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IoT@Loft #24 IoT サブスクリプション ビジネスの課題と取り組み

こんにちは、プロトタイピング ソリューション アーキテクトの市川です。
2024年7月24日に開催された 「IoT@Loft #24 IoT サブスクリプション ビジネスの課題と取り組み」の内容について紹介させていただきます。

今回 2 年ぶりに IoT@Loft を開催しましたが、オフラインでの開催は 4 年ぶりの開催となりました。オフラインでの開催ということもあり、久しぶりに登壇者と参加者が直接お話しできるようなネットワーキングの時間も設けており、時間ギリギリまで賑わいました。

図 1: Startup Loft の会場にて

久しぶりの開催ブログでもありますので、あらためて、

IoT@Loft とは ?

過去の開催ブログ

IoT 関連ビジネスで開発を担当するデベロッパーのためのイベントです。IoT の分野は、「総合格闘技」と呼ばれるほど、必要な技術分野が非常に多岐に渡ること、ビジネスモデルが複雑なケースが多く、全体を理解することは難しいと言われています。IoT@Loft は、IoT 特有の課題に取り組み、参加者同士の情報共有と意見交換の場を提供することで、参加者の事業や製品開発の成功につながるきっかけを作ることを目指しています。
IoT@Loft #24 ではこれらの取り組みの中で、ハードウェアとソフトウェア/サービスを連携し、利用者へハードとソフトの相乗効果による顧客体験を提供することのできるビジネスモデルである SaaS plus a Box をにフォーカスしました。SaaS plus a Box ビジネスでは、通常のSaaSにはないモノ(ハードウェア)との連携、管理が重要になります。SaaS plus a Box ビジネスを提供する際の IoT 観点からの課題と、その解決に向けた取り組みについてお客様より発表をしていただきました。

お客様登壇

ビットキーの右肩上がりなIoTトラフィックを捌く基盤の考慮と工夫

登壇資料

図 2: 株式会社ビットキー 佐々木様

1 つ目のセッションは、株式会社ビットキーの佐々木様より、「ビットキーの右肩上がりな IoT トラフィックを捌く基盤の考慮と工夫」という内容で後登壇いただきました。
株式会社ビットキーは テクノロジーの力で、あらゆるものを 安全で 便利で 気持ちよく「つなげる」 をミッションとして掲げ、日々の生活の中で利用しているリアルとデジタルの「分断」を解消(図 3)するプロダクトを提供しています。

図 3: 株式会社ビットキーのサービスで「分断」を解消する

印象的だったのはコストに対しての考え方とアプローチで、従量課金のクラウドサービスだとサービスが成長すると、その分コストも上がってしまいます。しかし、ビジネスとして提供している以上なるべくコストを抑えつつ利益を最大化させる必要があります。そこで、株式会社ビットキーが取られたアプローチは、「可能な限りコンピューティングを減らす」方法でした。つまり、マネージドな機能を使ったり、アプリケーションの処理を可能な限り短くし、まとめて処理することで、処理効率を上げ、コンピューティングにかかるコストを下げることに、さまざまな検証と実践を行っています(図 4)。


図 4: コンピューティングを減らすために実践していること

このようにクラウド側の設計は後からも継続して改善させることは可能ですが、デバイスとなるとそうはいきません。そのため、システムの開発の部分的なところだけに関与するのではなく、IoTエンジニアはデバイスのハードウエア開発から、SaaS の開発まで関わることで、システム全体で最適なアーキテクチャを作ることができます。そして、このような関わり方ができるのがスタートアップの醍醐味であると締めくくりました。

創業から8年間の失敗と学び

登壇資料

図 5: 株式会社VACAN 田巻様

2 つ目のセッションは、株式会社 VACAN 執行役員 兼 開発本部本部長 田巻 流様より、「創業から8年間の失敗と学び」という内容でご登壇いただきました。株式会社 VACAN はユーザーの「待つ」をなくすことにより、ユーザーが自由な時間を手に入れることができ、さまざまなメリットを受けられることを掲げ、混雑をさまざまな方法で可視化する仕組みを提供するスタートアップです。
登壇された田巻様は、IoTを扱うスタートアップらしく、ハードウエアからソフトウエア、設置といったあらゆる工程を創業時から担当されていたとのことで、そのフェーズでの課題についてお話しされました。元々はソフトウエア開発出身ということもあり、ソフトウエアやサービスの観点では解決できることも多かったが、ハードウエアが登場する IoT では、デバイス、キッティング、デバイスの設置など慣れないことも多かったとのこと(図 6)。そこで彼らが見出した結論としては、その道のプロに正しくプロセスを進めることが大事で、必要な業務に適切な人材の採用を進めたそうです。


