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Amazon AppFlow SAP OData Connector が SAP ODP Changed-Data Capture に対応

著者: Krishnakumar Ramadoss、Rozal Singh、Manoj Muthukrishnan、Ram Borhade、Rajendra Narikimelli、Damian Gonazalez、Ganesh SuryanarayanANAN

はじめに

5,000 を超えるお客様が AWS 上で SAP ワークロードを稼働させています。コスト削減に加えて、お客様は AWS のサービスの深さと広さから大きな利益を得ています。何万ものデータレイクがすでに AWS 上にデプロイされており、お客様は、Amazon S3 にデータを保存し、最も広範な分析および機械学習サービスでそのデータを分析することで、イノベーションのペースを高めているという恩恵を受けています。 AWS は、ネイティブ抽出およびデータ転送サービスの最も幅広く、完全なポートフォリオを提供し、さらに S3 とのパートナーエコシステム統合も提供しています。

2021年に Amazon AppFlow SAP OData Connector を発表して以来、お客様から最も多く寄せられた要望は、SAP Operational Data Provisioning(ODP)フレームワークが提供する組み込みのChanged-Data Capture(CDC)機能を使ってデータを段階的に抽出する機能を提供することでした。

お客様からのフィードバックに基づき、本日、SAP ODP フレームワークを使用した SAP アプリケーションから AWS サービスへのデータ転送をわずか数クリックでサポートし、Changed-Data Capture 機能を内蔵した Amazon AppFlow の新機能を発表しました。今回の発表により、お客様は Amazon AppFlow SAP OData Connector を使用して、SAP ERP 、SAP BW 、SAP S/4HANA 、SAP BW/4 HANA などのSAP ERP/BWアプリケーションから SAP Operational Delta Queue(ODQ)を含む完全および差分データ転送をシームレスに実行することが可能になります。

Amazon AppFlow

Amazon AppFlow は、AWS サービス、SaaS アプリケーション、および SAP ERP アプリケーション間で安全にデータを転送するためのデータフローの構築を支援する、フルマネージド型のデータ統合サービスです。これらのデータフローは、分析目的や様々なソースシステムからのデータを組み合わせるために、 AWS 上のデータマートやデータレイクの作成を加速するのに役立ちます。

このブログでは、ソース SAP システムで OData サービスとして公開されている ODP プロバイダに接続しデータを抽出行うために、新たにリリースされた SAP OData Connector の機能を使用して Amazon AppFlow データフローを設定する方法を説明します。

Amazon AppFlow データフローによる ODP ベースの抽出のアーキテクチャ概要

ODP ベースのデータ転送では、ビジネスコンテキストが保持されます。SAPデータソースからこのビジネスコンテキストを保持することで、他の SAP および非 SAP データソースからのビジネスオブジェクトとデータを統合するためのビジネスロジックのマッピング作業を軽減します。

ODP フレームワークは、「プロバイダ」と「サブスクライバ」モデルで動作し、SAP システム間および SAP から非 SAP データターゲットへのデータ転送を可能にします。 Amazon AppFlow は、この ODP フレームワークを使用して、Operational Delta Queues(ODQ)メカニズムによる完全なデータ抽出と変更データの取得をサポートします。

ODP プロバイダ – ソース SAP システムによって提供されるデータは、ODP プロバイダと呼ばれます。以下は、フレームワークがサポートする様々な ODP プロバイダのリストです。

  • SAP データソース (トランザクションコード RSO2)
  • SAP コアデータサービス ABAP CDS ビュー
  • SAP BW または SAP BW/4HANA システム – InfoObjectDataStore Object
  • SAP Landscape Replication Server(SAP SLT)を介した、SAP ソースシステムからのテーブルと DB-Views のリアルタイムレプリケーション
  • SAP ABAP ベースのソースにおける SAP HANA Information View

ODQ (Operational Delta Queue) – 完全抽出またはデルタ抽出の場合、ソースシステムからのデータはデータパッケージとして、ODP プロバイダが更新プロセスを使用して ODQ に書き込まれます。

