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小売業界パートナー対談:HERE Japan 株式会社の「サプライチェーンのレジリエンスを高める」〜位置情報を活用した正確な到達予測時刻、配送の見える化、アセット位置管理〜

今回はパートナー企業のHERE Japan 株式会社様、シニアセールスマネージャー古山幹生氏と対談し、コロナ禍でサプライチェーンのレジリエンスへの関心か高くなる中、位置情報を活用した正確な到達時刻予測、配送の見える化、アセット位置管理に関して、主に小売業界の観点からお話をお聞きしました。(以下、HERE)

AWS: HEREの事業とフォーカスされている分野について教えてください。

古山幹生氏:HERE TechnologiesはDigital Mapのシェアでは70%をもつリーディングカンパニーです。​創設は1985年米国のCaliforniaでNavteqとして創業し車載用のデジタル地図を提供することからスタートをし2004年には携帯電話に位置情報サービスを展開する等事業を拡大いたしました。その後2008年にNokiaに買収されNokiaの主要な1事業部としてサービスを継続後2012年にHereとして独立後、BMW, AUDI, Daimlerのドイツ3社連合に高精度な地図作成のため再び買収され、2017年にはIntel, ボッシュ、パイオニア、コンチネンタルが資本算入しております。2020年には三菱商事、NTTを新たな株主としてむかえ、日本でもロケーションサービスおよびPlatformのビジネスをスタートいたしました。Map Contentsはもちろん、様々なロケーションサービス、様々なProbeのDataやSensor Dataを弊社のコンテンツやサードパーティ―のDataと合わせることで新たな付加価値を見出すことができるWorkspace、独自にロケーションにかかわる様々なソフトウェアを開発できるSDKが、日本でも利用可能です。

AWS:国土が広く、道路も車線が多く直線コースが多い、自動車社会である米国に比べて、日本の場合、位置情報活用に対するニーズや解決策も大きく異なると考えられます。

古山幹生氏:小売業のお客様から多くいただく配送・物流の課題を例に取りますと、配送物流における可視化、効率化、自動化、最適化に対する位置情報活用のニーズは、グローバル共通のものですが、人口減少による人手不足が進む日本の場合は、お客さまに近いラストマイルのルートの最適化​、到着予定時刻の予測​などに焦点が当たることが多いと感じています。単に早く到着することを目指すだけではなく、コロナ禍におけるEC利用増加、顧客満足の観点からきめ細やかな配送オプションはもちろん、ドライバー不足や働き方改革という観点から配送に携わる方々を支援するため、配送車両の大きさに対する交通規制を考慮したルート提示など、ビジネスのコアであるカスタマーエンゲージを支える仕組みづくりが強く求められています。

AWS:位置情報といえば一見考えるには無人運転、スマートシティの道路網、配送車両の経路分析などが浮かびます。その分野の最近の傾向はどうですか?

古山幹生氏:日本の経済を支える、自動車業界は100年に一度の変化が自動運転やEV化により起こります。一般的なユーザーが想像する「自動運転」とは、限定された条件や、緊急時には運転者が操作を行う必要はあるものの、基本的にはシステムが全ての運転タスクを実施してくれる、レベル3以上と思いますが、L2, L2+といった高度運転支援が2030年くらいまでの主流となる見込みで、“無人”運転まではもう少し先になりそうです。

一方で、日本政府もレベル3の自動運転車が安全に道路を走行することができるよう規定が整備され、先日3月4日にはレベル4の自動運転車の公道走行を許可する制度が閣議決定されました。弊社としては、自動運転技術をサポートする際に特に不可欠なReal Time性の更なる強化に引き続き取り組んでいきます。そして、日本における、位置情報や地図情報を活用したビジネス市場規模は、2025年には1,900億円に達すると予測されています。​また、次世代物流システム・サービス市場においては、自動化ニーズの高まり、サブスクリプション型サービスの導入、DXの取り組み加速により2026年には、2020年比で60%増の9,627億円になる見込みです。

弊社が流通や配送の最適化に対応した取り組みを先行させている背景にはこのような市場予測を反映しています。またDigital地図を提供する会社からロケーションサービスを提供するPlatform Company を目指し自動車業界のみならず様々なIndustryのお客様のお役に立つ機会が増えると考えております。

AWS:そうですね。 小売業では大きく分けての二つの活用方法が考えられると思います。 まず、消費者が中心である場合。数年前からその消費者のためにSDKとか、ビーコンで位置情報データを活用した様々なソリューションアイデアがあふれてきましたが、大きく成果を収めた事例はまだそこまでないと見られます。どう思われますか?

