模のグローバル組織を率いた経験を踏まえて、リーダーシップの 90% が人とコミュニケーションであると強調しています。Kraemer 氏は、日々の内省と、物質的な成果ではなく重要性を通じて成功を測ることを提唱しています。

会話の文字起こし

スピーカー: AWS の APJ Innovation Programs Lead である Richard Taylor と、Madison Dearborn Partners、Executive Partner、Harry Kraemer 氏

Richard Taylor:
Executive Insights ポッドキャストへようこそ。私は、Baxter の元 CEO であり、Kellogg University of Leadership の教授である Harry Kraemer 氏にお話を伺いました。生成 AI などのテクノロジーの進歩により、世界が急速に変化している今日、大規模な組織を率いたいと考えている私たちにとって、リーダーシップとバリューベースのリーダーシップの重要性はさらに高まっています。これはすばらしいエピソードになると思います。どうぞお楽しみください。

Kraemer さん、お会いできて光栄です。本日はポッドキャストにご参加いただき、本当にありがとうございます。

Harry Kraemer 氏:
Taylor さん、お招きいただき、光栄です。

Richard Taylor:
本日は、バリューベースのリーダーシップについてのお話しを伺いたいと思います。

Richard Taylor:
あなたはリーダーシップに関する本を執筆し、Kellogg University のリーダーシップの教授でもありますが、ご自身も経験豊富なリーダーですね。そこで、この 2 つの役割を分けてお話しできれば幸いです。そして、Kraemer 教授ではなく、リーダーとしての Kraemer さんから始めたいと思います。教授としての Kraemer さんとは、後ほどお話ししたいと思います。

Harry Kraemer 氏:
そうしましょう。

Richard Taylor:
さて、どのような初期の経験があなたのリーダーシップスタイルとキャリアを形作ったのでしょうか? 今のあなたを形作った原体験のようなものはありましたか?

Harry Kraemer 氏:
いくつかあります。まず、若い頃にリトリートに参加する機会がありました。そのリトリートでは、立ち止まって自分自身にたくさんの質問を投げかける時間がありました。「自分の価値観はどのようなものか」、 「自分の目的は何か」、 「何が大切なのか」というようなことです。 そして、少し時間をかけてゆっくり考えてみると、自分がこの地球にいるのはほんの短い期間で、より多くの人と関わり、より多くの影響を与えることができることに気づきました。さらに、時間をかければ、マネージャーや取締役になれるかもしれないとも思いました。55,000 人の従業員を抱える 150 億 USD の企業の CEO になるとは思ってもいませんでしたが。いずれにしても、人々からキャリアについて聞かれれば、すべては人と関わる能力に集約されると答えるでしょう。

Richard Taylor:
すばらしいですね。3 日間静かな環境で内省し、自分自身にいくつかの質問をするのですね。

Harry Kraemer 氏:
そうですね。「自分はどのようなリーダーになりたいのか」、 「どのような模範を示したいのか」、 それに個人の状況にもよりますが、「どのような父親でありたいか」、「どのような配偶者でありたいか」、「人生を通じて人としてどうありたいか」。これらの質問は、他者と関わり、影響を及ぼし、導く能力に大きな影響をもたらします。

Richard Taylor:
あなたのリーダーシップの初期段階はどのようなものでしたか? どのようなリーダーになりたいと考えていましたか?

Harry Kraemer 氏:
Taylor さん、面白いことに、自分が個人であるとき、そしてリーダーとなったばかりの頃は、すべてが自分中心なのです。でも、リーダーになったその瞬間から、話は変わります。私は Northwestern Kellogg の学生たちにもいつも次のように言います。たとえ部下が 5 人しかいない初級マネージャーであっても、もはや自分だけの問題ではなくなるのだ、と。自分がその 5 人の部下の可能性を最大限に引き出せるか、ということが重要になるのです。 そして、それには「フィードバック」が不可欠です。人々は「そうだ、フィードバックが重要だ」というでしょう。しかし、単なるフィードバックでは不十分です。率直、誠実、継続的なフィードバックが必要なのです。もしあなたが私の部下だとしたら、私はあなたにこう言うでしょう。「私はあなたのことを本当に大切に思っている。私はあなたのことをとても気にかけている。だからこそ、自分がされたいと思うような扱いをあなたにもしたいし、あなたの可能性を最大限に引き出すのをサポートしたい」と。

Richard Taylor:
そして、あなたがおっしゃったように、小規模なチームで、5 人の部下を持つマネージャーから始めれば、それらのメンバーと親しくなり、一人ひとりを気にかけ、そのキャリアを育むのは比較的簡単なように思えます。では、それを Baxter のような規模の組織に拡大するにはどうすればよいでしょうか?