図 6: ハードウエアを含めた IoT サービスを提供する際に考慮が必要な事

株式会社VACAN様では、B2B向けのIoTビジネスの課題として、お客様ごとに異なる環境での課題解決が必要となりました。資産管理、施工、運用でもハードウェアを考慮した工程が必要となり、このスライドからもSaaSビジネスと比較してやるべきことが多岐に渡ることがわかります。
お客様ごとに異なる設置環境と、多くの工程という課題に対し、株式会社 VACAN 様は混雑に特化した IoT Platform の構築とお客様の対応な要望に応えられるシステム構成を構築しました。株式会社 VACAN 様の混雑検知 IoT Platform vCore はインフラの特性や混雑情報生成の複雑さを層ごとに分類し構成されてます。また多様な要望に応えられるよう機能共通機能と個別最適化の層を分けてビジネスロジックの変更を最小限にするよう設計されてます。
お客様が簡単に始めるためには、お客様の決定事項を最小限に抑えることが重要です。株式会社VACAN様はパッケージ化されたソリューションを提供しております(図6)。

図 7: 提供しているパッケージ

AWS セッション

スマートホームデバイスにおけるAWSの利活用

登壇資料 前編 登壇資料 後編

3つ目のセッションは、ソリューションアーキテクトの川崎 裕希 / 服部 一成 の 2 名から発表がありました。

前編では SA の川崎より スマートホームの市場の成長について紹介があり、消費者に新たな価値を提供するには、手間のかかるタスクをAWSのマネージドサービスにオフロードすることで (図 7)、ビジネス価値の提供に集中することができると説明しました。


図 8: AWS IoT を使った顧客価値の引き出し方

また、AWS ではさまざまな IoT 向けのサービスを提供しており、これらをビルディングブロックとして組み合わせることで、拡張性と効率の高いアーキテクチャが構築できると紹介しました。


図 8: スマートホームデバイス向けのアーキテクチャ例

まだ AWS の IoT サービスを触ったことがない人には、 AWS Hands-on for Beginners で公開されている「 AWS IoT Core を用いて IoT デバイスから取得した情報でダッシュボードを構築する」を試してみることの提案で締めくくりました。

後編では SA の服部から、デモを交えながらビジネスが成長するにつれて必要になるスケーラビリティについて事前に検証することが重要であると紹介しました。


図 9: スケーラビリティの重要性

デモでは スケーラブルな検証環境を構築する際にも AWS IoT Core が便利であり JITR(Just In Time Registration) を 活用し、大量のデバイスを登録する際に課題となるデバイスのプロビジョニングを簡単に行えることを紹介しました。


図 10: JITRのデモ

このような仕組みを利用することで、新しい製品や機能を公開する前に事前にテストを行うことで、実際に製品を手にしたお客様の体験 (UX) を損なうことなく、サービスの利用を開始できるように確認しておくことが重要と紹介しました。

さいごに

IoT@Loft は次の開催を 10 月ごろに予定しています。イベントの詳細が決まりましたら、 AWS Startup Loft Tokyo のイベントページで公開しますので、ぜひ楽しみにしていてください。

関連ウェブサイトのご紹介

AWS IoT 開発者ポータル

IoT エンジニア向けに、IoT 関連の国内の事例やセミナーの情報、ハンズオンや学習のためのデジタルコンテンツなどを随時更新しています。ぜひ定期的にチェックしてみてください。
https://thinkwithwp.com/jp/local/iot/


著者について

市川 純

プロトタイピングソリューションアーキテクト
AWS では IoT に関連するプロトタイピングを支援する、ソリューション アーキテクトとして、お客様の IoT 関連案件を支援しています。