ODP コンシューマ/ ODQ サブスクライバ – デルタキューからデータを取得し、データの処理を継続するターゲットアプリケーションは、”ODQ サブスクライバ”、または、より一般的には、”ODP コンシューマ “と呼ばれ、この場合、Amazon AppFlow は、コンシューマまたはサブスクライバの役割を担います。

一方、ODP プロバイダーは、OData サービスのデータソースとして機能し、Amazon AppFlow のような外部コンシューマーとの REST ベースの統合を可能にすることができます。ODP-Based Data Extraction via OData のドキュメントでは、お客様がコンシューマ向けにサービスを生成し、OData 経由で ODP データを抽出する方法について、このアプローチの詳細を説明しています。

Amazon AppFlow のデータフローでは、SAP OData コネクタを使用して、OData サービスとして公開されている ODP プロバイダに接続することができます。このコネクターは完全抽出をサポートしており、お客様は ODQ からマイクロバッチでデータを抽出することができるようになります。

また、このコネクターは差分データ転送をサポートしており、ODP フレームワークが提供するビルトイン CDC 機能を利用します。お客様は変更操作(挿入/削除/更新など)を伴うデルタトークンにより、ソースシステムで行われたデータの変更をシームレスに取得することが可能です。ビルトイン CDC 機能のサポートにより、お客様は ODP フレームワークが提供する固有のデルタトークンを使用して、サポートされている ODP ソースプロバイダからマイクロバッチでシームレスにデータを取得できるようになり、データ転送がより最適化されるようになります。

ODP ベースのデータ抽出を Amazon AppFlow で使用する主な利点

  • Amazon AppFlow は、お客様がわずか数クリックでデータフローを構築できるフルマネージドサービスです。ローコード、ノーコードで利用できるサービスです。
  • データ抽出は SAP アプリケーション層で動作するため、データのビジネスコンテキストは保持されます。
  • 確立された SAP ODP/ODataフレームワークへのシームレスな統合により、立ち上げやセットアップの労力を最小限に抑えます。
  • Amazon AppFlow API を使用して、他のアプリケーションとシームレスに統合することができます。

ODP ベースの OData フローを作成するための前提条件

  • データソースのプロバイダは、ODP を有効にしておく必要があります。
  • ODP データソースに基づいて OData サービスを生成するには、SAP Gateway Foundation が ERP/BW スタックにローカルにインストールされているか、ハブ構成になっている必要があります。SAP ERP 、SAP BW 、SAP S/4HANA 、および SAP BW/4 HANA などの ERP/BW アプリケーションでは、SAP NetWeaver AS ABAP スタックが 7.50 SP00 である必要があります。リモートハブの設定には、ハブシステム(SAP Gateway)の NetWeaver AS ABAP が 7.50 SP00 以上であることが必要です。SAP ERP または SAP BW アプリケーションが 7.50 SP00 未満の低いバージョンの NetWeaver で動作する場合は、ハブシナリオを推奨します。
  • OData サービスを SAP ODP ソースから作成し、サービスゲートウェイで利用するために Odata サービスを登録する必要があります。ODP プロバイダ用の OData サービスの生成と登録の詳細については、 SAP のドキュメントを参照してください。さらに、 ODP データソースに基づく OData サービスのセットアップを紹介した私たちのワークショップを参照することもできます。
  • Amazon AppFlow SAP OData Connector は、セキュアな接続のみをサポートしているため、 HTTPS で接続するためのセキュアな設定を有効にする必要があります。注: Amazon AppFlow は、安全なデータ転送のために AWS PrivateLink を使用したプライベート接続をサポートしています。 SAP OData コネクタのプライベートフローを設定する方法については、こちらの Amazon AppFlow with AWS PrivateLink ブログをご覧ください。
  • 7.40 SP04 以下のような NetWeaver の下位バージョンで ERP/BW アプリケーションを実行している場合、SAP note 1931427を適用する必要があります。
    ローカルゲートウェイまたはハブシステムで次の SAP ノートを適用することをお勧めします:2854759 2878969306223230234462888122

