Amazon Web Services ブログ
Coca-Cola Andina が AWS 上の Thanos でオペレーションの可視性を強化
本記事は 2024年2月23日に公開された “Coca-Cola Andina Boosts Operational Visibility with Thanos on AWS”を翻訳したものです。
飲料会社の Coca-Cola Andina は、生産性、効率性、顧客満足度を向上させるために、データからより良い洞察を引き出すには、クラウドが鍵であることに気付きました。そのため、同社はオンプレミスのデータストア全体を、アマゾンウェブサービス(AWS)に新しく構築したデータレイクに移行しました。
その後、Coca-Cola Andina は、過去のデータの可視性を高め、分析に活用するためのカスタムアプリケーションである Thanos を作成しました。このソリューションにより、業務効率を向上させることができ、海外事業の可視性が高まり、従業員の生産性が向上しました。
AWS 上に構築した社内用ツール Thanos による業務効率化
ラテンアメリカを拠点とする Coca-Cola Andina は、チリ、アルゼンチン、ブラジル、パラグアイに 10 の生産工場と約 100 の流通センターを保有し、Coca-Cola やその他のメーカー向けの製品を包装・販売しています。包装・販売における業務プロセス、従業員の作業、トラック車両に関する大量のデータを収集し、保存しています。
Coca-Cola Andina はこれらのデータに簡単にアクセスし、事業強化に活用するためのより良い方法を求めていました。オンプレミス上のインフラストラクチャでは、1 日に 1 回しかデータが更新されないため、短期的な業務改善のための意思決定を行うことができませんでした。
Coca-Cola Andina は、知見を得るまでの時間を短縮するためにデータストレージを AWS に移行しました。具体的には、ERPから運用に関するデータを Amazon Simple Storage Service (Amazon S3) 上に取り込んでいます。(Amazon S3 は、任意の量のデータをどこからでも取得できるように設計されたオブジェクトストレージサービスです)。 Coca-Cola Andina は、既存データと毎日生成される新しいデータの両方を保存するためにクラウド上の Amazon S3 を利用し、データをより迅速に分析できるようにしています。AWS 上の基盤で、すべての業務プロセスと配送の管理システムとして機能する社内ツール Thanos を構築しました。
ニアリアルタイムのインサイトを引き出す
Thanos は、製品の流通を最初の注文から支払と配送トラックの返却まで包括的に監視するプラットフォームです。また、Coca-Cola Andina のインフラストラクチャ上で稼働するさまざまなアプリケーションでも使用されており、例えば B2B プラットフォームや通知サービスといった顧客の注文を追跡するためにも使用されています。Thanos は AWS 上で動作し、Amazon S3 と Amazon Relational Database Service (Amazon RDS) からデータを取得します。Amazon RDS は、複数のマネージドサービスで構成されているためクラウド上でデータベースを容易にセットアップ、運用、スケーリング可能です。
また、Thanos はサーバーレスのイベント駆動型コンピューティングサービスであるAWS Lambda を利用して分析しています。日付別およびカテゴリ別の販売状況、配送センターが処理できる総量とピッキング能力の比較、各ステージでの注文状況、配送予定日から前倒しして配送する機会、従業員一人当たりの生産性など、会社の業務に関する 25 種類のビューを提供します。
このような詳細なビューにより、同社は積極的な意思決定を行うことができます。例えば、注文量がピッキング能力を超えた場合、Coca-Cola Andina はトラックを移動したり、リソースや従業員を追加したり、施設間で顧客の需要を調整することで、滞りを回避することができます。
Coca-Cola Andina が AWS 上のインフラストラクチャで実現しているのは、このような実用的な分析結果です。データへの迅速なアクセスと流通チェーン全体の可視性が向上したことで、業務を改善するためのインテリジェントな意思決定を行っています。Coca-Cola Andina は、DX の過程で AWS から貴重なサポートを受けています。Coca-Cola Andina の社内業務デジタル化担当コーポレートマネージャーであるPablo Sereno 氏は、「私たちと AWS の使用との関係は、Thanos にとどまりません。AWS は我々のデジタル戦略にも耳を傾け、私たちの施設を訪問して改善の機会を探りました」と述べています。
モニタリングの改善と生産性の向上
Coca-Cola Andina は、最新のデータを活用して、業務改善のためのより良いインサイトや機会を増やしています。これまで、データは 1 日に 1 回更新されていましたが、現在、Thanos は 15 分ごとにデータを更新しています。ニアリアルタイムの情報により、Coca-Cola Andina は Thanos を利用して在庫と出荷を綿密にトラックすることで 、在庫切れの頻度を 0.2% 削減しました。さらに、トラックの積載率を 1% 向上し、従業員の全体的な生産性を向上させ、生産に遅れが生じる可能性のある箇所を監視しました。
Coca-Cola Andina が Thanos から得たインサイトのもう1つの活用例は、顧客が注文を受け取れない可能性が高いタイミングを予測するためのアルゴリズムです。「トラックが到着しても、顧客が休みだったり、コンテナを持っていなかったり、支払いができなかったりして、注文が受け取られないことがあります。それは私たちにとってコストになります」と Sereno 氏は述べています。Thanos の導入により、このような事態がいつ起こるかを正確に予測し、この問題を回避するために注文を調整できるようになり、受け取られなかった注文の割合を 0.3% 削減しました。
分析機能を拡張しコストを削減を図る
ビジュアライゼーションビューと分析モデルの両方で Thanos を使用することで、Coca-Cola Andina は流通プロセスの可視性の向上と継続的な強化により、大幅なコスト削減を短期間で実現しました。しばしば、トラックが配達から戻ってくる際の在庫量が、予想よりも多かったり少なかったりすることがあります。Coca-Cola Andina はデータを利用して、顧客の過去の行動を分析する機械学習モデルをトレーニングしています。あらゆるユースケースの機械学習モデルの構築、トレーニング、デプロイに使用されるフルマネージド型サービスである Amazon SageMaker を利用して、これらの例外を軽減または仮想的に除去する方法を特定しています。
Thanosを導入した最初の1年で、Coca-Cola Andina は生産性を向上させ、効率性を高め、コストを最適化しました。また、ポートフォリオに含まれる SKU の数を 2 倍に増やし、顧客に対しより幅広い商品カテゴリを提供できるようになりました。さらに、AWS での拠点を拡大し続け、業務の効率化を進める計画です。「私たちは AWS で高度な分析ソリューションを開発しており、すでに素晴らしい成果を上げています。次に、これらのソリューションから生じるタスクを自動化する方法を模索しています」と Sereno 氏は述べています。
詳細については、こちらの Coca-Cola Andina についての事例をご覧ください。
翻訳は、ソリューションアーキテクト 本田 光来が担当しました。