Amazon Web Services ブログ

消費者に愛されるブランドを構築する

本ブログでは、消費財業界向けに発表した e-Book「消費者に愛される ブランドを 構築する」について紹介します。


消費財業界は、テクノロジーの急速な進歩により、かつてないほど多様性に富んだ時代を迎えています。企業は、商品の製造、流通、マーケティング、評価の方法を改善するために必要なデータ、分析、ツールを利用できるようになりました。しかし、消費財企業の経営幹部の多くは、自社のビジネスを継続的にモダナイズしなければ、事業の存続が危ぶまれる可能性さえあると考えています。次世代のコンピテンシーを迅速に適用できるよう努め、消費者に愛されるブランドの構築が事業成功の鍵になるのです。

ブランドとは、商品の品質、カスタマーサービス、マーケティングや広告の印象、評判などの無形要素を含む、企業に対する総合的な認識を表すものです。新たに公開された Amazon Web Services (AWS) の eBook では、消費財ブランドを高める際に欠かすことのできない重要な要素について解説しています。また、魅力的なブランドの構築に役立つ長期的な考慮事項や、消費財企業が AWS のクラウドテクノロジーを利用して、この動的な市場の進化する課題に対応する方法についても説明します。さらに、先進消費財企業の事例に見る 6 つの重要なソリューション分野や、AI によって消費財ブランドがどのように変革されるのかについても触れています。

魅力的なブランドを構築するための 4 つの重要な要素と長期的な考慮事項

魅力的なブランドを構築し維持するためのポイントについて整理しています。まずブランド構築のために、データ戦略、サプライチェーン、IT インフラ、イノベーションの 4 つの要素に注力することが重要です。さらに、長期的な視点から、パーソナライゼーション、D2C (Direct to Consumer)戦略、オムニチャネル販売、社会的責任、M&A 活動にも取り組む必要があります。これらの要素を組み合わせることで、消費者のニーズに応え、競争力のあるブランドを確立することができます。デジタル技術の活用と消費者中心のアプローチを通じて、ブランドの価値を高め、持続可能な成長を実現することが可能となります。

4 つの重要な要素

  1. セキュリティに基づくデータ戦略の設定:消費者のプライバシーを尊重しつつ、パーソナライズされたレコメンデーションを提供するためのデータ戦略を策定します。
  2. サプライチェーン業務のモダナイズ:AI ベースの予測や在庫の最適化を通じて、消費者がいつでもどこでも商品を購入できるようにします。
  3. IT インフラストラクチャの変革:クラウドインフラとマイクロサービスアーキテクチャを活用し、業務改善とコスト削減を実現します。
  4. イノベーションのパイプライン確立:継続的に革新的な新商品を提供、ビジネス全体でイノベーションを推進します。

長期的な考慮事項

  • パーソナライズを強化してロイヤルティを高める:AI と機械学習を活用し、すべてのタッチポイントでパーソナライズされた体験を提供します。
  • コスト効率の高い方法で D2C を実現する:直接消費者とつながり、ファーストパーティデータを収集するための D2C 戦略を検討します。
  • 商品をどこからでも購入可能にする:オムニチャネル戦略を採用し、消費者がいつでもどこでも商品を購入できるようにします。
  • 社会的責任と信頼性を一致させる:環境への配慮や社会貢献活動を通じて、ブランドの信頼性を高めます。
  • M&A 活動をモニタリングする:新商品やブランドの追加、競合他社の買収などの M&A 機会を常に探ります。
 

先進消費財企業の事例に見る 6 つの重要ソリューション分野と AWS の成功事例

消費財企業が AWS を選ぶ理由

上記の考慮事項を踏まえ、多くの消費財企業から AWS は選ばれてきました。AWS は、Amazon が過去 25 年間に使用および改良を重ねてきたものと同じクラウド機能を提供し、実証済みの価値をもたらすことで、消費者の信頼とブランドロイヤルティを高める消費財のユースケースを推進しています。AWS を利用することで、データプライバシーを保護しながら消費者のインサイトを得る、品質を犠牲にすることなくコストを削減する、モダンなITインフラストラクチャで俊敏性と柔軟性を得る、AIを活用した俊敏なイノベーションパイプラインを作成する、といったメリットがあります。

