Amazon Web Services ブログ

ユースケースに適したAWSビデオサービスの選択

今日、お客様は、ライブストリーミング、ホームセキュリティ、ビデオオンデマンド、工業環境での予知保全、職場でのビデオチャットなど、多くのユースケースでビデオデータ、オーディオデータ、時間符号化データを利用しています。多くの企業や消費者は、仕事やプライベートでの交流を向上するために、ビデオ技術を導入しています。その結果、AI/ML、インタラクティビティ、コンテンツ保護など、ビデオユースケースの数と種類が急速に増加しています。

このブログ記事では、それぞれのAWSビデオサービスの概要と一般的な使用例を紹介し、どのソリューションがお客様に適しているかを判断するのに役立つ情報を提供します。

AWSでは、増大する多様なビデオユースケースのニーズに応えるため、Amazon Kinesis Video Streams、AWS Elemental Media Services、Amazon Interactive Video Streaming、Amazon Chimeの4つのビデオサービスを提供しています。

サービス 説明 特徴 ユースケース
Kinesis Video Streams コネクテッドデバイスから映像を安全にAWSにストリーミングし、分析、機械学習(ML)、再生、またはそのほかの処理を行うためのフルマネージドサービス 多 対 1の接続ユースケース
  • 予知保全
  • スマートシティ
  • スマートホーム
Kinesis Video Streams WebRTC メディアのライブストリーミングや音声・映像の双方向インタラクションを行うフルマネージドサービス 双方向のインタラクティブなビデオおよびオーディオ接続
  • テレヘルスとバーチャルケア
  • コネクテッド・カーやV2Xにおけるリアルタイム・メディア・ストリーミング
  • カスタマーエクスペリエンスの向上
AWS Elemental Media Service 多くのソリューションを盛り込んだ放送グレードのライブ映像処理サービス 1 対 多 の接続ユースケース
  • プライマリー放送の配信
  • ライブ OTT ビデオストリーミング
Amazon IVS 素早く簡単に設定でき、インタラクティブな映像体験の作成に最適なマネージド ライブ ストリーミング ソリューション 1 対 多 の接続ユースケース
  • ストリーミングコンテンツとソーシャルチャットの組み合わせ
  • 投票・採決
  • ライブコマースなどのEC連携
Amazon Chime 社内外でのミーティングやチャット、ビジネス電話などを1つのアプリケーションで実現するコミュニケーションサービス 1 対 1または1 対 多 の接続ユースケース
  • ビジネスチャット
  • オーディオ・ビデオ会議
  • オンライン会議

Amazon Kinesis Video Streams

Kinesis Video Streamsは、AWS IoTと組み合わせることで、スマートシティ、スマートホーム、産業用オートメーション、デジタルツインのユースケースなどに展開できるソリューションとして、お客様がビデオ対応の製品やサービスを簡単に構築できるようにします。

Kinesis Video Streamsは、ソフトウェア開発キット(SDK)を提供しています。SDKをダウンロードし、接続されたカメラデバイスにインストールすることで、映像や音声データをKinesis Video Streamsに安全にストリーミングし、分析や保存を行うことができます。一般的なデバイス開発環境で利用可能なSDKは、デバイスのメディアソースからデータを受け取り、メディアソースからKinesisビデオストリームに転送されるまでのストリームのライフサイクル全体を管理します。

Neosperienceは、Kinesis Video Streamsを使用して、ビデオストリーミングの要件を簡素化し、AI/MLとの統合を行っています。

How Amazon Kinesis Video Streams Works.

Kinesis Video Streamsの一般的な使用例

インダストリアル・オートメーション – 予知保全
Industrial Automation Predictive Maintenance use case with AWS

スマートシティ – アンバーアラートシステム
Smart Cities Amber Alert Use Case with AWS

スマートホーム – ペットモニター
Smart Home Pet Monitor Use Case with AWS

Amazon Kinesis Video Streams with WebRTC

Kinesis Video Streamsは、WebRTCによるリアルタイムメディアストリーミングにも対応しています。WebRTCは、オーディオ、ビデオ、データのリアルタイム通信(RTC)に必要な技術を、APIを介してウェブやネイティブアプリに組み込むオープンソースプロジェクトです。WebRTCは、デスクトップ、ラップトップ、タブレット、スマートフォンのすべての主要ブラウザでサポートされています。WebRTCをサポートするライブラリは、カスタムプラグインを必要とせずに、携帯電話やデスクトップアプリケーションにWebRTCサポートを簡単に追加することができます。メディアストリームは、Secure Real Time Protocol(SRTP)により安全に暗号化されます。

