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AWS re:Invent 2021での製造業および産業関連の発表

このブログは2021年12月8日にScot Wlodarczakによって投稿された「Top Manufacturing and Industrial Announcements at re:Invent 2021」をソリューションアーキテクトの吉川(@yoskoh8) が翻訳・日本のお客様向けの補足をしたものです。

 AWS re:Invent 2021

製造、自動車、電力、公益事業、エネルギー業界にまたがる産業系企業は、エンジニアリング、コラボレーション、データドリブンな意思決定、コストの削減、品質の向上の方法を常に再発明(reinvent)し続けています。 産業分野のお客様向けに設計された AWS サービスと AWS パートナーネットワークソリューションを厳選して提供する “AWS for Industrial ”は、産業変革のスピードを上げるのに役立つ、実績があり簡単にアクセスできる方法を提供します。
今年の re:Invent では、AWSは引き続きサービスを拡大し、新たな目的別サービス(purpose-built service)と既存のサービスに対する新機能を発表しました。 CEO の Adam Selipsky は、基調講演のかなりの時間を費やして、AWS がどのように産業分野のお客様デジタルトランスフォーメーション(あるいはインダストリー 4.0)をもっと簡単にしていくかを語りました。Adam の基調講演全てを冒頭から視聴いただくか、こちらの AWS for Industrial セクションからご覧ください。 また、あらゆる業界で数百もの新サービス、大きな機能追加、パートナーとのコラボレーションの発表が行われましたが、このブログでは産業系企業にとって最も関連性の高いものを取り上げます。

トップアナウンス

1. SIEMENSは AWS とのパートナーシップを拡大し、クラウドベースのデジタルトランスフォーメーションを促進します。 SIEMENSは、産業オートメーションおよび産業用ソフトウェアの世界的リーダーですSIEMENSが持つOperation Technology(OT)の専門知識と、 AWS がリードするIT 分野における専門知識により、SIEMENSと AWS は、産業分野のお客様が、SIEMENSが持つ包括的な産業用ソフトウェアと 、AWSが製造業に提供する新しいインサイト、自動化、コネクテッドサービスといったクラウドサービス群を容易に活用できるようにします。 OT チームと IT チームを結集して、あらゆる規模の企業が産業の複雑性に対処し、競争上の優位性に変えるのに役立つ新しいクラウドベースのデジタルトランスフォーメーションソリューションを実装します。

2. AWS IoT TwinMaker を発表しました。これにより、開発者はデジタルツインの構築と維持運用がはるかに簡単になります。 AWS IoT TwinMaker により、既存の IoT、ビデオ、エンタープライズアプリケーションのデータを、データを再取り込みしたり、別の場所に移動したりすることなく、今ある場所でデジタルツインに利用することができます。現実環境上にあるシステムのデータソースを仮想環境上のレプリカに対応付けするように自動生成されるナレッジグラフによって、 現実環境を正確にモデル化する時間を節約できます。 これにより、病院、研究開発組織、ライフサイエンス製造分野のオペレーションチームは、設備や機器に対し没入型の 3D ビューを取得し、オペレーションメトリクスを表示して、運用効率の最適化、生産の増加、パフォーマンスの向上を実現できます。 サービス発表に関するブログをご覧ください。

3. ロボットのフリート管理アプリケーションを構築するための AWS IoT RoboRunner のプレビューを開始しました。 AWS IoT RoboRunner は複数のロボット群がシームレスに連携するアプリケーションの構築とデプロイを容易にする新しいロボットサービスです。 AWS IoT RoboRunner では、ロボットと作業管理システムを接続し、単一のシステムビューでオペレーション全体の作業をオーケストレーションできます。 この新しいサービスは、Amazonフルフィルメントセンターで使用されているのと同じテクノロジーに基づいて構築されており、すべての開発者がビジネス向けの高度なロボットアプリケーションを構築できるようになったことを嬉しく思います。 サービス発表に関するブログをご覧ください。

4. AWS Private 5G を発表しました。これにより、プライベートセルラーネットワークを構築して、5G 技術のメリットを活用しながら、プライベートネットワークのセキュリティや、アプリケーションとデバイスのきめ細かい制御を維持できます。 産業分野のお客様にとっては、何千もの産業用IoTデバイスを、プライベート5Gネットワークの低レイテンシと高帯域幅で接続できることを意味します。 また、既存の IT ポリシーと統合し、ネットワーク容量をオンデマンドで拡張し、数回クリックするだけでデバイスを追加し、使用した容量とスループットに対してのみ料金を支払うこともできます。 AWS Private 5G は、産業分野のお客様向けに、デバイス、センサー、マシン、既存の産業機器を接続する新しい方法を提供し、接続された機器同士での信頼性の高いデータリンクにより、ほぼリアルタイムで意思決定を行うことができます。 サービス発表に関するブログをご覧ください。