Harry Kraemer 氏:
昇進すると、部下として 5 人のジュニアアナリストを抱えるマネージャーではなくなります。今、私が CEO であると仮定すると、8 人のエグゼクティブバイスプレジデントを抱えていることでしょう。私がこれらの EVP にフィードバックを提供したり、説明したりする場合、例えばあなたがその 1 人だとすると、あなたには、その下のグループの人々に同じことをすることを期待します。つまり、もし 10 人の上級職が私の直属となっており、その 10 人にもそれぞれ 10 人ずつ部下がいれば、私が伝えているのは直属の 10 人だけではありません。私は次のレベルの 100 人にも伝えており、フィードバックをしているのです。なぜなら、その 100 人の中から次の 10 人の上級職が生まれてくるからです。また、私の場合は、5 万 5,000 人全員とコミュニケーションを取る方法も探します。タウンホール、セミナー、何でもいいです。世界中の施設を訪問し、私がオープン Q&O セッションと呼んでいるものを開催します。「質問と意見」(Question and Opinion) という意味です。私は Q&A をしません。Q&O を行うのです。はい。私は多くの答えを持っているわけではありませんが、本当にたくさんの意見を持っています。

Richard Taylor:
Baxter についてお伺いします。あなたが Baxter の CEO に就任したのは 1997 年でしたね。

Harry Kraemer 氏:
大当たりです。

Richard Taylor:
調べましたからね。103 か国にまたがって事業を展開する、明らかに巨大な組織です。

Harry Kraemer 氏:
そうですね。103 か国にまたがっています。

Richard Taylor:
そして、あなたは組織のあらゆる場所にいる人々を知ることが自分の仕事だと仰いましたね。

Harry Kraemer 氏:
なるほど。

Richard Taylor:
なぜそうしたのでしょうか?

Harry Kraemer 氏:
実は、私はかなり早い段階でそれを始めたのです。Taylor さん、あなたもよくご存知のとおり、そしてリスナーの皆さんもおわかりだろうと思いますが、ほとんどの組織では、垂直な平行線の連続だと気づいたからです。すなわち、部門、ビジネスユニット、機能、地域などです。これを「サイロ」と呼ぶ人もいます。あなたの組織にはないかもしれませんが。そして、私が考えたアイデアの全体像というのは、自分自身がこのようなサイロの中にいると考えるのではなく、全体を円でつなぐにはどうすればよいのか、自分の職務が何であれ、それが組織全体とどのように関係しているのかを把握するにはどうすればよいのかということでした。

Richard Taylor:
CEO として組織を運営し、利益や組織の方向性を気にしながら、従業員に寄り添うことの間で、どのように時間のバランスを取っていましたか? 割合を決めていたのでしょうか?

Harry Kraemer 氏:
私にはちょっとした公式があるのです。私はリーダーとして、「人」と「コミュニケーション」が大事だと考えています。リーダーとしての私の考えでは、「人」と「コミュニケーション」が仕事の 90% を占めています。

他の CEO からはこのように言われたことがあります。「ちょっと待ってください。Kraemer さん、あなたは挑戦できると言いましたよね。人とコミュニケーションに 90% の時間を費やしているのなら、いつ仕事ができるのでしょうか?」と。 私は何度も繰り返されてきた「もし」フレーズで次のように答えます。「もし適切な人材がいて、何をする必要があるのかを全員が正確に把握しているなら、他にすべきことなどあるでしょうか」と。

Richard Taylor:
あなたが導入した興味深い方法についての記事を読みました。それは、チームに上司について報告させ、レポートを提出させるというものでした。それはビジネスにどのような影響をもたらしましたか?

