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ファイザーのAWS re:Invent Keynoteセッションに学ぶ3つの重要ポイント
この記事は “Three Takeaways from Pfizer at AWS re:Invent Keynote” を翻訳したものです。
ファイザーは、その科学的専門知識とグローバルなリソースを活用して、人々の命を大幅に延ばし、質を向上させるワクチンと治療薬を提供しています。昨年、ファイザーは13億人の患者を治療しました – つまり6人に1人がファイザーの薬を使用したことになります。
AWSの最大の年次イベントであるre:Inventで、AWSのCEOアダム・セリプスキーは、ファイザーの最高デジタル・テクノロジー責任者リディア・フォンセカと基調講演のステージを共有しました。フォンセカは、進行中の最新の生成系AIの取り組みと、昨年とそれ以降の両社の最も革新的な共同成果について語りました。下記のトップ3つが重要なポイントです。
1. ライフサイエンスの生成系AIの未来を探る:患者をより速く助けるために時間とリソースを再配分
この1年で最も話題になったテクノロジーは、生成系AIです。ファイザーはAWSと協力して、その力を17のユースケースに活用し、イノベーションと生産性を推進しています。科学的・医学的なコンテンツの生成から製造など、Amazon BedrockとAWSのAI/機械学習(ML)エコシステムを使用したプロトタイプは数週間で立ち上がっています。ファイザーは、優先的なユースケースの一部で、年間75億ドルから100億ドルのコスト削減が見込めると推定しています。
例えば、生成系AIは新しいがん治療標的の特定に役立ちます。今日、これはデータソース間で情報を集約せざるを得ないマニュアルプロセスです。しかし、AIはわずかな時間で、はるかに多くのソースから関連するデータと科学コンテンツを特定および照合できます。AIアルゴリズムは、潜在的な標的を生成し、それらをより迅速に検証し、最終的には成功確率を向上させる傾向を評価できます。
さらに、ファイザーはAWSサービスを使用して、VOXと呼ばれるファイザー認定の生成系AIプラットフォームを迅速に導入しました。これにより、従業員はAmazon BedrockやAmazon SageMakerなどの最高の大規模言語モデルに安全にアクセスしながらイノベーションを起こすことができます。他の生成系AIアプリケーションとして、特許出願の初稿を作成し、医学・科学コンテンツを生成することで、人間によるレビューと最終化のための時間を節約し、ファイザーが画期的な成果をより速く患者に届けることができるようにすることが検討されています。
AWSのアジャイルな文化は、ファイザーの働き方と一致しており、両社がプロトタイプを迅速に反復できるようにしています。また、Amazon Bedrockで利用できる大規模言語モデルのバリエーションにより、ファイザーは特定のユースケースに最適なツールを選択できます。AWSのモジュール方式により、ファイザーはベンダー全体でプラグアンドプレイが可能となり、全体的なAI戦略を大幅に加速できます。
2. クラウドによって可能になった前例のないスピードとスケール:COVID-19ワクチンの開発とその先へ
生成系AIは、ファイザーがCOVID-19パンデミックが発生した時を振り返ると、AWSとファイザーは成果につながる方法でテクノロジーを適用するために取り組みました。ファイザーがBioNTechとのCOVID-19ワクチンの共同開発を発表してから、FDAが緊急使用許可を付与した日までわずか269日しかかかりませんでした。このプロセスに通常かかるのは8〜10年です。そしてパンデミック前、ファイザーはポートフォリオ全体で2億2,000万回分のワクチンしか生産していませんでした。この数は、2022年にはコミナティの40億回分に拡大しました。この実現のためには、多くの技術協力が必要でした。
