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ハイネケンのコネクテッドブルワリー(接続された醸造所)エコシステムが自動化を促進する方法

サプライチェーンに対する圧力の高まりは新しいことではありません。しかし、その影響は、最近私たちに別の話題をもたらしています。

消費財業界( CPG )に限らず、さまざまな業界で、企業がより良い意思決定を推進し、より大きなイノベーションを先導するにつれて、新しい取り組みが加速していることを目にします。スマートファクトリーを例にとってみましょう。スマートファクトリーでは、先見の明のある消費財企業が、従業員がより効率的かつ効果的に仕事を遂行するために役立つツールやテクノロジーに投資すると同時に、自動化を促進するための分析や洞察を提供しています。製造業の未来はスマートファクトリーにあると多くの人が述べています。

ハイネケン社のコネクテッド醸造所エコシステムはまさにその実例と呼ぶにふさわしい事例です。


この投稿で製造のデジタル化に関するハイネケン社の経験について話すために、 AWS のワールドワイド CPG および Retail 市場開拓( GTM )の責任者であるJustin Honaman ともにハイネケン社のグローバルサプライチェーントランスフォーメーション担当シニアディレクターである Wiggert Deelen 氏とコンシューマー・グッズ・テクノロジー( CGT )のシニアエディターであるLisa Johnston 氏を迎えました。この模様は CGT のウェビナー「 How Heineken’s Connected Brewery Ecosystem Fuels Automation 」に公開されています。
この投稿では、 Deelen 氏と彼のチームがどのようにハイネケン社のコネクテッドブルワリーエコシステムを構築したかを取り上げ、その過程で学んだいくつかの教訓に注目します。

ハイネケン社で 25年以上の経験を持つ Deelen 氏は、サプライチェーンで多くのオペレーションに携わってきましたが、サプライチェーンのデジタル化は間違いなく彼が監督する中で最大のプログラムの1つだと言います。また、サプライチェーンのデジタル化こそがコネクテッドブルワリーのすべてだとも述べています。

小さく始める

4年前、 Deelen 氏と彼のチームは、コネクテッドブルワリーのエコシステムというアイデアを模索し始めました。当時、 Deelen 氏はヨーロッパで業務を担当していましたが、デジタルテクノロジーとデータを活用して効率化を図り、売上増加を目標としたプログラムを開発する必要性を感じ、上司にスポンサーシップの支援を求めました(それがなければ、 Deelen 氏と彼のチームは実験できませんでした)。

Deelen 氏のチームは、テストや学習の実験場となる工場を探し始めました。最終的に、ハイネケン社がデジタル化によって工場を次のレベルに引き上げることができることを証明したかったので、オペレーション効率が大幅に高いポーランドの高性能工場を選びました。

「ビールは資産を大量に消費する業界なので、運用の優秀さを保ち、継続的な改善を常に続けることは非常に重要です」と Deelen 氏は言います。「工場全体をデジタル化することで、これまで得られなかった洞察が得られるでしょう。」 Deelen 氏と彼のチームは、これまでさまざまな機能を備えた管理システムを使用していましたが、実データを収集して組み合わせることで、リアルタイムに洞察を得て、ほぼリアルタイムの運用判断をより迅速に行えることにすぐに気付きました。このことがきっかけで、ハイネケン社の運用チームは、革新的なビジネステクノロジー企業である Schuberg Philis 社と AWS の協力を得て、データドリブンの IoT (モノのインターネット) プラットフォームを構築することにしました。

接続性が鍵

ハイネケン社のコネクテッドブルワリープログラムは、醸造所の従業員がより効率的かつ効果的に仕事を行えるようにするためにハイネケン社が開発したデジタル製品のエコシステムです。このエコシステムには多くの変動要素があり、6部門が「コネクテッドワーカー」と「スマート醸造所」カテゴリの6つの異なるサービスを運営しています。コネクテッドワーカー側には、 One2Improve 、タスク管理、デジタルリアリティなどのサービスが含まれ、スマート醸造所側には IoT  プラットフォーム、ダッシュボード、分析、ロボット工学などのサービスが含まれます。

ハイネケン社のコネクテッドブルワリー IoT プラットフォームを支える Schuberg Philis 社は、コネクテッドブルワリー  IoT プラットフォームを構築、提供、管理しています。このプラットフォームは、醸造所の生産ラインの機械からのオペレーションデータ、つまり取得して保存できるデータで構成されています。醸造所からのデータは抽出され、 AWS のデータレイクに格納されます。さらに、このプラットフォームは醸造所内のエンタープライズリソースプランニングシステム( ERP )からデータを収集し、ハイネケン社がデジタルファーストの世界でつながるのに役立ちます。

