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ベストプラクティス: AWS によるオブザーバビリティの実装
お客様は、クラウドベースのソリューションを導入する際に、システムが円滑に稼働していることを確認し、問題が発生したときに迅速に修正できるようにする必要があります。しかし、オブザーバビリティを特に企業間をまたがって数十から数百のサービスが関わるような大規模に展開することは、簡単にはいかない場合があります。そのため、お客様はベストプラクティスの推奨事項、ツールの選択に関するガイダンス、そして最も重要な、オブザーバビリティを開始するための段階的なプロセスを求めています。AWS での堅牢なオブザーバビリティ戦略を実装するプロセスを簡素化するために、ベストプラクティスガイドをまとめました。この記事では、ガイドで取り上げられているトピック、ガイドの活用方法、およびガイドへ貢献する方法について説明します。このベストプラクティスガイドは、お客様がオブザーバビリティ戦略を開始し、より複雑なシナリオに対応できるように進化させるためのロードマップを提供します。
ベストプラクティスガイドで取り上げられているトピック
このベストプラクティスガイドは、AWS サービス、データタイプ、および特定のオブザーバビリティツールごとにまとめられています。さらに、このガイドには実際のお客様へのエンゲージメントとお客様のフィードバックから導き出された厳選されたレシピも含まれています。厳選されたレシピは、ユーザーがニーズとオブザーバビリティの獲得によって得られる効果や成果に基づいて、オブザーバビリティを始めるのに役立つテンプレート化されたソリューションです。モニタリングとオブザーバビリティを始めたばかりの場合は、一般的なベストプラクティスから始めて、選択したツールとデータタイプに基づいて、他のセクションに進むことができます。オブザーバビリティ戦略を成熟させたいと考えている場合は、関心のある特定のセクションから直接始めることができます。どのようなアプローチをとるにせよ、ベストプラクティスガイドに記載されているように、オブザーバビリティを後から付け加えるのではなく、初めから積極的にオブザーバビリティを計画する必要があります。
ベストプラクティスガイドは、プロセスを始める際に 適切なツール を選択するといったシナリオから、ハイブリッドまたはマルチクラウド環境での 追加の考慮事項、機械学習 を使用してベースラインを管理し異常を特定するシナリオまで、幅広い範囲をカバーしています。
このガイドでは、データを可能な限り収集したくなる誘惑があるものの、システムの劣化、面倒な分析、コストの膨張につながる可能性があると述べています。そこで、重要なメトリクスに焦点を当てることを推奨しています。これらのメトリクスは業界や企業によって異なります。例えば、決済処理会社は取引処理時間を追跡したいと考えるかもしれません。また、大学は学生の出席状況を追跡したいと考えるかもしれません。次に、これらのメトリクスへの影響に基づいて、収集するテレメトリデータを決める必要があります。このガイドでは、ワークロードのすべての層でテレメトリデータを収集することもアドバイスしています。多くの場合、エンドユーザーの環境で問題の特定が必要になるため、すべての層のデータからインサイトを得ることができるように、単一な一意の識別子を持つことが重要です。さらに、このガイドでは、適切なトレーシングエージェントを選択する方法についての有用な情報も提供しています。
このガイドには、Amazon Elastic Compute Cloud (Amazon EC2) と データベース のモニタリングに関するベストプラクティスをまとめた個別のセクションがあります。また、Amazon Elastic Container Service (Amazon ECS) と Amazon Elastic Kubernetes Service (Amazon EKS) について、AWS やマネージドオープンソースソリューションを使ってシステムおよびサービスのメトリクスを収集する方法を重点的に説明したセクションも用意されています。
このガイドでは、オブザーバビリティツールのコストのベストプラクティスも紹介し、そのコストを可視化するための選択についても推奨しています。このガイドには、サービスレベル指標(SLI)、サービスレベル目標(SLO)、サービス品質保証(SLA)を計算してモニタリングするためのベストプラクティスが簡潔な例と共に説明されています。一部のお客様は、特定のユースケースに対処するために、Databricks on AWS などのパートナーソリューションにワークロードをデプロイしています。このガイドでは、AWS ネイティブサービスや AWS マネージドオープンソースサービスを使用して、このようなワークロードを監視するためのベストプラクティスも説明しています。パートナーソリューションのセクションでは今後も他のパートナーソリューションを追加し、拡張していく予定です。
オブザーバビリティはログ、メトリクス、トレースの 3 つの柱に基づいており、それぞれに焦点を当てる必要があります。そのため、ベストプラクティスガイドでは、データタイプセクションでそれらを個別のサブセクションとして扱っています。
現在、アーキテクチャのほとんどがイベントドリブンであり、オブザーバビリティには特別な考慮が必要です。データタイプのセクションでは、イベントをオブザーバビリティと統合し、実行可能なインサイトを得るためのベストプラクティスを確認できます。このセクションの最後では、アラームに関するトピックと、アラーム疲れや「すべて問題なしアラーム」のような一般的な課題を避けるためのベストプラクティスを説明しています。
また、ツールのセクションでは、オブザーバビリティツールのベストプラクティスについても確認できます。このセクションには、Amazon CloudWatch エージェント、アラーム、ダッシュボード、Amazon CloudWatch Internet Monitor、Amazon CloudWatch Logs、メトリクス、Real User Monitoring、Syntheticテスト、AWS X-Ray によるトレーシングのベストプラクティスが含まれています。最後に、厳選されたレシピを確認して、他の AWSのお客様の経験を学ぶことをおすすめします。厳選されたレシピでは、オブザーバビリティ、テレメトリ(発信元と宛先別のシグナル)、タスクの6つのディメンションで構成されています。ワークロードに合ったディメンションに基づいて、厳選されたレシピを見つけることができます。例えば、AWS Lambda と Amazon RDS で構成されたアプリケーションがある場合は、そのディメンションにまとめられたレシピを見つけることができます。また、ワークロードで達成したいタスクに基づいてまとめられたレシピを見つけることもできます。例えば、Amazon RDS アプリケーションをプロアクティブに監視したい場合は、タスクセクションのアラートのサブセクションにあるレシピを参照できます。
ベストプラクティスガイドへの寄稿
このベストプラクティスガイドは推奨事項を提供するだけでなく、経験、提案、およびアプリケーションの強化を共有するための場を、コミュニティに提供することも目指しています。そのため、ガイドのコンテンツへの寄稿、またはコミュニティからの提案を求めたい場合は、ガイドのディスカッションセクションをご利用ください。
まとめ
ベストプラクティスガイド は、監視とオブザーバビリティの実践を最適化したいユーザーにとって貴重なリソースです。
このガイドは包括的なガイダンスを提供することで、皆様が賢明な意思決定を下し、一般的な落とし穴を回避し、ワークロードのオブザーバビリティの全ての可能性を引き出すことを可能にします。
AWS は、このガイドを通じてモニタリングと監視の優れた文化を育み、AWS ユーザーが、投資した価値を最大限に引き出せることを願っています。また、ガイドへの貢献により、皆さまは集合知の共有と継続的な改善プロセスに積極的に参加できます。ぜひ、一緒に強力で、スケーラブルで、効率的な AWS デプロイメントを構築し、優れたパフォーマンスと信頼性を実現しましょう。
AWS オブザーバビリティのための追加リソースが必要な場合は、One Observability Workshop を試して、AWS オブザーバビリティの経験を得てください。また、Terraform AWS Observability Accelerator と CDK AWS Observability Accelerator を参照すると、AWS 環境にオブザーバビリティをセットアップする方法を学べます。
著者について
翻訳はテクニカルアカウントマネージャーの日平が担当しました。原文は こちら です。