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【開催報告】AWS Autotech Forum 2020 Online #1

はじめに

みなさんこんにちは、ソリューションアーキテクトの福嶋、渡邊です。AWS では 2018 年・2019 年と実施してきた自動車業界向けクラウドテクノロジーカンファレンス「AWS Autotech Forum」を夏と冬の2日間に拡大し、「AWS Autotech Forum 2020 Online #1」を8/7にオンラインにて開催させていただきました。オンライン開催第一回目となる今回は、MaaS、自動運転開発、コネクテッドカー、エッジコンピューティング、マップ/ロケーションサービス等の分野において、先進的な取り組みを志向する企業のビジネスリーダー、エンジニアの方々に向けて、お客様の新たなビジネスをご支援させていただく中で学んできた、汎用的に利用可能なプラクティスやテクノロジーの活用シーンを AWSのソリューションアーキテクトからご紹介させていただきました。

オープニング

自動車業界における AWS の取り組みとお客様事例

ソリューションアーキテクト安藤から皆様の新しいビジネスの企画立案に役立てていただくために、 AWS の活用事例や取り組みについてご紹介しました。
テクノロジートレンドの CASE (Connected/Autonomous/Shared/Electric) はすでに多くのお客様が取り組まれており、ビジネストレンドである MaaS への注目度も日増しに高まっています。
MaaS にはエマージングビジネスの側面と企業間アライアンスによる新プラットフォームビジネスの側面があり、AWS を活用いただくことで「価値創出への集中」「最新技術の活用」「試行錯誤の繰り返し」といったメリットをご享受いただけます。
セッションの中では実際に、 AWS をご活用いただいている企業の事例や CES 2020 において Amazon と AWS が共同で発表した自動運転で走行する電気自動車におけるカーシェアリングサービスのコンセプトデモを例に AWS をご利用いただくことによるメリットがどのようなビジネス効果を生み出しているかをご説明しました。

登壇資料: 自動車業界における AWS の取り組みとお客様事例

MaaS関連セッション

AWS Connected Mobility Solution (CMS) のご紹介

ソリューションアーキテクト高野からは、コネクテッドモビリティのシステム開発に関する AWS Solution である AWS Connected Mobility Solution (CMS) のご説明とデモのご紹介をしました。
MaaS のシステムでは、以下のような要件がありモビリティ関連企業にとってクラウドサービスを活用した機能開発に技術的な負担がある状況と言えます。
・車両とクラウドのアプリケーションを統合する必要がある
・車内体験はパーソナライズされかつ継続的にアップデートされる必要がある
・フリート運用管理の効率性を追求する必要がある
・フリートデータを広く公開する必要がある
そのようなハードルを取り払うために AWS Connected Mobility Solution (CMS) は開発されました。
テンプレートとして公開されている CMS をご利用いただくことで、車両ではエッジコンピューティング、デバイス証明書の管理といったものや、データ分析・蓄積基盤としてのニアリアルタイムの処理、またオペレーターが参照するフリートマネージメントツールといった機能を皆様の環境にご展開いただくことができます。
CMS は AWS のベストプラクティスに基づき構築されており、各機能ブロックに皆様の独自のビジネスロジックを組み込んでいただくことで要件に沿った独自のシステムを短期間で構築することができます。

登壇資料: AWS Connected Mobility Solution (CMS) のご紹介

コネクテッド/自動運転におけるデザインパターン

ソリューションアーキテクト兼松からは、コネクテッド/自動運転それぞれのケースでのシステムアーキテクチャのデザインパターンと考慮すべき点についてご説明しました。
コネクテッドモビリティや自動運転車両では非常に多くのデータを生成し、そのデータを適切なタイミングで活用していく必要があります。車両特性により生成されるデータに違いがありますが多くの場合、共通したアーキテクチャを選択することができます。セッションの中では機能要素ごとに AWS サービスとのマッピングを行い、データサイズやリアルタイム性によって、選定するサービスをどのように考えるか、または開発効率向上に向けた機械学習データの管理方法といったよくある要件や課題を例に、サンプルデザインパターンに落とし込んでいくプロセスを、コネクテッドモビリティ/自動運転のそれぞれでご紹介しています。