Harry Kraemer 氏:
ご想像いただけるように、そして、これまで目にしたことがあるかもしれませんが、マネージャーの中には、とてもうまく立ち回って昇進したが、部下に対する態度が良くない人たちがいます。はい。敬意を払いません。部下に対して、わめき、怒鳴りつけています。私は、 マネージャーが私のために働いているかどうか、マネージャーがどうしているかを知りたいだけではありません。マネージャーが育成すべきチームをどのように扱っているかを知りたいのです。なぜなら、マネージャーの主な仕事は、次世代の人材を育成することだからです。ですから、マネージャーが自分のことをどれほど優秀だと思っているかにはあまり興味がありません。私は、その人たちの考えを知りたいのです。そして、私たちがすべてのシニアマネージャーについて実施した上司に関するフィードバックは、非常に大きな効果をもたらしました。うまく立ち回って上司になった人々と、本当のリーダーの間には、とても大きな隔たりがありますから。

Richard Taylor:
では、次に Kraemer 教授としてお話を伺います。あなたは Kellogg School of Management から、最初にリーダーシップのコースを教えるように依頼されましたね。リーダーシップを教えることはできますか?

Harry Kraemer 氏:
できると思います。Taylor さん、面白いものですね。よく次のように言われます。「リーダーシップは教えられるものなのですか? それは、性質や生まれつきのものですか? それとも、後天的に育成されたり、発達したりするものでしょうか?」と。 そのようにたずねられたとき、私には 2 つの回答があります。1 つは、「教えられるものであってほしいです。それが私の仕事ですから」というものです。しかし、もう 1 つは、私は本当に信じている、ということです。そして Taylor さん、あなたも挑戦すべきです。私は、すべての人がより良くなれると本当に信じています。誰もが異なるレベルの潜在能力を持っていますよね? Joe の潜在能力のレベルはここかもしれません。Taylor さん、あなたはきっとこのレベルでしょう。そうでしょう?

Richard Taylor:
もちろんいます。

Harry Kraemer 氏:
誰にでも限界はあります。誰もが CEO になれるわけではありませんが、誰もが向上できると思います。だからこそ、次のように考えるべきなのです。「では、私の部下として働くすべての人が最大限の能力を発揮できるようにするために、私には何ができるだろうか? 今の仕事で最大限の能力を発揮できているのか? それとも、よりレベルの高い仕事を与えるべきだろうか? さらに多くを成し遂げられるだろうか?」と。 このプロセスこそ、私たちがリーダーシップで教え、実践しようとしていることなんです。

Richard Taylor:
あなたの執筆テーマであり、教えているバリューベースのリーダーシップの 4 つの柱について詳しくお伺いします。以前に答えているかもしれませんが、いずれにしてもお聞きします。最も重要なのはどれですか?

Harry Kraemer 氏:
とても良い質問ですね。私はいつも内省に戻ってきます。Taylor さん、その理由は、内省しなければ、バランスの取れた視点を養う時間を確保できないと思うからです。これは私たちが話し合うべき大きなテーマです。内省がなければ、知らないことを認める覚悟を持てるでしょうか? そして、知らないことを認める覚悟がなければ、本当の自信を持てるかどうかわかりません。また、私が内省することなく、本当にうまくやってきたとしたら、私は一人ひとりが大切だと気づくでしょうか? すべてを自分中心に考え始めるのではないでしょうか? したがって、私が最初の本を書き直すとすれば、ちなみに私は最初の本を書き直し始めたばかりですが、私は内省、自己認識により多くの時間を割くでしょう。

Richard Taylor:
それをどのように生活に取り入れているのですか?

Harry Kraemer 氏:
信じられないかもしれませんが、私は 1 日のうちに 15 分間、自己分析をしています。朝に行う人もいれば、夜に行う人もいます。ランニング中に行う人もいます。人それぞれです。5 人の子どもがいて、夜型の人間である私は、15 分かけて、毎晩この自己分析を行っています。Taylor さん、私は次のように行っています。今日何をすると言ったのか? 実際には何をしたのか? 誇りに思うことは何か? 誇りに思わないことは何か? 今日をもう一度生きるとすれば、何を違うやり方でやっていただろうか? そして最後に、遅かれ早かれ、当然のことながら明日を迎えられない日が来ると十分に理解したうえで、もし今日学んだことに基づいて明日があるなら、父親として、配偶者として、信仰によって、指導力と教育力によって、どのように違うやり方で行動するだろうか? これらのことを毎日考える能力が、私を軌道に乗せてくれるのです。これはとても簡単なことです。人々が「あなたはすばらしい」と言ってくれるとき、「来週運動しよう」、「3 週間後に配偶者と時間を過ごそう」と思ってしまうかもしれませんが、それでは軌道から外れてしまいます。それを防ぐために、この内省が役立っています。なぜなら、少しでも軌道から外れそうになったら、すぐに戻れるからです。

