Amazon Web Services ブログ
RISE with SAP による ERP システムのクラウド化事例をご紹介
ERP システムは、決算、資材所要量計画、在庫移動などのミッションクリティカルなビジネスプロセスに広範な影響を与えるため、多くのデジタルトランスフォーメーション構想の中心に位置しています。これらのコアプロセスは、多くの企業が顧客、製品、サプライヤー、従業員の体験を構築するための基盤となっています。ERP のモダナイゼーションに着手する企業は、これらのプロセスの自動化、拡張、再構築を支援する AWS クラウドに注目し、今日の進化する経済状況に適応して成功できるよう対応を進めています。
2022 年は、このような ERP の変革に取り組む企業にとって、非常に大きな出来事となった年でした。2023 年で 3 年目を迎える RISE with SAP on AWS (AWS のクラウドサービス、SAP S/4HANA やその他の SAP ソリューション、マネージドサービスを 1 つの契約で組み合わせたクラウド導入オプション)は、多くのお客様で評価、導入いただきました。2022 年 10 月に発表された SAPinsider の RISE ベンチマークレポートでは、RISE with SAP(RISE)の決定に影響を与えた要因として、SAP BTP などのイノベーション能力、管理・運用の簡素化、ビジネスプロセスの変革などが上位に挙げられています。何百ものお客様が RISE のワークロードに AWS を選択したのは、まさにこうした理由からであり、SAP BTP サービス on AWS によって SAP S/4HANA への旅を簡素化し、AI、ML、データレイクサービスなど 300 以上のフル機能のネイティブクラウドサービスによってビジネスの意思決定に知能と分析を組み込むことができます。
以下は、RISE on AWS を選択したお客様のハイライトと、SAP のクラウドトランスフォーメーションジャーニーで RISE がどのように役立ったかを紹介します。
Arc’teryx (アークテリクス)
アークテリクスは、カナダのバンクーバーに本社を置く、アウトドアウェアとアウトドア用品に特化した大手小売・デザイン企業です。同社は、高度にカスタマイズされた自前の ERP システムを運用しており、ビジネスの俊敏性を阻害していました。GDPR や各国の規制への対応は貴重なリソースを消費し、ビジネス戦略やグローバルオペレーションに迅速に適応し対応するITの能力を制限していました。Arc’teryxは、自前の ERP システムを廃止し、グリーンフィールドの SAP S/4HANA 環境を導入することを決定しました。RISE on AWS は、Arc’teryx が大規模な IT チームを運用するよりも、ビジネス要件の解決に集中できるようにするため、説得力のある構成を提示しました。非常にタイトなビジネススケジュールを考慮し、Arc’teryx は 2 週間以内に RISE on AWS で SAP S/4HANA に移行することができました。現在、Arc’teryx は自社開発の ERP環境 を SAP S/4HANA に置き換え、RISE 導入の一環としてSAP Customer Activity Repository(CAR)と Apparel Fashion Add-on(AFS) を AWS 上で稼働させています。次のステップとして、Arc’teryx はクラウドを活用して計画、配分、財務予算管理システムをモダナイズする予定です。
Grupo LALA
Grupo LALA 社は、メキシコ、米国、中米、ブラジルにおける高品質な乳製品の製造・販売におけるリーダー企業です。同社は、成長戦略と新しい乳製品カテゴリーへの継続的な進出をサポートするプラットフォームを探していました。同社は、SAP S/4HANA クラウドへの移行を加速・簡素化するために、RISE にたどり着きました。31 の工場と 173 の配送センターを持つ Grupo LALA にとって、財務、人事、生産、配送、物流プロセスにおいて SAP と非 SAP ソリューションの両方をサポートし、コア SAP S/4HANA 環境との安全でリアルタイムな接続を確保できる RISE クラウドプロバイダを選択することが極めて重要でした。同社は徹底的な精査の過程と RFP の後、RISE with SAP(ブラジルから開始)と非 SAP 環境の両方をホストするために AWS を選択しました。Grupo LALA 社は、デジタルトランスフォーメーションの旅における次のステップとして、SAP ランドスケープ全体で RISE のフットプリントを増やし、AWS のネイティブ AI/ML、アナリティクスクラウドサービスを探索して、SAP ランドスケープから深い洞察と更なる価値を創造する予定です。
Integrated Micro-Electronics, Inc. (IMI)
