Amazon Web Services ブログ

株式会社アーベルソフト様の AWS 事例「社内システムをオンプレミスから AWS へ 2 週間で移行、運用工数の 9 割以上を削減」のご紹介

本ブログは 株式会社アーベルソフト 様と Amazon Web Services Japan 合同会社が共同で執筆いたしました。

みなさん、こんにちは。ソリューションアーキテクト 田中 里絵です。

サーバーレスサービスやマネージドサービスの価値を実感されると、その適用範囲を拡大したいというニーズが自然と生まれることが多いです。今回の事例は、すでにビジネスにおける AWS 活用を進めている SIer 様が、自社システムの改善を通してクラウドの知見をさらに強められたという事例です。オンプレミスで運用していた社内システムを 2 週間で AWS へ移行し、運用工数を 9 割以上削減した取り組みについてご紹介します。

株式会社アーベルソフトについて

アーベルソフト様は、1984 年設立のソフトウェア開発企業です。システム開発およびソリューション提供を主な事業とし、金融、製造、公共など幅広い業界に対してサービスを展開されています。従業員数は 69 名(2025 年 6 月現在)で、本社は埼玉県坂戸市に構えています。

近年は OSS 製品を活用したデータ連携基盤構築の実績を強みとし、大手企業からの受注や地方自治体向けのプロジェクトなど、多様な案件に取り組まれています。2024 年には、AWS 上での 生成 AI 活用にも取り組み、開発・運用コストの削減とサービス品質向上の両立を実現される、「生成AIコンテスト 開発実績部門」にて 1 位を獲得する、AWS AI Day の 生成 AI ハッカソンで準優勝、などの複数の成果を上げられました。

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 2024 年 10 月 AWS AI Day の 生成 AI ハッカソン決勝戦にご登壇の高橋氏と、社員の皆様

アーベルソフト様が直面していたオンプレミス運用課題と背景

アーベルソフト様は、社内向けポータルシステムと基幹システムをオンプレミスで運用されていました。社内ポータルシステムは全社員が利用し、基幹システムは 24 時間 365 日稼働が求められるビジネス上重要度の高いシステムです。これらのシステムについて、以下の課題に直面されていました。

  1. OS レイヤーの運用保守負荷
    1. 年次の ISMS 監査では、OS バージョンやパッチ適用状況の棚卸しに月 24 時間を要していました。また、通常運用時においても、OS レイヤーのセキュリティ更新作業が頻繁に発生しており、日々の業務を圧迫していました。
  2. アプリケーション更新の属人化
    1. アプリケーションの更新は手動デプロイで行われていたため、作業が属人化しがちでした。担当者が業務時間外にアプリの更新対応を行うなど、運用負荷が特定のスキルセットを持つ人員に集中する状況が続いていました。
  3. 耐障害性の課題
    1. 社内利用のサーバーのため、課題は感じつつも、耐障害性のない状態での運用を余儀なくされていました。具体的には、単体サーバー上で稼働していたため、インフラレイヤーの可用性やデータの耐久性が、十分に確保できていませんでした。

移行の取り組みと成果

migration_phase1_architecture図1. 社内ポータルシステムの構成図

migration_phase2_architecture 図2. 基幹システムの構成図

アーベルソフト様は運用課題の解決に向けて、まず社内ポータルシステムの移行から着手されました。生成 AI プロジェクトを通じて価値を実感されたサーバーレスサービスの活用を主軸に据え、アプリケーション基盤に AWS Amplify を採用しました。既存のサーバー上で稼働していたモノリシックな Web アプリケーションをサーバーレスアーキテクチャへ移行する作業は、アーベルソフト様にとって新たなチャレンジでしたが、AWS が公開している豊富な技術ドキュメントを活用することで、実装上の課題を一つひとつクリアすることができました。
この移行によって、AWS 側が基盤の障害に対する復旧機能を提供するようになり、システムの安定性が向上しました。また、お客様自身が運用すべき範囲が大幅に縮小されたことで、日々の運用業務に余裕が生まれました。さらに、Amplify の GitHub 連携機能を活用して CI/CD パイプラインを構築し、開発からデプロイ、更新まで一気通貫で行える環境を実現でき、開発効率の向上やアプリケーション管理における属人性の排除を実現しました。

社内ポータルシステムでの成功体験を基に、アーベルソフト様は 24 時間 365 日の稼働が求められる基幹システムの移行にも取り組まれました。基幹システムのアプリケーション基盤には AWS App Runner を採用し、コンテナベースのアプリケーションをフルマネージド環境で運用する構成としました。データベースレイヤーには Amazon Aurora を採用し、自動バックアップ機能によりアベイラビリティゾーン(AZ)レベルの障害に対するデータ耐久性を確保しました。社内ポータルシステムと同様に、CI/CD パイプラインを構築することで、属人化していたデプロイ作業を自動化し、開発生産性の向上を実現しました。

2 名という少人数のチームで、社内ポータルシステムは約 3 日間、基幹システムは約 1 週間、合計 2 週間という短期間で移行を完了できました。サーバーレスサービスの活用やAmazon CloudWatch による運用管理の自動化によって、従来は月 24 時間程度を要していた OS レイヤーの運用管理工数の 9 割以上を削減することに成功しました。取締役の西岡和紀様は「本プロジェクトを通して、モダナイゼーション、移行、サーバーレスといった AWS のノウハウを実践的に獲得できました。普段の SI 業務でクラウドに携わることが多いメンバーにとっても、今後のプロジェクトに活かせる実践的な知見を得ることができました」とコメントされています。

今後は、すでに実績のある生成 AI の知見をさらに拡張し、Amazon Bedrock AgentCore を活用した業務改善にも取り組まれる予定です。また、今回の社内システム移行で得た知見を活かし、SI 事業のさらなる拡大を目指されています。

まとめ

本ブログでは、アーベルソフト様がオンプレミスで運用していた社内システムを 合計 2 週間で AWS へ移行し、運用工数を 9 割以上削減した取り組みをご紹介しました。生成 AI からクラウド活用を始められ、サーバーレスサービスの価値を実感されたことをきっかけにそれらの知見を自社システムの改善にもつなげ、クラウドを活用したビジネスの知見も強められました。

社内システムの運用工数削減やクラウド移行をご検討の方は、ぜひ本事例を参考にしていただければ幸いです。

AWS のサーバーレスサービスについて詳しく知りたい方は、以下のリソースもご参照ください。

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株式会社アーベルソフト : 取締役 兼 営業部長 西岡 和紀 氏 (中央左)、技術統括 室長 高橋 圭太郎 氏 (中央右)
Amazon Web Services Japan : アカウントマネージャー 瀧澤 栞 (左端)、ソリューションアーキテクト 田中 里絵 (右端)

ソリューションアーキテクト 田中 里絵