AWS Startup ブログ

Amazon S3 の費用が 3 分の 1 に。ユニファ社が Glacier Instant Retrieval で実現したコスト削減

「家族の幸せを生み出す あたらしい社会インフラを 世界中で創り出す」というパーパス(存在意義)を掲げ、保育現場の課題解決やさらなる女性活躍の推進のため、保育・子育てにおける様々な社会課題をDXを通じて解決を目指すユニファ株式会社。AI や IoT などの最新のテクノロジーを活用した保育施設向け総合 ICT・研修サービス「ルクミー®」や次世代型保育施設の「スマート保育園®・スマート幼稚園®・スマートこども園®」構想を展開しています。

同社が提供する「ルクミー」のサービスのなかに、保育園・幼稚園・こども園などに向けたインターネット写真販売システム「ルクミーフォト」があります。このサービスでは画像ファイルを保存するために Amazon S3 を活用しているのですが、写真の点数やファイルサイズが非常に大きいため、Amazon S3 にかかるコストが高いという課題がありました。その解決のために、アーカイブ向けのストレージクラス Amazon S3 Glacier Instant Retrieval* を導入したのです。

今回はアマゾン ウェブ サービス ジャパン スタートアップ事業本部 アカウントマネージャーの桑原 弘二とスタートアップソリューションアーキテクトの野口 真吾が、ユニファ社 取締役 CTO の赤沼 寛明 氏にお話を伺いました。

*…Amazon S3 Glacier Instant Retrieval は、アクセスされることがほとんどないが長期間保存しておくべきデータ用に、最低コストのストレージを提供する新しいアーカイブストレージクラスです。Amazon S3 Glacier Instant Retrieval を使用すると、四半期に一度データにアクセスする場合、S3 標準 – 低頻度アクセスストレージクラスを使用する場合と比較して、ストレージコストを最大 68% 節約できます。Amazon S3 Glacier Instant Retrieval は、S3 標準 および S3 標準 – IA ストレージクラスと同じスループットとミリ秒でのアクセスによる、アーカイブストレージへの最速のアクセスを提供します。

保育の領域を支えるトータルソリューションを提供

桑原:ユニファ社は以前、AWS Startup ブログの他の記事でもご登場いただいています。その際に事業概要をご説明いただきましたが、今回はその内容からのアップデートをお話しください。

赤沼:事業の内容や方向性は、前回お話ししたところから大きく変わっていません。テクノロジーの力を活用して世界中の家族のコミュニケーションを豊かにするため、私たちは保育、子育て分野の課題解決にフォーカスしています。

現代では核家族化や女性の就業率の向上などにより、乳幼児がいる家庭にとって保育園や幼稚園など保育施設の果たす役割がとても大きいです。そういった施設における保育業務をテクノロジーによってサポートし、保育者の時間と心のゆとりを確保することで、保育の質の向上に貢献することを目指しています。

サービスのアップデートとしては、2021 年 7 月に「ルクミー」をリニューアルしました。それまでは、乳幼児の午睡(お昼寝)を見守る医療機器サービス「ルクミー午睡チェック」や子どもの写真・動画をオンライン購入できるサービス「ルクミーフォト」などを個別のサービスとして提供していました。それを、現在14 種類のサービスを内包する「ルクミー」というトータルソリューションとして提供する形態にしたのです。

各サービスのデータ連携を強化することで、保育関連業務の DX(デジタルトランスフォーメーション)を加速させ、保育者の業務負担の削減と保育の質の向上を目指しています。

また、2022 年には保育施設と保護者、保育者、行政をつなぐ新しいサービス「ルクミー 園探し」や保育施設のキャッシュレス促進サービス「ルクミー園モール」も提供開始しています。「スマート保育園・幼稚園・こども園」構想の実現に向けて、サービスの提供範囲を拡大しています。

桑原:赤沼さんは CTO として、どのような業務を担われていますか。

赤沼:私は現在、プロダクト開発には直接関与しておらず、コードを書いたりプロダクトマネジメントをしたりといった業務を開発チームのメンバーに任せています。私は CTO として、弊社が提供するプロダクトやシステムの責任を負っているのと、エンジニアやプロダクトマネージャー、デザイナー、QA 担当者といった開発メンバーが所属するチームをマネジメントするのが主な役割です。

たとえば、組織の改善や開発効率の向上、チームの課題解決、採用、技術ブランディングなどを担っています。とりわけ、昨今では開発メンバーの採用は難易度が高くなっているため、かなりの工数を採用に割いています。また、企業の経営陣のひとりとして、経営に関わる意思決定や予算の管理などもしています。

