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NRF 2023 で注目の小売企業向けのソリューション: Amazon Forecast と AWS Supply Chain

NRF 2023 にて発表された没入型コマース体験や店内最適化のアイデアについて話しましたが、今回は小売企業の裏側に関係するサービスについて触れたいと思います。

アパレル & ファッションソリューション戦略に関するWorld Wideの責任者である Doug Tiffan が、NRF 2023 で AWS サービスやアプリケーションがどのようにして、またどのような理由で小売業界ソリューションの強化に役立つのか、というテーマで有益なディスカッションを行いました。

  • Amazon Forecast:機械学習 (ML) に基づく時系列予測サービス
  • Amazon SageMaker Canvas:ビジネスアナリストに機械学習へのアクセスを容易にする視覚的なインターフェースを提供するサービス
  • AWS Supply Chain:データを統合し、 ML を活用した実用的なサプライチェーン関連の洞察を提供するクラウドアプリケーション

それではまず、これらの AWS ソリューションの背景と利点を詳しく見ていきましょう。

AWS による予測: 小売業界向けに最適化された予測

AWS は、ローコード、およびノーコード (LCNC) の ML ベースの予測サービスを提供して、小売企業のビジネスを支援します。 Amazon Forecast や Amazon SageMaker Canvas などのサービスを利用することで、企業は特定のニーズやユースケースに最も適した予測フレームワークを選択することが可能です。

Amazon Forecast は、ML に基づく完全マネージド型の時系列予測サービスです。このサービスは、ローコードインターフェースを通して、Amazon が培った ML ベースの予測体験を、すべての開発者へ提供するものです。 More RetailThe Very Group などの小売企業、そして Anaplan などのパートナー企業は、業務運用の支えとして、この Amazon Forecast を各社のビジネス活性化のために利用されています。

Amazon Forecast を使用すると、価格プロモーション、広告データ、特別イベント、さらには天気といった独自の切り口を組み合わせて予測を生成できます。これまでに販売したことのない新商品の予測を生成したいと思ったことはないでしょうか? Amazon Forecast の深層学習モデルは、データのパターンから学習するように装備されており、商品のメタデータ (商品間で共有される特性) を使用して、新商品の予測を生成します。実際、re:Invent 2022 で、AWS は履歴データのない商品に対してより正確な予測を生成する新しいコールド スタート機能を発表しました。

従来の方法と比較したときの、Amazon Forecast の利点を次に挙げます。

  1. 従来のモデルでは活用、または評価できないような大量のデータを活用することが可能です。
  2. プロモーションや商品分類といったコンテキストデータを使用し、どのデータが予測に影響を与えているかを定量的に解釈できる形で可視化します。
  3. 新製品の市場投入というような特殊シナリオも扱うことができます。
  4. ある商品が別の商品にどのように影響するかを把握するために、大量の商品の中から、各商品が持つ、共通要素の抽出が可能です。
  5. 複数のモデルを組み合わせて、単一モデルより精度の高い予測を生成します。
  6. さまざまな在庫品目により適切なサービスレベルを選定するため、確率ベースの予測を提供します。

Amazon Forecast は、統計モデルと ML モデルの組み合わせを使用しており、商品レベルで最適な予測を生成します。これはデータセット全体ではなく、すべてのモデルが商品ごとに考慮されるということを意味し、その中から最適な組み合わせを選択します。このアンサンブルモデリングは、統計モデルよりも最大 40% の高精度な予測を生成することが可能であり、さらに、Amazon Forecast は、精度指標 (MAPE、WAPE、および wQL) と、ユーザーが独自にカスタマイズされた精度指標を処理できるようにするバックテスト指標を提供します。

NRF 2023 で、Amazon SageMaker Canvas を発表しました。これは、ビジネスアナリストが 1 行もコードを記述せずとも、ML の経験がなくても、ML ベースの予測をすばやく作成できる、ノーコードの ML アプリケーションです。 Amazon SageMaker Canvas は、ユーザーが複数のソースからデータをインポートしたり、Amazon Forecast と同じく、高度な ML アルゴリズムを使用してモデルを構築、トレーニング、そして評価できる GUI を提供します。アナリストは、Amazon Sage Maker Canvas を使用して、予測と「what if (もし〜だったら?)」シナリオを迅速に作成し、さまざまな価格帯とオンデマンドプロモーションにおける影響を定量化できます。

Amazon Forecast と Amazon SageMaker Canvas を使用することで、サービスレベルを最適化できます。これは、AWS LCNC ML 予測サービスの次の特徴によるものです。

  1. 高精度: ML モデルは、従来の統計手法よりも最大 50% 高精度になります。従来の方法とは異なり、LCNC ML は複数の深層学習アルゴリズムと統計アルゴリズムを組み合わせることで精度が高まります。
  2. ML の経験が不要: ML の経験がなくても、カスタムモデルを大規模に構築、トレーニング、デプロイするというような作業をすべて行うことができます。
  3. 容易な統合: 既存のデータレイク、在庫、注文、およびサプライチェーンシステムに統合可能です。
  4. 迅速に反復、探索、データの準備、および ML 予測のオンボード: データアーキテクチャ全体を AWS に持ち込むことなく利用できます。