古山幹生氏:小売業に限った課題、また位置情報に限った課題ではないかもしれませんが、データが連結、統合されていない問題がハードルとしてあると思います。三菱商事さんが参画する「スマートシティ会津若松」実証実験において、会津若松市さんは、「暮らし続けることのできるまち」、「暮らし続けたいまち」を目指し“つなぎ続くまちへ”というテーマでプロジェクトを推進されています。HEREのルーティング機能なども活用いただいており、地域の魅力的なスポットを巡るコースを提示、ユーザーは自分の嗜好に合ったコースを選択したのち、ワンストップでレンタサイクルの予約も可能となり、スムーズな移動体験ができます。単に貯めたデータを検索し見せるだけではなく、データに分析を加えその方にあった情報を提示することで需要を創出し顧客体験へと“つなげる”仕組み、データからインサイトを引き出し活用する視点がますます重要になってくると思います。これは、HEREが持っている位置情報ソリューションに、AWSさんのData AnalyticsやMLを組み合わせていただくことで、どんどん繋がってくると思います。

AWS:2番目は消費者が中心ではなく、消費者にものを届ける道のりだと思います。つまり、Supply Chainと実際ものを運ぶ車両管理の二つだと思います。この分野は、先ほどおっしゃった自動車, 運送分野のノウハウを活用することもできると思いますが、どうでしょうか?

古山幹生氏:おっしゃる通りです。HEREは、ロケーションプラットフォームカンパニーとして、地図データや位置情報関連コンテンツはもちろんですが、コンテンツ上に実装される各種の位置情報サービスがございます。位置情報サービスの例としましては検索機能や、ルート案内、または乗換案内のような、カーナビゲーションなどの地図アプリケーションで皆さまが良く使うようなものをイメージしていただければと思います。​​さらに、様々なデータやサービスを組み合わせてお客様独自のソリューションを開発するような環境も持っています。

一例として、LafargeHolcim さんでは、アメリカ全体で3万箇所をこえる施工現場に対して、コンクリートをミキサー車で配送するにあたりコンクリートの品質を確保するにあたって、工場から施工現場まで90分以内に配達する必要があります。お客様が、AWS上でHEREのRoutingとMapsを活用し作成したConcreteDirectという、コンクリート配送のアプリケーションは、配送時間を5分短縮し、燃料消費量も低減するとともに、コロナ禍で配慮が必要であった非接触の配送も可能となりました。

AWS:そこはやはりコロナ禍という環境変化の影響もあったと思いますが、何が大きく変わって、これから何か求められるのでしょうか。例えばグローバル的にもいまだにSupply Chain問題で部品の上達が難しくなったり、その結果物価が高騰したりしている今頃ですが。

古山幹生氏:昨年、HEREが日本企業51社を含む、アジア太平洋(APAC)地域の物流企業152社に調査をしたところ、今後の投資優先事項として、IoT(37%)、倉庫自動化(33%)、電気自動車(32%)考えていると回答してます。また、半数以上の物流企業は、リアルタイムの位置情報を使用した地図ベースのソリューションを活用して車両を追跡しています。車両管理で最も一般的に使用されているのはGPS(77%)、RFID(31%)、QRコード(20%)ですが、IoTも急速に普及しており、回答企業の21%が採用したと回答しています。物流企業の5社のうち2社は、今後2年ですべてのアセットにIoTソリューションの導入を予定しています。IoTを位置情報および位置情報サービスと組み合わせることにより、物流企業はリアルタイムでの追跡が可能となります。そしてこれにより、業務効率を高めるとともに、アセットの誤配置などの問題を削減できます。LafargeHolcim さんの事例もそうでしたが、品質管理が重要な繊細な貨物、コールドチェーン貨物などでは特に重要です。

