Amazon Web Services ブログ
効率的なクラウドコスト管理戦略
お客様からよく寄せられる質問の 1 つに、クラウドのコストをどの様に効果的に管理するかがあります。アマゾンウェブサービス (AWS) には、お客様が支出を評価し最適化するのに役立つプログラムが数多く用意されています。クラウドエコノミクスチームは、お客様の環境を詳細かつ総合的に分析し、最適化と改善の分野を特定することに精通しています。まだ、利用されていない場合は、試してみることを強くお勧めします。
しかし、彼らの分析が終わった後、あなたは何をするでしょうか? 日々の対応として、何をしますか? 私のCIOとしての経験から、クラウドコストの効果的な管理とは、一回限りのイベントではなく、定期的にコストを管理するためのメカニズムにかかっていることが分かりました。
この記事では、クラウドコストの管理に役立つ機能とプロセスを構築する 6 つの方法を紹介します。
透明性を高める
これは明白で、おそらく以前にも聞いたことがあるでしょうが、測定できないものを管理することはできません。驚くかもしれませんが、透明性を高め、コストを理解するための効果的なプロセスを持っていない組織は意外にも多いです。クラウドのコストを心配している顧客に時々出会いますが、ほとんどの場合、これらの顧客がクラウドのコストに対して非常に反射的な対応のみを取っています。多くの場合、彼らは毎月の月末、請求書を受け取ったときにだけ費用を見ています。これは、バックミラーを見ながら車を運転する様なものです。
透明性を高めるためには、データを処理し、可視化し、すべてのデータからインサイトを引き出すためのツールと機能に投資する必要があります。事前にデータを深く掘り下げておくことで、毎月の請求書からの表面的な分析の枠を超える必要があります。
AWS やパートナーのツールなど、この分野に特化したツールは数多くあります。ここにいくつか紹介します。
- AWS Cost Explorer: AWS のコストを時間の経過とともに詳細に確認できるツール
- AWS Budgets: 予算を設定し、使用量が範囲外になったときにアラートを受け取るための優れた方法
- CloudHealth: AWS コストの予算編成、予実管理、レビューのための包括的なソリューション
- Apptio: AWS のコストに対する財務上の説明責任と透明性を提供する優れたプラットフォーム
クラウドのコストに関する透明性について考える時、昔から言われている「ゴミを入力したら、ゴミが出力される」という言葉が思い浮かびます。多くの場合、不良データの存在やデータが欠落しているケースです。これに対処するには、環境内のすべてのアセットにタグを付けるようにしてください。私がCIOだったとき、私は毎晩深夜にタグのない資産をすべて削除するという指示を出すことまでしました。当然ですが、事前にチームに予定を伝えておく必要があります。しかし、資産を明確に説明し、所有権と説明責任を明らかにできる堅牢なタグ付け戦略がなければ、クラウドコストを正確に記録して理解することはできません。
エンジニアリングチームに説明責任を持たせる
ツー・ピザ・チームのモデルを利用して、プロダクトチームが自社製品の経済的責任を負うように奨励することをお勧めします。善意ではあるが誤った情報に基づいた、一元化されたクラウドコスト最適化チームを中心に最適化するのは間違いです。自社製品に対してオーナーシップを持ち、費用を管理するエンジニアは、ソリューションを設計する際にコストについて考えることになります。システムに関する知識が最も高い人や、問題が発生した場合に最も多く失うものがある人も、環境を最適化する方法について情報に基づいた決定を下します。コスト意識はエンジニアリング文化の一部になる必要があり、まずは請求データの理解を深めることから始まります。そこで、透明性とクラウドコスト管理ツールが登場します。
しかし、責任を割り当て、ツールを持つだけでは不十分であることに気がつきました。これを解決するために、私は以下の様な販売のモデルを利用しました。年間売上計画を達成するためには? 四半期売上計画から達成する。四半期の計画を達成するためには? 月の売上計画から達成する… などです。このやり方をサポートするために、私はクラウドコスト管理ツールを使用して、各プロダクトのオーナーが前日に費やした金額と予算額を、毎朝のメールで伝えるプロセスを確立しました。これにより、そのプロダクトのオーナーは、コスト超過に対処するために、週の残りの期間で調整が必要かを知ることができました。また、このやり方はチームに新しい仕組みを試すことを奨励し、コストの超過に対処するための透明性と説明責任をはたす手段となりました。このモデルに基づいて、プロダクトオーナーは毎週、開発部門のディレクターとコストが予算内に収まるか、そうでなければ対処する方法があるかを確認できました。ディレクターも同様に、隔週で副社長と会い同じことをできました。これは、毎月の請求書を受け取る時には、それがいくらになるかをほぼ正確に把握しており、その月のコストを予算内に収めるために必要な措置をすでに講じているということでした。
コストについて考えるようにチームをトレーニングする
これらの対応をプロダクトオーナーやディレクターに任せるのは大変なことのように思えるかもしれません。ある程度は、その通りです。しかし、私たちは「すばらしい新世界(brave new world)」にいるので、新しいスキルを身に付ける必要があります。AWS には、「AWS 請求とコスト管理の概要」「Well-Architected Labs コスト最適化」の動画を通して、チームがクラウドのコストとその管理方法について理解を深めるのに役立つ複数のプログラムやあります。財務チームを含め、できるだけ多くのチームメンバーにご利用いただくことを強くお勧めします。
計画、予測、予算、学習
クラウド財務モデルの課題の 1 つは、変動の可能性です。思い出してください、私たちは日常的にコストを管理しています。コストが変動するのはそう設計されているからで、驚くべきことではありません。アジャイルであること、新しいイノベーションを試すこと、成功したソリューションをスケールアップさせること、を目指していますよね?