登壇資料: コネクテッド/自動運転におけるデザインパターン

モバイルアプリ開発に使える AWS サービスのご紹介

ソリューションアーキテクト福嶋からは、MaaS においてもサービスの付加価値として重要なモバイル端末に重点を置きアーキテクチャのパターンとAWS 環境構築を補助するサービスについてご説明しました。
アーキテクチャのデザインパターンにはそれぞれメリット/デメリットがあるため、構築したいシステムの要件に従って最適なもの選択したり、場合によっては組み合わせて構築していくことが非常に重要となってきます。
セッションの中では、一般的な web 3層をはじめサーバレスを用いたパターン、GraphQL ゲートウェイである AWS AppSync を用いたパターンについて整理しています。
また、「やりたいこと」から対話的にコマンドを入力いただくことで AWS の環境構築を全自動で構築することができる AWS Amplify についてご紹介しており皆様の開発スケジュールの圧縮に寄与できるサービスとなっています。

登壇資料: モバイルアプリ開発に使える AWS サービスのご紹介

自動車業界全体を対象とするセッション

AWS IoT サービスを活用したコネクテッドカー向けソリューション

ソリューションアーキテクト渡邊からは、コネクテッドカー開発における車両とクラウドの接続における課題と解決策について紹介しました。昨今、車両データを利用したアプリケーションや、車両のデータ分析、OTA などクラウドと接続することにより新たなユースケースが生み出されてきましたが、クラウドとの接続には考慮しなければならない点があります。車両とクラウドがセキュアにデータをやりとりする方法として、IoT Core の認証サービス。車両がネットワークが不安定な場所にある場合の対応として、IoT Core の Device Shadow、AWS IoT Greengrass。ネットワークにつながることによるセキュリティリスクを低減するための IoT Device Defender を活用することができます。これらを利用して、AWS と接続することで ML サービスの Amazon SageMaker や分析サービスの Amazon Elasticsearch Service と連携することができ、車両データを活用した新たな価値を創出することが出来ます。

登壇資料: AWS IoT サービスを活用したコネクテッドカー向けソリューション

データレイクで実現する車両データ活用プラットフォーム

車両から収集したデータの活用についてソリューションアーキテクト倉光からご説明させていただきました。車両から収集したデータ量は膨大で、データの種類も様々であり、これまでのオンプレミスの基盤を利用する場合にはすべてのデータを利用するかどうか分からなかったり、容量の制限や組織によって扱うデータが異なりデータの管理に課題がありました。そこで解決策として、データレイクという考え方があります。データレイクに必要な要件を満たすことができる Amazon S3 を利用することで生データをためて、必要に応じて変換して分析、機械学習を行うことができ将来のニーズに対応することができます。クラウドのすぐにはじめられる特性と収集したデータをデータレイクに集めることで解決したい課題が明確になった時に、貯めたデータを使って課題の解決のためのデータ活用をすすめることができます。

登壇資料: データレイクで実現する車両データ活用プラットフォーム

Simulations on AWS : 計算から結果分析まで

モビリティサービスに向けた車両開発で行われるシュミレーションを AWS で実現する方法についてソリューションアーキテクト奥野よりご説明しました。シュミレーションにおける課題には、ジョブの遅延やキャンセルによって生産性が低下したり、リソースや時間にも余裕がないため機会損失も起こります。その他にも減価償却を意識して、既存のインフラ活用をするために低パフォーマンスの環境を利用されている場合があります。そこでクラウドでは計算結果の取得までを短縮したい場合にオンデマンドですぐに大量のリソースを投入することができます。コストという観点でも要件と規模に合わせて自由にリソースを選択できるため最適化を図ることができます。AWS における HPC 関連サービスとしては、コンピュートとしての Amazon EC2、高性能分散ファイルシステムとして Amazon FSx for Lustre、可視化のための AppStream 2.0 がございます。EC2 については270以上の幅広い用途でご利用いただけるインスタンスタイプを用意していますし、ARM ベースのプロセッサとして前世代よりも4倍のコア数、7倍の性能を持つ AWS Gravition 2 も発表され、コストパフォーマンスが向上するケースがあることをご紹介しました。HPC 環境の迅速な立ち上がりに活用できる AWS ParallelCluster やパートナー様のソリューションについてもご説明しています。

