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【開催報告】コンテナ/サーバーレスによるモダン・プロジェクト実践 – 事例セミナー

2024年11月1日に、「コンテナ/サーバーレスによるモダン・プロジェクト実践」と題して 3社にご講演いただきました。

コンテナやサーバーレスを利用することで、従来とは異なるランニングコストの構造に移行し、迅速な対応・変更で利用者/お客様のニーズに迅速に対応できるようになります。それを実際にプロジェクトで実践されているお客様のそのままの声をお伝えし、選択のポイントや勘所を理解する機会として、特に従来型の慣れた手法からまだ抜け出せない方・組織の後押しとなるヒントとなるべく、本セミナーは企画されました。

今回は 3社 それぞれ異なる領域のシステムでの経験談をご紹介いただきました。
貴重な実体験をご紹介いただいたのは以下のお客様です。

  • 保険Web申込サービスの顧客体験価値向上のため、4週間ごとの改善リリースを実現
    はなさく生命保険株式会社様
  • Step Functionsで決裁を回そう -内製ワークフロー・チケットシステムの紹介-
    クックパッド株式会社様
  • SQSを用いたクレジットカード決済の非同期化
    株式会社ZOZO様

各セッションの内容について

保険Web申込サービスの顧客体験価値向上のため、4週間ごとの改善リリースを実現

はなさく生命保険株式会社 / CS戦略部 課長 渡邉 佑亮 様

はなさく生命保険様からは、Web申込サービスのローンチ(2021/09)に際して、どのような思考、優先度でプロジェクトが発足したのか、どのような体制で進められたのかが紹介されました。不確実な新規ビジネスに対し、SIパートナー(開発ベンダー)との共創型のアジャイル開発体制をとることで変化対応力を確保したこと、「当たり前に動く」ことが前提の金融サービスを安定的に支える仕組みとして選択されたアーキテクチャや技術方式についてのご説明がありました。IT システムの開発・運用を開発パートナー企業とともに実施されている企業は日本には多く存在します。モダンな開発スタイルへのチャレンジには、技術的な観点だけではなく、開発パートナー企業とどのように座組みすると良いのかという観点において、参考になる内容が含まれていたように感じました。また、視聴者から、サーバーレス型による運用のため、費用の変動による予算とのブレをどうお考えかという質問がありましたが、そもそも新規のプロジェクトであり、どのくらいアクセスがあるかは不透明だったので、厳密な予算管理を行うことが困難だった。サービスローンチ後は月次でシステム稼働状況と費用の確認を行っているが、オンプレ運用費用との比較においても適性水準であると判断しているとのコメントがありました。これは、サーバーレス型ではよく聞かれる質問の一つですが、実際のお客様の判断が伺えたのは良い機会でした。

Hanasaku

資料はこちらです。

Step Functionsで決裁を回そう -内製ワークフロー・チケットシステムの紹介-

クックパッド株式会社 /
Software Engineer Shota Nagasaki 様
Head of Corporate Engineering and Security Sorah Fukumori 様

クックパッド様からは、AWSサーバーレスおよびコンテナサービスをフレームワークとして利用したカスタムの決裁ワークフローのシステム(Fryegg)を構築・展開し、元々お持ちのワークフローシステムから移行された事例をご紹介いただきました。ここでキーとなるAWSサービスが Step Functions です。条件分岐などはもちろん、上長の承認を待つ待機処理や何かシステム上の問題で処理が途中でエラーになってしまった際の再開処理など、ワークフローに求められる機能の大部分が Step Functions の近年の機能アップデートでカバーされ、それが後押しになったとのこと。日本企業の決裁や承認処理は特殊で、多くの場合、企業ごとにカスタマイズが必要、とよく言われますが、複数のシステムや組織をまたがるワークフローをサーバーレス型で実装できれば、ランニングコストの改善への影響は大きいです。しかし、主要メンバー2名で、4ヶ月でやり切るのはすごい。

Cookpad

資料はこちらです。将来的には、この Fryegg をOSSとして公開するビジョンもあるとのことで、個人的にも期待したいです!

SQSを用いたクレジットカード決済の非同期化

株式会社ZOZO /
EC基盤開発本部 SRE部 カート決済SREブロック 金田 卓巳 様
EC基盤開発本部 カート決済部 カート決済基盤ブロック 林 友貴 様

ZOZOTOWN の、特にセールスキャンペーン時の終了時間直前の決済処理のスパイクに対し、将来のサービス成長を考慮してどう対処すべきなのか、それに対する現時点での対応策がご紹介されました。最終的に SQS を挟んだ非同期型の連携構成までの具体的な検討のポイント・思考フローでは、決済処理という重要機能に対する判断と利用者の利便性を両立させようとする考慮が見えました。負荷の高い部分の処理における非同期アーキテクチャの効果を技術的には理解できても、特に決済に関する処理となると心理的になかなか踏み込みにくいものです。しかし、ZOZOTOWNという日本でも有数のサービスのカード決済部分で実現し、効果があるという話は大きな説得力があります。また、その負荷テストのために使用した EKS上のシステムの紹介も、負荷テストにおけるコンテナ活用の良い一例となりました。

ZOZO

資料はこちらです。なお、負荷テストとしてEKS上で稼働させたツールはこちらであるのことでした。

まとめ

顧客フロントのサイトやカード決済のような業務でも、コンテナやサーバーレス型のサービスを使うことはもう珍しいことではありません。運用の工数を省力化し、その分、機能拡張や改善リリースのサイクルを回す方に力を注ぐことができます。一方、モダンなアーキテクチャの活用の前に、まだ既存の従来型システムが足枷になって、という方が多いのも事実です。全部を一気には変えられませんし、全てを変える必要があるかどうかも疑問です。せめて、新しいプロジェクトでモダンな方式で進めてみて、その体験を実感してから今後の方針を決めるのでも十分良いスタートです。実際、先人の企業の多くは、こうしたアプローチをとった結果、その領域を拡大して今に至っているのです。一歩を進み始めないとその先はありません。

なお、コンテナやサーバーレスをあらためて理解したい方には、自習型の以下のワークショップがあります。ご自分のペースで進めながら来たる次のプロジェクトに備えてはいかがでしょうか。

サーバーレス事業開発 杉