5. AWS Graviton3 を搭載した新しいハードウェア が発表されました。 AWS Graviton3 は、AWS が設計した最新世代の ARM ベースのプロセッサで、Amazon EC2 のワークロードに対して最高のコストパフォーマンスを提供します。 AWS Graviton3 プロセッサは、AWS Graviton2 プロセッサと比較して、演算パフォーマンスが最大 25% 向上、浮動小数点パフォーマンスが最大 2 倍、暗号化ワークロードパフォーマンスが最大 2 倍高速化されます。 さらに、Graviton3 プロセッサは、bfloat16 のサポートを含め、ML ワークロードにおいて Graviton2 プロセッサと比較して最大 3 倍のパフォーマンスを発揮します。 AWS Graviton3 のリリースに関するブログをご覧ください。

6. Amazon Inspector は、AWS専用の、デプロイが簡単で、スケーラブルな脆弱性管理ソリューションです。 新しい Amazon Inspector は、従来の定期的な評価モデルと比較して、継続的な脆弱性モニタリングを提供するという、独自の脆弱性管理アプローチを採用しています。これによりセキュリティを懸念している産業系企業はサイバーセキュリティ体制を強化することができます。 Amazon Inspector はすべてのワークロードを自動的に検出し、脆弱性がないか継続的にスキャンし、手作業によるオーバーヘッドなしにほぼリアルタイムで脆弱性情報を顧客に提供できます。 次に、最新の共通脆弱性識別子(CVE)情報をネットワークのアクセシビリティなどの要素と関連付け、脆弱なリソースの優先順位付けに役立つ有意義なリスクスコアを作成します。 サービス発表に関するブログをご覧ください。

7. Amazon EMR ServerlessAmazon EMR のサーバーレス利用形態です。これにより、データアナリストやエンジニアは、クラスターやサーバーを設定、管理、スケーリングすることなく、オープンソースのビッグデータ分析フレームワークを簡単に実行できます。 Amazon EMR Serverless は Amazon EMR のすべての機能とメリットを享受でき、クラスターの計画と管理に専門家がいなくてもかまいません。 サービス発表に関するブログをご覧ください。 同様に、Amazon Redshift Serverless は、データウェアハウス ( DWH ) クラスターのプロビジョニングと管理を行うことなく、分析を実行およびスケーリングするサーバーレス利用形態(プレビュー) です。 Amazon Redshift Serverless では、データアナリスト、開発者、データサイエンティストを含むすべてのユーザーが 、Amazon Redshift を使用して数秒でデータからインサイトを得ることができるようになりました。 これで、データウェアハウスインフラストラクチャの管理について考えるのではなく、お客様のデータからインサイトを得ることに集中できます。 サービス発表に関するブログをご覧ください。

8. Amazon SageMaker Canvas は、ビジネスアナリストに視覚的なポイントアンドクリックインターフェイスを提供し、機械学習 (ML) の活用を拡大します。SageMaker Canvas は、機械学習の経験やコードを 1 行も記述しなくても、機械学習 による正確な予測を行うことができます。 SageMaker Canvas を使用すると、クラウドおよびオンプレミスのデータソースのデータにすばやく接続してデータにアクセスし、データセットを結合し、ML モデルをトレーニングするための統合データセットの作成を行うことができます。 SageMaker Canvas は、データエラーを自動的に検出して修正し、ML に対するデータ準備状況を分析します。 サービス発表に関するブログをご覧ください。 またこれに加え、Amazon SageMaker Serverless Inference を発表しました。 Amazon SageMaker Serverless Inference は推論用のインフラストラクチャを設定または管理することなく、推論用の ML モデルを簡単にデプロイできます。 サービス発表に関するブログをご覧ください。

9. AWS Mainframe Modernization は、オンプレミスのメインフレームワークロードを AWS 上のマネージドランタイム環境に移行できる独自のプラットフォームです。 AWS Mainframe Modernization によって、リプラットフォーム(re-platforming)と自動リファクタリングという 2 つの一般的な移行パターンが可能になります。 お客様は移行の準備状況を評価および分析し、プロジェクトを計画できます。 実装およびテストが完了すると、AWSへ移行するメインフレームワークロードを AWS Mainframe Modernization マネージドランタイム環境にデプロイできます。 サービス発表に関するブログをご覧ください。

