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【開催報告】 第6回 Amazon SageMaker 事例祭り
アマゾン ウェブ サービス ジャパン株式会社 機械学習ソリューションアーキテクトの上総 (Twitter:@tkazusa) です。AWS Japan 目黒オフィスでは「Amazon SageMaker 事例祭り」(Twitter: #sagemaker_fes) を定期的に開催しています。2019年7月18日に開催された第6回 Amzon SageMaker 事例祭りでは、AWS Japan のソリューションアーキテクトによるサービスの最新情報や技術情報と、Amazon SageMaker をご利用いただいているお客様をゲストスピーカーにお招きし、実際に導入頂いたお客様による「体験談」をお話し頂きました。
「AWSの機械学習サービス概要」[Slides]
アマゾン ウェブサービス ジャパン株式会社
機械学習ソリューションアーキテクト 鮫島 正樹
AWS が提供する機械学習サービスの全体像について、Machine Learning サービススタックという、AWS の考え方にもとづいて紹介をしました。Machine Learning サービススタックとは、AWS の機械学習サービスを構成する、AIサービス、MLサービス、MLフレームワーク&インフラストラクチャを表現したものです。
まず、お客様がデータを用意するだけで、APIから機械学習を利用できるAIサービスについてご紹介しました。静止画・動画認識の Amazon Rekognition や、Amazon で利用されている技術と同様のものを利用したリコメンデーションサービス Amazon Personalize など、様々な機械学習アルゴリズムをご利用頂けます。また、お客様の目的に合わせて独自の機械学習サービスを実装するためのマネージドサービス Amazon SageMaker や、エッジも含めて幅広く AWS がサポートしているMLフレームワーク&インフラストラクチャについてご紹介しました。
「Amazon SageMaker 基礎」[Slides]
アマゾン ウェブサービス ジャパン株式会社
機械学習ソリューションアーキテクト 宇都宮 聖子
AWSが提供する機械学習開発プラットフォームであるAmazon SageMaker での開発・学習・推論環境についてお話し致しました。
特に機械学習システムの開発においては、環境構築などビジネス上の改題解決に直接貢献しないにも関わらず負荷の高いワークロードがあり、SageMakerによってその負荷の削減できる点をお伝えしました。お客様は学習に用いるPyhtonスクリプトとデータを Amazon S3 に置き、Amazon ECR にプッシュされたコンテナイメージを活用することで、学習ジョブを秒単位の課金で実行することが可能です。
SageMakerではビルトインアルゴリズムを提供しており、簡単に機械学習を始めることができます。さらにAmazon SageMaker Python SDK を用いて SageMakerがサポートするフレームワーク・コンテナイメージを用いることもできます。
セッション後半では、機械学習ワークフローの構築に用いることのできる SageMaker の各機能についての詳細もご紹介しました。
また多くのご要望を頂いていた、SageMakerの学習ジョブにおけるスポットインスタンス対応がAWS Summit NYで発表されたことなど、サービスの最新動向についてもご案内させて頂きました。
「Amazon SageMaker Ground Truthのご紹介」[Slides]
アマゾン ウェブサービス ジャパン株式会社
機械学習ソリューションアーキテクト 志村 誠
独自のデータを利用した教師あり学習を行うためには、ラベル付きデータを準備する必要があります。アノテーション(データへのラベル付け)にはコスト・時間がかかるため、今日では機械学習のビジネス活用の一つの大きなハードルとなっていることも多いのではないでしょうか。
このラベル付け (アノテーション) のための機能を提供するのが Amazon SageMaker Ground Truth です。
イヌネコなどの画像分類、画像中に枠を付ける物体検出、ピクセル単位でラベルを付けるセマンティックセグメンテーション、テキスト分類といった様々なタスクに対し、GUIを用いて容易なアノテーションを実現します。
また、アノテーションを行うワーカーは、クラウドソーシング(Amazon Mechanical Turk)から提供されるパブリック、友人や社員などを登録して活用するプライベート、登録済みのアノテーション専門企業へ依頼するベンダーの3種類からお選びいただくことができます。
自動ラベリング機能を活用して、ラベル付けの時間とコストを削減することも可能です。
「初心者でもできた、SageMaker+独自モデルで問い合わせ分類」[Slides]
株式会社ミスミグループ
本社 ITサービスプラットフォーム IT基盤展開室 先端技術評価チーム ディレクター 宋 美沙 様