WYZEは、Kinesis Video Streams with WebRTCを使用して、ライブストリーミング機能の開発を加速しています。

Amazon Kinesis Video Streams with WebRTCによるライブストリーミングのワークフロー

Live Video Streaming workflow with Amazon Kinesis Video Streams with WebRTCKinesis Video Streamsは、標準規格に準拠したWebRTCの実装をフルマネージド機能として提供します。WebRTCを搭載したKinesis Video Streamsを使用することで、あらゆるカメラ付きIoTデバイスとWebRTCに対応したモバイルプレーヤーやWebプレーヤーとの間で、メディアのライブストリーミングや音声・映像の双方向インタラクションを安全に行うことができます。フルマネージド機能のため、アプリケーションやデバイス間でメディアを安全にストリーミングするためのシグナリングサーバーやメディアリレーサーバーなど、WebRTC関連のクラウドインフラストラクチャを構築、運用、拡張する必要はありません。

Kinesis Video Streams with WebRTCを使用すると、様々なユースケースに対応したピアツーピアのライブメディアストリーミングや、カメラ付きIoTデバイス、Webブラウザ、モバイルデバイス間のリアルタイムのオーディオやビデオのインタラクティブなアプリケーションを簡単に構築することができます。代表的なユースケースとしては、カメラ付きインターホンやベビーモニター、自動車と携帯電話の間でのビデオやオーディオの双方向通信、ビデオチャット、ピアツーピア・メディアストリーミングなどが挙げられます。自動車の先進的なユースケースとしては、a)高精細センサーの共有-自動運転によるレーン変更、b)追い越し操作のための見極め、c)遠隔操作による運転、d)視界不良時のアシスト、e)インフラによる環境認識のアシストなどがあります(5G Automotive Associationの要求事項)。

Kinesis Video Streams with WebRTCとKinesis Video Streamsの比較

Kinesis Video Streams with WebRTCは、リアルタイムコミュニケーション、つまり1秒以下のレイテンシーでの双方向通信に対応しています。現在のKinesis Video Streams with WebRTCの実装では、1対1または1対Nのシナリオをサポートしています。1対Nの通信では、各ストリームは一意です。この機能を使ってデータをクラウドに取り込み、保存したり処理を行うことはできません。Kinesis Video Streamsは、オーディオとビデオを取り込むことができ、再生セッション数ではなく、要求されたフラグメント数に基づいてスロットルを行います。これにより開発者は、Kinesis Video Streamsをライブまたはオンデマンド再生に使用するアプリケーションにおいて、最大で10倍の同時再生セッションを可能にする柔軟性を得ることができます。Kinesis Video StreamsのHTTPSストリーミング機能は、HLS/DASHによるライブおよびオンデマンド再生、機械学習のためのリアルタイムまたはバッチモードの処理など、データをAWS(ビデオストリームARNでサポート)にストリーミングして保存および処理することを必要とするユースケースをサポートします。データの取り込み方法としてJava、C/C++、Android用のKinesis Video StreamsプロデューサーSDKが用意されています。ライブ再生のレイテンシーは、デバイスの性能によって3~6秒の範囲になりますが、これはHLSとDASHがフラグメントベースのプロトコルであることに起因する制限です。さまざまな帯域幅や画面サイズに合わせてデコード ラダーを定義するようなアダプティブ ビットレート ストリーミングについては、次のブログ記事(https://thinkwithwp.com/blogs/media/introducing-automated-abr-adaptive-bit-rate-configuration-a-better-way-to-encode-vod-content-using-aws-elemental-mediaconvert/)を参照してください。

Kinesis Video Streams with WebRTCの一般的な使用例

Kinesis Video Streams with WebRTCを使ったビデオチャット
This diagram shows how Video chat using Kinesis Video Streams with WebRTC works.