登壇資料: Simulations on AWS : 計算から結果分析まで

効率的なクラウド活用に向けたセッション

AWS のベストプラクティスで見直してみるクラウド最適化

クラウドならではの特性を利用することで変化に柔軟なシステムを実現することができます。ソリューションアーキテクト長谷川から AWS が提供するベストプラクティス、リファレンスアーキテクチャの説明と活用方法についてお話しました。AWS には、これまでソリューションアーキテクトがお客様のビジネスを支援していく中で培ったシステム設計、運用のベストプラクティス集である Well-Architected Framework があります。このセッションでは Well-Architected の5つの柱のうちの一つであるコスト最適化を実現するための方法や、実際の事例を踏まえてご説明しました。加えて皆様が実際に Well-Architected Review を実施する際の手順についてもご紹介しています。Well-Architected レビューはマネージメントコンソールからも利用可能で皆様のシステムにおけるリスクや改善点の“顕在化”を行うための方法であり、ソリューションアーキテクトと一緒に設計、構築、開発、運用フェーズを問わず定期的に実施することでクラウドにより最適化されたシステムを実現することが可能です。

登壇資料: AWS のベストプラクティスで見直してみるクラウド最適化

まずは作ってみる!プロトタイプ開発に役立つ AWS の始め方

モビリティサービスや車両のデータ活用において、新しいビジネスで成功を掴むために必要な仮説検証の進め方についてソリューションアーキテクト岡本からご紹介しました。PoCやプロトタイプをすすめるにあたって学習量や作業量が多くて時間が足りないという課題があります。このセッションでは、AWS の特性と AWS が用意しているコンテンツを活かして、それらの課題を解決する方法をご説明しています。
1 つ目の AWS の特性とは、オンプレミスの場合にお客様が担っていた重労働をクラウドを利用することで排除することができたり、175 以上の AWS サービス群を利用することで実現したいシステムをサービスの組み合わせで実現できます。加えて、一つのシステムのために学習した AWS サービス知識を再び、異なるシステムで再利用することも可能です。
2 つ目の AWS が持つコンテンツを活かしたプロトタイプの始め方としては、最初に AWS Hands-on for Beginners で手を動かして AWS の基礎を学ぶことができます。そこで気になったサービスを深堀りしたい場合には AWS サービス単体やカテゴリに関してスペシャリストが詳しく説明する Webinarの AWS Black Belt Online Seminar を利用いただけます。その後、少し複雑なシステムを動かして更に理解を深めていくために AWS のベストプラクティスに沿って設計されたアーキテクチャのテンプレートである AWS Solutions がございます。
このセッションでご紹介したコンテンツを利用してお客様に必要な要件にあった AWS 利用の勘所を学習していただき、実際の構想段階に入りましたらソリューションアーキテクトにご相談ください。より完成度の高いプロダクトの作成をお手伝いさせていただければと思います。

登壇資料: まずは作ってみる!プロトタイプ開発に役立つ AWS の始め方

おわりに

AWS Autotech Forum 2020 Online #1 にご参加いただけなかった方も本ブログから自動車業界における AWS 活用について、少しでもご理解いただけましたら幸いです。今後もお客様の新たなビジネスをご支援させていただき、AWS のサービス活用方法やベストプラクティスについて配信させて頂ければと思います。当日ご参加頂いた方におかれましては前半部分で音声のトラブルで一部聞きづらい状況になってしまいました。申し訳ございませんでした。当日の動画をこちらで配信していますので、ご覧いただければと思います。また一緒に自動車業界を支援していきたい技術者の方は、チームメンバーを募集中ですので是非ともご応募ください。

著者

福嶋 拓

自動車領域を担当。欲しい調理器具は鉄フライパン、好きな AWS サービスは AWS Lambda です。

 

 

 

渡邊 翼

自動車業界のお客様の支援をしています。好きなサービスは AWS IoT Core です。好きな食べ物は鶏むね肉です。