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Magento 用の Amazon Personalize 拡張機能で中小企業のパーソナライズされた体験提供を支援
これは、フルサービスのインタラクティブメディア企業であり、Magento のソリューションパートナーである Customer Paradigm の創設者 Jeff Finkelstein 氏によるゲスト投稿です。
多くの小規模小売業者は、オープンソースの e コマースプラットフォームである Magento を使用して、製品をオンラインで販売するための Web サイトやモバイルアプリケーションを作成しています。パーソナライゼーションは高品質の e コマース体験を生み出すための鍵ですが、中小企業ではスケーラブルで洗練されたパーソナライゼーションソリューション、特に機械学習 (ML) を活用したパーソナライゼーションソリューションの実装に必要なリソースにアクセスできないことが多々あります。ML に基づくソリューションは、静的ルールなどの従来の初歩的な手法と比較して、エンドユーザーのエンゲージメント、コンバージョン、売上の増加に繋がります。Magento 用の Amazon Personalize の拡張機能により、 Amazon.com で使用されているものと同じ ML パーソナライゼーション技術を Magento を使用する中小企業が利用できるようになりました。
コロラド州ボルダーに本拠を置く小さなフラフープ供給会社である Hoopologie 社の事例を見てみましょう。創業者 Melina Rider 氏は 2013 年に事業を開始し、1,000 を超える SKU の幅広い製品ラインを保有しています。他の多くの小規模な e コマース業者と同様に、Hoopologie 社にとっても洗練されたパーソナライズ体験の提供は手の届かないソリューションでした。機械学習の専門家を雇って ML ソリューションを実装するのは費用面で容易ではなく、ルールベースのシステムを使用するには手作業による保守が多く、規模とパフォーマンスが制限されます。
「サイトのあらゆるタイプのユーザー向けにパーソナライズされたレコメンデーションを作成すると毎月何時間もかかってしまいます。そして、それは手頃な価格ではなく、限られたスタッフには他の方法でお客様をサポートしてもらいたいです。」と Rider 氏は言います。
Hoopologie 社は Magento を使用してウェブサイトを強化し、Magento の Amazon Personalize 拡張機能を使用することで、売り上げが 40.5% 増加し、注文あたりの平均注文額が 50 ドル以上増加しました。このブログでは、Magento の Amazon Personalize 拡張機能を実装して、顧客向けに ML を活用したパーソナライズされた体験を作成し、エンゲージメント、コンバージョン、収益を向上させる方法を紹介します。
Magento 用の Amazon Personalize
Amazon Personalize はフルマネージドの ML サービスで、Amazon.com での 20 年以上の経験を活かして、パーソナライズされた体験をより迅速に提供できるよう支援します。Amazon Personalize 拡張機能により、Magento の利用者は Amazon パーソナライズのメリットを活用し、そのアルゴリズムを使用して Magento ストアの商品レコメンデーションを強化できます。すべてのデータと ML モデルは、利用者の AWS アカウントにプライベートかつ安全に保管されます。
簡単に、拡張機能をサイトにインストールして、AWS アカウントを作成し、拡張機能が AWS アカウントにアクセスを承認できます。手順については、 Amazon Personalize for Magento 2: Installation & Configuration Instructions を参照してください。これらの手順を完了すると、Magento 管理画面の Stores, Configuration の配下に Amazon Personalize 拡張機能が表示されます。
構成の詳細を入力
拡張機能の設定方法については、YouTube にある Amazon Personalize for Magento 2: Extension Configuration の動画をご覧ください。
設定ページで、Magento サイトを AWS アカウントの Amazon Personalize に関連付ける全ての値を入力できます:
- License Key フィールドに、拡張機能用に受け取ったライセンスキーを入力します。
ライセンスキーがない場合でも拡張機能をインストールすれば 15 日間の無料トライアルを開始できます。
ライセンスがアクティブな場合は License Active フィールドに yes と表示されます。
- ライセンスがアクティベートされない場合は、有効なアクセスキーを追加してください。
- Module Enabled フィールドでは、管理領域からモジュールを有効または無効にできます。
