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Amazon FSx for NetApp ONTAP を使用してクロスプラットフォームの分散ファイルシステムを作成する
このブログは 2023 年 5 月 19 日に Randy Seamans(Principal Storage Specialist)によって執筆された内容を日本語化したものです。原文はこちらを参照してください。
データは急激に増加しており、コスト管理が必要となってきています。コストの増加を最小限に抑えながら、既存のオンプレミスのリソースをより多く活用することがますます重要になっています。ほとんどの組織は、クラウドのメリットを享受しながら、所有している既存のオンプレミスファイルシステムを活用して、耐障害性が高いハイブリッドエンタープライズ環境のファイル共有システムを作成したいと考えています。これにより、エッジや、データセンター、AWS に存在するさまざまなストレージシステムが、災害が発生した場合でもシームレスに連携するという困難な要件が生じる可能性があります。
このブログでは、Peer Software の Global File Service(PeerGFS)により、クロスプラットフォームのファイルレプリケーションや、同期、キャッシュテクノロジを使用して、顧客がエッジや、データセンター、AWS からファイルにアクセスする方法を説明します。また、統合された分散ファイルロックによって、アクティブ/アクティブのストレージシステム間のバージョン競合を防ぐ方法についても説明します。Amazon FSx for NetApp ONTAP(FSx for ONTAP)を AWS のレコードリポジトリとして利用し、オンプレミスのエッジストレージとデータセンターストレージには Windows SMB や、NetApp、Nutanix、Dell のストレージを利用しています。ここで取り上げるユースケースは以下で構成されています。
- FSx for ONTAP からオンプレミスのエッジ Windows ファイルストレージへのファイルキャッシュ
- FSx for ONTAP を使用したオンプレミス、エッジ、データセンターストレージ間の分散ファイルシステム
- オンプレミスのストレージから FSx for ONTAP までの継続的なデータ保護と高可用性
- オンプレミスストレージから FSx for ONTAP への移行
このソリューションにより、ユーザーは高度なデータ保護や、高可用性、災害復旧オプションなどのクラウドネイティブなファイルストレージの利点を最大限に活用しながら、エッジやデータセンターのロケーションにあるファイルに迅速にアクセスできるようになります。
FSx for ONTAP から Windows ファイルサーバーへのハイブリッドクラウド SMB ファイルキャッシュの有効化
FSx for ONTAP は、AWS クラウド上でフルマネージドの NetApp ONTAP ファイルシステムを作成、実行することができるストレージサービスです。NetApp ファイルシステムの使い慣れた機能、性能、機能、API に加えて、フルマネージドの AWS サービスの俊敏性、拡張性、シンプルさを提供します。
PeerGFS は、標準的な Windows ファイルサーバー上にローカルキャッシュを作成することにより、ユーザーがより短いレイテンシーで FSx for ONTAP のファイルにアクセスすることを容易にし、FSx for ONTAP の SMB ファイル共有へのオンプレミスのアクセスを最適化します。これにより、パフォーマンスが向上し、データ転送トラフィックが削減されます。ファイルの読み取りや書き込みなどのファイルシステム操作はすべてローカルキャッシュに対して実行されます。PeerGFS は、変更されたデータをニアリアルタイムの非同期レプリケーションによって、FSx for ONTAP に同期します。統合された分散ファイルロックにより、複数の場所で同じファイルを同時に編集できないようにします。Microsoft DFS 名前空間の組み込みと制御によって、単一のグローバル名前空間が提供されます。これにより、サイトが停止した場合でも、サイト間の自動フェイルオーバーとフェイルバックが可能になります。
これらの機能を使用すると、オンプレミスのすべてのファイル共有データを FSx for ONTAP に統合でき、保護性と耐障害性に優れたフルマネージドの FSx for ONTAP ファイルシステムのメリットを活用できます。
図 1: FSx for ONTAP から 2 台のオンプレミス Windows ファイルサーバーへの PeerGFS ファイルキャッシュの一般的な構成
デプロイ
以下の 6 つの手順により、この構成のデプロイします。
- FSx for ONTAP をデプロイします。
- AWS Marketplace から PeerGFS をデプロイします。
- FSx for ONTAP 用の Peer Agent をデプロイします。
- 1 台以上のエッジサーバー(AWS またはオンプレミス)をデプロイします。
- Peer Agent をインストールします。
- エッジキャッシュを使用してファイルコラボレーション関係を作成します。
ステップ 1:FSx for ONTAP をデプロイする
PeerGFS が FSx for ONTAP と通信するためには、Microsoft AD 環境に対する認証機能が必要になります。AWS Directory Service は Microsoft AD ディレクトリを管理できます。デプロイの詳細については、こちらを参照してください。別の方法として、オンプレミスの Active Directory 環境を AWS に拡張したり、Windows の Amazon Elastic Computer Cloud(Amazon EC2)上に Active Directory を手動で構成することもできます。
