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【開催報告】2020年 AWS re:Invent Recap ヘルスケア・ライフサイエンス

アマゾン ウェブ サービス ジャパン株式会社 インダストリー事業開発部 片岡です。

ヘルスケア・ライフサイエンス領域でクラウド活用を検討頂いているお客様を幅広く対象として、2021年1月28日に「2020年 AWS re:Invent Recapインダストリー編 ヘルスケア・ライフサイエンス」をウェビナーで開催しました。

本記事では、セッションの中でお伝えしました、最新事例や最新サービスを含む当日の資料・動画を皆様にご紹介します。

本ウェビナー開催の背景

世界最大級のグローバルITカンファレンスであるAWS re:Invent 2020が昨年12月から今年1月にかけて行われました。今回はコロナ禍の影響で初のオンライン開催となり、AWSのクラウドサービスに関わるセミナー、ハンズオンセッション等、2,500を超えるセッションが無料で提供されました。

本ウェビナーでは、re:Inventの中で紹介された最新事例や新サービス・新機能の中から、日本のヘルスケア・ライフサイエンス業界のお客様に対して、コンテンツを分かりやすくまとめさせて頂きました。

1. re:Inventで紹介された、ヘルスケア・ライフサイエンス (HCLS) 海外最新事例 [Slide]

アマゾン ウェブ サービス ジャパン株式会社
インダストリー事業開発部 プリンシパル
佐近 康隆

武田薬品、アクセンチュア、AWSの戦略的提携に関するアップデート
佐近からは、2020年10月14日に武田薬品とアクセンチュアからグローバルにプレスリリース (PR) された3社の提携に関して、アップデートをご紹介しました。PRでは、武田薬品が80%のアプリケーションをクラウドに移行し、10年以内には従業員全員がAI/機械学習 (ML) を活用して業務を効率化するビジョンを掲げられており、この提携に関して武田薬品やアクセンチュアから発信された内容を紹介しました。特に、Executiveセッション ”Ready to realize: Every business as a cloud-first business featuring Takeda” では、AI/ML活用のための人材育成やデータの準備を考えるとクラウドファーストが必然となることと、既存のレガシーなインフラやアプリをクラウドに移行する際の課題などが語られました。 ”Security-led transformation with Takeda and Accenture (sponsored by Accenture)” では、グローバルネットワークのガバナンスや、100以上のAWSアカウントから発生するログの収集・解析について、クラウドならではのセキュリティ対応の考え方を示して頂きました。

データの流動性を高める、臨床研究プラットフォーム事例
次に、ライフサイエンス業界で注目されている「データの流動性 (Data Liquidity)」について、4つの事例をご紹介しました。まず、ロシュ様では、個別化医療の実現に向けて、価値のある多様なデータを大規模に収集し、目的に合った先進的な解析手法を柔軟に扱え、研究者間のコラボレーションを促進しつつ、コンプライアンスを順守した、データサイエンスプラットフォームを構築した事例をご紹介いただきました。また、アストラゼネカ様では、2026年までに計画されている200万ゲノムデータ自社管理に向けてクラウド上でのゲノム解析の価値を説明し、UK Biobank様は、世界中の研究者が利用するゲノム解析基盤としてDNAnexus様とAWSを採用したことを発表頂きました。最後に、ハーバード・メディカル・スクール様では、複数機関との共同研究におけるクラウドのメリットに触れ、より多くの機関(教育/研究)がアクセスできるようにAWSで開発した オープンソースソリューションService Workbench on AWSをご紹介しました。

ロシュ様にご使用頂いたサービス群一覧

ライフサイエンス製造業務のAI/ML効率改善事例
このパートでは、AI/MLを用いてライスサイエンス業界の製造業務の効率を改善する2つの事例をご紹介しました。まず、メルク様は、グローバルに展開する医薬品製造体制が各国のコンプライアンスに準拠しているかを確認するCMC薬事の業務をグラフDBのマネージドサービスAmazon Neptuneを使用することで大幅に作業時間を短縮できる可能性をお示し頂きました。ノバルティス様では、生産データの収集・解析・予測を進めて、施設ごとのKPIやバッチ情報を見える化してリアルタイムな意思決定に活かす取り組みをご紹介しました。

医療情報システム最新事例 (HL7 FHIRによる相互運用性、オンライン診療、電子カルテなど)
最後に、医療情報システムをクラウド上で利用する最新事例や、新サービスAmazon HealthLakeのPreviewに参加している事例などを紹介しました。医療機関ピエドモント・ヘルスケア様とデロイト様は、電子カルテEpicをAWS上で動かす経済性をPoCで評価した取り組みを紹介しました。また、コロナ禍によるTelehealth/Telemedicineの爆発的な普及を支えたAWSサービスをご紹介しました。

コロナ禍に伴う医療環境の変化を支えたAWSサービス

2. re:Invent前後で発表された、HCLS視点で注目の新サービス・新機能紹介 [Slide]

アマゾン ウェブ サービス ジャパン株式会社
ソリューションアーキテクト
中島 丈博

データに基づく個別化医療の実現
中島から、個別化医療を実現するために必要なシステムとして、データレイクとサービス提供のためのアプリケーション(HL7 FHIR等)について触れ、3つの関連サービスをご紹介しました。まず、Amazon HealthLake(プレビュー段階)について、十分に構造化されていない医療データの課題を踏まえて、ご提供可能な機能をIMPORT, STORE, TRANSFORM, QUERY & SEARCH, ANALYZEに分けてご説明しました。また、このサービスはHL7 FHIRをサポートしているため、複数のアプリケーション間で情報交換が容易であり、自然言語処理などの機械学習モデルを使用してヘルスデータを構造化できる特徴等をデモを通じてご説明しました。併せて、Amazon HealthLakeで得られた動画をAmazon QuickSightで可視化したブログもご紹介しました。

