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Yahoo/Gmail におけるメールの一括送信者に求められる要件の変更について
この記事は An Overview of Bulk Sender Changes at Yahoo/Gmail (記事公開日: 2024 年 1 月 12 日) を翻訳したものです。
Gmail と Yahoo Mail は、ユーザーの受信トレイを保護するための取り組みとして、2024 年 2 月から送信者に関する新たな要件を発表しました。これらの要件を満たすために Amazon Simple Email Service (Amazon SES) を利用するお客様が具体的に何をすべきかを詳しく見ていきましょう。
新しいメール送信者の要件は何ですか?
新しい要件には、メールボックスプロバイダーへの良好な配信を実現するために、すべてのメール送信者が従うべき長年培われてきたベストプラクティスが含まれています。Gmail、Yahoo Mail、その他のメールボックスプロバイダーに対して、1 日に 5000 件を超える大量のメッセージ (バルクメール) を送信する場合や、多くのの受信者がそのメールを迷惑メールとして報告する場合に、これらのベストプラクティスに従う必要があるという点が新しい点です。
新しい要件は、1) ドメイン認証の厳守、2) バルクメールの購読を簡単に解除する方法の提供、3) 迷惑メールの苦情率を監視して 0.3% 未満に抑えるという 3 つのカテゴリに分類できます。
* このブログは元々 2023 年 11 月に公開されたもので、タイムラインを明確にし、その他のリソースへのリンクを提供するために 2024 年 1 月 12 日に更新されました。
1. ドメイン認証
メールボックスプロバイダーは、DKIM と SPF によるドメインに合わせた認証を要求し、メッセージの From ヘッダーで使用されるドメインに DMARC ポリシーを適用することを要求します。たとえば、gmail.com は隔離を行う DMARC ポリシーを公開します。これは Gmail から送信されたと主張する不正なメッセージは、迷惑メールフォルダに送信されることを意味します。
SPF と DKIM のドメインアライメントについて理解を深め、ドメインの DMARC ポリシーから最大限の価値を引き出すには、Amazon SES: Email Authentication and Getting Value out of Your DMARC Policy をご覧ください。
次のステップは、Amazon SES を利用するお客様がドメイン認証要件をどのように遵守できるかを概説したものです。
ドメイン ID の採用: 現在 Amazon SES で E メールアドレス ID を主に使用しているお客様は、メールボックスプロバイダーへの配信性を向上させるために、検証済みのドメイン ID を採用する必要があります。SES で検証済みのドメイン ID を使用すると、メッセージにはドメインに合わせた DKIM 署名が付きます。
どのドメインを使うべきかわかりませんか?認証済み E メールの送信に関するその他のベストプラクティスガイダンスについては、Choosing the Right Domain for Optimal Deliverability with Amazon SES を参照してください。
カスタム MAIL FROM ドメインの設定: ベストプラクティスにさらに沿うために、SES を利用するお客様は SPF がドメインにアライメントするようにカスタム MAIL FROM ドメインも設定する必要があります。
以下の表は、Amazon SES で使用する ID のタイプに基づいた 3 つのシナリオを示しています。
From ヘッダーに example.com を使用するシナリオ | DKIM で認証される ID | SPF で認証される ID | DMARC 認証の結果 |
検証済みのメールアドレス ID として foo@example.com を使用 | amazonses.com | <region>.amazonses.com | 失敗 — 送信ドメインに一致する DKIM 署名または SPF レコードがないため、DMARC 認証が失敗します。 |
検証済みドメイン ID として example.com を使用 | example.com | <region>.amazonses.com | 成功 — DKIM 署名が送信ドメインと一致しているため、DMARC 認証に合格します。 |
検証済みドメイン ID として example.com 使用し、カスタム MAIL FROM ドメインとして bounce.example.com を使用 | example.com | bounce.example.com | 成功 — DKIM と SPF は送信ドメインと一致しているため合格します。 |