Microsoft AD の設定がニーズを満たしていると判断したら、FSx for ONTAP をデプロイし、ドメインに参加してください。
ステップ 2:AWS Marketplace から PeerGFS をデプロイする
PeerGFS の主要な管理コンポーネントは、Peer Management Center(PMC)です。PMC は、 Amazon EC2 の Amazon Machine Image として利用できます。この AWS Marketplace のリストを使用して、AWS アカウントにデプロイできます。
PMC をデプロイする:
- AWS アカウントにログインし、AWS Marketplace のリストに移動します。
- 「Continue to Subscribe」を選択します。
- Peer Software EULA を確認し、「Accept Terms」を選択します。
- AWS Marketplace で PeerGFS を有効にした後に、「Continue to Configuration」を選択して PMC をセットアップします。
- 追加の詳細な構成手順については、ドキュメントの指示に従ってください。
ステップ 3:FSx for ONTAP 用の Peer Agent をデプロイする
FSx for ONTAP と PMC の両方がデプロイされ、ドメインに参加すると、Peer Agent を AWS 内にデプロイできます。Peer Agent は、FSx for ONTAP とオンプレミスストレージ間の SMB レプリケーションを容易にするために、AWS 上に Windows ベースの仮想マシン(VM)を必要とします。これは、NetApp の FPolicy API と統合してリアルタイムでファイルイベントを監視することで実現されます。
Peer Agent を使用して Windows VM を AWS にデプロイするには、このドキュメントの手順に従ってください。
ステップ 4:1 台以上のエッジサーバーをデプロイする(AWS またはオンプレミス)
エッジのロケーションごとに、Windows Server 2016 以降のシステムをデプロイして Peer Agent ソフトウェアを実行します。これらの各サーバーは、ファイルサービスファブリック内のエッジを表します。
AWS にエッジファイルサーバーを追加したい場合は、ステップ 3 と同様の手順を実施してください。
ステップ 5:Peer Agent をインストールする
Peer Agent ソフトウェアをダウンロードします。Agent インストーラーへのリンクは、PeerGFS のライセンスファイルが含まれる E メールに記載されています。
Peer Agent インストーラーを実行します。使用許諾契約を確認して同意し、デフォルトの宛先ディレクトリをそのままにしておきます。
ステップ 6:エッジキャッシュを使用してファイルコラボレーション関係を作成する
エッジキャッシュのサポートは、PeerGFS の Dynamic Storage Utilization(DSU) 機能によって提供されます。コラボレーション関係を作成する方法の詳細については、Peer Knowledge Base 記事の Task 6 や、DSU の詳細記事を参照してください。セットアップ時に、以下のようにポリシーを定義できます。
FSx for ONTAP に関連付けた Peer Agent は、構成プロセス中にマスター参加者として定義する必要があります。これは、環境の完全なデータセット(レコードのリポジトリ)をホストするためです。
エッジロケーションにある各エージェントサーバーは、構成プロセス中にエッジ参加者として定義する必要があります。これらのエッジ参加者は、完全なデータセットのサブセットのみをローカルファイルキャッシュとして受け取ります。
FSx for ONTAP と PeerGFS を組み合わせることで、ハイブリッドクラウドおよびプラットフォーム環境に渡りユーザーに透過的なファイルキャッシュとファイルコラボレーションが可能となり、シンプルで、高い可用性と信頼性が実現できます。
クリーンアップ
これらの手順を実行した後に不要な AWS のコストが発生しないようにするためには、インスタンスや、FSx for ONTAP リソース、Active Directory リソース、Peer Agent インスタンスなど、作成した AWS リソースをすべて削除してください。
まとめ
このブログでは、ほぼすべてのオンプレミスファイルシステムプラットフォームを活用してデータをローカルにキャッシュし、データセンターや、エッジロケーション、AWS からファイルにアクセスできるようにする、クラウドベースのグローバル分散ファイルシステムを作成する方法を説明しました。また、統合された分散ファイルロックによる、異なるアクティブ/アクティブストレージシステム間でのバージョン競合の防止についても説明しました。
このソリューションを使用すると、ほぼすべての SMB 対応の NAS デバイスを使用して、FSx for ONTAP によってサポートされるファイルキャッシュ、分散ファイルサービス、継続的なデータ保護と高可用性を実現できます。さらに、本ソリューションと同じ構成を使用して、ほぼすべてのオンプレミス SMB ソースから FSx for ONTAP にファイルを移行できます。
FSx for ONTAP はほとんどの AWS リージョンで利用でき、PeerGFS は AWS Marketplace より入手できます。
翻訳はネットアップ合同会社の藤原 善基様、監修はプロフェッショナルサービス本部の葉山が担当しました。