まず、AWSは高性能コンピューティング容量を迅速に提供し、ファイザーがクラウドの追加の数万コアにスケールできるようにしました。追加のCPUを利用することで、ファイザーはワクチン候補の製造方法を理解するための非常に計算負荷の高い分析を実行できました。次に、FDAへの申請のために1日以内にデータを提出する必要があるとき、AWSはオンデマンドでコンピュート容量を増強し、ファイザーが科学進歩のスピードで進められるようにしました。
次に、世界中がワクチンを待っている中、ファイザーはできるだけ速くワクチンを製造および配布する必要がありました。業界初のデジタルオペレーションセンターにより、ファイザーのチームは工場間で連携し、生産状況を確認し、リアルタイムで問題を解決できるようになり、スループットが20%向上しました – これがファイザーの工場の運営の核心です。例えば、mRNA予測アルゴリズムにより、1バッチあたり2万回分多くのワクチンが得られました。
今日、ファイザーとAWSは、サプライチェーンを混乱させる可能性のあるイベントに関するプロアクティブなアラートをAIで生成しています。例えば、ハリケーン・イアンの前に介入することで、重要な医薬品とワクチンの供給の継続性を確保しました。
3. グローバルで成功するのためのエンタープライズレベルのデータ戦略
ファイザーは現在、18ヶ月以内に19の医薬品とワクチンを発売することを目指しています。これは、どの企業によっても達成されたことのない快挙です。非常に野心的な目標ですが、すでに13の発売を達成するなど、着実な進捗があります。
この目標の成功には、デジタル、データ、AIが不可欠であり、ファイザーを際立たせているのは、これらを企業全体に適用している点です。ファイザーは数年前からこの土台づくりを始め、テクノロジーとAIが企業で花開くために必要な要素を整えてきました。データの集中化、グローバルでスケールできる標準とプラットフォームの作成、強力なデジタルとAI人材の育成、そして堅牢でセキュアな基盤の構築です。これらすべてが、最大のインパクトをもたらすイノベーションのために行われました。
2021年、ファイザーは大規模なイニシアチブに着手しました。コアITのクラウド化を10%から80%に引き上げることです。これには、12,000のアプリケーションとデータベース、8,000のサーバーを42週間で移行することが必要でした。これは、ファイザーの規模の企業において、AWSがお客様をご支援した中でも最速の移行の1つです。
AWSへの移行により、ファイザーは年間4,700万ドル以上のコスト削減と、3つのデータセンターの閉鎖xを実現し、4,700トンのCO2排出量削減、つまり1,000世帯分の年間エネルギー使用量に相当する削減を達成しました。これによりスピードとスケールでのイノベーションが可能になりました。例えば、ファイザーはコンピューティング資源の設定に必要な時間を、月単位から時間単位(1時間で6万CPU)に短縮でき、大規模な薬事申請のためのデータ生成スピードを75%向上させました。
この成功は、これまで以前の取り組みによるものです。2019年、ファイザーとAWSは、数百の実験機器からのマルチモーダルデータを集約する、業界をリードするサイエンティフィックデータクラウド(SDC)を開発しました。このエンドツーエンドのプラットフォームは、実験室や製造機器によって生成された科学データの処理、保存、検索、再利用、分析に関わる作業を簡素化します。SDCのAWS上に構築されたオープンデータレイクアーキテクチャにより、データ量の増加や分析要件の複雑化に合わせてプラットフォームを動的にスケールできます。納入後、SDCはファイザーの科学者が、以前の断片化された環境では数週間または数ヶ月かかっていた、すべての過去の分子と化合物データの簡単かつカスタマイズされた検索をリアルタイムで行うことが出来るようになりました。この時間短縮により、ファイザーチームは分析と計算研究を加速し、最も有望な新規化合物を特定および設計するAIアルゴリズムを活用できるようになりました。
ライフサイエンス関連の組織とAWSがどのように連携しているかの詳細は、thinkwithwp.com/health/life-sciencesをご覧ください。※日本のお客様向けのウェブサイトはこちら:https://thinkwithwp.com/jp/local/health/
翻訳は事業開発の片岡と亀田が担当しました。