表 1: Amazon SES で使用される ID のタイプに基づく 3 つのシナリオ。検証済みのドメイン ID を使用し、なおかつカスタム MAIL FROM ドメインを設定すると、DKIM と SPF の両方が From ヘッダードメインの DMARC ポリシーに準拠することになります。
サブドメインを戦略的に使用する: Amazon SES を利用するお客様は、さまざまな E メール送信のユースケースに応じて、From ヘッダーで使用されるドメインとサブドメインへの戦略的なアプローチを検討する必要があります。例えば、マーケティングメールの送信には 検証済みドメイン ID marketing.example.com を使用し、トランザクションメールの送信には 検証済みドメイン ID receipts.example.com を使用するといった具合にです。
なぜドメインを区別するのでしょうか? マーケティングメッセージは迷惑メールの苦情率が高くなる場合があり、一括送信者の要件を満たす必要がありますが、購入領収書などのトランザクションメールでは、必ずしもバルクメールに分類されるほど迷惑メール苦情が多くなるとは限りません。
DMARCポリシーを公開する: ドメインの DMARC ポリシーを公開します。メッセージの From ヘッダーに使用するドメインには、DNS 内のドメインの DMARC ポリシーに p= タグを設定したポリシーが必要です。このポリシーは「p=none」に設定することで一括送信の要件を満たすことができます。そのドメインを使用するすべての E メールが DKIM または SPF ドメインに整合する認証済み識別子で認証されたことを確認したら、後で隔離 (p=quarantine) または拒否 (p=reject) に変更できます。
2. E メール受信者が簡単に配信停止できるように設定する
一括送信者には、メッセージ内に見つけやすいリンクを追加して購読を解除するメカニズムを含めることが期待されます。2024 年 2 月から適用されるメールボックスプロバイダーのルールでは、送信者は RFC 2369 と RFC 8058 で定義されているワンクリック購読解除ヘッダーを追加することが要求されます。これらのヘッダーを使用すると受信者が簡単に購読を解除できるようになり、受信者がメッセージを迷惑メールとしてマークして苦情を申し立てる頻度が減ります。
メールボックスプロバイダーがバルクメールと判断する要因は様々です。1 日あたり 5,000 件を超える量も 1 つの要因ですが、メールボックスプロバイダーが使用する主な要因は、受信者が本当にそのメールを受け取ることを望んでいるかどうかです。
メールがバルクと見なされるかどうかわからない場合は、迷惑メールの苦情率を監視してください。苦情率が高い場合や増え続けている場合は、受信者が簡単に購読を解除できる方法を提供する必要があることを示しています。
簡単に購読解除を行えるようにする要件を順守する方法
次のステップは、Amazon SES を利用するお客様が簡単に購読解除できる要件を満たす方法をまとめたものです。
送信するメッセージにワンクリック購読解除ヘッダーを追加する: Amazon SES を利用するお客様が、大量または迷惑と思われる可能性のあるメッセージを送信する場合には、受信者が簡単に購読を解除できる方法を実装する必要があります。これには SES の購読管理機能を使用することができます。
メールボックスプロバイダーは、一括送信者に対し、受信者がワンクリック購読解除ヘッダーを使用してワンクリックでバルクメールの購読を解除できるようにすることを要求しています。ただし、メッセージ内の購読解除リンクを使用して、受信者がオプトアウトの設定を行うためのランディングページに受信者を誘導してもかまいません。
SES の購読管理機能を使用せずにワンクリック購読解除を設定するには、送信メッセージに次の両方のヘッダーを含めてください:
- List-Unsubscribe-Post: List-Unsubscribe=One-Click
- List-Unsubscribe: <https://example.com/unsubscribe/example>
受信者がワンクリックで購読を解除すると、次の POST リクエストが届きます:
POST /unsubscribe/example HTTP/1.1
Host: example.com
Content-Type: application/x-www-form-urlencoded
Content-Length: 26
List-Unsubscribe=One-Click
Gmail の FAQ と Yahoo の FAQ はどちらも、一括送信者が各メッセージのフッターに、機能する登録解除リンクを明確に表示している限り、ワンクリックの登録解除要件は 2024 年 6 月まで適用されないことを明確にしています。
