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調査レポート:通信業界における生成系AIの活用、課題、そして未来

調査に参加した通信事業者の半数が今後2年以内の生成系AIの活用を計画し、生成系AIへの支出が現在の最大6倍に拡大すると予測

AWS通信およびエッジクラウド担当 チーフテクノロジストIshwar Parulkar(イシュワール・パルルカー)

生成系AIは、あらゆる場で活用され、すべての産業に大きなインパクトをもたらすとAWSは考えています。生成系AIは機械学習の普及に続く新たな波であり、通信業界を含む業界で、お客様体験や多様なビジネスアプリケーションを革新する可能性を秘めています。

AWSは、通信業界における生成系AIへの展望や論調、活用状況に対する理解を深めるため、戦略コンサルティング企業であるAltman Solonと協力し、北米、西欧、アジア太平洋地域の通信事業者の幹部100名以上を対象とした調査を実施しました。主な調査結果は以下のとおりです。

1.  生成系AIの活用は今後2年間で大きく拡大

通信事業者の4つの業務領域(製品・マーケティング、カスタマーサービス、ネットワーク、社内IT)をまたぐ17のユースケースについて調べたところ、生成系AIを既に活用しているか、活用に向けて取り組んでいるとした回答者は全体の19%でした。この数値は今後、さらに拡大する見込みで、調査結果によると1年以内に34%、2年以内に半数近く(48%)に達する見込みです。これに伴い、生成系AIへの支出も現在の最大6倍に急拡大する可能性があります。この急拡大を牽引するユースケースはチャットボットですが(詳細は後述)、通信事業者の64%は、検討している生成系AIのユースケースの多くが、既存のアプリケーションやプロセスではまだ実現されていない新たなアプリケーションだと述べています。

2. 北米の通信事業者が生成系AIの活用で他地域をわずかにリード

生成系AIの活用では、北米の通信事業者がわずかに先行しています(22%が活用、または活用に向けて既に取り組む)。欧州の通信事業者(同19%)は、EUの一般データ保護規則(GDPR)などのデータレジデンシーに関する域内規制のため、生成系AIの活用には、より慎重な姿勢を見せています。特に北米以外の通信事業者にとっては、AI活用やデータ規制、データレジデンシーに関する現行および今後の規制が重要な考慮点となります。中国やEUの多くでAI規制やAIへの監視が強化されているのに対し、米国やインドでは、規制や監視に関して、より消極的です。

アジア太平洋地域の通信事業者(同16%)は、他地域と比べ緩やかなデータ規制の環境にいますが、言語などのローカライゼーションの課題に面しています。生成系AIの多くは大規模言語モデル(LLM)をベースとしており、特定言語のデータコーパスによるトレーニングが必要です。現在の主要なLLMの多くは英語で構築・提供されており、AWSはこの溝を埋めるべく取り組んでいます。例えば、2023年7月に日本で発表した「AWS LLM開発支援プログラム」は、日本におけるLLM開発の加速を支援するもので、総額600万米ドル規模のAWSクレジットを提供するなど、LLMの多様性を推進する取組を進めています。

3.  顧客対応チャットボットが生成系AIのユースケースとして、いち早く普及

生成系AIがまずは顧客対応チャットボットに取り入れられていることは自然な流れであり、本調査でも広く活用される見込みであることが分かりました。回答者の92%が、導入の可能性の高いものとしてカスタマーサービスとチャットボットを挙げています。そのうち63%が、すでに開発を進めていると回答しました。

これは既存の基盤モデルを活用するものであり、最初の段階としては正しい方向である一方、将来的には生成系AIがネットワーク運用を支援すると、AWSは考えています。例えば、生成系AIは、通信事業者がネットワーク要素をインストールする際に参考とするマニュアルからデータを取り込むことができます。このデータをチャットボットと組み合わせることで、プロンプトに基づくインタラクティブなガイダンスを提供できるようになり、インストール作業のスピードアップや簡素化につながります。

他の主要なユースケースは、カスタマーサービス、ITにおけるガイド付き支援や文書作成など、社員の生産性向上を支援するものです。

活用ステージ別生成系AIユースケース(全回答者に占める割合。回答者数はユースケースごとに異なる)

