Amazon Web Services ブログ

第一興商の AWS 生成 AI 事例 : Amazon Bedrock によるヘルプデスク作業軽減検証

本ブログは、株式会社第一興商と Amazon Web Services Japan が共同で執筆しました。

株式会社第一興商は、業務用カラオケシステム「DAM」の開発・運用を手掛けています。グループ全体で 3,300 名ほどの従業員が所属しています。通信カラオケ機器は各市場向けのモデルとして BOX 向け、ナイト店向け、ホテル向け、エルダー向けなど多くの機種をサポートしております。


同社では、このようなカラオケ機器に関する問い合わせ対応のために、営業向けの社内ヘルプデスクを設置しています。ヘルプデスクは 日勤交代制の 12 名体制で、機器の不具合や状況確認に関する 1 日平均 300 件の問い合わせに対応しています。

一方でヘルプデスクでは、問い合わせ内容を手作業で CRM に入力する必要があり、作業負荷と内容のばらつきが課題となっていました。具体的には、実際のカラオケ機器を操作しながら問い合わせに回答するため、リアルタイムにメモを取ることができません。そして受電を優先しているため CRM への記録が後回しとなり、結果として録音データを聞き直して入力する場合もあります。加えて、記録内容は個人の文章能力に依存しており、必要な情報が含まれていないこともありました。

検証内容

このような課題を解決するため、第一興商では AWS のサービスを活用した以下の検証を実施しました。

 

そして、要約された内容とヘルプデスク担当者が手動で入力した内容を比較し、①修正なし、②少量の修正が必要、③修正が必要、の 3 段階で評価、①と②を合格として検証しました。

また今回の検証は、入社 1 ヶ月の社員を中心に実施しました。AWS を利用するのは初めてのメンバーでしたが、約 3 週間で検証作業を完了することができました。

検証結果

その結果として、検証データ 58 件のうち 約 90 % が「一定の要約品質基準を満たす」という良好な結果が得られました。少量の修正が必要な箇所はあったもの、作業負荷の大幅な軽減が期待できます。第一興商の執行役員である関澤様からは「AWS の技術が『多種多様の問い合わせを行う営業現場とヘルプデスクの会話』を見事に要約し、精度に驚きを実感した」とコメントをいただきました。

また今回の検証にあたって、複数部署に対して現状の運用をヒアリングした上で、多くの録音データを聞く必要がありました。結果として、他部署の業務内容や発生する不具合を知ることができるという、新入社員にとっても思わぬメリットもありました。

今後の展望

第一興商では今回の検証結果を受けて、ヘルプデスク業務における生成 AI 機能の導入が進んでいます。今後はこの要約内容を FAQ システムと統合し、さらなる業務の効率化を図っていく予定です。

並行して、Amazon Bedrock に関する 2 つの検証を続けています。1 つ目が入力 Prompt の改良です。Prompt に詳細な情報を追加することで、精度は 95 % を超え、また出力形式を指定することが可能になりました。これによりシステム連携が容易になります。2 つ目に Claude 3 Haiku の検証です。Claude 2 よりも料金を 90 % 以上削減しながらレスポンスまでの時間を短縮できる見込みです。

またこの技術を活用してヘルプデスクの文字起こしだけでなく、会議の議事録などに生成 AI を導入し、時間を節約していきたいと考えています。これにより、本業であるカラオケの開発や企画などに、一層力を注ぐことができます。

まとめ

今回の検証を通して、Amazon Bedrock と Amazon Transcribe を使用した通話音声要約ソリューションが、ヘルプデスクの作業軽減に繋がることを確認できました。第一興商では、今後も AWS の先進的なテクノロジーを活用し、本業であるカラオケ機器の開発や企画により一層注力していく考えです。