Amazon Web Services ブログ
【開催報告&資料公開】SmartFactory 最前線! クラウドが促進する工場データ活用 2022 Spring
こんにちは!アマゾンウェブサービスジャパン合同会社 ソリューションアーキテクトの吉川です。2022年4月7日にオンラインで「SmartFactory最前線! クラウドが促進する工場データ活用 2022 Spring」を開催いたしました。セミナーの開催報告として、ご紹介した内容や、当日の資料・収録動画などを公開いたします。
はじめに
【資料ダウンロードはこちら】SmartFactory 最前線! クラウドが促進する工場データ活用 2022 Spring オープニング・セッション
【資料ダウンロードはこちら】クロージング・セッション「Smart Factoryの第一歩を踏み出すためには」
技術革新と社会環境の急激な変化により、多くの企業でデジタルトランスフォーメーションへの取り組みが加速しています。製造業でも「Smart Factory」として生産現場へのIT技術の導入・高度化が話題です。しかし、現場ではなかなか技術的・組織的にハードルを感じ、ITを活用できていないことも多いのではないでしょうか。
AWSは200以上の様々なサービスがあり、工場内のデータをクラウドへ連携させることで、迅速に製造現場のデータを活用することができます。そして、AWSは現場の方々がお持ちのカイゼンシナリオをヒアリングし、適切な”データ活用の部品”を紹介したり、アーキテクチャーを提示させていただきながら、Smart Factoryの取り組みを支援させていただいております。そんな中、多くのお客様でSmart Factoryの事例が出てきております。
このセミナーでは、AWSを活用してSmart Factory、工場データ活用を取り組まれた国内のお客様事例を中心にご紹介し、合わせて工場のデータ活用を促進する最新のAWSサービスのご紹介もさせていただきました。
製造業で利用できるAWSサービスのご紹介/Update
【資料ダウンロードはこちら】製造業で利用できるAWSサービスのご紹介/Update
登壇者:AWS Japan 技術統括本部 シニアソリューションアーキテクト 鈴木 健吾
AWS は日本の製造業のお客様がAWSを使用することで、設計の加速、オペレーションの最適化、サプライチェーンの再構築、ビジネスの変革を実現できるよう、様々な事例とソリューションをまとめたポータルサイト「AWS for industrial」を提供しています。このセッションでは200以上あるAWSのサービスの中から、Smart Factoryでご利用いただける最新サービスアップデートとして、以下の4つのサービスをご紹介しました。
Amazon Lookout for Vision はコンピュータービジョンを使用し視覚表現の欠陥や異常の発見を実現するAIサービスです。機械学習の知識不要で、わずか数十枚の正常画像と異常画像から外観検査用の画像推論モデルを構築・運用することができます。
Amazon QLDB はすべての変更の履歴を追跡および検証可能な台帳データベースサービスです。Amazon QLDBを用いることで改ざんが非常に困難な記録を保管することができます。 AWSは産業における品質データの改ざん防止のためにAmazon QLDBを用いたソリューション実装を公開しています。
AWS IoT TwinMaker はAWS上のデータをつなぎデジタルツイン環境を構築・運用するサービスです。2022年4月21日に6つのリージョンで一般提供開始されました。操作可能な3Dモデルに現実世界のセンサーデータ、カメラ画像、ドキュメントなどを紐付け、Grafanaなどの可視化アプリケーション上にデジタルツインを構築することができます。
AWS IoT RoboRunner は異なるベンダーのロボットを協調制御するアプリケーションを開発するためのサービスで、こちらも2022年4月時点でパブリックプレビュー中です。AWS IoT RoboRunner は設備、ロケーション、タスクなどを管理する一元化されたレジストリと、タスクを分解しロボット群へ指示を送るためのSDKやサンプルプログラムを提供します。これにより、ロボットメーカーを横断した工場内の協調制御が可能になります。
このセッションでご紹介したサービスのさらに詳しい解説は2022年5月25日(水)、26日(木)に開催される日本最大のAWSを学ぶイベント「AWS Summit Online」のセッションでご覧いただけます。
牧野フライス製作所様「キャリア5G×AWS Wavelength×iAssistで工場にサーバレスで製造の自動化を実現」
【資料ダウンロードはこちら】牧野フライス製作所様「キャリア5G×AWS Wavelength×iAssistで工場にサーバレスで製造の自動化を実現」
登壇者:株式会社 牧野フライス製作所
CIO 中野 義友 様
S.I.T.本部 ゼネラルマネージャ 河野 将行 様
情報システム部 スペシャリスト 志津里 淳 様
S.I.T.本部 児玉 匠 様
工作機械のグローバルメーカーである牧野フライス製作所様は2021年12月10日に厚木自社工場で、製造支援モバイルロボットiAssistによる自働化システムをKDDI社のキャリア5GとAWS Wavelengthを利用し本番稼働を開始しました。本セッションではその導入経緯、仕組みの優位性、ユースケースについてご紹介いただきました。
中野CIO様は冒頭「競争に直結しないIT/デジタル活用施策の良い情報はみんなで共有し日本の製造業で一丸となって世界と戦いましょう!!」と力強いメッセージを送り、自社工場における製造支援モバイルロボットiAssistの制御システムをキャリア5GとAWS Wavelengthを用いてわずか半年で本番稼働させたことを発表しました。従来、iAssistは工場内を無線LAN(Wi-Fi)で制御していましたが、電波干渉と無線基地局をまたぐ際のハンドオーバーに課題があったそうです。そこで5Gの検討したところ、「ローカル5G」に比べ、「キャリア5G + AWS Wavelength」にはコスト面、運用面等で様々なメリットがあると確定し採用に至ったそうです。理由の詳細、システム構築におけるAWS Wavelength技術の特徴、具体的ユースケースなど様々なノウハウをセッションで公開いただきました。