株式会社ミスミグループでは先端技術を活用するチームを立ち上げ、機械学習のビジネス活用に取り組まれています。社内のリソースが限られていることを認識しつつも、機械学習をビジネスに正しく使うために、外部に委託せず社内で開発することを意思決定されました。
今回ご紹介いただいた内容は、顧客からの問い合わせを機械学習を利用して自動で分類するというものです。データ量に偏りがあり、すべてを ML で実施することは難しいと判断され、ユーザーとの相談で優先度の高い課題に絞り「MLに全部おまかせ」ではなく「人間のお手伝い」を目指した開発を行われました。その後、モデル構築・プロトタイプ開発を進めながら、ユーザのフィードバックにもとづく改善が必要になるなかで、第3回SageMaker事例祭りにご参加いただきました。Amazon SageMaker の有用性を感じて頂き、機械学習システムの構築にSageMakerを採用いただくことで、改善のための試行錯誤を効率化されました。特にエンジニアリソースが少ない中で、手間の大きいエンドポイント作成をSageMakerに任せることができ、しかもワンラインで実行できる点には感動されたとのコメントがありました。素早いプロトタイピングで動くモノを開発し、それにもとづいた議論を行うことで、ユーザーにとってあるべきユースケースを決められたようです。完全を求める前にスピードを重視した方が良いとの経験談には多くの学びがありました。
「ソーシャルメディア分析Saasの大規模自然言語処理におけるSageMakerの活用事例」[Slides]
株式会社ホットリンク
開発本部R&D部 部長/榊 剛史 様、山中 志一 様
株式会社ホットリンクでは、自社のソーシャルメディア分析SaaS、特に自然言語処理(NLP)の領域に注力されていらっしゃいます。2000年代の後半から積極的に機械学習に取り組まれ、ルールベース+αの時代、機械学習の時代、深層学習の時代と徐々に適用する技術を広げられてきました。こうした技術を取り込みながら、SNSアカウントのプロフィール推定や興味関心推定といった、機械学習を活用した機能に AWS をご利用いただいています。発表の中では、具体的な手法やアーキテクチャのご説明や、実際の画面でのデモをご紹介いただきました。
直近ではクチコミ@係長というSNS投稿からのキーフレーズ抽出に Amazon SageMaker をご利用いただいており、その取り組みについてご紹介をいただきました。コンテナ化における苦労について共有いただきつつ、ビルトインアルゴリズムの BlazingTextを利用した word2vec の高速化、ログ管理や学習再実行の簡素化、ハイパーパラメータ調整も含めて複数のトレーニングジョブの同時実行が可能であるなどのメリットをお話頂きました。技術が実用化されるまでの期間が短くなってきているなかで、機械学習開発を効率化する技術・ツールが必要となっていますそのなかで Amazon SageMaker を活用した機械学習開発の効率化のついてお話いただきました。
「JapanTaxiにおけるSagemaker+αによる機械学習アプリケーションの本番運用」[Slides]
JapanTaxi株式会社
次世代モビリティ事業部 モビリティ研究開発グループ 渡部 徹太郎 様
JapanTaxi株式会社では、配車アプリケーションにおいて、機械学習によるお迎え時間予測を行っています。到着時間の期待と実績に差があると、注文キャンセルが発生し乗車機会の損失につながるため、配車注文前の到着予測時間の機能が必要とのことでした。実際に予測機能を利用したA/Bテストを実施したところキャンセル率の低下を確認できたそうです。
機械学習モデルを開発しても、それを実サービスに適用して運用するためには、日々の精度モニタリングや、モデル更新のための開発・運用フローの整備が必要となります。これに対して、Amazon SageMaker を中心として複数の AWS サービスをご利用いただき、開発・運用のフローを整備されています。発表の中ではその詳細なアーキテクチャについて複数ご紹介いただきました。
具体的には、学習の日次実行とモデル更新のための手動実行において、それぞれに適したジョブ管理基盤を構築されたり、モデル精度異常を複数の指標で管理した上で、予測分布をBIツールを用いて目視確認するなど多角的なモデル評価を行うなど、本番運用ならでのノウハウを共有頂きました。
SageMaker はモデル更新の際に、いきなり新しいモデルで置き換えるのではなく、まずは10%だけ新しいモデルに置き換え、問題がなければすべて新しいモデルでリリースするようなカナリアリリースの実施が容易な点などが特徴であるとご紹介頂きました。
まとめ
今回は Amazon SageMaker とアノテーションサービス Amazon SageMaker Ground Truth のご紹介ののち、Amazon SageMaker を活用されているゲストの方々をお迎えし、実際の実例についてお話しいただきました。次回、第7回 Amazon SageMaker 事例祭りの開催は2019年8月を予定しています。なお、過去の Amazon SageMaker 事例祭りの開催概要と登壇スライドは下記のリンクからご覧いただけます。