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コンタクトフロー内でメールメッセージを処理するベストプラクティス

効率的で効果的な顧客サービスを提供することは組織にとって不可欠であり、メールは依然として重要なコミュニケーションチャネルです。メールは顧客が助けを求めたり、問題を解決したりするための柔軟で使い慣れた媒体です。チャットやソーシャルメディアなどの新しいコミュニケーション手段が台頭していますが、メールは非同期な性質をもつため、顧客は自分自身のペースでやり取りを行えると同時に、組織は詳細なやり取りの履歴を得ることが可能です。しかし、顧客からの問い合わせの量が増えるにつれて、メールサポートの効率的な管理が課題になる可能性があります。顧客からのメールを処理するプロセスが合理化されなければ、組織は緊急の問い合わせの優先順位付けや、一人一人に合わせた対応、機密情報の識別に苦労することになります。

メールの解析と分析を自動化することで、これらの課題に対処し、顧客体験とエージェントの生産性の両方を改善できます。自動化されたメール処理のソリューションを導入することで、組織は顧客からの問い合わせを効率的に管理して対応でき高度なパーソナライゼーションおよびデータプライバシー規制の遵守とタイムリーな問題解決を両立できるようになります。組織はメールの内容に基づいて、重要な問題のエスカレーション、自動返信の送信、回答不要なお礼のメールのルーティングを避けるなど、適切な措置を講じることが可能になります。また、メール分析では、意図、感情、キーワード、個人情報を検出することも可能です。

Amazon Connect は、 Amazon Connect Agent Workspace からメール問い合わせを簡単に処理できる機能を発表しました。このブログ記事では、人工知能 ( AI ) を使用したインテリジェントなメールルーティング、有意義な顧客洞察、パーソナライズ、メール処理の自動化を Amazon Connect でどのように実現するか紹介します。

概要

Amazon Connect Email は他の Amazon Connect チャネルと同様のフローを使用使用して、ルーティング、キューイング、および統合機能を提供します。Amazon Connect には、受信メールを処理するための StartEmailContact API が用意されています。この API はリクエストオブジェクトのフィールドにメールの基本情報を含むことができ、これらのフィールドを使用してメール情報を入力することで Amazon Connect 内でメールによる問い合わせを開始できます。ただし、メールの問い合わせ情報に保存されるのは、差出人、宛先、CC、件名などの メールの問い合わせ属性だけです。メール本文の内容と添付ファイルは Amazon Simple Storage Service (S3) に保存されます。

メールの問い合わせ情報を入力する方法の詳細については、Set up email in Amazon Connect を参照してください。

メールメッセージの処理

AWS Lambda を使ったフローで Amazon S3 からメールメッセージを取得し、 AI 、機械学習 (ML) 、Amazon Bedrock のような大規模言語モデル (LLM) によって内容を分析できます。

顧客が Amazon Connect インスタンスに設定されたメールアドレスにメールを送信すると、そのメールは最初に Amazon Simple Email Service (SES) によって処理されます。その後、Amazon SES サービスが StartEmailContact API を呼び出します。この API はリクエストパラメータの検証と、「To」または「CC」フィールドの 1 つ以上のメールアドレスが有効で、Amazon Connect インスタンス内に存在するかの確認を行います。確認に成功すると、問い合わせ ID が生成され、API レスポンスとして返却されます。その後、Amazon Connect インスタンスのメールアドレスに関連付けられたフローを開始する前に、非同期ワークフローによりメールメッセージが処理されます。 Amazon Connect ではメールのメタデータ ( From 、 To 、 CC 、件名 ) にフロー属性としてアクセスしワークフロー内のルーティングを決定できます。ただし、メールメッセージの内容は reference データとして S3 に保存されます。

メールメッセージへのアクセス、分析、利用方法に関する推奨設計は次のとおりです。

  1. メールメッセージを処理するフローを作成し、フロー内の Lambda 関数を呼び出します。
    1. フローをメールアドレスに関連付ける方法については、Set up email in Amazon Connect を参照してください。
  2. Lambda 関数を使用して S3 のメールメッセージにアクセスします。
    1. ListContactReferences — メールメッセージの場所と添付ファイルの場所のリストを取得します。
    2. GetAttachedFile — S3 からメールメッセージ ( AssociatedResourceArn ) をダウンロードして、選択した自動化ソリューションに送信します。
  3. 選択した AI ソリューション ( Amazon Bedrock など ) にメールメッセージを送信します。
    1. メールメッセージ内の意図、感情、キーワード、個人情報を検出するよう自動化ソリューションに促します。
  4. Lambda 関数からの応答をフローに返却します。
    1. 意図 ( 例:「パスワードリセット」、「Windows アップデート」、「Wi-Fi が機能しない」 )
    2. 感情 ( 例: 嬉しい、怒っている、悲しい、ニュートラル )
    3. キーワード ( 顧客の名前、住所、電話番号など )
    4. 個人情報検出 ( 例: True / False )
  5. 返却された値に基づいてフロー内で処理を実行します。
    1. 「メッセージを送信」ブロックを使用して、顧客からのFAQやよくある質問に自動的に回答します。
    2. 顧客の感情に基づいて、キュー内のメールコンタクトをエスカレーションします。
    3. 顧客から共有され情報に基づいてプロフィールを入力する。
    4. メール内で個人情報が検出されたことをスーパーバイザーに通知する。

リファレンス実装は GitHub で公開されています。リファレンス実装では Amazon Bedrock で利用可能な Anthropic Claude Haiku モデルを利用しています。このリファレンス実装では必要なアウトプットをキー/バリュー形式で生成し、 Amazon Connect フロー内の後続のステップで利用します。

まとめ

メール管理に AI による自動化を採用することで、組織はカスタマーサポートの対応方法を変革できます。これにより、メールの量が増えても、サービスの質を犠牲にすることなく業務を拡大できます。このソリューションを実装することで、Amazon Connect のお客様は、高度なパーソナライゼーションと応答性を維持しながら、顧客からの問い合わせを効率的に処理することができます。

本ブログはソリューションアーキテクトの奈良 一希が翻訳しました。原文はこちらです。