日立Astemo様「製造データの民主化実現へ!グローバル140拠点展開の新提案」
【資料ダウンロードはこちら】日立Astemo様「製造データの民主化実現へ!グローバル140拠点展開の新提案」
登壇者:日立Astemo株式会社 情報システム統括本部 IoT推進部 橋本 敬宏 様
自動車部品サプライヤーである日立Astemo様からは、グローバルにある約140の拠点に展開しているSmart Factoryの取り組みとその展開戦略について紹介をして頂きました。グローバルからの製造データを同じデータは同じ粒度とフォーマットでIoT Data Platformに集約し、グローバル全体の製造データを誰でもすぐに把握できるようにするプロジェクトを進めて頂いています。しかしながら、拠点ごとに異なる文化・地域性・製品・ラインといった様々な違いがあるなかで進めていくには、標準化と多様性を共存させることが重要であると説明を頂きました。
拠点への展開については、導入に関するアンケートを取って展開のモチベーションが高い拠点から導入を進めていくとのことです。こうした拠点では既に担当者がいるためプロジェクト側との協力体制を取ることができるので、展開の初期段階で導入方法や手順などのノウハウが蓄積することができるのがメリットです。また、導入した拠点で効果が明確になっていくことで、後続する拠点のモチベーションも高めて展開いくことができるそうです。
更に拠点ごとに導入をサポートするのは最初のラインだけで、2つ目以降のラインは拠点側のメンバーだけで進めて頂くことでスピーディーな展開を実現されました。このため、プロジェクト側ではAWSの利用方法や展開方法に関する自主学習のための動画を60本以上共有して、いつでも学習できる環境を提供されています。
実現においては、AWSのマネージド・サービスを利用することで、プログラミングやITなどの高度なスキルがなくても展開が可能になりました。実際にある拠点では最初のラインへの導入から2ヶ月で2つ目のラインに横展開できたとのことでした。
旭化成様「製造IoTプラットフォーム構築による全体最適の実現 ~全工場横断のデータ活用推進~」
【資料ダウンロードはこちら】旭化成様「製造IoTプラットフォーム構築による全体最適の実現 ~全工場横断のデータ活用推進~」
登壇者:旭化成株式会社
デジタル共創本部 スマートファクトリー推進センター IoT推進部 横谷 知昂 様
デジタル共創本部 スマートファクトリー推進センター プラットフォーム技術部 光成 浩一 様
総合化学メーカーである旭化成様はマテリアル領域、住宅領域、ヘルスケア領域で様々な商品を開発・製造されています。本セッションでは旭化成様がAWSを活用した「製造IoTプラットフォーム(IPF)」を立ち上げ、製造現場の課題を解決し、技術革新のスピードを向上させた取り組みを発表いただきました。IPF基盤はデータ活用に必要な「分析基盤(統計解析などアドホックにデータ分析を行う基盤)」と「フィールド基盤(データを現場でリアルタイムに運用する基盤)」を持ちます。AWSを採用した理由は、初期コストを抑えつつすぐに環境を提供できること、また旭化成グループとしてクラウド利用を推進していたこと、AWSには導入実績や開発情報が多かったことを挙げられています。
IPFは2021年4月より5つのモデル工場で運用を開始、現在は10工場以上が利用しています。活用事例としては押出機の原料つまりの予兆検知があります。製造工程内でのトラブル発生確率をモデル化し、センサ信号を診断する仕組みをつくる事で、撹拌機の異常の予兆を検知できるようになったそうです。
今後もAWS活用したIPF基盤のサービスを追加拡充させ、継続的な改善活動に取り組まれるとのことです。
新東工業株式会社「生産設備の安定稼働実現に向けた設備DX化の取り組み」
【資料ダウンロードはこちら】新東工業株式会社「生産設備の安定稼働実現に向けた設備DX化の取り組み」
登壇者:新東工業株式会社 参与 IoT事業推進部 部長 赤塚成啓 様
新東工業様は鋳造事業をはじめ世界17カ国へ拠点をもつグローバルカンパニーです。素形材産業ものづくりの現場ではまだIoT化/DX化が遅れている現場が多い業界ですが、その中で、新東工業様は生産現場や管理者から寄せられた課題をAWSクラウドを活用することで、解決・改善してこられました。
実現に向けては現場のPLC/センサーをIoTデータコレクタで収集しクラウドへ蓄積・分析するIoTプラットフォームと、目的別の可視化アプリケーションを開発されました。例えば、「チョコ停(断続的なライン停止)が多く生産が低下している」課題には「稼働率表示、稼働グラフなどの見える化アプリを導入し異常の傾向を掴んで事前対処や作業手順改善」を行い、従来「製品不良とか好条件の因果関係がわからない」課題に対しては「PLCにデータコレクタを追加し現場で把握しにくい情報を定量的に監視・管理することで改善」できたのだそうです。
こうした取り組みはエンドユーザー様からも「是非同じしくみを導入したい」とお声がかかり、「設備稼働モニタ」の商品化にいたったとのことです。
終わりに
本セミナーでは、様々な産業のデジタル化を進めるに当たってのトレンドや、先進的な取り組みをご紹介いただきました。AWSでは、公共、建築不動産、自動車 、製造といったさまざまな業界のお客さまの声に耳を傾け、ビジネス変革に役立つクラウド活用の情報発信や、事例紹介、セミナー等の企画を行ってまいります。
本ブログは、ソリューションアーキテクトの吉川 晃平、塚井 知之 が執筆しました。