しかし、クラウド予算の適切なサイジングを継続的に行うには、慣れる必要があります。財務部門と良好な関係を結び、透明性と詳細にコントロールできる環境を活かして、ニーズの変化に応じて予算を調整してください。同様に、財務部門にチームが毎日コストを管理していることによって、コストが削減されている事とその効果を確認してもらってください。
ワークロードをモデル化する方法の理解が深まると、成長の予測も上手になります。しかし、初期の段階で、たとえ大きな誤差が予想されるとしても、予測を作成することは重要です。なぜなら、それがマクロレベルのクラウド支出の期待値を設定する基礎となり、そこから学ぶべき基盤ともなるからです。このような予測がなければ、支出が予想よりも多いか少ないかも把握できず、予測能力を向上させることができません。
メトリック
ここでは、収集して使用する必要のあるすべてのメトリクスをカバーするつもりはなく、運用メトリクスのみに焦点を当てるつもりもありません。むしろ会社の財務状況を理解し、クラウドコストを管理するのに役立った、私が利用したいくつかのシンプルな指標に焦点を当てたいと思います。
- 予算と実績:ある期間の支出の予算と実績の比較です。これにより、説明責任、評価、予算管理とコスト最適化を実現するための支出調査能力を確立できます。
- 1 日の平均支出:実際の 1 日の支出です。組織が毎日どれだけ支出すべきかを知るだけでなく(規模が拡大し、ビジネスが成長するにつれて年間を通じて変化しました)、日々の数字を見て、順調に進んでいるかどうかもすぐに判断できました。私だけでなく、リーダーやプロダクトオーナーがこれらを把握することも求めていました。
- プロビジョニングされたキャパシティと使用済みキャパシティ:プロビジョニングされたキャパシティが使用率よりもかなり高い場合は、環境が非効率的である可能性があり、最適化を行う必要があることを示しています。繰り返しになりますが、クラウドエコノミクスチームは、これについて詳細な分析を支援できます。
- 未使用のリソースへの支出:どの組織にも未使用のリソースがあります (EBS ボリュームが、最大の原因の1つだと思います)。スナップショットは様々な理由で必要になることもありますが、一般的には不要なリソースは停止する必要があります。クラウドの財政管理では、スナップショットの保存にどれくらいの費用が費やされているかは良い指標です。
- リザーブドインスタンスとオンデマンドの比率:非常に動きがなく、予測可能なビジネスでない限り、すべてをリザーブドインスタンスにすることはないでしょう。利用状況の急上昇や急降下に対処するために、常に環境内にはオンデマンドインスタンスのフリートを用意する必要があります。適切な比率は、ビジネスの変動性、リスク許容度、財務目標など、さまざまな要因によって異なります。しかし、適切な比率は時間が経過しても、ほとんど(もしくは、まったく)変化しない傾向がありました。したがって、その比率が変化した場合は、ビジネスが成長し次のステージに達し、一部のオンデマンドインスタンスをリザーブドインスタンスに変更する必要があるという兆候かもしれません。
- タグなしリソースのコスト: タグのないリソースは毎晩削除するので、理論的にはゼロになるはずです。削除しない場合でも、少なくともどれだけコストがかかっているかは理解しておいてください。誰もこれらのリソースを管理していないため、お金を捨てているのと同じです。
最後になりましたが、大事なことは:最適化
最適化に関する推奨事項は数多くあります。ここですべてのリストアップはしませんが、コスト最適化のベストプラクティスに関するクラウドエコノミクスチームからのブログ投稿をご紹介します。
クラウドコストの管理は、実際にやってみると比較的簡単だと感じると思います。これらの推奨事項のいくつかを実装すれば、確実に目標を達成できるでしょう。
著者について
Tom Godden
Tom Godden は、アマゾンウェブサービス (AWS) のエンタープライズストラテジストおよびエバンジェリストです。AWS 入社以前は、Foundation Medicine社の最高情報責任者として、世界をリードする FDA 規制を受けた、転帰を改善し、次世代の精密医療に情報を提供するための、がんゲノム診断、研究、患者の転帰プラットフォームの構築を支援しました。以前は、オランダのAlphen aan den RijnにあるWolters Kluwerで複数の上級技術リーダーを務め、ヘルスケアおよびライフサイエンス業界で17年以上経験しています。トムはアリゾナ州立大学で学士号を取得しています。
翻訳は Solutions Architect 多田が担当しました。原文はこちらです。