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クラウド人材: Buildするか、Buyするか?

今回のブログでは、「人材を組織内部で育成するか、それとも外部から新規に採用するか」──この課題への1つの考え方をご紹介します。ご不明の点、「Contact Us」までお問合せください。(以下、Talent: Build vs. Buyと題された英文 Blog の翻訳となります。)

[以下、Jake Burnsの発言:] AWS の Enterprise Strategist として、企業のリーダー達から最もよく聞かれる質問の1つが、組織内のタレント ギャップ(talent gap)をどのように解消すればよいのか?──というものです。

なぜなら、優秀な技術者を採用し(recruit)、維持する(retain)ことは常に課題で有り続けてきましたが、今日ではその課題はさらに大きくなっているからです。クラウド コンピューティングの台頭により、世界中のあらゆる業界の企業が、デジタル トランスフォーメーション(以下、「DX」)をサポートする世界で伍することのできるクラウドチームを構築しようとしており、これらの変革をサポートするために必要なスキルと経験を持つクラウドエンジニアの需要が急激に高まっているのです。さらに、最近の在宅勤務が当たり前となるトレンドにより、候補者の活躍の場が増えているため、候補者を雇用し、維持することはさらに困難かつ高額の投資を要する選択肢になっています。

しかし、意義の大きい変革を起こそうとする企業のリーダー達は、組織内のスキル ギャップを埋める方法を見つけなければなりません。なぜならば、組織のデジタル変革の取り組みの成否は、その組織内の人材のスキルとモチベーションに直接の影響を受けるからです。プロセスを開始するために一時的なリソース(AWS プロフェッショナルサービスコンサルティング パートナーなど)をアサインすることもできますが、最終的には、これらのスキルを社内で充足する方法を見つけなければなりません。

そのためには、既存の社員を育成(develop)する方法と、新規に採用(hire)する方法の2つがあります(3つ目の選択肢であるアウトソーシングについては、今後の記事で紹介します)。今回の記事では、私の同僚である Discount Tire の IT インフラエンジニアリング担当副社長補佐のジョン・ニコラスが、この2つの戦略を検討し、組織内のタレントギャップを解消した経験を紹介します。

[以下、ジョン・ニコラスの発言:]まず、既存の従業員をトレーニングすることで、上記のギャップを解消する方法について説明します。この方法の利点は、従業員が新しいスキルを身につけることで、企業文化を継続的に構築し、発展させることができることです。従業員は、経営陣が自分たちに投資してくれていることを実感し、士気を高めることにもつながります。他の従業員にとっても、仲間の成長を目の当たりにし、学習活動に参加しやすくなります。また、研修にかかる費用は、新入社員・中途社員の募集や入社にかかる費用よりも「少ない」ことが多いため、一般的に費用対効果が高いと言えます。しかし、この方法にはデメリットもあります。例えば、時間がかかること。新しいスキルを学び、使いこなせるようになるまでには、当然それなりの時間がかかります。また、学んでいる最中の社員が途中でミスをして、プロジェクトの遅延や停止に至ってしまうこともあります。

代わりに、新しい人材を採用するならば──そして良い人材が採用できたと仮定すれば──、すぐに活躍してくれることが期待できます。似たような仕事をした経験があれば、ミスも少なく迅速に作業を進めることができ、プロジェクトを加速し納期の短縮にもつながります。しかし、この方法にもデメリットがあります。例えば、文化的に合わないメンバーを迎え入れてしまうリスクがあります。また、新入社員が不満を持った場合の態度が既存のチームメンバーに伝わり、結果的に組織全体の離職率の上昇につながる可能性もあります。

ここで、私たちが Discount Tire 社でとったアプローチを紹介しましょう。私たちは現在、そしてしばらく前から、AWS への移行を含む DX に必要なスキルと経験を持つシニアエンジニアやリーダーを積極的に採用しています。しかし、必要なスキルや経験だけでなく、候補者が当社の既存の「カルチャー」にフィットしているかどうか、また、既存のチームメンバーの学習や成長を支援することに尽力してくれるかどうか──といった点にも、注意を払っています。私たちの採用意図を伝えることで、新規採用者が自分たちの昇進や新たな役割への成長の機会にとって悪影響を与えないことを、現在の従業員たちが理解できるように徹底しています。

最近、私[=ジョン]は新しいテクノロジーの採用を加速させる必要があることに気づきました。私は、チームが期待通りのペースで適応して成果を出すのに苦労していることも認識しており、目標を達成するためにはチームをスキルアップするための経験の投入(infusion)が必要であることが明らかになりました。チームのやる気のなさではなく、スキルギャップが原因だと判断した私は、この問題を解決するために採用すべき新たなロールの特定に着手しました。