10. AWS Lake Formation は、安全なデータレイクを数日で簡単にセットアップできるサービスです。 データレイクとは、すべてのデータを元の形式で保存し、分析の準備が整い、一元管理され、キュレーションされた安全なリポジトリです。 Lake Formation には、データレイクの構築、保護、管理を簡素化する 3 つの新機能が導入されます。Lake Formation Governed Tables は、複数テーブルのトランザクションをサポートして復元力のあるデータパイプラインの構築を簡素化します。 Governed Tables は、データの保存方法を監視して自動的に最適化し、クエリ時間が一貫して高速になるようにします。さらに、 AWS Lake Formation が行レベルとセルレベルのアクセス権限もサポートするようになりました。これにより、閲覧権限のあるデータの一部のみにアクセス権をユーザーに付与することで、機密情報へのアクセスを簡単に制限できるようになりました。 研究開発、製造、商用のデータを管理する製薬企業にとって、エンタープライズデータ戦略の導入時に必要な柔軟性、パフォーマンス、および制御をこれらのツールが提供します。

11. Amazon S3 Glacier Instant Retrieval ストレージクラスは、アクセスがほとんどなく、ミリ秒単位での取り出しが必要な、存続期間が長いデータに対して、最も低コストのストレージを提供するアーカイブストレージクラスです。 Amazon S3 Glacier Instant Retrieval は、S3 スタンダードストレージクラスと同じスループットとミリ秒クラスのアクセスで、アーカイブストレージへの最速アクセスを提供します。 科学データや研究データなど、パフォーマンスが重視されるユースケースで、ほとんどアクセスされないが、必要なときは即時にアクセスする必要があるデータ向けに設計されています。 サービス発表に関するブログをご覧ください。

12. AWS Local Zonesの国際展開 — 新しく AWS Local Zonesは、世界の 21 か国以上の 26 都市以上で利用できるようになりました。 これらの新しい AWS Local Zones は 2022 年に利用可能になり、これらが米国全土の 16 都市の Local Zone に加わることで、お客様は 1 桁ミリ秒のレイテンシーを必要とするアプリケーションをその地域のエンドユーザーやオンプレミスアプリケーションへ提供できるようになります。 お客様は、ボストン、シカゴ、ダラス、デンバー、ヒューストン、カンザスシティー、ラスベガス、ロサンゼルス、マイアミ、ミネアポリス、ニューヨーク、フィラデルフィア、ポートランドの 13 の大都市圏に一般公開されている AWS ローカルゾーンを使用して、米国全土の都市のエンドユーザーに超低レイテンシーのアプリケーションを提供できます。 AWS ローカルゾーンの詳細をご覧ください。

13. 新しい AWS Well-Architected Framework Sustainability Pillar (持続可能性の柱)を発表しました。この柱は、クラウドコンピューティングの環境に対するベストプラクティスを使用して、組織がワークロードを学習、測定、改善できるよう支援します。 AWS Well-Architected Framework は、2015 年から AWS のお客様のクラウドアーキテクチャの改善を支援してきました。 このフレームワークは、運用上の優秀性セキュリティ信頼性パフォーマンス効率コスト最適化、そして今回の持続可能性など、複数の柱にまたがる設計原則、質問、ベストプラクティスで構成されています。 他の柱と同様に、持続性の柱にはワークロードの設計、アーキテクチャ、実装を評価してエネルギー消費量を削減し、効率を向上させることを目的とした質問が含まれています。 この柱により、単純なチェックリストだけでなく、より持続可能な未来を支えるポリシーやベストプラクティスへの進捗状況を追跡できます。

ブレイクアウトセッション

これらの発表に加えて、さまざまな産業界のお客様からのプレゼンテーションも開催しました。これらのセッションの一部については、以下を参照してください。

いつものように、re:Invent は、AWS が産業を含むすべての業界でイノベーションへの継続的な取り組みを示したことで、忘れられないイベントでした。 AWS IoT TwinMakerAWS IoT RoborRunner などの産業用サービスや、AWS Private 5G や Amazon Inspector などの業界横断的に適用可能なサービスの追加により、AWS が挑戦的な産業が抱える差し迫った多くのニーズを解決するために懸命に取り組み続けています。 2022年も、産業界のお客様やパートナーのためにイノベーションを続けていくことを楽しみにしています。
AWS for Industrial のサービスとソリューションの詳細については、https://thinkwithwp.com/industrial (日本の製造業に対する取り組みはこちら ) をご覧ください。