上記は、サイトのトラブルシューティングが必要な場合や、テストサーバーにサイトのコピーがある場合に役立ちます。
Amazon Personalize キャンペーン(データでトレーニングされた ML を利用したレコメンダー)が Amazon Personalize でアクティブな場合、 Campaign Active フィールドに yes と表示されます。
システムは自動的にデータのアップロード、取り込み、トレーニングを行います。Campaign Active フィールドは読み取り専用の表示で、キャンペーンのオン/オフを切り替えるために変更することはできません。
- File owner home directory フィールドに 、Web ルートの外にあるファイルディレクトリ( ../../keys など) を入力します。
Amazon のセキュリティ要件により、お客様の AWS 認証情報は Magento データベースに保存されないようになっています。その代わり、鍵は Web ルート外のディレクトリに保存する必要があります。通常は、ファイルシステムでの Magento サイトが格納されている場所から 1、2 個上の階層のディレクトリに保存する必要があります。
- AWS Region フィールドに、拡張機能が Amazon Personalize にアクセスするリージョンを入力します。
Amazon Personalize はすべてのリージョンで利用できるわけではないので Amazon Personalize が利用可能で Magento サーバーの物理的な場所に地理的に最も近いリージョンコードを必ず入力してください。
- AWS Account Number フィールドにAWS アカウント番号を入力します。
- Access Key フィールドに、セットアップの認証部分で作成したユーザのアクセスキー ID を入力します。
- Secret Key フィールドに、セットアップの認証部分で作成したユーザーのシークレットキー ID を入力します。
AWS アカウント番号、アクセスキー、シークレットキーの確認方法については、YouTube にある Amazon Personalize for Magento 2: Creating IAM User in AWS の動画をご覧ください。
- Save Config を選択します。
これにより、アクセス情報が保存され、アクセスキーとシークレットキーが Web ルートの外部のファイルに書き込まれます。
トレーニングの開始
トレーニングプロセスを開始するには Start Process を選択します。
Magento の cron が動作していることを確認してください。実行中にならない場合、以下のプロセスのいずれかのステップから次のステップに遷移していない可能性があります。
プロセスには、次の手順が含まれます。
- Magento サイトから履歴データを CSV ファイルにエクスポートします。
- AWS アカウントに CSV ファイルを格納するためのプライベートな Amazon Simple Storage Service (Amazon S3) バケットを作成します。
- CSV ファイルを AWS アカウントの S3 バケットにアップロードします。
- お客様のデータに基づいてカスタムソリューションとキャンペーンを作成するように Amazon Personalize に指示します。その結果、AWS アカウントでホストされるプライベート ML モデルが生成されます。
次のスクリーンショットは、各ステップの進捗を示しています。
Reset Process を選択するといつでもプロセスを再開できます。このプロセスは最初から開始されるため、データのアップロードとトレーニングに追加のコストがかかる場合があります。
A/B 分割テスト
Magento ストアで作成された Amazon Personalize キャンペーンの有効性を評価するために、A/B 分割テストシステムが組み込まれています。A/B テストでは、2 つのユーザーサブセットをサイトのユーザー体験の 2 つのバリエーションに公開し、どちらのバリエーションが最も高いコンバージョン率に繋がるかを測定できます。Control
はデフォルトの Magento で、Test
は Amazon Personalize キャンペーンからのパーソナライズされたレコメンデーションです。
- システムをアクティブにするには Enabled を Yes にします。
Enabled が No に設定されている場合、 Magento は拡張機能を使用しません。
- Set Percentage で、次の A/B 分割テストオプションから選択します。
- 100% Control / 0% test (Amazon Personalize isn’t used at all)
- 75% Control / 25% test (Amazon Personalize is used 25% of the time)
