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クラウドマイグレーションに適したディスカバリーツールの選定方法

クラウドマイグレーションには、ビジネス・技術チーム、パートナー及び関連会社等の複数の関係者間で調整が必要です。お客様自身のポートフォリオを利害関係者として理解することは、相互依存関係や要件及び、どのワークロードを移行するのか決定する際に重要です。しかし、手作業でそれらの洞察を得ることは手間がかかる作業です。そこで、ディスカバリーツールをプロビジョニングすることで、意思決定のための情報を得ることができます。

しかしながら、多様な選択肢が存在する場合、お客様のユースケースに適したディスカバリーツールの選択は困難な場合があります。このブログでは、お客様のビジネス要件に基づいて、適切なディスカバリーツールを抽出し、優先順位付けを行うための実証された 3 ステップのテクニックを解説していきます。

ディスカバリーツールを決定するための手順

ステップ 1: レビュー

マイグレーションで達成すべき成果のレビューを行います。 これは、ディスカバリーの要件と必要な機能の基準値となり、構成管理データベース ( Configuration Management Databases : CMDBs ) や アプリケーションパフォーマンス管理 ( Application Performance Management : APM ) ツール等のお客様の組織内の既存ツールと機能の基準値を比較します。レビューステップが完了する頃には、社内ツールがお客様毎の目的を満たせるかどうか確定しているはずです。また、お客様のマイグレーション分析に役立つ質問リストが記載されているドキュメントもぜひ参照ください。

概念設計といった上流工程時の検討根拠等のデータや、詳細設計時では完全なデータなど、移行プロセスのステージによって異なるデータセットが必要になる場合があります。また、AWS Migration Acceleration Program ( MAP ) のように、ベネフィットプログラムの条件に合致しているか確認するためにマイグレーション費用を調査中かもしれません。このような場合、お客様はサーバーリストや、サーバー毎に投入されている設定、適用済みのライセンス情報が含まれたオンプレミス環境のスナップショットが必要になるでしょう。また、オンプレミスのインフラストラクチャとクラウド上の伸縮自在なデプロイメントモデルの間で総所有コスト (TCO : Total Cost of Ownership ) を評価することもあるでしょう。適切なサイズのクラウドインフラストラクチャのコスト見積もりが必要な場合、一連のビジネスサイクルの期間中にディスカバリーツールを実行する必要があります。

最後にアプリケーションをいつ、どのように移行するのかを決定するために、移行するアプリケーションとデータベースの機能が正確に網羅されたデータセットが必要となります。このデータセットには、ネットワークの依存関係、非機能要件、災害復旧 (DR) 計画、サードパーティのライセンス条件等が含まれている必要がありあます。

このステップの最後に、ディスカバリーツールに必要な機能を基準値として定義します。

ステップ 2: リファイン(洗練)

このステップは消去法で検討を進めていきます。候補となるディスカバリーツールのリスト化を進める際に使用可能なリソースの1つとして、移行ツールの発見、比較について触れているドキュメントがあります。また、リスト化されたツールに対して、以下の基準となるカテゴリーを用いてリストをフィルタリングやソート可能です。

  1. コア機能
  2. 一般的な機能
  3. 特殊な機能
  4. ツールのプロビジョニング方法
  5. 運用

このステップが終了する頃には、お客様の要件に適合し優先順位付けされたリストが出来上がっているはずです。

コア機能

次に挙げるものはディスカバリーツールに期待される基本的な機能セットです。これらの機能によって取得されたデータの分析により、ハイレベルなビジネスケースをサポートします。

  • インベントリ収集の自動化 CPUファミリー、CPUコア、メモリサイズ、ディスクサイズ・スピード、OS 等のインフラストラクチャプロファイルをレポートします。
  • 使用率 CPU、メモリ、ディスクのピーク値及び平均使用率を表示します。
  • ネットワークストレージの検出 ネットワーク接続型ストレージ ( NAS ) からのネットワーク共有を検出し、プロファイルを作成します。
  • ソフトウェア 実行中のプロセスとインストール済みのソフトウェアや、データベースエンジンを特定しそのバージョンを特定します。
  • ネットワークスキャン ネットワークサブネットをスキャンし、把握されていないインフラストラクチャ資産を検出します。

一般的な機能

ディスカバリーツールの一般的な機能を次に示します。このデータを使用することで、より詳細な TCO 分析と移行計画を作成できます。

  • リフトアンドシフトのコスト試算 移行元のインフラストラクチャとリホストのターゲットとして推奨される AWS インフラストラクチャをマッピングし、 AWS のコストを算出します。
  • ターゲットサイジングレコメンデーション ピーク値及び平均利用率に基づき、代替のターゲットとなる AWS インフラストラクチャのコストをマッピングし、計算します。
  • TCO 分析 現在のオンプレミスのコストと予測された AWS コスト比較を提供します。
  • 依存関係のマッピング ネットワークの接続情報を収集し、サーバーと実行中のアプリケーションのインバイト・アウトバウント通信の依存関係マップを作成します。
  • アプリケーションの優先順位付け アプリケーションとインフラストラクチャの属性に重み付けや関連性を割り当て、マイグレーションの優先順位付けの際の基準を作成します。
  • ウェーブプランニング アプリケーションをグルーピングする際のレコメンドと移行のウェーブプランを作成する機能を提供します。

