Amazon Web Services ブログ
AWS SDK for SAP ABAP のご案内
はじめに
業種を問わず数千の AWS のお客様が、ミッションクリティカルな SAP ワークロードの実行と運用に AWS を信頼しています。お客様から、SAP アプリケーションを AWS 上でより優れたパフォーマンス、スケーラビリティ、セキュリティで実行できることを重視する一方で、SAP 内のビジネスプロセスをより簡単にモダナイズおよび変革する方法を求めているという声がますます増えています。Moderna、Zalando、Invista を含む多くの AWS のお客様は、AWS サービスを利用して SAP ベースのビジネスプロセスを中心とした革新に成功していますが、これまでは多くの手間がかかっていました。多くのポイントツーポイント接続を作成して維持し、SAP と AWS のセキュリティモデルを統合し、データフォーマットをマッピングしなければならないお客様をよく見かけます。そのため、呼び出される AWS サービスごとに 1000 行以上のコードが必要になることがあります。
AWS SDK for SAP ABAP はプレビュー版として 2022 年 11 月よりご利用可能です。AWS SDK for SAP ABAP を使用すると、ABAP 開発者は、使い慣れた SAP ABAP 言語を使用して AWS のサービスに直接接続することで、SAP ベースのビジネスプロセスを簡単にモダナイズおよび変革できます。このアプローチにより、お客様はアーキテクチャを複雑にしたり、ABAP 開発者が AWS サービス API に対するコーディングの詳細をすべて把握したりすることなく、ビジネスプロセスを中心にイノベーションを起こすことができます。わずか数行のコードだけで、300 以上の AWS サービスすべてに直接アクセスできます。
本ブログでは、SDK の主要な機能や使用例のご紹介と、使用方法をご紹介したいと思います。
主な機能
AWS SDK for SAP ABAP は、AWS のサービスと SAP を組み合わせて簡単にイノベーションを起こしたいというお客様の長年の要望に基づいて構築されました。しかし、お客様から寄せられた非常に特殊なニーズから逆算して、IT チームや ABAP 開発者の手間をかけずに SDK を既存のワークフローにシームレスに統合できるようにしました。そのうちのいくつかを見ていきましょう。
エージェントレス
AWS SDK for SAP ABAP は、純粋に AWS 名前空間の SAP ABAP をベースとしているため、デプロイとメンテナンスが簡単です。インストールやメンテナンスが必要なエージェントはありません。
さまざまな SAP アプリケーションに対応
AWS SDK for SAP ABAP は SAP NetWeaver ABAP 7.4 以降をサポートしています。これには、SAP S/4HANA、SAP BW/4HANA、SAP ERP 6.0 EHP 7、SAP BW 7.4、SAP Solution Manager 7.2 などが含まれます。
ABAP 開発者にとって使い慣れたユーザーエクスペリエンス
コードパッケージは使い慣れた ABAP 構文を使用しており、他の ABAP コードと同様にインポートされ、トランスポートでパッチされます。
統合セキュリティ
セキュリティポリシーに従って SAP と AWS IAM ロールをマッピングするだけで、ロールベースのセキュリティをエンドツーエンドで維持できます。認証、ユーザーの IAM ロールへのマッピング、IAM ロールの引き受けはすべて SDK によって処理されます。
設定可能
ABAP 構成テーブルを使用すると、お客様は ABAP コードにリソース、設定、ロールをハードコーディングする必要がなくなります。もちろん、この構成は標準の SAP ソフトウェアロジスティクスプラクティスに従って転送できます。
それでは、SDK で実際にできることのいくつかに移って、ビルドに取り掛かりましょう。
活用事例
顧客により良いサービスを提供し、新しい機会を活用し、予期せぬ課題に対応するには、多くの場合、SAP で実行されるビジネスプロセスを変更する必要があります。多くの人にとって、こうした変更を行うことの複雑さは、現状維持のきっかけにもなっています。AWS SDK for SAP ABAP は、ビジネスプロセスの一部として AWS サービスを使用するために必要な複雑さを劇的に軽減することで、これらのシナリオの多くを解き放つことができると考えています。お客様から聞いたいくつかの例について簡単に説明しましょう。
請求書の生成/処理
多くのお客様にとって、請求書の作成と処理は手間のかかる手作業です。たとえば、アパレル業界のあるお客様から、請求書を手動で統合して毎晩 SAP にアップロードし、カスタムプログラムを利用してローカルファイルシステムから請求書にアクセスし、SAP Application Server で処理すると言っています。この手動プロセスはエラーが発生しやすく、SAP チームとシステム管理チームの間に依存関係が生じ、ストレージとアプリケーションレイヤー内のさまざまなタッチポイントの両方を手動で監視する必要があります。
AWS SDK for SAP ABAP を使用することで、Amazon S3 を請求書の安全なファイルストアとして活用できるようになります。その後、請求書を S3 バケット内で直接処理し、関連情報を SAP アプリケーションでビジネスユーザーが直接利用できるようにします。これらのユーザーは、S3 バケットにサインインする必要がなくなります。
住所修正
多くのビジネスプロセスは依然として社内の利害関係者やビジネスパートナーの住所を手動で入力することに依存しているため、製品の出荷や請求書の受領などにエラーや関連する遅延が発生する可能性があります。AWS SDK for SAP ABAP を使用すると、顧客は SAP ドキュメントを Amazon Location Service に送信できます。Amazon Location Service は、既知の住所と照合し、それに応じて住所を修正することでエラーを自動的に特定します。
言語翻訳
当社のお客様のほとんどは、多言語の従業員を抱えて国際またはグローバルビジネスを運営しています。以前は、作業指示書やその他の重要なビジネス文書を SAP から複数の言語に翻訳することはできませんでした。AWS SDK for SAP ABAP を使用すると、お客様はドキュメントを Amazon Translate にプッシュして、言語ローカリゼーションと自然言語処理 (NLP) ベースのテキスト分析を実行できるようになります。
このユースケースの詳しい説明については、入門ガイドをご覧ください。
これは非常に単純な例ですが、わずか数十行のコードで、かなり強力な AWS サービスを SAP 内から直接活用できることがわかります。
利用方法
AWS SDK for SAP ABAP を使い始めるには、入門ガイドをご覧ください。フォームに記入するとすぐに、利用開始できるかどうか、および次のステップを確認するメールが届きます。また、製品ドキュメント、API リファレンスガイド、サンプルコードへのリンクもあり、すぐに使い始めることができます。
何千ものお客様が AWS を信頼してミッションクリティカルな SAP ワークロードを実行している理由については、SAP on AWS ページをご覧ください。
翻訳は Partner SA 松本が担当しました。原文はこちらです。