- 50% Control / 50% test (Amazon Personalize is used 50% of the time)
- 25% Control / 75% test (Amazon Personalize is used 75% of the time)
- 10% Control / 90% test (Amazon Personalize is used 90% of the time)
- 0% Control / 100% test (Amazon Personalize is used 100% of the time)
- Save Config を選択して設定を保存します。
次に、Amazon Personalize のトレーニングを許可します。Magento システム内の履歴データの量によっては、このプロセスが完了するまでに数時間かかる場合があります。このページに再度アクセスして、トレーニングの進捗状況を確認できます。
一度このプロセスを完了すれば、アクティブなキャンペーンを引き続き使用して製品レコメンデーションを提供しながら、新しいバージョンのモデルを再トレーニングできます。コストを抑え、サイトに最も関連性の高いデータセットを作成するために、履歴データは過去 6 か月間に限定されています(6 か月以上経過したインタラクションデータは、関連する製品レコメンデーションを行う際の価値が低くなります)。
Amazon Personalize システムを有効にすると、システムは自動的に次の処理を行います。
- パーソナライズされた製品レコメンデーションをエンドユーザーに表示します。
- おすすめ商品の 「こちらもお薦め」 リストを商品ページに追加します
- (サイトで Google アナリティクスを使用している場合)Amazon Personalize 有効時にサイトで処理されたすべての注文に対して、Google アナリティクスタグが自動的に追加されます。これは既存の Google アナリティクスシステムを使用します。Google アナリティクスを使用していない場合、この手順は省略されます。
- Amazon Personalize がアクティブなときに注文が行われたかどうかを示すフィールドを Magento データベースに追加します。
- リアルタイムのデータインタラクション指標を追加して、ユーザーがカートやウィッシュリストに商品を追加した時や購入を完了した時に Amazon Personalize がユーザーから学習できるようにします。
追加のページに Amazon Personalize を加えるには Content, Pages, Select a Page の順に選択します。
トラブルシューティングについては Amazon Personalize Extension for Magento 2 を参照してください。
まとめ
いくつかの簡単な手順で、Magento の Amazon Personalize 拡張機能を e コマースサイトに追加できます。Hooplogie は 2020 年 1 月に Amazon Personalize の拡張機能のテストを開始しました。まず、A/B 分割テストを使用して、ユーザーの 50% にパーソナライズされたレコメンデーションを表示しました。6 週間後、パーソナライズされたレコメンデーションが表示されたユーザーはトランザクションあたり 50.02 ドル増え、テスト期間のユーザーからの総収益は 42% 増加しました。Hoopologie 社は引き続き Amazon Personalize 拡張機能を使用して、顧客向けにパーソナライズされた体験を作成しています。彼らは、システムを継続的に評価し、新製品の追加に応じて再トレーニングを行い、サイトの追加エリアにパーソナライゼーションを追加することで、利用を拡大する予定です。
Magento を使用する多くの e コマース業者にとって、高度なパーソナライゼーションは手の届かないものではなくなったのです。 Hoopologie 社の成果からも、ML を活用したスケーラブルで洗練されたパーソナライゼーションソリューションによる効果が証明されています。Magento for Customer Paradigm の Amazon Personalize 拡張機能の詳細を確認し、 15 日間の無料トライアルをお楽しみください。
著者について
Jeff Finklelstein は、コロラド州ボルダーに拠点を置く Customer Paradigm の創設者です。2002 年に設立された同社のチームは、世界中の e コマースやその他のクライアント向けに 12,600 件を超える Web 開発およびマーケティングプロジェクトを完了しています。 Customer Paradigm のチームは以前、Magento と Amazon Marketplace の統合を構築していました。この統合は 2017 年に Magento のコアフレームワークに組み込まれました。さらに詳しい情報はこちらのリンクにあります。https://www.CustomerParadigm.com
翻訳はソリューションアーキテクトの松岡が担当しました。原文はこちらです。