必要なスキルを持ち、文化的にもフィットする候補者を見つけたら、オンボーディング プロセスの一環として、新しいチームメンバーを既存のチームダイナミクスに統合するように意図的に努力しました。そのためには、新入社員が他のメンバーとの信頼関係を築くための十分な EQ  (Emotional Quotient or Emotional Intelligence) を備えていることが必要であり、これを重視しています。このプロセスでは、成功と失敗の両方がありました。以下にそれぞれの例を紹介します。

まず、成功例です。昨年、私のチームリーダーの一人(彼も比較的新しいメンバーでした)が、新しいエンジニアの採用を任されました。彼は先見の明があり、まずチームと話し合い、新規メンバーを迎えるにあたっての不安を解消してくれました。これは見落とされがちなステップですが、私の経験では必要なステップです。彼は、この特殊なスキルを持った人物を、社内からのプロモーションではなく「外部」から獲得しなければならないと考える理由や、その新メンバーがチーム全体の成功にどのように役立つのか、そして既存のメンバーたちの将来の昇進の機会を奪うものではないことを根気強く説明しました。優れた候補者が見つかると、彼はチームを巻き込んで面接を行いました。結果として、その候補者を採用するに至りましたが、技術的にも文化的にも非常にフィットした候補者であることが証明されました。彼は最初の数週間、チームメイトのプロジェクトや日常業務について質問をしたり、サポートを申し出たりしていました。その結果、スムーズなオンボーディング プロセスが実現し、彼はすぐにチーム内で高い生産性を発揮するメンバーとなりました。

次に、あまり成功しなかった採用の例です。このチームのリーダーは、上記の成功例とは対照的なアプローチを取ってしまいました。彼は、新メンバーが既存のチームメイトにとって脅威となることは避けられないと考え、チームに対して不透明な採用を行いました。彼は2人の候補者と面接を行い、どちらも優秀だったので、2人とも採用することにしました。チームに入った後、2人は不満を募らせることになってしまいます。新メンバーは高い技術を持っているにもかかわらず、チームメイトたちは明らかに彼らを信頼しておらず、彼らの能力を疑い、平凡な仕事だけを与えがちだったからです。その後、状況は改善されましたが、スタートが悪かったため、この新メンバーたちから必要な生産性を得るまでに約6ヶ月を要しました。2人とも高いスキルを持っていることは間違いありません。生産性が上がらないのは、彼らの採用方法が行き当たりばったり(haphazard way)だったため、チームの他のメンバーからの信頼を得るまでに時間がかかってしまったことが原因です。

ここでの教訓は、新メンバーが企業やチームのカルチャーに適合していることを確認するだけでなく、新メンバーがチームに加わることのメリットを既存のチームが理解していることを確認するのは、精確にリーダーの責任であるということです。そのためには、リーダーは透明性を保ち、早い段階で頻繁に既存のチームとコミュニケーションをとる必要があります。そのためには、社員とマネジメント・メンバーたちの間に信頼関係が必要です。

私[=ジョン]は、Build と Buy、どちらのアプローチも人材ギャップを埋めていくのに有効だと考えています。私の考えでは、既存のチームに投資することは当然のことです。もし、まだやっていないのであれば、すぐに始めることをお勧めします。新しいスキルは時間とともに複利で増えていくので、トレーニングへの投資効果は通常、非常に高くなります。また、社員のスキルが高ければ高いほど、プロジェクトの進捗が早くなり、ミスも減ります。さらに、トレーニングには士気を高める効果もあります。あなたが自分に投資してくれていることを従業員が実感すれば、彼らはより幸せになり、より懸命に働くようになります。また、意外なことに、人材の確保にも役立ちます。多くの経営者は、社員を育てた挙句、失ってしまうことを恐れるものです。しかし、スキルのある社員を維持するために努力しなければならないのと、スキルのない社員が結果を出せない状況とでは、どちらがいいでしょうか? 私の経験では、社員に投資することで、より忠実な社員が生まれます。それは、人は成長し続けたいと思うものであり、自分のキャリアをサポートし続けてくれるリーダーの下で働くことは理にかなっているからです。これは特にハイパフォーマーに当てはまることであり、彼らこそがマネジメント・メンバーが最も維持したい人材なのです。

しかしながら、目標達成に必要なスキルのギャップを埋めるためには、既存の従業員のスキルアップだけでは不十分な場合もあります。変化と成長に直面するフェーズにおいては、特にそうです。そのため、通常は採用も同時に行う必要があります。その際には、「どんな採用方針をとっているのか、なぜそうしているのか」をチームメンバーに伝えるようにしてください。新しいスキルを組織に取り入れることで、自分たちの成長が加速されることが理解されたならば、そのプロセスを通してリーダーをサポートしてくれるでしょう。

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このブログは英文での原文ブログを参照し、アマゾンウェブサービスジャパン合同会社 パブリックセクター 統括本部長補佐(公共調達渉外担当)の小木郁夫が翻訳・執筆しました。ご不明の点、ぜひ AWS までご相談くださいContact Us)。

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小木 郁夫
AWS ジャパン パブリックセクター
統括本部長 補佐(公共調達渉外)
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