ウェーブで定義する内容についてはこちらのドキュメントを参照ください。

特殊な機能

特殊機能は、あまり一般的ではない要件や、お客様が移行を検討しているワークロードの固有要件に対応するものです。例えば、データベースがお客様のワークロードにおける重要な部分を占めている場合、データベースの依存関係情報を収集する必要があるかもしれません。また、HIPPA 、GDPR の様な厳格な規制要件に従う必要がある場合、規制に準拠したツールが必要となります。その他の例として、以下のようなものが挙げられます。

  • ライセンス分析 リホスト及びリプラットフォームのシナリオにおいて、Microsoft SQL Server 及び Oracle システムの最適化に関する推奨事項を提示します。
  • エンタープライズプラットフォーム AIX や Solaris 等のプロプライエタリな OS または、 AS/400 やメインフレーム等のインフラストラクチャから詳細情報を収集する機能が含まれます。

各機能を評価する際には、お客様の環境のどの部分に適用されるのか、全体的な目的においてどの程度重要なのかを検討します。特定の機能を提供しないツールであっても完全に排除するのではなく、優先順位を下げることは良い取り組みです。

プロビジョニング

最小要件、一般的な要件、特殊な機能要件を確認した後、各ツールのプロビジョニングプロセスに関連する課題を評価し、ツールリストをさらに絞り込んでいきます。例えば、データの保持期間やコストモデル等の観点で検討します。プロビジョニング基準の詳細なリストについては、ドキュメントを参照ください。

運用

最後に、ツール運用に必要となる要件を評価し、ツールのリストをさらに絞り込みます。この時の考慮事項には、ランニングコストやサポートモデルも含まれます。

ステップ 3: 選択

この段階では、最終的な評価候補として 1,2 個のツールだけが残っている、厳選済みのツールリストが存在しているはずです。

最終候補となったツールはお客様の全ての要件を満たしている必要があります。これらのツールの中から最もお客様の優先順位に合致したツールの選択することで、さらにツールの絞り込みが行えます。例えば、最終候補として2つのツールが残っており、インストールと操作のしやすさがお客様の最優先事項であれば、デプロイと自動化の観点が最も良いツールを選択します。また、お客様の最たる制約事項がコストである場合、最も安価に入手や運用ができるツールを選択します。

最後に

AWS および AWS パートナー はお客様のクラウドマイグレーションを加速するのに役立ちます。お客様毎に固有なユースケースに関連するディスカバリーツールを選択するためには、以下の 3 ステップのアプローチを推奨します。

  1. レビュー – 社内組織の能力、既存のツール、データソースをレビューすることから始めます。このステップの終了時までに、お客様の社内ツールがクラウドマイグレーションの目的に合致するのか確認が必要です。
  2. リファイン(洗練) – レビュー時の要件に基づいてディスカバリーツールをフィルタリングや優先順位付けによって、ディスカバリーツールの絞り込んでいきます。
  3. 選択 – お客様の優先事項に最も適したツールを選択により、最終的なディスカバリーツールのリストを絞り込みを行います。

著者について

David Ninnis

David Ninnis

David はマイグレーションとモダナイゼーションのスペシャリスト・ソリューション・アーキテクトのチームを率いるシニア・マネージャーです。25 年以上のエンタープライズ IT の経験を有しており、あらゆる組織層で変革を推進してきました。クラウドコンピューティングにおける最も複雑な課題に対する創造的なソリューションを、お客様とともに深く掘り下げて構築することに情熱を傾けています。大企業のデータセンターで、マイグレーションを終えた最後のプロセッサが入ったアクリルブロックを集めています。今、あなたのもとに…

Ashish Ameta

Ashish Ameta

Ashish は、AWS Professional Services のシニアアーキテクトです。クラウドへの移行とモダナイゼーションにおいて、スケーラブルでビジネス戦略に合致した基盤の構築を支援しています。エンタープライズアーキテクトやビジネスリーダーと協働し、人、プロセス、テクノロジーを網羅したホリスティックなクラウド移行・近代化アプローチを考案・実装しています。

Jorge Fonseca

Jorge Fonseca

Jorge は IT 業界で 20 年以上の経験を持ち、13 の AWS 認定資格、コンピュータサイエンスとエンタープライズマネジメントの 2 つの修士号、複数のアジャイルマネジメント認定資格を持つシニアソリューションアーキテクトであり起業家です。AWS では、複雑な課題を技術とビジネスの両面で実行可能なロードマップに変換し、顧客のクラウドジャーニーを推進しており、マイグレーションとモダナイゼーション、トラベルとホスピタリティ、カオスエンジニアリング、およびエモーショナルインテリジェンスの SME でもあります。

この記事はアマゾン ウェブ サービス ジャパンの畠泰三が翻訳を担当しました。 (オリジナルはこちら)