Richard Taylor:
これは別のポッドキャストで聴いたのですが、先日、Well-Done リストというすばらしいアイデアを知りました。

多くの人は 1 日を通じて、Done リストや To-Do リストにチェックマークを入れていきますが、Well-Done リストというこのアイデアでは、その日を振り返り、他の人からは評価してもらえないかもしれない、その日うまくいったことに焦点を当てるのです。

Harry Kraemer 氏:
そのとおりです。

Richard Taylor:
会議であえて誰かに反応しなかったときや、通常は自分が取らないようなアプローチを取ったとき、チェックを入れるだけの ToDo リストではなく、Well-Done リストとして振り返るというのは、とてもいいことだと思いました。

Harry Kraemer 氏:
すばらしいアイデアですね。1 日を振り返って、何がうまくいったかを考えてください。 自分を褒めてあげてください。うまくいかなかったことがあれば、 改善するにはどうすればよいのかを考えるのです。

Richard Taylor:
なるほど。

Harry Kraemer 氏:
会議で少し興奮しすぎたら、朝にその人に電話して謝る、というようなことです。

Richard Taylor:
そして、自分が対応できたことについて、他者から評価されなくても、自分自身を褒めて 1 日を終えるということも重要ですね。

Harry Kraemer 氏:
そうですね。それはあなたの態度に好ましい影響を及ぼすと思います。「グラスは半分満たされている」という人もいれば、「グラスは半分空だ」という人もいますよね。私は「グラスからあふれ出ている」と考えるのを好みます。「もっと良くなることができるが、今は旅の途中だ。必ず良くなっていける」と考えるのです。

Richard Taylor:
自分自身に対する真の自信とはどのような意味なのですか?

Harry Kraemer 氏:
なるほど。私が真の自信について話すときには、「真の自信とは何か」を最初のトピックとすることが非常に多いです。 あなたは自信があるか、ないかのどちらかです。手を挙げる必要はありませんが、私たちはみな、とても自信があるように振る舞うことができる人々のために働いたことがあるでしょう。これらの人々はまったく自信がありません。上から目線で、「私が言ったことをやれ」、「私は一度も間違えたことがない」という連中です。リーダーたちに真の自信があるかどうかを自問させるために必要なのは、たった 2 つの質問だけです。最初の質問は、「『わからない』と言う覚悟はありますか?」です。 「すぐに調べて回答できますが、今はわかりません」と言えるかどうか。わからないことを認める覚悟はあるか、ということです。 2 つ目の質問は、「あなたは人生で『私は間違っていた』と言える段階に達しましたか?」ということです。「私が言ったことは忘れてください。Taylor さんが言ったことの方が理にかなっています。その考えでいきましょう」と言えるかどうか。わからないことを認める覚悟はあるか、ということです。

そして、私が非常に興味深いと思うのは、人々がとても頻繁に「私が『わからない』と言ったら、Taylor さんはどのように思うだろうか」と考えることです。 ここで、リーダーシップ、影響力、関係性に立ち戻ってみましょう。Taylor さん、興味深いことに、人は何でも知っている人とはうまく関係を築くことができません。人は決して間違いを犯さない人とはうまく関係を築くことができないのです。私はそのような人とどのように関係を築いていけばよいのかわかりません。そして、あなたは次のように考えるかもしれません。「Kraemer さんは今はわからないが、すぐに答えを持ってきてくれるだろう。私は彼と関係を築くことができる。そして、影響を与え、導くことができるだろう」と。

Richard Taylor:
本当に大切なのは聞くことですよね。自分の意見を強く持っているが、他の考えにも寛容になり、他者のデータポイントに耳を傾け、そのデータが自分の仮説とは異なることを示しているのであれば、自分の考えを変える柔軟性を持つことが大切だということですね。

Harry Kraemer 氏:
Taylor さん、そのとおりです。実際、これはバランスのよい視点を持つことに関する 2 つ目の原則に大きく関係しています。私が「バランスのよい視点」と言うとき...そして、これはリーダーとしての私にとって非常に重要なことですが、バランスのよい視点を養うことが大切なのです。つまり、複数の視点を理解するために時間をかけるということです。あるいは、聖フランシスコの次の言葉を引用しましょう。「理解される前に、まずは理解しようとする」。