AWS の予測サービスを導入後、 More RetailThe Very Group 、および大手コンビニエンスストアチェーンのすべて企業で、財務結果の改善が確認されました。英国最大の総合デジタル小売業者および金融プロバイダーである The Very Group は、AWS の予測サービス、人工知能 (AI) そして ML ソリューションの活用により、小売需要予測の取組みを加速させました。現在、モデルを他の事業分野に拡大し、組織全体で追加のユースケースを繰り返し、新しいデータを Amazon Forecast に追加して、モデルの精度を継続的に改善しています。

詳しい特徴は Amazon ForecastAmazon SageMaker Canvas をご覧ください。

AWS Supply Chain で重労働から解放される

AWS Supply Chain は、統合されたデータ、ML を活用した実用的な分析、そして、コンテキストコラボレーションを通じて、リスク軽減、およびコスト削減を実現するクラウドアプリケーションです。配送物の物理的な動きに焦点を当てている Amazon Supply Chain とは異なり、 AWS Supply Chain はデジタルの世界で動作します。このアプリケーションは、既存の ERP およびサプライチェーン管理システムへ簡単に接続可能で、プラットフォームの再構築、前払いのライセンス料、または長期契約といったものは必要ありません。

AWS Supply Chain は、在庫リーダー、調達リーダー、データスチュワード、および上級管理職者向けにとどまらず、自動車、化学、消費財、航空宇宙、製造、医療機器、小売/卸売といった、あらゆる業界において、北米およびヨーロッパで事業を展開し、複数の場所(倉庫や配送センター、店舗、製造工場など)で在庫を管理するために、ERP システムが切り離されているようなユーザをも対象としています。

AWS Supply Chain は、次の 5 つの課題を解決することで、リスクとコストの軽減に役立ちます。

  1. 複数の場所と複数の販売チャネルにまたがる不正確、または不完全な在庫の可視性: AWS Supply Chain による在庫の可視化は、さまざまなサプライチェーンノードと施設がどのような経路でつながっているかを示し、現在の在庫レベルを表示、そして各施設間の在庫の流れを、予測と現在状況の両方を比較強調して表示します。
  2. 不正確なサプライヤーのリードタイム予測:AWS Supply Chainは、サプライヤーのリードタイムの異常を検出し、更新されたリードタイム予測を供給計画担当者に提供することで、将来の注文のリードタイムに対する予測精度を向上させます。
  3. 低い充足率: AWS Supply Chain Insights は、手持在庫、未処理の顧客注文、および現在のサプライヤーのリードタイムを分析することにより、各施設の将来の在庫レベルとリスクを予測し、状況の変化に伴い、物流倉庫における在庫の過剰または不足の傾向を管理者に通知します。
  4. 新しいサプライチェーンソリューションの採用に費やす多大な時間と作業とコスト:新しいサプライチェーンソリューションを採用する際には数ヶ月かかることもありますが、 AWS Supply Chain の自動データ関連付けツールであれば、AI を活用して重労働であるデータマッピングを行い、ユーザは数日でインサイトの生成を開始することができます。
  5. 手動作業中心の需要計画プロセスや古い統計手法に依存した計画技術: AWS Supply Chain Demand Planning は、 Amazon.com の経験から得たML技術を結集させたアプリケーションとして、手動プロセスの自動化による作業時間の効率化、および予測精度の向上を実現しています。

AWS Supply Chain は次の特徴により、ユーザへ独自のビジネス価値を提供します。

  • サプライヤーのリードタイムの異常を検出することで、計画の想定を改善するのに役立ちます。
  • 傾向と異常を探索し、需要と供給の急な変動に対応するための推奨事項を提供します(既存のシステムを利用して導入を進めている間も)。
  • ユーザの既存のサプライチェーンデータを ML が処理し、インサイトを生成することで、管理者がまだ気づいていない、あるいは意思決定に必要な情報の欠落というような傾向やリスクを明らかにします。
  • 既存の ERP およびサプライチェーンシステムとの統合にかかる差別化につながらない重労働を削減をします。
    • これにより、ユーザは新しいサプライチェーンソリューションを採用しやすくなります。

それぞれ特徴の詳細はこちらでご確認ください。

Amazon Forecast、AWS Supply Chainといったサービスをはじめとし、AWS は小売業のお客様ののビジネス変革をご支援いたします。 thinkwithwp.com/jp/retail で詳細をご確認いただき、お気軽にお問合せください。

Doug Tiffan

AWS のアパレルおよびファッションのソリューション戦略の世界的責任者であり、ファッション小売業のグローバル戦略とソート リーダーシップをリードしています。 Doug は小売業で、マーチャンダイジング、運営、企業変革、テクノロジーに関する 30 年以上の経験があります。

翻訳は Solutions Architect 西村が担当しました。原文はこちらです。