日本を含むアジア太平洋地域では新型コロナウイルスの影響がまだ続く中、物流企業は従来とは異なる新しいルート計画に向けて動いています。日常的に生じるリアルタイムの事態がルート計画や配送時間に影響を与えることはよくあります。企業はロジスティクスサービスとアセット追跡のソリューションでこの問題に対処しようとしています。

AWS:これからもテクノロジーは進化し続けて、位置情報データの活用ももっと活発に行われると思いますが、変化に対応するために企業が必要な事は何だと思いますか?またHEREとしてどのような革新を行っておりますか?

古山幹生氏:今日のコネクテッドな世界においてサプライチェーンの最適化は必須です。デジタルテクノロジーへの投資を実行しエンドツーエンドの可視化を実現する企業のみが成功するでしょう。日本国内に限っても、eコマース市場は、アフターコロナでも引き続き成長すると予想され、物流企業におけるエンドツーエンドの可視化の実現に役立つ、デジタルテクノロジーへの投資は引き続き増加傾向です。特に、エンドユーザーが迅速で正確な配送を求める中、物流で最もコストのかかると言われるラストマイル部分に対して、データを活用したソリューションを求めるニーズを強く示しています。これは、物流企業だけで最適化できるものではなく、サプライチェーン全体でのデジタル化が重要となり、リテール業界の皆様においてもリアルな物流だけではなく、企業間でのデータ流通が重要のテーマとなります。

リアルタイムの位置情報を使用した地図ベースのソリューションにより、車両管理や貨物モニタリングを簡単に実現できる時代になりました。さらに、IoTと組み合わせ、クラウド型ソリューションも使用し企業間の枠を超えてデータを統合することで、リテール業界の最前線に立つことができると考えます。

また、HERE は Amazon Location Serviceのデータプロバイダーとしても、世界中のマップレンダリング、ジオコーディング、検索、ルーティングを提供しています。AWS開発者の皆さんは、HEREの高品質なデータを利用した位置情報機能をAmazon Location Service を通じて、セキュアかつ簡単に追加いただけますので、ぜひお試しいただきたいと思っております。

AWS:本日はお話を聞かせてくださいましてどうもありがとうございました。


HEREとAWSのパートナーシップの取り組みについてはここを

そして、今回HEREは2022年5月25日から26日まで開かれるAWS Summit 2022のTheme sponsorでもあります。イベントの詳細はここを


古山 幹生

HERE Japan株式会社

シニアセールスマネージャー

メディア&エンターテイメント、物流業を経て、1999年にデル・コンピュータ株式会社に入社。内勤営業として、関西の準大手、中堅企業を主に担当。その後インサイドセールスマネージメント、外勤営業、社内ITプロジェクトへの参画、サービス プロダクトマネジメント等多くの職務を経験。 2013年にはEMCジャパンに入社。同社初の社員によるインサイドセールス部門の立ち上げを率いる。同社がデル・テクノロジーズに買収された2017年以降は、日本・韓国2か国のクライアント&コンピュートセールス部門のインサイドセールスディレクターとして、同部門のビジネス成長に貢献。 2020年11月にHEREジャパン株式会社入社、株主であり、戦略的パートナーでもある三菱商事、NTTとの提携によるビジネス成長を実現すべく活動中。2021年4月よりは、加えてビジネスパートナー部門担当を兼務。


本ブログの著者について

Keanu Nahm

キアヌはAWSのシニア事業開発マネジャーとして主に流通小売業界を担当しています。米国ミシガン大学 、ウォートンMBA卒。米国・イギリス・韓国の 消費者、IT企業でB2C、B2Bマーケテイングの戦略立案、事業開発、ブランド管理。 2016年から小売・消費者企業向けの米国のIT企業で新しい企業文化、組織変更、デジタル広告製品開発を含めたDXをリード。2020年末から現職。