あるトピックについて私が北へ進むべきだと感じ、あなたが南へ進むべきだと思う場合、私はあなたが南だと考える理由を正確に理解したいです。私にはその話を聞く用意があります。そして、あなたの考えの方がより理にかなっているのであれば、私は次のように言うでしょう。「Taylor さん、北のことは忘れて、南へ行きましょう」と。 私が正しい必要はまったくないのです。私は正しいことをしようと必死に努力しており、それが大きな影響をもたらしています。

Richard Taylor:
「理解しようとする」ですね。

Harry Kraemer 氏:
「理解される前に」。

Richard Taylor:
「理解される前に」ですね。

Harry Kraemer 氏:
なるほど。

Richard Taylor:
バランスのよい視点を持つことで、ビジネスや職場で正しい意思決定を下すのに役立ったことを示す好例はありますか?

Harry Kraemer 氏:
常に役立っています。私たちは多くの買収を行いました。その中で、私が非常に高く評価していた会社が 1 社あり、私はその会社の買収が非常に理にかなっていると思っていました。しかし、これについて話し合ったとき、部下 2 人から、「Kraemer さん、あなたがこの買収を実現したいのはわかりますが、少し考えてみてください。当社のスキルセットに基づいて、これは私たちにとって論理的なことでしょうか? そのリスクとリターンは本当に理にかなっていますか?」と言われました。 私はこれを聞き、「違う。これは私が単にやりたいと思ったことだった」と思いました。 そのまま話を聞き続ける中で、なぜそう思うのかを自問しました。そして、私はいつも「もしあなたが私だったらどうするか」とたずねます。

私に 2~3 人の優秀かつ適切な部下がいて、私がそれをすべきではないとそれらの部下が考えているなら、なぜ私はそれをするのでしょうか? なぜ? 私が正しくある必要はないのです。申し上げたように、私が求めてやまないのは正しいことをすることです。ですから、私はこれらの部下に次のように言いました。「わかりました。考えが変わりました。この買収はやめておきましょう」。

Richard Taylor:
つまり、十分な情報に基づいた決定を下せるよう、適切なデータを見つけることが重要なのですね。

Harry Kraemer 氏:
そのとおりです。

Richard Taylor:
あなたは現在、Kellogg で将来のリーダーや現在のリーダーなどを指導していますが、これらのリーダーにもっとたずねてほしい質問は何ですか?

Harry Kraemer 氏:
それは難しい質問ですね。おそらくあなたから最初にたずねられたことと関係しています。「Kraemer さん、より大きな好奇心を持つにはどうすればよいですか? より多くの人々と関わるにはどうすればよいですか?」という質問です。 なぜなら、多くの人は自分の小さな箱の中にいて、独自の考え方を持っており、あまりオープンではないからです。そして、あなたが以前仰ったように、これらの人々はよく次のように言います。「私はある特定のやり方に慣れているのですが、非常に異なる背景を持つ複数の国の人々とはどのように関係を築けばよいのでしょうか?」と。 好奇心を育むのが重要です。あなたが仰ったように、その多くはただ静かにして、耳を傾け、紙と鉛筆を用意して、メモを取り、相手の言うことに十分関心を持っていることを示せばよいのです。これが、関係を築き、影響を与え、導くのに役立ちます。

Richard Taylor:
そして、それは双方向のものですよね。他人に対する好奇心でありながら、自分自身に対する好奇心でもあります。また、それは内省の部分にも関係しますよね。

Harry Kraemer 氏:
なるほど。

Richard Taylor:
優れたリーダーになるうえで、運や他者からのサポートはどのような役割を果たしますか?

Harry Kraemer 氏:
なるほど。面白いですね、Taylor さん。あなたの質問は本当にすばらしいです。なぜなら、あなたは今、「真の謙虚さ」という 4 番目のトピックにたどり着いたからです。私は真の謙虚さを持つことがとても重要だと本当に信じています。私は世界中の人々、私の部下の若手社員、さらには CEO にまで、どのようにして今の地位にたどり着いたのかをたずねてきました。 あなたが相手だとすると、「あなたはすばらしいキャリアを歩んでいて、EY や AWS などに勤めてきましたが、どのようにして今の地位にたどり着いたのですか?」というようにたずねます。 誰と話しても、上位 2 つの回答は次のようなものです。「どのようにして今の地位にたどり着いたか、ですか? Kraemer さん、1 つは、私がとても一生懸命働いた、ということです。そして、2 つ目は、私が特定のスキルセットを持っているということです。一生懸命働くことと、スキルセットを組み合わせることによって、今の地位にたどり着いたのです」。