SAP ODP ベースの OData サービスを利用した Amazon AppFlow のデータフローを作成する

特定された ODP プロバイダとその生成された OData サービスを使用し、そのサービスはローカルまたは SAP Gateway ハブシステムに登録されています。

Amazon AppFlow の初期画面から SAP OData の接続を作成します。サイドバーを拡張し、 Connections を選択します。次に、コネクタのドロップダウンから SAP OData を選択します。”Create Connection” タブを選択し、必要な情報を入力します。入力値の詳細については、セットアップ手順を参照してください。

次に、サイドバーから Flow を選択し、 “Create flow” を選択します。

  • フローを設定し、 SAP 接続を選んでソースに接続します
  • ODPベースのODataサービスを含む、SAP OData Servicesを検出します
  • SAPサービスエンティティを選択します
  • フローのトリガーを定義します(オンデマンドまたはスケジュール)
  • フィールドのマッピング、バリデーションの定義、フィルタの設定を行います
  • フローを実行します

フローを作成する方法の詳細は、Amazon AppFlow SAP OData Connector のドキュメントを参照してください。

SAP ODP ベースの OData サービス環境においての比較 – スケジュールフロー vs オンデマンドフロー

スケジュールフロー

Amazon AppFlow はこのオプションを選択することで完全データ転送を開始し、定義された頻度で以降の実行は、SAP ODQ メカニズムを使用して差分転送を実行します。差分転送では、 Amazon AppFlow は以下のデルタデータ転送のために、 ODP フレームワークによって提供されるデルタトークンを利用します。

注:最初の実行は、このエンティティの以前のデルタキューサブスクリプションもリセットします。同じ ODP データソースに対してアクティブなスケジュールフローが存在しないことを確認します。

Amazon AppFlow は、 ODP ベースのデータソースを公開する OData サービスを自動的に検出し、最初のフロー実行中に ODQ へのサブスクリプション( Initial Data with Delta Init )を作成します。また、フローが正常に実行された後、トランザクション ODQMON を介して SAP プロバイダシステムで ODQ サブスクリプションを監視することができます。

オンデマンドフロー

ODP 対応 OData サービスを使用してオンデマンドフローを実行すると、 SAP プロバイダソースシステムの ODQ にデルタキューサブスクリプションが作成されず、代わりにデータが完全に取得されます。

OnDemand フローが正常に実行された後、SAP プロバイダソースシステムでトランザクションコード ODQMON を確認します。OnDemand フローのアクティブなサブスクリプションは表示されません。

考慮すべき点

Amazon AppFlow で SAP ODP ベースの OData フローを削除しても、 ODQ サブスクリプションの終了は自動的に起こりません。この残されたサブスクリプションは、 SAP プロバイダシステムで処理する必要があります。トランザクションコード ODQMON を使用してサブスクリプションを管理し、不要になった場合は終了させます。 SAP プロバイダシステムで再整理ジョブをスケジュールして、キューをクリーンアップすることができます。

結論

Amazon AppFlow SAP OData Connector は、 SAP データを OData 経由で Amazon S3 に直接抽出するサーバーレス・マネージド・サービスです。この機能は、クラウドネイティブの AWS サービスに SAP データを統合するための道を開きます。今回の発表では、 Amazon AppFlow SAP OData Connector をさらに強化し、 SAP ODP フレームワークを使用できるようにします。この機能は、トランザクションデータ、マスターデータ、プレゼンテーションデータなど、複数の SAP ERP/BW データソースからのデータ抽出を簡素化し、内蔵の Changed-Data Capture 機能で実現します。

まずは、Amazon AppFlow のページをご覧ください。AWS が 5,000 を超える SAP のお客様に選ばれ、イノベーションをもたらすプラットフォームである理由については、 SAP on AWS のページをご覧ください。

翻訳は Partner SA 松本が担当しました。原文はこちらです。