AWS Startup ブログ

SARAH 社、プロトタイピングプログラムにより NFT 機能の開発を 3 カ月で完了。開発期間を短縮し、スムーズな機能リリースを実現!

おいしい!が増えるグルメアプリ「SARAH」を運営する株式会社SARAH は、2024 年 4 月 3 日より新機能「NOREN」の提供を開始しました。「NOREN」は「ユーザーが飲食店を応援していること」を可視化できる NFT であり、「SARAH」アプリ上で Generative NFT の形式で全国の飲食店に対して付与されます。

「NOREN」の開発プロジェクトにおいて、SARAH 社は AWS のプロトタイピングプログラムを有効活用しました。これは、AWS の知識や経験が豊富なソリューションアーキテクトが、お客さまに代わってシステムのプロトタイプを開発するというプログラムです。

今回はプロトタイピングプログラムに関連する支援を行ったアマゾン ウェブ サービス ジャパン デジタルトランスフォーメーション本部 プロトタイピングソリューションアーキテクトの深津 颯騎とスタートアップ事業本部 技術統括部 ソリューションアーキテクトの大越 雄太が、SARAH 社 技術開発部 エンジニアリングマネージャーの川上 淳哉 氏とエンジニアの石川 一成 氏にお話を伺いました。

Web3 技術を活用し、飲食店への“応援”を可視化する

大越:今回リリースされた「NOREN」という機能の概要について教えてください。

川上:私たち SARAH は食に関連するサービスを複数展開している会社で、「おいしい!が増える」をコンセプトにしたグルメアプリ「SARAH」や市販食品の口コミサービス「もぐナビ」、食のビッグデータ分析サービス「FoodDataBank」の 3 つを主軸にしています。「SARAH」はレストランの一皿に対する口コミを投稿できるアプリであり、ユーザーは基本的にその飲食店のことをすごく気に入っています。ブロックチェーン技術を用いて、そのユーザーが店舗のファンであるということを証明できる、「ONIGIRI Chain」を開発しました。この事例では、国内初の Avalanche ブロックチェーンを開発する Ava Labs 社と戦略的パートナーシップを締結しています。

「SARAH」はレストランの一皿に対する口コミを投稿できるアプリであり、ユーザーは基本的にその飲食店のことをすごく気に入っています。そこに対して、ブロックチェーン技術を用いて、そのユーザーが店舗のファンであるということを証明できるのではないかと考えるようになりました。そこから、国内初の Avalanche ブロックチェーンを開発する Ava Labs 社と戦略的パートナーシップを締結し、食とヘルスケアに特化したパブリックブロックチェーン「ONIGIRI Chain」を開発しています。

そして、「ONIGIRI Chain」の技術を活用して、「ユーザーが飲食店を応援していること」を可視化できる「NOREN」という新機能の提供を開始しました。「NOREN」は全国の飲食店に対して、それぞれデザインが異なる Generative NFT の形式で生成されます。飲食店ごとに「ファン」「アンバサダー」「エバンジェリスト」の 3 種類のランクが存在します。

ユーザーが「NOREN」を取得するには、「SARAH」での投稿によって付与される「UME」というポイントが必要です。また、ランクによって必要な「UME」や投稿件数は異なり、発行上限数もランクごとに設定されています。

「NOREN」を持っているユーザーは店舗からサービスを受けることができるようになります。店舗に対しては、「UME」を「SARAH」でのマーケティング活動に利用できる仕組みを提供予定であり、店舗・ユーザーの双方に利点のある仕組みになっています。

また、「ONIGIRI Chain」は「NOREN」のためだけに構築した仕組みではありません。弊社では今後、Web3 技術をさまざまなビジネスに活用することを見越しています。

プロトタイピングプログラムによりスピーディーな開発を実現

深津:SARAH の方々は、AWS の社員とプロジェクトについてディスカッションするなかで、プロトタイピングプログラムの存在を知り、利用されたんですよね。

川上:はい。「SARAH」の開発チームはこれまで、基本的に Web2 の技術を扱うことがほとんどでした。そのため、スキルの高いエンジニアが何名も所属しているものの、ブロックチェーン技術については知見を持ったメンバーがおらず、わからないことが多かったです。

石川:社内に Web3 技術を専門とするチームがあって、彼らに手伝ってもらいながらプロジェクトを進めていました。このチームがいたことでかなり助かりましたが、私たちのチームと Web3 専門のチームとでは知識量も違うので、うまくコミュニケーションできないという課題もありましたね。

川上:私たちはもともと AWS のサポートを受けていたのですが、プロジェクトについての相談をするなかで「プロトタイピングプログラムというものがありますよ」と教えてもらいました。知識も開発リソースも限られたなかでスピーディーに開発を進める必要がありましたから「ぜひお願いします」と話しました。