IoT の波に乗り出す

ハイネケン社はコネクテッドブルワリーの最初の拠点で、生産量を増やす方法を見つける必要がありました。最終的に、同社は透明性を高め、介入すべき対象を絞り込んで強調する、意思決定に役立つダッシュボードを作成しました。

ハイネケン社は、オペレーション技術とIT分野を安全につなぐために開発されたハードウェアであるコネクテッドブルワリーキット( CB Kit )も導入しました。このキットには、ファイアウォールと2 台の産業用コンピューター( IPC )が搭載されています。そのうちの1台は、 PLC ( Programmable Logic Controller )との通信用に Kepware ソフトウェアを実行しています。もう 1つは、 AWS のデータレイヤーと通信するためのインテリジェントな IoT デバイスをより迅速に構築するためのサービスである AWS IoT Greengrass を実行するためのものです。このシステムにより、プラットフォームは醸造所の生産ラインの PLC からデータを取得できるだけでなく、ハイネケン社が過去およびリアルタイムのオペレーションパフォーマンス指標を確認することもできます。結果、 Deelen 氏が言うように、 CB Kit によって「想像もつかなかった」規模でコネクテッドブルワリーのプロジェクトを実現させることができました。

ダッシュボードと CB Kit の作成とは別に、ハイネケン社はオペレーターによるタスク管理の推進にも注力しました。「オペレーターの仕事がますます複雑になっているように感じました。オペレーターが知っておくべきことや仕事の進め方はさらに複雑になりました」と Deelen 氏は言います。ハイネケン社はコネクテッドワーカーアプリを作成した後、かつては紙のハードコピーだった情報をオペレーターの手のひらで電子的に利用できるようにしました。

このプログラムは、オペレーターがますます複雑化する作業をサポートするようになっただけでなく、オペレーターが醸造装置の洗浄と検査を自動化するためにも貢献し、オペレーターがコネクテッドブルワリーエコシステムに参加することへの関心とインセンティブが高まりました。 IoT と同じように、自分たちのダッシュボードを管理できることで、 Deelen 氏は、オペレーターがローカルレベルで開発する自由度が高くなると、コネクテッドワーカーアプリケーションの運用率がはるかに高くなることに気付きました。

先を見据える

現在、ハイネケン社のコネクテッドワーカーアプリケーションは世界中で約14,000人の従業員が使用しています。ハイネケン社は、技術に恵まれたパートナーである Schuberg Philis 社の協力を得て、 IoT 分野で53の醸造所を接続しており、今年は少なくとも60の醸造所を接続する予定です。これに加えて、 Deelen 氏は、今後2年間で、ハイネケン社は世界中の140を超える醸造所のほとんどをコネクテッドワーカーアプリケーションでカバーできるはずだと考えています。ハイネケン社はオペレーションの透明性を高めるためにコネクテッドブルワリーエコシステムを立ち上げましたが、 Deelen 氏は、サプライチェーンの混乱が続く中、サプライチェーン内のプロセスをリアルタイムで可視化する必要があるを認識しています。

ハイネケン社が将来を見据えるにあたり、 Deelen 氏は、ビジネスリーダーが自分の旅で実践できるアドバイスをいくつか紹介します。

  1. すぐに始めましょう:「準備はしないで。さっそく始めましょう」と Deelen 氏は言います。「大きな計画についてはあまり気にしないでください。やってみることで学びを多く得られます。その大部分は間違いを犯すことです。」
  2. 人に焦点を当てたテクノロジーの構築:テクノロジーを構築することになると、 Deelen 氏は次のように強調しています。「テクノロジーは何でもできますが、テクノロジーを使用する人々に注目することがより重要です。常にユーザーと、それが解決する問題点を考えてください。」
  3. コーディングに慣れてください:「コーディングの世界に入りましょう」と Deelen 氏は言います。努力することが重要です。「原則をよく理解して初めてテクノロジーを適用できるからです」

ウェビナーの締めくくりとして、ディーレンは聴衆に最後のアドバイスを送りました。「どんな旅に出るにしても、大きく考えて小さく始め、初期の成功と勝利を積み重ねてください。」

参考文献

How Heineken’s Connected Brewery Ecosystem Fuels Automation (ハイネケンのコネクテッドブルワリーエコシステムが自動化を促進する方法)

CGT オンデマンドセッションでこのディスカッションを聞いてください。
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Schuberg Philis and Heineken on AWS

Schuberg Philis 社による生産現場のインテリジェントなサポートについて、以下のWebサイトをご覧ください。
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この投稿は「How Heineken’s Connected Brewery Ecosystem fuels automation」をAWS Japan SAの吉川 晃平が翻訳しました。