しかし、これは私には当てはまりません。私は内省的です。あなたから、「Kraemer さん、あなたはどのようにして今の地位にたどり着いたのですか?」とたずねられたら、 私は次のように答えるでしょう。「5 つ挙げましょう。1 つ目は運です」。 運について少し考えてみましょう。私はかなり幸運でした。「2 つ目は、タイミングです。私は、適切なタイミングで、適切な場所にいました」。

運、タイミング、チーム。これらについてはたくさん話してきましたね。適切なチームが必要です。4 つ目はメンター、スポンサーです。私には、Don Jacobs 氏や Graham 氏などの人々がいました。これらの人々がいなかったら、私がこれらの仕事に就くことはなかったでしょう。運、タイミング、チーム、メンターと、これまで 4 つを挙げました。5 つ目は、もう少し個人的なことですが、信仰、宗教的見解です。私の場合、これらの才能は天からの贈り物です。私が成し遂げたことではありません。運、タイミング、チーム、メンターなど、これらのいずれかがうまく働いたら、それが自分の力ではないことに気づきはじめます。

一人ひとりが大切なのです。Taylor さん、私が「真の謙虚さ」と言うのは、謙虚なふりはできても、実際には謙虚さがまったくない多くの人を目にするからです。謙虚さがあるように振る舞ってもすぐにバレます。間抜けに見えます。そして、そのように考える能力や、行うあらゆることは...Taylor さん、少し面白いことをお話ししましょう。先日の夜に授業がありました。100 人の生徒がいて、あなたは手を挙げる必要はありませんが、私は 100 人の生徒に次のようにたずねました。

「皆さんの中で、バリューベースのリーダーに本当になりたい人はどのくらいいますか?」。 生徒たちは手を挙げました。「皆さんの中で、本当に人とうまく関係を築けると思っている人はどのくらいいますか?」。 また、生徒たちは手を挙げました。私は言いました。「次は手を挙げないでくださいよ。誰にも恥をかいてもらいたくはありませんから。皆さんの中で、建物に入るとき、受付係に挨拶して、どのような 1 日を過ごしているのかをたずねる人はどのくらいいますか? カフェテリアにいるとき、カフェテリアで働いている人々の名前や、その人たちの好きなスポーツチームを知っている人はどのくらいいますか? 夜遅く、時には仕事が遅くなり、清掃員が来たとき、手を止めてゴミ箱を空にし、これらの人々がしてくれていることについての感謝を伝え、どうせ使わないスポーツイベントのチケットをあげる人はどのくらいいるでしょうか?」。

そして、私が時々ゴミ箱を空にするのが好きな理由を学生たちに話します…別にいい人ぶっているわけではなく、実際にはかなり利己的です。なぜなら、私がゴミ箱を空にするのは、自分が何を事実として知っているのかに気づく瞬間を与えてくれるからなのです。 運、タイミング、チーム、メンター、そして天の助けがなかったとしたら、私は清掃員だったかもしれません。自分の出発点を決して忘れてはならないのです。それはウィンウィンの関係です。それは正しい価値観に基づく行動であり、チームを作りたいならまさになすべきことなのです。人々を気遣えば、それらの人々はあなたのために何でもしてくれるでしょう。

Richard Taylor:
なるほど。すばらしいですね。では、それを踏まえて、大規模な組織で、バリューベースの観点からリーダーシップにアプローチする場合、リーダーはどのようにして組織全体でバリューベースの文化を育むことができるのでしょうか?

Harry Kraemer 氏:
なるほど。私の意見では、それはリーダーであるあなたから始まります。あなたが示す模範から始まるのです。人々の話に耳を傾け、わからないことを認め、考えを変える覚悟があり、真剣に話を聞いて意見を変える覚悟があり、一人ひとりを十分に気遣っていることを示すことができれば、私の考えでは、あなたの模範はすばらしい基準となります。これが 1 つです。そして 2 つ目です。あなたは明確な模範を示しましたね。さらに進んで、あなたは明確な期待事項を設定し、それを伝達して、人々に責任を負わせ、結果に応じた対応を取ります。

つまり、あなたが設定した規範とあなたが設定した期待事項が重要なのです。そして、一貫している必要があります。ところで、人々は「なぜそれが価値なのですか?」とたずねます。 それが「価値」であるなら、2 つのことが当てはまります。あなたは決して妥協しないということ、そして、交渉しないということです。妥協したり、交渉したりする気があるなら、それは「好み」ではあるかもしれませんが、「価値」にはなり得ないと思います。

Richard Taylor:
それを価値として忠実に守っていないからですね。バリューベースのリーダーシップや、そのような特性を備えた組織は、イノベーションとリスクテイクにおいてどのような影響をもたらすのでしょうか?