配信停止リクエストを 2 日以内に受け付ける: 購読解除手続きを行うと、受信者が今後同様のメッセージを受信しなくなることを確認してください。メールボックスプロバイダーは、一括送信者が受信者にワンクリックで E メールの購読を解除できるようにすること、および送信者が購読解除要求を 2 日以内に処理することを要求しています。
SES の購読管理機能を採用する場合は、受信者のオプトアウト設定をメール送信リストのソースと必ず統合してください。独自のワンクリック購読解除を実装する場合 (Amazon API Gateway と AWS Lambda 関数を使用する場合など) は、ソースとなるメーリングリストからその E メールアドレスへの送信が抑制するように設計されていることを確認してください。
メーリングリストの作成方法を見直す: メーリングリストの購入を控えること、オプトインフォームをボットの悪用から保護すること、確認メッセージで受信者の好みを確認すること、要求されていないカテゴリに受信者を自動的に登録しないようにすることなど、責任ある E メールの取り扱いを行ってください。
新しく義務付けられたベストプラクティスを順守する前に、迷惑メールの苦情率が高くならないようにするには、メーリングリストのオプトインを適切に行うことが最善の方法です。詳細については、What is a Spam Trap, and Why You Should Care をご覧ください。
3. 迷惑メール率を監視する
メールボックスプロバイダーは、自分の E メールがメールボックスプロバイダーによって迷惑メールとして扱われないように、すべての送信者に迷惑メールの苦情率を 0.3% 未満に抑えるよう要求します。次のステップは、Amazon SES を使用するお客様が迷惑メール苦情率の要件を満たす方法をまとめたものです。
Google ポストマスターツールへの登録: Amazon SES を利用するお客様は、Gmail 受信者に対する迷惑メールの苦情率を監視するために Google ポストマスターツールに登録することが推奨されます。
Gmail では、迷惑メールの苦情率を 0.1% 未満に抑えることを推奨しています。Gmail の受信者と他のメールボックスプロバイダーの受信者が混在して送信する場合、Gmail の Postmaster Tools によって報告される迷惑メール苦情率は、指標を確認できないメールボックスプロバイダーでの迷惑メール苦情率を示す良い指標となります。
Amazon SES の Virtual Deliverability Manager を有効にする: Amazon SES アカウントで Virtual Deliverability Manager (VDM) を有効にします。お客様は VDM を使用して、多くのメールボックスプロバイダーのバウンス率と苦情率をモニタリングできます。Amazon SES では、レピュテーションメトリクスを監視し、苦情率を 0.1% 未満に抑えることをお客様に推奨しています。
設定セットを使用して送信を分離し保護する: Amazon SES を利用するお客様は、送信ユースケースをドメインごとに分離することに加えて、送信ユースケース毎に異なる設定セットを使用することが推奨されます。
設定セットを使用すると、よりきめ細かく送信アクティビティをモニタリングし、制限を実装できます。迷惑メールの苦情率が許容範囲を超えた場合は、設定セットを使用する送信を自動的に一時停止することもできます。
まとめ
これらの変更は 2024 年 2 月に予定されていますが、各メールボックスプロバイダーが変更を適用する正確なタイミングと方法は異なる場合があることに注意してください。2 月より前にいずれかのメールボックスプロバイダーで配信に関する問題が発生した場合は、最初のステップとしてこれらの必要なベストプラクティスを順守することが最善の方法です。
このブログが、この変更に関して混乱している部分を明らかにし、2024 年 2 月に向けて準備しておくべき情報を皆様に提供できることを願っています!
参考リンク:
- Gmail のお知らせ: https://blog.google/products/gmail/gmail-security-authentication-spam-protection/
- Yahoo のお知らせ: https://blog.postmaster.yahooinc.com/post/730172167494483968/more-secure-less-spam
- DMARC ポリシーに関するブログ: Amazon SES: Email Authentication and Getting Value out of Your DMARC Policy
- 適切なドメインの選択に関するブログ: Choosing the Right Domain for Optimal Deliverability with Amazon SES
翻訳はクラウドサポートエンジニアの富岡が担当しました。原文はこちらです。