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AWS Elemental LiveでDolby Visionストリームを生成する

ハイダイナミックレンジ(HDR)技術は、比較的新しく市場で利用され、常に変化し続けています。HDR技術には、映像の明るさ(輝度)、鮮やかさ(色域)の広い美しい映像コンテンツを作成するために選択肢が数多くあります。例えば、HDR10、HDR10+、HLG、Dolby Visionなどです。この記事では、Dolby Visionの主な利点と、AWS Elemental Liveエンコーダを使用してDolby Vision対応ストリームを構成する方法を紹介します。

Dolby Visionとは?

Dolby Visionは、Dolby Laboratories社が開発したHDR技術です。他のHDRフォーマットとの主な違いはダイナミックメタデータの使用です。すべてのビデオフレームに存在するこのメタデータにより、Dolby Visionに対応したビデオディスプレイは、ビデオをパネル自体の能力に正確に、一貫して効率的にマッピングすることができます。これにより、色精度の面で最適な結果が得られ、画面上の明るい部分と暗い部分のレンダリングもより正確になります。一方、HDR10は静的なメタデータを使用しているため、Dolby Visionでの視聴と比較して、視聴者が体験するコントラストと色の精度が制限されます。AWS Elemental LiveとDolby Visionで10ビットの色深度を使用すると、100億色の可能性があるのに対し、Rec 709 8ビットでは1670万色しか使用できません。

Singer: Dolby Vision vs SDR

Bird: Dolby Vision vs SDR

なぜDolby Visionを利用するか?

Dolby Visionは、コンテンツ制作者と提供者の双方に採用されています。例えば、コンピューター、タブレット、携帯電話の世界最大級のメーカーであるアップル社は、2017年にiPhone Xの発売とともにDolby Visionの再生サポートを追加し、2020年には同社のフラッグシップモデルである「iPhone 12」および「12 Pro/Pro Max」がDolby Visionでコンテンツをネイティブに録画・再生できることを発表しています。OTT(オーバー・ザ・トップ)ストリーミングの世界では、特にVOD(ビデオ・オン・デマンド)サービスにおいて、品質がサービスの重要なベンチマークの一つとなることがよくあります。視聴者は、携帯電話で大切な人を撮影したり、今月の新シリーズをストリーミングで楽しんだりと、HDR対応コンテンツを画面で見ることに慣れてきています。  「Prime Video」、「Netflix」、「HBO Max」、「Disney+」、「Hulu」は現在、HDR10とDolby Visionに対応しています。また、ライブエンコーディングワークフローも同様にDolby Visionの恩恵を受けます。NBCは2020年の東京オリンピックをDolby VisionとDolby Atmosで配信(Comcast、Verizon、fuboTV経由)することに成功しました。  差別化を図りたいコンテンツ制作者にとっても、優れた映像・音声体験に慣れ親しんできた消費者にとっても、品質は重要です。

AWS Elemental Liveエンコーダのソフトウェアライセンスにより、この技術を簡単に導入することができます。この機能により、視聴体験のレベルが向上し、Dolby Vision処理のために追加のハードウェアを購入する必要がなくなります。

AWS Elemental LiveでDolby Visionを使ってイベントを設定する

AWS Elemental LiveはDolby Visionストリーム処理を含む高度なエンコーディング、トランスコーディング、およびその他のストリーム調整機能を実行する、堅牢で機能豊富なオンプレミス型アプライアンスです。Dolby Visionのストリームは、HEVCでエンコードされたストリームにDolbyのメタデータを追加したものです。メタデータはフレーム毎にRPU(reference processing unit)サブストリームとして提供され、プライベートネットワーク抽象化レイヤー(private MPEG network abstraction layer(NAL))ユニットに格納されます。 AWS Elemental Liveは、HDRの入力映像を解析し、Dolby Visionのダイナミックメタデータを生成し、そのメタデータをRPU形式にパッケージして、HEVCのエレメンタリーストリームと多重化します。

AWS Elemental LiveはProfile 5とProfile 8.1のDolby Visionの色空間変換をサポートしています。Dolby Visionプロファイルは、Dolby Visionストリームを配信するためのエンコード方法を定義するもので、ビデオコーデック、コーデックパラメータ、ビット深度、RPUデータをエレメンタリービデオストリームでどのように伝送するかが含まれます。Profile 5は、HEVCを用いてエンコードされたDolby Vision専用のプロファイルであり、Profile 8.1は、HDR10との相互互換性を持つDolby Visionで、同じくHEVCを用いてエンコードされています。