ユニファ株式会社 取締役 CTO 赤沼 寛明 氏

コスト削減のため Amazon S3 Glacier Instant Retrieval を導入

桑原:今回のインタビューでは Amazon S3 Glacier Instant Retrieval の導入経緯をお話しいただきます。

赤沼:対象となったサービスは、先ほども少し触れた「ルクミーフォト」です。これまでシステムを導入していない保育施設がご家庭に向けて写真を販売する場合、施設の壁一面に写真を貼り出して、それを保護者の方々が閲覧し、現金を手渡しして購入するというアナログでとても手間がかかる作業が発生していました。「ルクミーフォト」を導入すれば、写真の閲覧や注文、決済などをオンライン上で完結し、保育者や保護者の負担を大きく軽減できます。

このサービスでは、保育者やフォトグラファーの方々が撮影した大量の写真データを Amazon S3 に格納しています。また、「ルクミーフォト」はユニファが最初に提供開始したサービスでもあることから、かなりのデータが貯まっています。そのため、Amazon S3 のコストが大きくなっていました。

野口:その改善策として、AWS 側からコスト削減のための方法をいくつかご提案させていただきましたね。Amazon S3 へのアクセス状況の分析や不要なファイルの削除、Amazon S3 のストレージクラスの変更といった施策を、並行で進めていきました。

ファイル削除の施策はもちろん効果的ですが、実現するにはアプリケーション側のコードの変更が必要になります。一方でストレージクラスの変更ならば、コードの修正なしに Amazon S3 の設定を変えるだけで実現できることも利点でした。

赤沼:この際に、アーカイブ向けのストレージクラス Amazon S3 Glacier Instant Retrieval をご提案いただきました。「ルクミーフォト」はもともと Amazon S3 のバケットを 2 種類使用しており、そのうち片方のバケットは、ライフサイクルの設定によって一定期間が経過するとストレージクラスが Standard から Standard-IA へと移行するようになっていました。これを Glacier Instant Retrieval へ移行するように、段階的に変更していったのです。

Amazon S3 Glacier Instant Retrieval 導入の効果は相当に高く、先ほどのファイル削除などの施策と合わせると、最終的に全サービス合計で Amazon S3 にかかる金額が改善前と比較して 3 分の 1 ほどになりました。

写真左から、アマゾン ウェブ サービス ジャパン スタートアップ事業本部 スタートアップソリューションアーキテクト 野口 真吾、アカウントマネージャー 桑原 弘二

AWS の支援がアーキテクチャ改善に寄与

桑原:AWS による支援が、アーキテクチャ改善や新技術の導入にどれくらいプラスに働いていると思われますか。

赤沼:かなりプラスになっています。今回の Amazon S3 Glacier Instant Retrieval に関しても、私はもともとその存在を知らず、教えてもらわなければ今回の施策を実現できませんでした。他にも、普段から私たちの質問に対して丁寧に回答をいただけるので、助かっています。

AWS の支援の良い点として、AWS 側が利益を上げることよりも、私たちの事業が成長することを最優先に考えてくれることが挙げられます。今回の事例のようなコスト削減の提案というのは、AWS 側からすると売り上げが下がる施策です。そうした提案であっても AWS の側から積極的にしていただけることが、素晴らしいと感じました。

桑原:ありがとうございます。Amazon には「短期的な利益を追うのではなく、顧客にとって本当にプラスになるサービスを提供する」というカルチャーがあります。だからこそ、お客さまと長期的にお付き合いできる関係性を構築することを、私たちは大切にしています。

野口:今後、サービスやアーキテクチャなどをどのように改善したいですか。

赤沼:初期の頃に構築したサービスは、開発・運用が長く続いているため技術的負債もそれなりに蓄積しており、それらを徐々に改善していきたいです。また、新しく登場した AWS のサービスや新機能なども、積極的に取り入れたいと考えています。そして、サービス全体としての横断的な改善、たとえばモニタリングやセキュリティの強化、コスト削減などにも挑戦していきます。

開発組織全体としては、さらにユーザーの理解を深めて要望に合った機能を作り、事業成長に貢献できるプロダクトにしていきたいです。そのためにも、プロダクトのリリースまでのリードタイムを短くすることや、開発効率を向上させるための取り組みが必要だと考えています。保育の質の向上に、これからもテクノロジーで貢献していきます。

桑原:さらなる事業成長が楽しみです。どうもありがとうございました。


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