本レポートでは、アジア太平洋(APAC)地域の 5 か国(オーストラリア、インド、日本、シンガポール、韓国)の多様な業種にわたる民間企業・公共機関 500 社・団体を対象に調査を行い、日本では 100 社・団体から回答を得ました。本レポートでは、クラウドサービス事業者が日本の再生可能エネルギー市場を活用し、日本国内の事業を 100% 再生可能エネルギーで運営することで、CO2 排出量の削減効果がさらに高まると報告しています。例えば、従業員 250 人以上を雇用する大企業 11,000 社
1のうち 25% が、1 メガワット(MW)相当のワークロードを再生可能エネルギーで稼働するクラウドに移行した場合
2 、日本の一般家庭 32 万 8,000 世帯の 1 年分に相当する CO2 排出量の削減が可能と試算しています。
アマゾン ウェブ サービス アジア太平洋地域・日本担当 エネルギー政策責任者であるケン・ハイグ(Ken Haig)は、次のように述べています。「アジア太平洋地域のお客様は、ワークロードを AWS クラウドに移行することで、当社の持続可能性への取り組みによる効果も活かしながら、CO2 排出量を大幅に削減可能です。AWS は、私たち自身の規模とイノベーションへの注力を活かすことで、一般的な企業よりも迅速にデータセンターの運用効率を改善することができます。運用効率を最大限に高めてデータセンターの電力供給に必要なエネルギー量を削減するだけでなく、2030 年までに私たちが使用するすべての電力を 100% 再生可能エネルギーで賄うべく取り組んでおり、当初の予定を 5 年前倒しして、2025 年までにグローバル全体でこの目標に達する見込みです。アジア太平洋地域は、100% 再生可能エネルギーの調達を目指す企業にとって、世界でも課題の残る地域のひとつですが、これらの課題を克服するために私たちは継続して民間企業・公共機関と協力し、この地域におけるプロジェクトへの投資を加速していきたいと考えています」
「AWS はまた、お客様と緊密に連携し、クラウドテクノロジーによってお客様ご自身のサステナビリティ目標の達成を支援すると同時に、低炭素ソリューションにおけるイノベーションを推進しています。私たちは、日本政府によるクラウドの導入を加速するイニシアチブや、2050 年までに温室効果ガス排出量をゼロにするというコミットメントを歓迎します。クラウドテクノロジーがこの2つの目標の達成に重要な役割を果たすと確信しており、日本の気候変動に関する目標の実現に向けて、今後も民間企業・公共機関の皆様と協力できることを楽しみにしています」
S&P グローバル・マーケット・インテリジェンス 451 Research データセンターサービス兼インフラストラクチャ担当リサーチ・ディレクターのケリー・モーガン(Kelly Morgan)氏は、次のように述べています。「本レポートによると、日本の企業および公共機関における IT システムのエネルギー効率は、APAC 地域の平均よりも低いことが明らかになりました。これは、日本では APAC 地域の民間企業・公共機関と比較して、サーバーのライフサイクルが長く、新しいサーバー・プラットフォームの導入も遅れているため、平均して古いサーバー群となっているためです。こうした不利な状況をデータセンター施設の効率的な運営で補うことで、日本の民間企業・公共機関は APAC 地域の平均よりも、総合的にエネルギー効率の高いデジタルインフラを構築しています。AWS をはじめとするクラウドプロバイダーは、設計から運用まで、インフラのすべての部分を同期させて効率を高め、コストを削減して大規模な IT サービスを提供しています。加えて、日本では現在、利用しやすく、経済的な企業向け再生可能エネルギーの選択肢が不足していますが、このことは非常に多くの CO2 排出量削減の可能性がまだ残されていることを示しています」