6 つの重要なソリューション分野とAWS の成功事例

AWS の先進的なソリューションは、消費財企業の様々な課題解決に貢献しています。商品開発から製造、サプライチェーン管理、マーケティング、コマース、IT インフラまで、幅広い分野で AWS のサービスが活用されています。AI 、IoT 、データ分析などの最新技術を駆使することで、消費者ニーズへの迅速な対応、効率的な業務運営、一貫したブランド体験の提供が可能になります。これらの成功事例は、AWS が消費財企業のデジタルトランスフォーメーションと競争力強化に不可欠なパートナーであることを示しています。

  1. 商品開発:高度な技術で商品開発を加速する

    消費者のフィードバック、ソーシャルメディアでの口コミ、市場動向などをを収集、分析することから、新たな消費者の好みや満たされていないニーズを特定する、このインサイトドリブンなアプローチは、革新的な商品を開発するのに役立ちます。

    紹介されている顧客事例

    家庭用品からヘルスケア用品まで消費者製品の提供を手がける Helen of Troy は、AWS IoT Core を使用して消費者の Bluetooth 対応デバイスである、コネクテッド体温計からデータを収集し、カスタマーエクスペリエンスの継続的な革新と改善を実現しています。このデータ分析により、スマートデバイスの最も有用な機能を特定し、効果的なリソース配分を行っています。例えば米国全土で体温データを収集していることで、ある地域で病気が増加している場合に、保護者に通知することが可能です。この通知が行動に影響を与え、感染症の伝染減少につながる可能性があります。

  2. 製造:品質とサステナビリティを維持しながら製造を最適化する

    消費者はよりよい商品をより安く手に入れるだけでなく、持続可能な方法で生産された商品を求めてもいます。環境に配慮しつつ製造プロセスを最適化する新しい方法を模索し、消費者の期待に応え、上回らなくてはなりません。

    紹介されている顧客事例

    大手パルプ・製紙企業の Georgia-Pacific は、AWS で稼働する SAS Viya ソリューションを導入し、生産性と流通を向上させました。15,000 以上の機械学習モデルと分析プラットフォームにより、潜在的な機器の故障を予測して計画外のダウンタイムを 30% 削減しながら、安全上の事故や非効率的な機械運用、予期しない生産中断を防止しています

  3. サプライチェーン:AI ドリブンの分析によりサプライチェーンの回復力を向上させる

    サプライチェーンにおけるコラボレーションは、在庫管理の改善、在庫切れの減少、物流コストの削減につながります。消費者が購入したいときにどこからでも商品を購入できるようにすることで、カスタマーエクスペリエンスを向上させます。欠品によるブランドの信頼低下も防ぎます。

    紹介されている顧客事例

    飲料ボトリング会社 Coca-Cola Andina は、AWS を活用して社内向け Thanos アプリケーションを構築し、在庫管理やニアリアルタイムでの業務追跡を実現しました。これにより、各流通センターの状況確認や従業員の生産性追跡、注文ステータスの追跡が可能となり、業務の可視性が大幅に向上しました。分析チームの生産性が 80% 向上したことで、よりデータ駆動型の意思決定ができるようになったのです。

  4. マーケティング:エンゲージメントの価値強化で、ブランドロイヤルティを高める

    ブランドロイヤルティを構築する体験を生み出すためには、商品の魅力を高めるだけでなく、有意義な消費者エンゲージメントを通じて、今日の競合ひしめく市場で差別化を図る必要があります。

    紹介されている顧客事例

    食品飲料メーカーである Danone Indonesia は、AWS パートナーの Treasure Data の顧客データプラットフォーム (CDP) を使用して、消費者の関心を特定し、ウェブサイトでのエンゲージメントを追跡、過去の購入履歴を確認しています。これにより、デジタルおよび非デジタルチャネルを通じた一貫したカスタマージャーニーの追跡が可能となり、AI ベースの商品レコメンデーションやライフタイムバリューの予測などが実現しました。