IMI は、フィリピンに本社を置き、自動車、航空宇宙、産業市場向けの高信頼性電子機器に特化した、世界有数の技術・製造企業である。同社は、レガシーなハードウェア上でオンプレミスの SAP 環境を運用しており、同社のサプライチェーン拡大計画や成長軌道をサポートできていない状況でした。IMI は、さまざまな事業の幹部が参加し、SAP 環境のモダナイズと RISE によるクラウドへの移行を含む、複数年にわたるデジタル変革ロードマップを作成しました。 10 カ国に 21 の製造拠点を持つ IMI は、もともと Amazon Aurora を使用して AWS 上で自社開発のエンタープライズソリューションの一部を稼働させていました。IMI は、RISE 環境として AWS を選択し、SAP 環境と同じレベルのクラウドの俊敏性、柔軟性、信頼性を確保するために、自社開発ソリューションの運用に慣れていました。RISE on AWS に移行したことで、IMI は試算表や資料集などのビジネスレポートの作成を加速し、ビジネスの意思決定者に提供することができました。次のステップとして、IMI は製品ライフサイクル管理ソリューションを近代化し、AWS Datalake や AWS IoT Services などの AWS ネイティブサービスを活用して製造プロセスをモダナイズする予定です。
PPG
PPG は、塗料、コーティング剤、特殊材料の世界的なメーカーで、米国ピッツバーグに本社を置き、75 カ国以上で事業を展開するフォーチュン 250 社に選ばれています。長年にわたる戦略的買収と売却を経て、同社は複数の異なる ERP システムを抱えることになりました。PPG は、120 年以上にわたって配当を拡大し、50 年以上にわたって増配を続けている数少ない企業の 1 つです。同社は、買収企業の統合を加速し、株主への価値提供を継続するために、SAP S/4HANA 環境を SAP HEC から RISE に移行することを決定しました。PPG が RISE 環境のホスティングに AWS を選んだ理由は、AWS のグローバルインフラストラクチャが世界 30 の地理的地域に対応しているためです。この中には、他の RISE クラウドプロバイダーが対応していない PPG が大きなビジネスを展開している国も含まれています。今後、PPG は、1 年前に開始したデータセンター撤退の加速を継続し、8 つのデータセンターにわたるワークロードを AWS に移行すると同時に、RISE の提供を通じて、複数の SAP および非 SAP ERP インスタンスを AWS 上の SAP S/4HANA に統合する予定です。
他にも多くのお客様が…
ニュージーランドに本社を置き、科学的根拠に基づいた栄養製品およびサービスを提供する農家協同組合 Ballance Agri Nutrients、ドイツに本社を置き、移動を楽しく持続可能にする自動車サブスクリプションを提供する FINN、トルコに本社を置き、プラグイン商用冷蔵市場向けのソリューション全般を提供する製造会社 Klimasan、英国に本社を置く水素電気およびバッテリー電気自動車メーカー Tevva などの世界各地の AWS のお客様が、また日本の民間シンクタンク、情報サービス企業である株式会社野村総合研究所、 非鉄金属を始めとする総合素材メーカーである三菱マテリアル株式会社、住宅・店舗施設向けの照明器具を手がけるコイズミ照明株式会社が自社の ERP 環境のモダナイズとビジネスプロセスの変革を目的として RISE with SAP on AWS を選択しました。
2023 年、そしてその先を見据えて
2022 年 10 月の SAPinsider RISE Benchmark レポートで調査した RISE を検討している SAP のお客様の 72% は、6~12 ヶ月先のスケジュールを立てており、2023 年が ERP のクラウド化にとってまたもやイベント多き年になるという初期指標を提供しています。AWS では、RISE の旅に出るお客様をサポートするために、お客様を意識した取り組みを続けています。2023 年に RISE を検討されているお客様は、SAP とのコラボレーションや、最近発表された SAP Private Link Service(選択した SAP BTP サービスと AWS ネイティブサービス間のプライベート接続を可能にする)、SAP BTP と AWS ネイティブサービスを使用して SAP 環境を拡張できる SAP と AWS のジョイントリファレンスアーキテクチャなどの機能性を利用できることを楽しみにしています、 SAP の開発者が SAP ABAP 言語を使用して AWS サービスに直接接続することで、SAP ベースのビジネスプロセスを近代化および変革できるようにする、新しくリリースされた AWS SDK for SAP ABAP(現在、開発者プレビュー版)、SAP との技術共同イノベーションにより AWS Graviton 3 プロセッサが SAP HANA Cloud をサポートし、価格性能、信頼性および持続性を向上します。
AWS がお客様の RISE ジャーニーをどのように支援できるかについては、thinkwithwp.com/sap_japan をご覧いただき、SAP と AWS のアライアンスページをご確認ください。
翻訳は Partner SA 松本が担当しました。原文はこちらです。