クラウドでのテレヘルスとバーチャルケア:COVID-19パンデミックでは、患者や医療従事者をウイルスにさらすことなく、臨床現場でCOVID-19に関連しない外来診療や入院診療を行うことが基本的に重要であることが強調されました。
WebRTCは、アプリケーション同士がピアツーピア方式で接続するプロトコルであるため、シグナリングプロセスによって接続が確立されると、両者の間にデータを転送する中間サーバーは存在しません。機密情報がクラウドに保存されることはなく、患者の情報はインターネット上で暗号化されて転送されます。

コネクテッド・カーやV2X(Vehicle to Everything)におけるリアルタイム・メディア・ストリーミング:V2Xとは、V2V(Vehicle to Vehicle)通信とV2I(Vehicle to Infrastructure)通信の間の広帯域、低遅延、高信頼性の通信を指す言葉です。車両が事故に巻き込まれた場合、車両は位置情報を利用しながらWebRTCでライブ配信を行い、必要に応じて救急隊員が助けを呼ぶことができます。

RSU(ロードサイドユニット)と呼ばれる新しい概念が登場し、地図上で定義された地理的ゾーンに車両が近づくと、携帯電話ネットワークを使って情報が送信されます。RSUのカメラはビデオを撮影し、それを通常のWebRTCフローに変換して、駐車している車両や道路の障害物などの環境を高い視点で提供することができます。この変換はトランスコードを必要としないため、処理負荷が低く、圧縮損失なく変換することができます。

シェアリングエコノミーでは、従来とは異なるビジネスモデルが展開されていますが、番号の匿名性は安全で専門的なバリアを作り出します。WebRTCを利用することで、配車サービス企業は電話のマスキングとしてVoIP通話のアプリケーションと置き換えることができ、ウェブサイトやアプリケーション内の顧客体験を強化して販売を促進することができます。

WebRTCは、シームレスで非侵襲的な接続とコラボレーションの方法を提供します。WebRTCのデータチャネルを使って大容量のファイルを共有することができ、遅延が非常に少なく、2つのエンドポイント間で完全な暗号化通信が可能です。

AWS Elemental Media Services

AWS Elemental Media Servicesは、ブロードキャストグレードのライブビデオ処理機能を提供します。これらのサービスを組み合わせることで、高品質のビデオストリームを作成し、テレビや、インターネットに接続されたスクリーンデバイス(コネクテッドTV、タブレット、スマートフォン、セットトップボックスなど)に配信できます。例えば、AWS Elemental MediaLiveは、ライブビデオストリームをリアルタイムにエンコードし、サイズの大きいライブビデオソースを小さなサイズに圧縮して視聴者に配信することができます。

DishTVは、AWS Elemental Media ServicesとAWSクラウドを利用して、ユーザの興味を長く引きつける顧客体験の創出、エンゲージメントの向上、解約の減少を実現しています。

Diagram showing How AWS Elemental Media Services Works. First you have source content. Then AWS Elemental MediaLive channel converts redundant live inputs into two streams instead of multiple compressed outputs, based on output group configuration. Destination A is AWS Elemental MediaStore. Destination B is AWS Elemental MediaPackage. Both are for origination and packaging. Finally Amazon Cloudfront and/or other CDNs deliver video to output devices.

AWS Elemental Media Servicesの一般的な使用例

主な放送配信How Primary broadcast distribution Works with AWS Elemental Services. First you have Broadcast Video Sources for live video and media files played out with source files in Amazon S3. Then AWS Elemental MediaLive has statistical multiplexing. Multiple MediaLive channels produce Single-Program Transport Streams (SPTS), each controlled by MediaLive Statmux and output as variable bitrate. The statistical multiplexer analyses incoming channels that comprise the output Multi-Program Transport Stream (MPTS), distributing bitrate across all SPTS channels to produce the best quality broadcast content in the available MPTS bandwidth.

エンド・ツー・エンドの低レイテンシーに最適化されたライブOTTビデオストリーミングDiagram showing how Live OTT video streaming optimized for low end-to-end latency works. From the source, AWS Elemental Live will do live video processing and contains an on-premises encoder. AWS Elemental MediaStore has media-optimized storage and origin. Amazon Cloudfront has a content distribution network. You can then deliver to multiple OTT devices.