  5. ユニファイドコマース:オムニチャネルコマースにより一貫性のある消費者エクスペリエンスを創出

    現代のオムニチャネルコマースを理解し、商品をいつでも、どこからでも見つけられるように、小売業者とデジタルコマース機能をシームレスに連携する必要があります。また、消費者がどこでどのように買い物をしても一貫したブランド体験を提供できるようにすることも求められます。

    紹介されている顧客事例

    燻製器、グリル、バーベキュー用品でよく知られている Traeger は、Amazon Connect の機能を活用して、データと機械学習モデルを使用した自動問題検出システムを構築しました。これにより、エージェントの顧客満足度と初回解決率が約 15% 向上し、通話時間も約 15% 短縮されました。

  6. IT とデジタルトランスフォーメーション:IT インフラストラクチャのモダナイズによるビジネス成果の向上

    消費財企業は、スピードと俊敏性を高めるために、クラウドベースのソリューションを使用してテクノロジーインフラストラクチャをモダナイズする必要があります。

    紹介されている顧客事例

    サントリーは、AWS を共通環境として採用し、5 つの異なるシステムを 1 つの一貫性のあるグローバルインフラストラクチャシステムに統合しました。インフラストラクチャの総保有コスト (TCO) を約 25% 削減できました。これにより、アプリ開発の高速化やメンテナンス負荷の軽減、セキュリティ対策の強化、ビジネスの可視化を実現しました。

 

AI によって消費財ブランドはどう変わるのか

消費財企業が AI を活用してブランド構築を強化する動きが加速しています。効率向上、意思決定の強化、イノベーション推進を目指す中で、特に以下において AI の利用が増加すると予想されています。

  • 需要予測: AI アルゴリズムが過去の売上データや市場動向を分析し、より正確な需要予測を生成。在庫の最適化と顧客体験の向上につながります。
  • サプライチェーンの最適化: AI システムがリスク予測や非効率箇所の特定、配送ルートの最適化を行い、物流効率を高めコスト削減を実現します。
  • 商品開発とイノベーション: 機械学習や NLP (自然言語処理)を活用し、消費者のフィードバックや市場動向を分析。消費者ニーズに合った商品開発や改良が可能になります。
  • 品質管理と保証: AI 画像認識システムが生産ライン上で効率的に商品を検査。一貫した品質確保と不良品リスクの軽減に貢献します。
  • 価格の最適化: AI アルゴリズムがリアルタイムで市場動向を分析し、最適な価格戦略を提案。競争力維持と収益最大化を両立させます。
  • カスタマーサービス: AI チャットボットやバーチャルアシスタントが 24 時間体制のサポートを提供。顧客体験の向上と人的リソースの効率化を実現します。

これらの分野で AI を活用することで、消費財企業はより効率的で革新的なブランド構築が可能になります。市場の変化に迅速に対応し、顧客ニーズを的確に捉えた商品開発やサービス提供が実現することで、ブランド価値の向上と競争力の強化が期待できます。

 

まとめ

消費財業界は、テクノロジーの急速な進歩により大きな変革期を迎えています。企業は、商品の製造、流通、マーケティング、評価の方法を改善するために必要なデータ、分析、ツールを利用できるようになりました。消費財企業が消費者に愛されるブランドを構築するためには、セキュリティに基づくデータ戦略の設定、サプライチェーン業務のモダナイズ、IT インフラストラクチャの変革、イノベーションのパイプラインの確立が重要です。
また、パーソナライズの強化、D2C の実現、商品の購入可能性の拡大、社会的責任と信頼性の一致、M&A 活動のモニタリングなど、長期的な考慮事項にも注目する必要があります。

eBook において、先進消費財企業の事例から、商品開発、製造、サプライチェーン、マーケティング、ユニファイドコマース、IT とデジタルトランスフォーメーションの 6 つの重要なソリューション分野における AWS の活用方法を学ぶことができます。AWS は、消費財ビジネスの業務と業績を変革する支援体制が整っています。消費財企業は、AWS の技術力とサービス、経験豊富なパートナーとビジネスイネーブラーを活用することで、スタートアップ並みの俊敏さで、チャンスを逃さず行動し、実践での効率性を高め、消費者に愛されるブランドを構築することができるのです。詳細についてはぜひ、本 eBook や その他の e-book をご参照ください。

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本ブログはソリューションアーキテクトの山下が執筆しました。