お客様は VMware を活用して、オンプレミスでビジネスクリティカルなアプリケーションを稼働させています。それらをクラウドに移行していく際には、アプリケーションをリファクタリングせずに移行する手段として VMware Cloud on AWS が選択肢となりえます。その場合でも、お客様はアプリケーションのデータ保護や、ディザスタリカバリ、データの待避などの運用手法を別途検討する必要があります。

計画的かつ限定的なダウンタイム要件がある大規模なマイグレーションの場合、お客様はネットワークの拡張と移行に VMware HCX を利用できます。ディザスタリカバリにおける目標復旧時点 (RPO) と目標復旧時間 (RTO) の要件が厳しい場合には、VMware Cloud Disaster Recovery や VMware Site Recovery も有効な選択肢です。 ただし、小規模なマイグレーションの場合やディザスタリカバリの要件がより柔軟である場合については、AWS Backup を活用するシンプルな手法も選択肢となります。

この記事では、AWS Backup と VMware Cloud on AWS が、オンプレミスで VMware ワークロードを実行しているお客様にバックアップ、マイグレーション、およびディザスタリカバリのためのシンプルなソリューションを提供できるということを紹介します。お客様は、オンプレミスの VMware ワークロードを AWS クラウドに移行し、データ保護ソリューションをコスト効率よく拡張でき、運用の複雑さも最小限に抑えることができます。

概要

図 1 では、AWS Backup と VMware Cloud on AWS の組み合わせが、VMware ワークロードのマイグレーション、バックアップ、およびディザスタリカバリのためのシンプルなソリューションをどのように実現するのかを説明しています。

クラウドへのマイグレーションとして、AWS Backup を使用してオンプレミスの VMware ワークロードをクラウド上にバックアップし、そのバックアップを AWS Region (Main) の VMware Cloud on AWS 環境にリストアできます。

RPO 要件に基づいてバックアップ取得の頻度を backup plan で設定することで、AWS Backup を利用して VMware Cloud on AWS 上で実行されている VMware ワークロードを引き続き保護できます。

リージョン災害に備えて、AWS Backup のクロスリージョンコピー機能を利用してバックアップを別の AWS リージョンにコピーすることもできます。AWS Region (Main) でリージョンレベルの災害が発生した際には、ディザスタリカバリの一環として AWS Region (DR) の VMware Cloud on AWS 環境にバックアップをリストアできます。その後、同じプロセスで VMware ワークロードを AWS Region (Main) に戻すことができます。

図 1. AWS Backup と VMware Cloud on AWS によるシンプルなバックアップ、マイグレーション、ディザスタリカバリ

バックアップとリストア

AWS Backup は、VMware Tools と連動してスナップショットを作成し、仮想マシンをバックアップします。VMware Tools を使用してスナップショットを作成する前に、Windows 仮想マシンのファイルシステムを静止します。Windows アプリケーションと VMware Tools の互換性がある場合はアプリケーション・コンシステントなスナップショットを作成し、互換性がない場合にはクラッシュ・コンシステントなスナップショットを作成します。 Linux ベースの仮想マシンの場合には、クラッシュ・コンシステントなスナップショットを作成します。

AWS Backup は、お客様の VMware 仮想環境にデプロイした AWS Backup gateway を経由して VMware ワークロードに接続します。AWS Backup gateway は、VMware vCenter Server を介して仮想マシンを検出し、VMware vSphere Storage API — Data Protection (VADP) を使用してスナップショットを作成します。

お客様の環境では、AWS Backup gateway はインターネット経由で AWS Backup パブリックサービスエンドポイントに接続し、パブリックサービスエンドポイントを通過するトラフィックは暗号化されます。AWS Backup vault は、バックアップデータを AWS 内に安全に保管します。

図 2: オンプレミスと VMware Cloud on AWS 環境のバックアップとリストア

マイグレーション

オンプレミスの VMware ワークロードをクラウドにバックアップすると、図 2 に示すように、AWS Region (Main) の AWS Backup vault に保存されます。AWS Backup gateway を使用して、同じリージョン内の VMware Cloud on AWS にバックアップをリストアできます。

AWS Backup でのシンプルなバックアップとリストアによって、VMware ワークロードをオンプレミスから VMware Cloud on AWS 環境にマイグレーションできます。 移行期間中は、ダウンタイム、リストアの対象や規模、オンプレミスとクラウド間のネットワーク接続などの要素を考慮する必要があります。また VMware Cloud on AWS への移行後にも、AWS Backup をデータ保護ソリューションとして引き続き利用できます。

ディザスタリカバリ

VMware ワークロードをバックアップあるいは VMware Cloud on AWS 環境に移行しておくと、災害やランサムウェアが発生した際にも役立ちます。

メインサイトでローカルレベルの災害またはランサムウェアが発生した際には、同じリージョン内の別のアベイラビリティーゾーン (AZ) に新規に別途プロビジョニングした VMware Cloud on AWS にバックアップから仮想マシンをリストアできます。新規の VMware Cloud on AWS は、最小限のノード数で常時稼働させるパイロットライトとするか、災害時にのみプロビジョニングするオンデマンドとするかは要件に応じて選択します。

リージョンレベルの災害への対策として、AWS Backup のクロスリージョンコピー機能を利用してバックアップを DR サイトにコピーできます。このソリューションには追加のソフトウェアやソリューションは必要ありません。そのため、シンプルで費用対効果の高い災害対策ソリューションとして AWS Backup を活用できます。

どちらのシナリオでも、RPO 要件に基づいてバックアップの頻度を backup plan で設定できます。バックアップ頻度は、1 時間ごと、12 時間ごと、毎日、毎週、または毎月のいずれかを選択できます。ソースサイトでバックアップが完了すると、クロスリージョンコピーが自動的に開始されます。RTO は、保護対象仮想マシンの台数とサイズによって異なります。

図 3. クロスリージョンコピーによるディザスタリカバリ

そのほかの考慮事項

コストに関する考慮点には、バックアップストレージとリストア費用の 2 つがあります。低コストのストレージの利点を最大限に活用できるように、ライフサイクルルールを導入してください。AWS Backup にはライフサイクル機能があり、アーカイブなどの用途に合わせてリカバリポイントをウォームストレージ階層から低コストのコールドストレージに自動的に遷移させることができます。

まとめ

この記事では、AWS Backup を使用して VMware Cloud on AWS 上の仮想マシンを保護する方法、オンプレミスの仮想マシンをバックアップ・リストアによってマイグレーションする方法、およびクロスリージョンコピーを活用してディザスタリカバリを設計する方法について説明しました。重要なポイントは、AWS Backup と VMware Cloud on AWS を活用すると、VMware ワークロードのマイグレーションとデータ保護をシンプル化できるということです。また、AWS Backup はサポート対象の AWS サービスと VMware 仮想環境の両方のデータ保護を一元化することもできます。

そのほかのリソース

VMware Cloud on AWS と AWS サービスとのインテグレーションについては以下も参考となります。こちらからもお問い合わせください。

• AWS Backup の新機能 – VMware および VMware Cloud on AWS のサポート
• AWS Backup を使用したオンプレミスの VMware 仮想マシンのバックアップとリストア
• 仮想マシンのバックアップの作成
• VMware Cloud on AWS リファレンスアーキテクチャ
• VMware Cloud on AWS – Protect workloads with AWS Backup | Amazon Web Services

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