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【開催報告】AWS & JAFCO 業界特化型 MVP 開発ワークショップ〜スタートアップの顧客価値創造サイクルを3時間で体験しよう〜

2025年10月16日、アマゾン ウェブ サービス ジャパン合同会社(AWS)とジャフコ グループ株式会社(JAFCO)は、AWS Startup Loft Tokyo にて「業界特化型 MVP 開発ワークショップ」を共催いたしました。生成 AI の普及により変化するスタートアップの競争環境において、新たな競争優位性の構築を目指す起業家の皆様を対象としたイベントです。

スタートアップを取り巻く環境の変化

これまでスタートアップの最大の武器とされてきた「開発速度」という優位性が、生成 AI の台頭により大きく変化しています。AI 開発ツールの民主化により、大企業もスタートアップと同等のスピードで製品開発が可能になりつつあるからです。この環境変化の中で、スタートアップが生き残るためには「開発速度」から「顧客理解の深さと検証速度」へと競争軸をシフトさせる必要があります。

本ワークショップでは、Amazon 発祥の Working Backwards 手法と最新の生成 AI ツールを組み合わせることで、わずか3時間でアイデアから顧客検証可能なモックアップまでを完成させることを目指します。15枠の募集に対して60件もの応募があり、高い関心を集めるイベントとなりました。

イベント概要

当日は10名の起業家の皆様にご参加いただきました。会社規模は1~2名の個人事業主から20名以上の企業まで、業界も製造業、公共サービス、AI・技術系、エンターテインメントと幅広い顔ぶれです。以下のアジェンダで進行しました。

  • 17:00~17:10:オープニング
  • 17:10~17:30:JAFCO さま事業紹介と投資環境の変化
  • 17:30~21:00:Working Backwards を用いた MVP 開発ワークショップ

Working Backwards手法による新しいアプローチ

ワークショップの中核となったのは、Amazon 発祥の Working Backwards 手法です。この手法は、製品やサービスがお客様の手に渡った瞬間から逆算して考える革新的なアプローチであり、Amazon の AWS や Kindle など、数々の革新的サービスを生み出してきた実績があります。

Working Backwards は5つのステージで構成されています。まず「Listen(リッスン)」でお客様の真の声を聞き、「Define(デファイン)」で最も価値の高い課題を特定します。次に「Invent(インベント)」で競合分析を通じた解決策を創出し、「Refine(リファイン)」でビジネス全体を最適化します。最後に「Test & Iterate(テスト&イテレート)」で実証と継続改善を行います。

今回のワークショップでは、AWS が提供する ML Enablement Workshop をベースに、スタートアップ起業家向けに特別にカスタマイズしたプログラムを展開しました。限られたリソースでの高速な仮説検証に焦点を当て、技術的なバックグラウンドに関係なく、誰もが短時間で MVP を作成できる実践的な内容です。

ワークショップで生まれた革新的なアイデア

参加者の皆様には、事前に顧客ペルソナ情報と競合分析情報をご準備いただきました。ワークショップでは、これらの情報を Working Backwards に沿ったプロンプトで PR/FAQ に変換し、AWS が提供してしている Generative AI Use Case JP(GenU)と Vercel 社の v0 を使用してモックアップの実装を進めていきます。

わずか3時間の制限時間内に、参加者全員が顧客検証可能なレベルのモックアップを完成。製造業の効率化を実現する画像ベースの相見積もり比較ツール、過去データを活用して中小企業の入札参画を支援する公共入札支援プラットフォーム、大企業の埋没技術を発掘して事業化提案する「原石」(R&D 向け技術発掘ツール)、AI 活用による家族向けお出かけレコメンドアプリ、営業の属人化を排除するインサイドセールス効率化ツールなど、多様で実用性の高いアイデアが次々と形になっていきます。

特筆すべきは、技術的なバックグラウンドに関係なく、全員が実装まで完了した点です。参加者からは「生成 AI が自分の頭の中にあったアイデアを的確に言語化してくれた」「想定していた内容とそれほど乖離なく、AI が解釈してやってくれることに驚いた」といった驚きの声が上がっています。

投資家からの視点

従来は事業計画書やピッチ資料での評価が中心でしたが、現在では実際に動くプロダクトを見ながらの評価ができるようになりました。そして、初期開発コストを大幅に抑えながら仮説検証サイクルを高速で回してる企業こそ、資金効率が良く投資価値が高いと評価されます。

この変化は、スタートアップにとって大きなチャンスでもあります。ノーコードツールや生成 AI ツールを活用することで、従来数週間かかっていたユーザーインタビューから仮説検証までのプロセスを大幅に短縮できます。

参加者の皆様からの声

イベント終了後のアンケートでは、満足度4.9(5点満点、n=10)という非常に高い評価をいただきました。参加者の皆様からは以下のような感想が寄せられています。

「プロンプト大変参考になりました。ありがとうございます」「大変ありがたい体験でした!本当にありがとうございます!」という感謝のお言葉をいただきました。

また、「非常に学びの深い機会となりました!インサイドセールス向けの AI SaaS を絶賛リリース開始なので、何かしらコラボレーションしたいです」「この言語化のおかげで3週間のユーザーインタビューがより短い時間で核心に迫ることができました」と、具体的なビジネス展開へのつながりを示唆するコメントも。

「実装まで持っていくステップやどこで開発コストを踏むのか伺えると嬉しいです」というさらなる学びへの期待も寄せられ、今後のワークショップ改善に向けた貴重なフィードバックとなっています。

今後の展望

本ワークショップでは、従来数週間かかっていた MVP 作成をわずか3時間で完了し、投資家にも評価されるレベルのアウトプットを作成できることを実証しました。スタートアップの競争環境が「開発速度」から「顧客理解の深さと検証速度」にシフトしている現在、このアプローチを通じてスタートアップの成功確率の向上に貢献できると考えています。

今回の手応えを受けて、イベント定期開催も視野に入れています。また、参加者の皆様からいただいたフィードバックを基に、事前準備の負担軽減や実装後のフォローアップ強化にも取り組んでまいります。