451 Research は本レポートにおいて、クラウドデータセンターでは、エネルギー効率の高い最新サーバーを使用し、かつ、オンプレミスのデータセンターよりも高い稼働率を実現していることから、エネルギーの効率化が得られていると報告しています。この 2 つの要素から、クラウドデータセンターは、オンプレミスのデータセンターと比べ、エネルギー消費量を 67.4% 削減しています。また、APAC 地域の企業の平均的なサーバー稼働率は 15% 弱である一方、効率性とアプリケーション性能の適切なバランスを見極めているクラウドサービス事業者におけるサーバー稼働率は 50% を大きく上回っています。さらに、クラウドデータセンターでは、高度な配電システムや冷却技術の採用など、施設レベルでのエネルギー効率向上を進めているため、さらに 11.4% のエネルギー削減効果を得ていることもわかりました。クラウドデータセンターでは、APAC 地域の企業・公共機関の5倍のエネルギー効率でワークロードが実行されています。
AWS は、環境にやさしい方法で事業を運営することにコミットしています。私たち自身の規模とインフラストラクチャを活かすことで、典型的なオンプレミスのデータセンターと比べ、高いリソース稼働率とエネルギー効率を実現しています。AWS はサーバーシステムにおいて電力を最適化するよう設計しており、最新のコンポーネント技術を採用しています。例えば、AWS のお客様に提供されている自社設計の AWS Graviton2 プロセッサは、Amazon Elastic Compute Cloud (EC2) で採用する他のプロセッサと比較し、1 ワットあたりのパフォーマンスが優れています。また、AWS は水の使用量を減らし、リアルタイムのセンサーデータを活用して変化する気象条件に対応できるよう冷却システムの設計を革新しています。特に高温多湿な気候のアジア太平洋地域では、冷却にかかるエネルギーが大きくなるため、冷却システムが重要です。
AWS は、コスト削減やビジネスプロセスの効率向上という価値提供に加えて多様なツールで、クラウド上で独自の革新的なサステナビリティソリューションを提供する日本企業を支援することにも注力しています。
例えば、東京電力グループの電力小売会社である TRENDE株式会社は、AWS を活用して、わずか 6 か月で電力小売サービス「あしたでんき」を構築し、サービス提供を開始しました。その後も住宅用太陽光発電を管理するシステムなどを順次追加して拡張しています。また、日本における再生可能エネルギーの普及に向けて、個人間での電力取引(P2P 電力取引)の実現にも取り組んでいます。
AWS を利用して環境に価値をもたらすサービスを立ち上げている日本企業もあります。水産養殖分野におけるスタートアップ企業であるウミトロン株式会社は、 AWS を利用して人工衛星データや IoT・機械学習を組み合わせることで、養殖業を発展させる持続可能なソリューションを構築しています。これらのソリューションにより、養殖魚への給餌プロセスを改善し、1 年かかる魚の育成期間を8か月に短縮し、給餌におけるロスを削減することで環境への影響を低減しました。
また、全国展開しているサイクルシェアリング企業である株式会社ドコモ・バイクシェアは、お客様にスケーラビリティと信頼性を提供できるよう、AWS を活用しています。サイクルシェアリングは渋滞を緩和し、環境負荷の少ない交通手段としても期待されています。2015 年の会社設立以降、サービスの利用者は毎年倍増し、直営事業の登録会員が約 100 万人を超え(*2021 年 3 月末時点)、2020 年度の利用回数は 1,400 万回を突破しました。こうした事業成長に伴うオンプレミス環境への大きな負荷を受けて、同社は 2019 年 3 月に AWS への移行を完了しました。現在、リアルタイムで自転車の稼働状況を収集し、同社独自の交通需要予測を行う技術を開発するなど、AWS 上で IoT や AI 技術の活用も進めています。
Amazon は、再生可能エネルギーを購入する世界最大の企業であり、全世界で 232 の風力・太陽光発電プロジェクトを展開しています。Amazon は、お客様と地球のために持続可能なビジネスを構築することを目指しており、パリ協定よりも 10 年早い 2040 年までに CO2 排出量を実質ゼロとする「気候変動対策に関する誓約 (The Climate Pledge) 」への参加を企業や組織に呼びかけています。現在、100 社・組織が The Climate Pledge に署名しており、各社がそれぞれの規模を活かして、実際のビジネスの変化やイノベーションを通じて経済の脱炭素化に取り組むことを約束しています。
1 出典:OECD 2020(2017 年のデータ)の発表データより。なお、大企業や公共機関の IT 機器の平均量は 4MW 相当
2 中規模クラウド移行プロジェクト