Amazon Interactive Video Service

Amazon IVSは、迅速かつ簡単に設定できるマネージド ライブ ストリーミング ソリューションで、インタラクティブなビデオ体験の構築に最適です。ストリーミングソフトウェアを使用してライブストリームをAmazon IVSに送信すると、このサービスは低遅延ライブビデオを世界中の視聴者に提供するために必要なすべてを行いますので、サービス提供者はライブビデオと一緒に提供したいインタラクティブな体験を構築することに集中できます。Amazon IVSのプレーヤーSDKとタイムドメタデータAPIにより、視聴者の体験を簡単にカスタマイズして拡張することができ、自社のウェブサイトやアプリケーションで視聴者とより価値のある関係を築くことができます。

ViacomCBSは、Amazon IVSを利用して、これまで以上に迅速かつ柔軟な方法でユーザーにサービスを提供しています。

This is a diagram showing How Amazon Interactive Video Service (Amazon IVS) Works. First, you use streaming software to send a video stream to the Amazon IVS ingest endpoint and use the player SDK for web, iOS, and Android to build engaging live video streaming applications.

Amazon IVSの一般的な使用例

Common use cases for Amazon IVS are to engage your audience with social chat, e-commerce and alternative revenue, votes and polls, and real-time Q&A.

Amazon Chime

Amazon Chimeは、安全で包括的なアプリケーションでオンラインミーティングを変革するコミュニケーションサービスです。Amazon Chimeは、複数のデバイス間で連携動作するため、常に接続された状態を保つことができ、ミーティングや会議でデスクトップやビデオを共有することができます。このサービスは、エンドユーザーエクスペリエンスを完全にカスタマイズできる柔軟性や、マルチパーティビデオオプションなど、これらのタイプのインタラクションを高品質にするために必要な機能や性能を備えています。

Connexity Incでは、Amazon Chimeを利用してビデオ会議を行っています。

This is a How It Works diagram for Amazon Chime. First the diagram shows the customer-side application. The customer initiates audio calling, video calling, and screen sharing using the application. Then, the Amazon Chime SDK JavaScript client SDK embedded in customer side applications initiates, controls, and terminates the media session. Next, you can use cloud services such as AWS Lambda to have the server-side application use AWS SDK. With the AWS SDK, Amazon Chime APIs are invoked to create media sessions & manage attendees. With Amazon Chime Media Services, media sessions and services are created to support audio calling, video calling, and screen sharing. Back to the Amazon Chime SDK, JavaScript client SDK embedded in company side application initiates, controls, and terminates the media session. On the company side application, the employee interacts with the customer using the application.

Amazon Chimeの一般的な使用例

Common use cases for Amazon Chime are online meetings, audio and video conferencing, business chat, and user administration.

まとめ

あらゆる業界で、多くのお客様がビデオサービスを利用して、新しい方法で相互に関係を構築しています。各サービスのメリットとユースケースをご理解いただいた上で、適切なAWSビデオサービスを選択していただければ、社内のチームやお客様の組織、およびホームユーザーにも高品質なビデオを配信することができます。

This image shows the right AWS video service for your use case that will enable you to deliver great quality video to your internal teams, customer organizations, and home users alike

ブログ冒頭の比較表を参考に、お客様のニーズに合った最適なビデオサービスをお選びください。IoTやメディアストリーミングのインフラ管理に労力を費やすことなく、コアコンピタンスに集中し、価値創造の時間を短縮することができます。
サービスの詳細や構築を始めるには、以下の記事、サンプルアプリケーション、ワークショップをご覧ください。

https://github.com/awslabs/amazon-kinesis-video-streams-webrtc-sdk-js
https://github.com/awslabs/amazon-kinesis-video-streams-webrtc-sdk-c
https://github.com/awslabs/amazon-kinesis-video-streams-producer-sdk-cpp
https://github.com/awslabs/amazon-kinesis-video-streams-producer-sdk-java
https://video-streaming-and-analysis.workshop.aws/ja/
https://ivs-streaming.workshop.aws/jp/
https://thinkwithwp.com/blogs/media/part1-how-to-set-up-a-resilient-end-to-end-live-workflow/

 

原文はこちら
翻訳はソリューションアーキテクト 渡邉が担当しました。