Amazon Web Services ブログ
大学 ICT 推進協議会 2024 年度年次大会 (AXIES 2024) 出展・登壇レポート
2024 年 12 月 10 日から 12 日まで、奈良県コンベンションセンターで開催された AXIES 2024 年次大会に、アマゾン ウェブ サービス ジャパン合同会社 (AWS) が賛助会員として協賛・出展しました。本ブログでは、展示ブースや登壇セミナーの内容をご紹介します。
展示ブース:生成 AI 活用デモンストレーション
AWS の展示ブースでは、GitHub でオープンソースとして公開している生成 AI アプリケーションである Generative AI Use Cases JP (GenU) のデモンストレーションを実施しました。GenU は技術的知識がなくても即時に利用可能で、Amazon Bedrock の生成 AI モデルに対応した実用的なアプリケーションです。高いカスタマイズ性を備え、研究論文の自動要約や教育関連文書の自動作成など、教育現場での実践的な活用が可能です。
参加者からは、 大学での活用事例に関心が寄せられました。ある大学では、GenU を活用して教職員向けの生成 AI アプリケーションを 1 ヶ月という短期間で内製開発しました。これにより会議録作成時間を 1/4 に削減するなど、業務効率化に大きな成果を上げています。
図 1: AWS の展示ブース
協賛セミナー
『 AI とデータ活用・分析のためのデータレイクとは』と題し、AWS パブリックセクター技術統括本部 シニアソリューションアーキテクトの櫻田武嗣が登壇しました。
セミナーでは、まずデータレイクの基本概念について解説しました。従来のデータウェアハウスでは目的に合わせて加工済みのデータを保存していましたが、データレイクではデータを「生」のまま保存し、将来のニーズに備えることができます。Amazon Simple Storage Service (Amazon S3) を中核としたデータレイクでは、データを 3 箇所以上のアベイラビリティゾーンへ自動的に保管します。また、高いデータ耐久性や容量無制限のスケーラビリティなど、高い信頼性と拡張性を実現しています。
海外の活用事例として、ポートランド州立大学での取り組みを紹介しました。同大学では卒業生の履修履歴データに機械学習を適用し、現役学生にお勧めのコースを提示する機械学習モデルを作成。学生の学位取得を効率的に支援し、中退者数の削減に寄与しています。また、モナシュ大学では学習管理システムを AWS に 12 週間で移行し、学内試験の 80 %を紙ベースからコンピュータベースに移行することで採点時間を 50 %削減、700 万ドルのコスト削減を実現しました。
国内事例としては、オンプレミスから AWS に移行し、初期費用だけでなく運用にかかる関連コストを含めた総コスト削減をした近畿大学の事例を紹介。職員はハードウェア起因の定期的なリプレース作業から解放され、学生向けサービスの企画など付加価値の高い業務に注力できるようになりました。また、東北大学での取り組みの事例についても紹介しました。東北大学も別のセッション内にてこの取り組みについて触れていました。
さらに、 AWS re:Invent 2024 で発表された AWS サービスとして、Amazon S3 の新しいデータ整合性検証の仕組みや Amazon FSx Intelligent-Tiering 、AWS Transfer Family ウェブアプリケーションなど、データレイクの運用をより効率的にする機能についても紹介しました。
図 2: データレイクの基本概念
ランチョンセミナー
『教育研究機関の様々なワークロードで活用される AWS 』をテーマに、AWS パブリックセクター技術統括本部からシニアソリューションアーキテクト 佐々木啓とソリューションアーキテクト 川戸渉が登壇しました。
AWS の生成 AI スタックは、3 層構造で体系化されています。まず基盤層では、2024年12月時点で最新の AI チップ AWS Trainium2 を搭載した Amazon Elastic Compute Cloud (Amazon EC2) Trn2 インスタンスが従来比 30-40 % 高いコストパフォーマンスを実現し、Amazon EC2 UltraClusters による大規模分散学習環境を提供しています。さらに用途に合わせて GPU 、AWS Inferentia を利用することもできます。これらのインフラには Elastic Fabric Adapter 、 AWS Nitro System などの AWS が独自開発しているテクノロジーが活用されています。
次の層では、基盤モデルを活用してアプリケーションを作るためのツール群を提供しています。Amazon Bedrock を通じて組織専用の基盤モデル活用環境を実現し、新たに発表された Amazon Nova (Micro / Lite / Pro / Canvas / Reel) による画像・動画生成機能も提供しています。セミナーでは、Nova Canvas で画像を生成し、 その画像から Nova Reel で動画を生成するデモンストレーションを行い、その革新的な生成能力に多くの参加者が関心を示しました。
最上位層では、実用的なアプリケーション群を展開しています。Amazon Q Business による組織内データへの自然な問答、Amazon Q in QuickSight によるデータ分析支援、Amazon Q Developer による開発支援、さらに Amazon Q in Connect によるコンタクトセンター支援など、幅広いソリューションを提供しています。
図 3: AWS の生成 AI スタック
AWS は研究データ管理において、二つの重要な取り組みを行っています。一つは、オープンデータスポンサーシッププログラム です。このプログラムでは、公共性の高い研究データをオープンデータとして公開する際に、AWS が無償でストレージを提供します。もう一つは、国立情報学研究所が運営する研究データ管理サービスである GakuNin RDM への対応です。これらの取り組みにより、AWS は研究データのオープン化推進と、データ管理のコンプライアンス強化の両面を支援しています。
さらに、AWS Data Exchange を通じてデータの流通と活用も促進しています。このように、AWS は教育研究機関に対して、研究データの公開、管理、活用を包括的に支援する先進的なクラウドソリューションを提供しています。
図 4: 研究データにおけるAWSの取り組み
今後の展望
AWS は教育・研究機関のデジタルトランスフォーメーション (DX) を継続的に支援していきます。教職員の業務効率化、カリキュラムの最適化、研究開発の効率向上など、先端技術の実装を通じて教育・研究機関が直面する様々な課題の解決を後押ししてまいります。
本ブログに関するお問い合わせは、AWS 営業担当 までご連絡ください。
本ブログはパブリックセクターソリューションアーキテクトの川戸渉が執筆しました。