Harry Kraemer 氏:
大きな影響をもたらすと思います。なぜなら、私がそれを実施し、組織を運営していて、従業員が「Kraemer さんはあなたを大事に思っている」、「Kraemer さんは私たちがリスクを取るのを恐れないことを知っている」、「Kraemer さんは、私たちが時々失敗するが、早い段階で失敗して、そこから多くのことを学ぶことを知っている」というメッセージを発しており、さらに私が、自分の可能性を最大限に発揮し、既成概念にとらわれずに考え、AWS が常に行っているのとまったく同じように何か新しいことを思いつくことを奨励していれば、従業員は挑戦できるからです。あなたが従業員を信頼し、従業員に共感し、好奇心を持ち、全員が一丸となり、階層構造を考えるのではなく、できるだけ多くの従業員と会うことで、それらの従業員は才能を発揮できるのです。

Richard Taylor:
少し話題を変えましょう。教授としての立場のあなたについてお伺いします。多くの人があなたと話したがるテーマはどのようなものですか?

Harry Kraemer 氏:
Taylor さん、本当にたくさんあります。あなたが既に取り上げたテーマのいくつかも含まれています。「どうすればより優れたリーダーになれるのか?」、 「それはどのようなものなのか?」、 「組織内の人材をどのように育成すればよいのか?」などです。 また、コロナ禍以降の私の講演では、バリューベースの人生を送るにはどうしたらよいのかについて、とても頻繁に議論しています。 なぜなら、Taylor さん、私には多くの組織と話す機会があり、そこではワークライフバランスについて話すことになります。私はいつもこれらの組織をからかって、「ワークライフバランスというのは、仕事をしているか、生活しているかのどちらかしかないみたいですね。私たちの何人かは仕事をしていますが、それは生活しているのではない、ということになりますね」と言います。そして、私はこう言うのです。「それは『ライフバランス』でなければならないのです」と。そして私たちは、それが本当に意味することについて、多くの講演を行います。 つまり、キャリア、家族、健康、精神性、キャリアで違いを生み出したいという願望のバランスをどのように取るのか、 それらすべてをどのように行うのか、ということです。

Richard Taylor:
あなたは、高く評価されているビジネスリーダーであり、教授であり、出版著書がある作家でもありますね。「成功」をどのようなものだとお考えでしょうか?

Harry Kraemer 氏:
私は「成功」という言葉よりも、「意義」という言葉を使いたいです。私はどのような模範を示しているのか? 人々の価値観やリーダーシップ、そして、それらの人々が及ぼしている影響に何らかの影響を及ぼす自分の価値観をどれほど多くの人と共有できているか? 私は物質的なものに対する関心はあまりありません。なぜなら、既にあなたとお話ししたように、過去に経験したリトリートから、私は自分がこの世にいるのはほんの一瞬であることを認識しているからです。そして、人生の現実は、多くの人々が物質的なものを集めることに夢中になっていますが、この世からいなくなるときにはそれらを持っていくことができないということです。これらの人々が、そのようなすべてのものをどうしているのか私にはわかりません。これらのことから、「成功」という言葉を聞くたびに、私は「意義」について考えるのです。

Richard Taylor:
なるほど。「変化は不変である」という古い決まり文句は、まさに今、現実になっていますよね。テクノロジー、生成 AI など、何であれ、変化は指数関数的に急速に進んでいるように感じます。リーダーシップはそのような変化とともに変わっていくでしょうか? 将来のリーダーシップについてどのようにお考えですか?

