Amazon Web Services ブログ

ケミカルマテリアル Japan 2024 で、AWSがブース出展しました

11 月 21 日と 22 日の 2 日間にわたり、東京ビッグサイトでケミカルマテリアル Japan 2024 が開催され、来場者数 26,541 人を記録しました。来場者の約半数が化学メーカーであり、約 30 % が化学産業の研究開発職の方々であったと発表されました。会場が 4 つのテーマで構成される中、AWS は「プロセス産業 DX 展」にブースを出展するとともに、「AWS と共に歩むプロセス産業 DX の加速」と題したセミナーを行いました。
AWS のブースでは、「技能伝承ソリューション」「コンピューターシミュレーション」と題した 2 つを展示し、両日を通して多くの来場者にお越しいただきました。IT 関係者に限定したイベントではないため、非 IT の方にも化学業界での AWS の取り組みを知ってもらうという意志を胸にこめ参加しました。そうしたところ、非 IT の方を含め DX やクラウドに対する期待は想像より大きく、大変熱心にお話を聞いていただくことができました。DX やクラウドに対する期待は、依然として大きなものであると実感することが出来ました。

化学素材産業における DX / デジタル化の課題

各企業は、製品性能と品質を維持向上させつつ、コスト低減や安全性担保を継続しています。事業単位や製品単位では優れたエコシステムを持つ一方で、企業単位や長期視点でみた場合、多くの課題も抱えています。課題の中( 出典 1 、 出典 2 ) から、最新の IT 技術と親和性の高い事項を抜粋すると、①製品開発速度の限界、②ノウハウを有する現場人材の確保、③システムのサイロ化により全社規模のデータ利活用が進まない、といった内容があげられます。
出典 1 : 新・素材産業ビジョン 中間整理 経済産業省 製造産業局
出典 2 : 化学産業の現状と課題 経済産業省 製造産業局素材産業課

ブース出展とセミナーの特徴

前項の課題に対し、デジタルで対応するソリューションをデモで展示し、セミナーでご提案しました。

出展ブース 1 : コンピューターシミュレーション

前項「課題①製品開発速度の限界」に挑むため、以前から CAE ソフトによるシミュレーションが行われてきました。有償 / 無償の CAE ソフトが進化を続けていることに加え、汎用の CAE ソフト利用ではなく自社固有の仮想実験基盤を構築し、 MI ( Materials Informatics ) に挑む企業が増えてきました。CAE ソフト、MI ともに、精度を上げるためには高い計算負荷が発生するため、多くのコンピュート資源を必要とします。クラウドであれば従量課金で、必要な時に必要な分だけ HPC ( High Performance Computing ) 環境をお使い頂けることから、利用が広がっています。今回のブースでは、HPC 環境を一元管理し、低い運用負担で維持管理できるサービスを展示しました。

出展ブース 2 : 技能伝承ソリューション

前項「課題②ノウハウを有する現場人材の確保」に挑むため、以前からノウハウの文書化や教育動画、OJT や外部教育などにより、技能伝承が行われています。しかし、今なお、技能伝承は大きな課題と考えられています ( 出典 3 ) 。ベテラン社員が会得した暗黙知を会社の資産として保持し、社内に共有するには、デジタルが大きな支援となります。今回のブースでは、その一例として、製造設備のトラブルを自動で検知し、生成 AI が状況と解決案を示すソリューションを展示しました。
出典 3 : 2024 年版ものづくり白書 第 2 章 第 3 節 経済産業省 厚生労働省 文部科学省

セミナー : AWS と共に歩むプロセス産業 DX の加速

前項「課題③システムのサイロ化により全社規模のデータ利活用が進まない」に関しては、ユーザー部門の方々にとって、自社のデータ利活用基盤がどのようになれば理想的であるのか、その案をご提案するとともに、その実現にクラウドが多面的にご支援可能であることをご説明しました。

出展ブース 1 :コンピューターシミュレーション

コンピューターシミュレーションのブースでは、一元管理された HPC 環境のデモを展示しました。

左のディスプレイでは、CAE ソフトによる流体解析の結果が映っています。CAE ソフトでは、3 次元空間を微小な要素( メッシュ )に分割し、各要素における物理現象や化学反応を数値計算によってシミュレーションします。要素数を増やすほど精緻さが期待できる一方、計算量が増えることとなるため、より多くのコンピュート資源を必要とします。


AWS の RES ( Research and Engineering Studio ) を利用することで、CAE ソフトや MI を動かす HPC 環境を一元管理し、新環境をわずか数分で構築することが出来ます。
Research and Engineering Studio については、こちらからご確認頂けます。

出展ブース 2 :技能伝承ソリューション

技能伝承ソリューションのブースでは、不慣れな設備の現場で生産運用を任された担当者が、製造設備のトラブルシューティングに挑戦するデモを展示しました。

左下に見える装置は、化学製品の製造設備を模したミニチュアです。設備 ( 左の水槽 ) 内の原材料 ( 水 ) を攪拌し、パイプラインを通じて次工程の設備 ( 右の水槽 ) へと供給されます。双方の設備で攪拌と供給を繰り返す仕組みとなっています。ある時、システムが攪拌速度の不足を検知します。これは品質不良の恐れがある現象のため、生成 AI が過去の不具合報告書をもとに、問題が発生していると判断し、現場作業員のスマートフォンに連絡します。生成 AI は、発生中の事実を伝えるとともに、解決案を提示します。

本ソリューションに関する詳細は、アーキテクチャやサンプルコードとともに、「 製造業における技能継承への生成AI・音声・映像の活用とサンプルソースのご紹介 」で公開しておりますので、こちらもご覧ください。

セミナー:AWS と共に歩むプロセス産業 DX の加速

セミナーでは、全社最適なデータ利活用の提案を行いました。


ユーザー部門にとって理想的なデータ利活用の環境とは、データの収集や編集加工に労力を奪われることなく、目的に即したデータが見つかり、読み解け、分析で価値を高められる状態になることと考えます。生成 AI を活用することで、データから学び、気づきや発想の広がりを体験できることも重要です。このような環境は、オンプレミスで構築することも可能です。しかし、AWS クラウドであれば、容量無制限のストレージサービスをはじめ、環境を構築する様々な場面でご支援となる豊富なサービス群があります。

終わりに

AWS として、ケミカルマテリアル Japan に出展することは初めての試みでした。2 日のイベントを通じて、出展ブースには多くの来場者にお立ち寄り頂き、自社デジタル環境における課題や理想についてもお聞きすることが出来ました。
AWS やパートナーは、サービスやソリューションを提供するだけでなく、お客様固有の環境や課題に伴走したご支援を行っています。是非、こちらからお問合せください。

本ブログは、ソリューションアーキテクト 田中豊洋 が担当しました。