続いて、複数のデータソースにまたがるマテリアライズドビュー(仮想テーブル)を作成できるAWS Glue Elastic Views(プレビュー段階)について、実際の操作画面をご覧頂きながら、ご利用開始までの手順をご説明しました。最後に、Amazon SageMaker Data Wranglerについて、データサイエンティストの方々が、データの準備に多くの時間やリソースが割かれているという課題に触れながら、グラフィカルなインターフェースを用いてデータクレンジングや探索、可視化ができる等のメリットをご紹介しました。

AWS Glue Elastic Views ユーザーインターフェイス操作画面

研究環境のプラットフォーム化
研究開発部門のお客様のニーズとして、オンデマンドに利用可能なシステム環境、コスト管理、およびクラウドとオンプレミスのハイブリッド環境等が挙げられ、関連するサービスを2つご紹介しました。1つ目は、Service Workbench on AWSで、研究者向けのコンピューティング環境をWebポータルとして提供可能なオープンソースのソリューションであり、AWS Cloud Formationのテンプレートを利用頂いてお客様の環境にデプロイするまでの流れをご説明しました。また、Service Workbench on AWSのワークスペース管理画面を使用することで、研究者が請求画面を参照したり、ワークスペースの環境サイズを選択して研究者ごとに起動権限を付与したり、といったオペレーションが可能となります。2つ目は、Amazon ECS Anywhere をご紹介しました。背景として、DockerコンテナをAWSで簡単に実行、スケール、管理することが可能なAmazon Elastic Container Service (ECS)に対して、データセンターのキャパシティを有効活用したい、インフラストラクチャを自身で所有・管理したいなどのご要望を頂き、AWS以外のデータセンターやオンプレミス環境にデプロイすることが可能となるAmazon ECS Anywhereがアナウンスとなりました(2021年一般提供予定)。

Service Workbench on AWSのご紹介

ライフサイエンスの製造領域
スマートファクトリーや機械学習の活用(予知保全や品質の維持向上)などのニーズを踏まえて、4つの関連サービスをご紹介しました。機器の異常を検知して予知保全を実現するAmazon Monitronは、Amazonの配送センターと同じ機械学習サービスを用いて異常な機器パターンを分析し、計画外の停止時間を削減するメリットがあります。Amazon Lookout for Equipmentは、既存データから機械学習を使用した異常検知を可能にします。また、既存のIPカメラを使用して画像認識を実現するAWS Panorama(プレビュー段階)は、AWS Panorama アプライアンスを使用してエッジ処理をすることで低遅延での処理が可能となり、GitHubでサンプルもご利用可能です。最後に、Amazon Lookout for Visionは、製品の外観検査システムが簡単に構築可能なサービスとして、少ないインプット(30枚程度)で異常検出モデルを学習可能です。(セミナー当時はPreview段階でしたが、既に東京リージョンでご利用可能です。)

医療機関のパーソナライズした取り組み
医療機関側でのパーソナライズされたサービスの提供や顧客・患者情報の連携に対するニーズを受けて、関連するサービスとしてAmazon Connectの新機能をご紹介しました。別のサービスですが、Amazon Transcribeの文字起こしストリーミング機能が日本語対応になったことで、Amazon Connectとの連携においても、リアルタイムでの音声認識が可能となりました。また、Amazon Connect Customer Profilesは、複数のリポジトリから、コンタクトの履歴、住所等の顧客情報を集約することで、コールセンターのオペレーターが一元的に顧客情報を参照できるようになる等のメリットを具体的な統合方法と併せてご説明しました。

セキュリティとコンプライアンス
最後に、監査対応および規制やコンプライアンス標準への対応についての顧客ニーズに触れ、関連サービスとしてAWS Audit Managerをご紹介しました。監査対応時のお客様の課題として、エビデンスを準備する際の手作業によるエラーや、規制等への対応、継続的な監査の実施が可能な監査体制やシステムの構築等が挙げられます。そこで、監査の準備に役立つフルマネージド側サービスであるAWS Audit Managerは、構築済みのフレームワークの提供や、エビデンス収集の自動化、監査対応レポートの生成が可能であり、証跡の処理プロセスと併せてご説明しました。

まとめ

本ウェビナーに関して、ご質問やご要望がございましたら、お問い合わせページ、もしくは担当営業までご連絡をお願いします。また、今回の講演内容で参考にしましたre:Invent 2020のセッション動画が、YouTube (https://www.youtube.com/channel/UCdoadna9HFHsxXWhafhNvKw)で公開されておりますので、ぜひご覧ください。


参考コンテンツ

ヘルスケア・ライフサイエンス関連コンテンツ:https://thinkwithwp.com/jp/health/
ライフサイエンス関連AWSブログ:https://thinkwithwp.com/jp/blogs/news/category/industries/life-sciences/
ヘルスケア関連AWSブログ:https://thinkwithwp.com/jp/blogs/news/category/industries/healthcare/

このブログの著者

片岡 勇人 (Yuto Kataoka)
インダストリー事業開発部 事業開発マネージャー (ヘルスケア・ライフサイエンス)