Harry Kraemer 氏:
私は、リーダーシップは主要な部分では変化しないと考えています。しかし、あなたの仰るとおり、変化のレベルが大きくなるにつれて、必要なのは、より多くのコミュニケーション、人間中心の姿勢をより重視すること、そして、不確実性を軽減する方法を見つけるために常に考え抜く能力だと思います。 このように考えてください。あなたが私の部下で、これから組織にある程度の変化が起きるとします。そして、私はあなたに、その変化の一部になってほしいとお願いします。私がただそれだけしか言わなければ、個人としてあなたは不安になりますよね。「家族に影響はあるのか?」、 「転勤しなければならないのか?」、 「仕事はどうなるのか?」、 「上司は変わるのか?」など、いろいろ考えるでしょう。

しかし、私たちが、「Taylor さん、今回の変化による影響はこのようなもので、このような理由から、これには対処可能なのです」と説明できれば、 あなたは、「なるほど。不確実性は減ったな。その変化に対処できるだろう」と考えることができます。 変化のスピードは本当にすごいです。今ここでセミナーを聴いているだけでもそれを実感できます。本当に信じられないほどのスピードです。しかし、オープンな姿勢を維持し、人とつながり、想定される影響や、仕事で AI がどのように役立つのかを理解できるようにサポートして、仕事を奪うものとして AI をとらえることのないようにすることで、変化は前向きなものとなるでしょう。 そのような継続的なコミュニケーションが信じられないほど重要になると思います。

Richard Taylor:
それは依然として、バリューベースのリーダーシップの柱の中に位置づけられるということですね。

Harry Kraemer 氏:
そのとおりです。

Richard Taylor:
その点では、あまり変化はないのですね。現時点において、AI はリーダーシップの領域で何らかの役割を果たしているとお考えですか?

Harry Kraemer 氏:
実際のところ、AI は 4 つの原則のすべてで役に立つと思います。どういうことかと言うと...あまり内省しない人が多いのはなぜでしょうか? これらの人々には時間がないのです。しかし、ここに来る前に聞こえたセミナーでも言ってましたが、AI はその時間を短縮してくれるのです。そうすると、どうなると思いますか? 私なら、さらに活動するのではなく、その時間の一部を内省に割り当てたり、3 日間のリトリートに行ったりするでしょう。このように、AI は適切に使用すれば助けになるのです。バランスの問題についてはどうでしょうか? 複数の視点を持っている人はあまり多くありません。しかし、AI を活用すれば、あなたとお話ししたことにもつながりますが、「これはこういう理由で理にかなっている」、「これはこういう理由で理にかなっていない」とすぐに判断するのに役立ちます。AI は私の役に立ち続けています。

Richard Taylor:
すばらしいお話でした。あなたはちょうど 4 冊目の本を出版したばかりですね。

Harry Kraemer 氏:
なるほど。

Richard Taylor:
おめでとうございます。

Harry Kraemer 氏:
心から感謝します。

Richard Taylor:
読者にどのようなことを感じてもらいたいですか?

Harry Kraemer 氏:
レガシーとは本当は何を意味するのかについての考えを理解してもらいたいです。 それは必ずしもお金や財団の設立を意味しません。レガシーとは、日々の生活において、自分自身で、家族、子ども、組織に、どのように影響をもたらすことができるのか、そして、自分の人生を超えて何かが残るようにするために何ができるのか、ということなのです。

Richard Taylor:
リーダーシップの地位に就くことを考えている人が身につけるべき日常の習慣を 1 つ教えていただけますか?

Harry Kraemer 氏:
Taylor さん、何よりも重要なのは、私が「少しの内省」と呼んでいるものに尽きると思います。ご存知のとおり、どのようなリーダーもやるべきことがたくさんあります。休みなく、とにかく走り続け、やるべきことはさらに増え、より多くの時間が必要になり、スピードも増していきます。そのような中で、私はすべてのリーダーが、ほんのわずかな時間でもよいので、内省する時間を持つべきだと心から信じています。つまり、 デバイスをオフにして、一人きりになり、自分自身に一連の質問をするのです。そのように物事を考えることで、はるかに優れたリーダーになることができるでしょう。

Richard Taylor:
Harry Kraemer さん、お話を伺うことができて、光栄でした。本日は本当にありがとうございました。

Harry Kraemer 氏:
とても楽しい時間でしたよ、Taylor さん。

Richard Taylor:
心から感謝します。

Harry Kraemer 氏:

「あなたがリーダーになったその瞬間から、たとえ部下が 5 人しかいない初級マネージャーであっても、もはや自分だけの問題ではなくなります。いかにしてその 5 人の部下の可能性を最大限に引き出せるのか、ということが重要になるのです」

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