※現在、取り組んでいる、または、高い可能性のもとで検証しているとした回答者の割合

4.   データセキュリティとガバナンスが生成系AI活用における最大のチャレンジであり、実現に向けた重要なイネーブラー

生成系AIの活用には、一方で課題があります。本調査に協力した通信事業者の約3分の2(61%)が、データセキュリティ、プライバシー、ガバナンスに関する懸念を表明しました。通信事業者が自社の業務に生成系AIを活用するには、各社が保有する膨大な量のデータが必要となります。広く利用可能なLLMはありますが、自社保有のデータがこうしたモデルそのものに組み込まれることには、知的財産権上の懸念があります。

ある通信事業者のIT部門責任者は、次のように話しています。「当社データのセキュリティを確保し、第3者に使用されないよう徹底する必要があります」

AWSはこうしたお客様の懸念を踏まえ、Amazon Bedrockではお客様のデータが利用する基盤モデルの学習に使用されないようにする機能が組み込まれています。お客様のデータはプライベートかつセキュアに保護されます。

この調査ではまた、アーリーアダプターのうち、データ習熟度上位30%の組織においては、生産性向上以外のユースケースでの生成系AIの活用が進んでいることが明らかになりました。例えば、製品・マーケティングなど、収益創出を目指したユースケースです。データ活用が進むこうした組織では、AIを専門とするセンターオブエクセレンスが設置されていること、高度なデータアナリティクスの活用が進んでいること、最新のデータ基盤(クラウドなど)が整備されていることなど、共通の特徴があります。

5.  通信事業者は、自社開発よりも、既存モデルの活用を想定

生成系AI活用における課題として技術的リソースの不足を挙げる通信事業者もありました。このような背景を考えると、社内で基盤モデルを構築したいと回答した通信事業者は15%にとどまり、その他は既存の基盤モデルの活用を想定していることも驚きではありません。回答者の約4分の3(65%)は既存の基盤モデルを社内の専有データで追加学習し、各社それぞれのニーズに対応させたいと考えています。私たちは、データ基盤のモダナイゼーションにおいて強固な基礎を保有するアーリーアダプターが独自の基盤モデルを構築する15%の層となり、マネタイゼーションに向けて新たな道を切り拓くものと考えています。

通信事業者はファインチューニングされた基盤モデルとともに、AWSのような大規模言語モデルへのアクセスを提供するベンダーに開発環境や専門的なサービスを提供してほしいと考えています。あるワイヤレス通信事業者の高度アナリティクス担当ゼネラルマネージャーが、「個人的には、これが通信業界における生成系AI活用において重要な促進剤になると思います」と述べているように、回答した通信事業者の44%は、フルマネージドサービス基盤を活用し、その基盤上で提供される基盤モデルを利用してアプリケーションを構築したいと考えています。

生成系AIはお客様のビジネスや顧客価値の提供を変革する大きな可能性を秘めています。私たちは、企業のニーズに合った柔軟なアプローチを提供することに注力しており、AWS InferentiaやAWS Traniumなど機械学習に最適化したAWS独自設計のクラウドインフラを活用して自社で基盤モデルを構築する、あるいは、Amazonの基盤モデル(Amazon Titan、Alexa)やサードパーティーの基盤モデルを活用してアプリケーションを開発する、Amazon BedrockやAmazon SageMaker Jumpstartといったサービスを活用して、基盤モデルにデータを追加してファインチューニングするの複数の選択肢をご用意しています。加えて、基盤モデルやAI、機械学習テクノロジーに関する専門知識なしにご利用いただける、Amazon CodeWhisperer、Amazon Quicksightなどの生成系AIアプリケーションもあります。

どのように生成系AIへの取り組みに着手するにせよ、通信事業者にとって最も重要なのは、今すぐ試行錯誤を開始することです。

生成系AIの現在、そして将来的な活用を展望した調査結果の詳細は、調査レポート(英語)よりご覧ください。

このブログは、英文での原文ブログを参照し、アマゾン ウェブ サービス ジャパン合同会社 広報チームが翻訳・執筆しました。