深津:私たちソリューションアーキテクトは、それぞれが専門領域を持っています。ブロックチェーンなどの Web3 技術については私が得意であるため、2023 年 12 月から SARAH 社との打ち合わせに参加させていただきました。プロトタイピングをご提案し、開発が始まったのが 2024 年 1 月でしたね。プロトタイピングが始まったタイミングからは大越も参加し、AWS CDK などを活用したインフラ構築やその設計方針・使用方法の情報共有といった業務を担当しました。

石川 一成 氏(写真左)、川上 淳哉 氏(写真右)。

川上:アーキテクチャの深い部分まで一緒に議論して、プロトタイプを作っていただきましたよね。たとえば、「SARAH」では 100 万店舗以上のデータを扱っているのですが、店舗数× 3 種類の「NFT」が作成されるので、合計で 300 万種類の画像が生成されることになります。どのように並列処理させるかアーキテクチャを考慮したうえで設計・実装する必要があるのですが、その一連の作業をスピーディーに進めてくださいました。

石川:AWS の各種インフラを管理・構築するためのサービスとして AWS CDK を、ワークフロー構築のために AWS Step Functions を大越さんから提案していただきました。そして、AWS CDK の理解を深めるためにハンズオンも実施していただきましたね。

大越:今回のプロジェクトは前もって機能のリリーススケジュールが決まっていました。なるべく早期にアーキテクチャなども整える必要があり、そのためのサポートをさせていただきました。

石川:ワークショップでは、AWS CDK を私たちの環境に組み込むうえでのアドバイスをいただいたり、その場でたくさんのことを質問できたりしたのが良かったです。私たちはもともと AWS CloudFormation を使っていたのですが、そこから AWS CDK に移行するにあたってのノウハウを共有していただけたのは助かりました。

川上:AWS CDK のワークショップには、私と石川だけではなく Web3 のチームからも何人か参加しました。ワークショップをきっかけとして、社内のみんなのスキルが向上したのはありがたかったです。そのおかげもあり、無事 4 月 3 日に「NOREN」をリリースできました。

参考 : グルメアプリ「SARAH」、お店への”応援を可視化”する新機能「NOREN」をリリース!

大越:改めて、たった3ヵ月で機能リリースをできた SARAH チームはすごいなと感じますし、この短期間でプロジェクトが完了したことが信じられません。これこそ、スタートアップならではのスピード感だと思います。

大越 雄太(写真左)、深津 颯騎(写真右)。

深津:プロトタイピングプログラムを受けてみてのご感想はいかがですか。

川上:お二人とも高い技術を持ったスペシャリストであり、スピード感を持って開発やインフラ構築をしてくださいました。納品してくださったコードも、自社の要件に合わせて少し書き換えるくらいで何も問題なく動きました。何より、大越さんと深津さんにいつも親身になって相談に乗っていただいたのがありがたかったです。

深津:Web3 に関連した出来事としては、他にも「Web3 @ Loft」もご一緒しましたね。これは、Web3 やブロックチェーンなどの領域で活躍されている方々にご登壇いただくイベントで、AWS Startup Loft Tokyo にて開催しています。2023 年 11 月と 2024 年 2 月に開催した際に、SARAH 社はブーススポンサーになってくださいました。

【Web3@Startup Loft #6 のイベントレポート】
https://thinkwithwp.com/jp/blogs/news/web3loft06/

石川:イベントがあると、Web3 関連の方々とのネットワーキングや、SARAH が取り組んでいることの広報などにプラスに働きます。イベントを開催してくださってすごくありがたいですし、こうした活動を通じて Web3 界隈そのものを盛り上げたいですね。

「NOREN」や「ONIGIRI Chain」を次のフェーズへ

大越:今後、サービスやシステムをどのように発展させたいですか。

川上:「NOREN」は今回のフェーズでは「ユーザーが飲食店を応援していること」の可視化にフォーカスしています。ですが、私たちが真の意味で実現したいことはその先にありまして、「NOREN」を通じて「ユーザーや店舗に対して、どんなポジティブな影響を与えるか」が次のテーマになります。

「NOREN」を現実世界とうまくひも付けて店舗のビジネスにつなげたり、私たちが提供する「ONIGIRI Chain」そのものが盛り上がってたくさんの DApps(ブロックチェーン技術を基盤とした分散型アプリケーション)が作られたりする状態がベストなので、それを目指してやっていきます。

川上:今回、システムのアーキテクチャを構築するにあたり、AWS CDK や AWS Step Functions についてたくさんの知見を得ることができました。こうした情報について引き続き大越さんや深津さんにご相談しつつ、組織全体の技術力やシステムの安定性を底上げしたいと個人的には思っています。世に AWS の情報はあふれていますが、各サービスが具体的にどう有用なのかは、ソリューションアーキテクトの方々から話を聞いて初めてわかることも多いです。

石川:その通りですね。「SARAH」では過去に構築したインフラ基盤もあるのですが、現在はその運用コストが高いことが課題になっています。改善策について、ご相談できたらと思っています。まだまだ課題が山積みなので、より良いシステムへと改善したいです。

深津:ぜひ、一緒にがんばっていきましょう。今回はありがとうございました。