Table 1: Dolby Vision bitstream profiles

Table 1: Dolby Vision bitstream profiles

Table 2: BL signal cross-compatibility ID

Table 2: BL signal cross-compatibility ID

Table 3: Dolby Vision levels

Dolby Visionプロファイルの詳細については、「Dolby Vision Profiles Specification」を参照してください。

以下のコンフィギュレーションガイドでは、Dolby Visionを有効にしてイベントをセットアップするための一般的な前提条件、要件、およびステップバイステップの手順を説明しています。  また、Dolby Visionのストリーム・コンディショニングが行われていることをメッセージで確認する方法についても説明します。

前提条件:

  • AWS Elemental Live software version 2.21.1 GA or later
  • HEVC ライセンス(AWS Elemental Live)
  • Dolby Vision ライセンス (AWS Elemental Live)

 システムハードウェア要件:

  • 1080p 出力: 全てのL800シリーズ
  • 4K HEVC 出力: L840s, L880 または L730 システム

入力要件:

  • 最小入力: 1080p
  • HDR 入力

出力要件:

  • コーデック: HEVC(必須)
  • プロファイル: Main10/Main and Main10/High プロファイルのみ対応
  • カラーコレクタープリプロセッサーを有効

ステップ 1: イベントの作成

  1. AWS Elemental Live Web GUIで、「New Event」を選択
  2. Input」に対して、イベント名を入力しElemental Live ソフトウェアがサポートするHDRコンテンツの入力で1080p (FHD)から4K(UHD)の間の解像度を選択する。以下の例では、HDRコンテンツはHD-SDIまたはQuadrant4k (Square Division)によって伝送されます。
  3.  「Advanced」を選択し、「Video Selector」の「Color Space」で「Follow」を選択。ソースがHDRの場合、エンコーダーはRPUを挿入し、Dolby Vision規格の出力を行います。

Elemental Encoder: Create an Event; Input

  1. 出力では「video elementary stream」でDolby Visionを選択
  • Codec: HEVC (H265) を選択
  • Insert Color Metadata: 有効化

Elemental Encoder: Create an Event; output

  • Profile: Main10/Main または Main10/High プロファイルのみ対応
  • Advanced > Preprocessorsから 「Color Corrector」を有効化
  • Video Range:
    • 入力がFull Rangeの場合、「Passthrough」を選択。
    • 入力がVideo rangeの場合、Full Rangeに効率的にアップコンバートするために「Full Swing」を選択。重要: 入力がFull Rangeの場合、Full Swingを選択せず、再アップコンバート処理を避けてください。
    •  Color Space Conversion: Profile 5 または Profile 8.1を選択

Elemental Encoder: Create an Event; Dolby Vision Settings

Dolby Vision処理の確認

Elementalエンコーダーではチャンネルが開始されたら、イベントダッシュボードに入り、「Output Group Control」までスクロールダウンします。そこでは実行中のDolby Vision Profileを「Statistics」セクションで確認できます。次の例では、出力映像がDolby Vision Profile 5で処理されています。Dolby Vision処理が実行されていない場合、統計情報はN/Aと表示されます。

Dolby Vision対応機器でコンテンツを再生する

Dolby Visionはテレビやセットトップボックス、モバイルデバイスやパソコンなど、最新のメディア機器でサポートされています。次の例はAWS Elemental Liveエンコーダーでエンコードされた映像をDolby VisionとSDRコンテンツをiPhone 12で再生した際の比較したものです。

まとめ

Dolby Visionは、民生機器で最適化された一貫性のある体験を提供するために設計された魅力的なHDR技術です。ここまでの手順でAWS Elemental Liveエンコーダの設定を行うことで、美しく高品質なワークフローを構築することができます。  AWS Elemental Liveエンコーダの設定は、エンコーダの前提条件を満たし、イベントを作成し、簡単なログチェックでDolby Visionエンコードが行われていることを確認するという、わずか数ステップで完了します。  上記の方法で作成できる、非常にリッチで鮮やかなビデオストリームをぜひお試しください。詳細については、https://thinkwithwp.com/elemental-live/ をご覧ください。


参考リンク

AWS Media Services
AWS Media & Entertainment Blog (日本語)
AWS Media & Entertainment Blog (英語)

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翻訳は BD山口、SA長澤が担当しました。原文はこちらをご覧ください。