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VMware ワークロード変換のための Amazon Q Developer エージェント

本稿は、2024 年 12 月 3 日に AWS Blog で公開された “Amazon Q Developer agent for transformation of VMware workloads” を翻訳したものです。

VMware ワークロードの移行と最新化のための Amazon Q Developer transformation capabilities のパブリックプレビューを発表できることを嬉しく思います。Amazon Q Developer は、アプリケーションのコーディング、テスト、アップグレードから、エラーの診断、セキュリティスキャンと修正の実行、AWS リソースの最適化、そして現在は移行やモダナイゼーションに至るまで、開発者や IT プロフェッショナルのさまざまなタスクを支援できます。Q Developer transform for VMware は高度な多段階の計画機能および推論機能を備え、モダナイゼーションチームが監督するドメインエキスパートの生成 AI エージェントによって、統一されたコラボレーティブな Web エクスペリエンスの下でエンタープライズワークロードの大規模な変革を加速します。

VMware ワークロード上で稼働する仮想マシン (VM) は、企業 IT インフラストラクチャの基本的な構成要素となっており、組織がアプリケーションを効率的にデプロイおよび管理するための柔軟でスケーラブルな基盤となっています。しかし、オンプレミスのワークロードのクラウドへの移行とモダナイゼーションには独自の課題が伴います。多くの場合、時間とコストがかかり、労働集約的でエラーが発生しやすいプロセスです。例えば、移行プロジェクトでは、アプリケーションを運用するためのクラウド環境を設定するための専門的なスキルが必要です。移行担当者は、オンプレミスのネットワーク構成を Amazon Virtual Private Cloud (VPC)、サブネット、セキュリティグループなどの AWS と同等のものに手動で変換する必要があります。さらに、事業継続性を確保するためには、何百台ものオンプレミス仮想マシンの依存関係を特定し、依存する VM をまとめて移行する必要があります。そのため、ビジネス目標を達成するために、移行とモダナイゼーションを促進するための移行に関する専門知識やツールを求めることがよくあります。

Q Developer による VMware ワークロードの変換は、18 年にわたる AWS の専門知識に基づいて構築されています。そのため、お客様は多くの熟練した専門知識を身に付ける必要がなく、ワークロード変換の旅を簡素化し加速するのに役立ちます。内部テストでは、AWS チームは Amazon Q Developer の変換機能を使用して 500 台の仮想マシン (VM) の VMware ネットワーク構成を変換し、VPC、Subnet、Transit Gateway、Internet Gateway などの AWS ネットワーク構成を 1 時間以内に生成しました。これは、従来の手作業によるアプローチで 2 週間かかっていた作業に比べて 80 倍の速さです。

Image 1: Transform Job Plan

イメージ 1: 変換ジョブの計画

生成 AI による自動化

オンプレミスの VMware ワークロードを Amazon EC2 に移行する場合、いくつかの課題があります。たとえば、基盤となるコンピューティング、ストレージ、ネットワークの構成は異なります。オンプレミスのハイパーバイザーからリソースを移行するには、ネットワークコンポーネントを含め、通常 vSphere などの環境内に存在するすべての基本的な要素を AWS で再作成する必要があります。Q Developer Transform for VMware エージェントを使用すると、お客様はコレクターまたはファイルインポートを使用してこれらのオンプレミスコンポーネントを棚卸しして発見し、VMware ワークロードのフットプリントを包括的に把握できます。

Image 2: Dashboard

イメージ 2: ダッシュボード

一般的なエンタープライズの VMware ワークロードは何年も稼働しており、大規模かつ複雑な環境を形成しているため、クラウドへの移行には多大な労力がかかり、多くの場合、数か月にわたる手作業が必要になります。このような複雑さにより、リホスト・プロジェクトの完了に必要な労力のレベルが高くなるため、移行の優先順位が下がる可能性があります。大規模な移行では、しっかりとした計画を立てることで、ダウンタイムのリスクを抑え、より予測可能な結果を得ることができます。Q Developer transform for VMware の機能では、リソース効率の高いモダナイゼーションを実現するために、オンプレミスのインベントリ、依存関係、定められたビジネス目標、Q Developer エージェントによる VMware の専門知識に基づいて、生成 AI 主導の変革計画と推奨事項を提供します。

さらに、Q Developer transform for VMware は、コラボレーション機能を備えた AI 主導の Web エクスペリエンスを提供し、自律的な生成 AI エージェントとの自然言語によるチャットを可能にします。これにより、計画の作成、チームによる共同レビューと承認の促進、問題の迅速な解決が可能になります。これによって 1 か所でエンドツーエンドのエクスペリエンスを提供できるため、複数のサービスやツール間でのコンテキストの切り替えを最小限に抑えることができます。

Q Developer transform for VMware では、自動ネットワーク変換も提供され、複雑な VMware ネットワーク構成の分析とネイティブの AWS 構成への変換を AI エージェント主導で自動化できるため、特別な作業を数週間から数か月短縮できます。Q Developer エージェントは、移行ウェーブの計画、AWS ネットワーク設定などの生成されたアーティファクトと EC2 サイジングの推奨事項を組み合わせて、包括的な移行計画を作成します。この計画は編集可能で、AWS Application Migration Service (MGN) を使用してサーバー移行を開始する場合にも利用できます。

Image 3: Infrastructure as Code (IaC) code generated

イメージ 3: 生成された Infrastructure as Code (IaC) コード

VMware から EC2 への移行は長期間にわたって実行され得るため、場合によっては数か月かかることもあります。Q Developer transform for VMware には、ジョブの進捗状況を示すダッシュボードや、完了した作業結果の完全なコンテキストを示す作業ログなどのオブザーバビリティ機能もあります。作業ログには、プロジェクトのライフサイクル中に生成された中間アーティファクトも含まれるため、Q Developer エージェントまたは人間が下した決定を変革の包括的な履歴として提供できます。

Image 4: WorkLog

イメージ 4: 作業ログ

コストを削減し、イノベーション、セキュリティ、レジリエンスを強化する

Q Developer transform for VMware は、VMware ワークロードを最適化されたコンピューティング、ストレージ、ネットワークアーキテクチャを備えた EC2 インスタンスに移行する際に、サードパーティの不要なライセンス料を削減することで、経済的なメリットももたらします。

Image 5: Amazon EC2 instance optimization

イメージ 5: Amazon EC2 インスタンスの最適化

VMware ワークロードを Amazon EC2 ネイティブインスタンスに移行することで、200 を超える AWS サービスを使用してアプリケーション開発をモダナイズする機会が開かれます。これには、AI/ML やデータサービスを活用してインパクトのあるビジネスインサイトを得て、イノベーションを加速させることも含まれます。

Amazon Q Developer transformation capabilities は、コンプライアンスを念頭に置いて設計されており、すべての移行アクティビティの詳細な監査ログが提供され、コンプライアンス報告に役立ちます。 AWS IAM Identity Center を活用したきめ細かなアクセス制御原則を採用しており、権限のある担当者のみが移行データにアクセスしてタスクを実行できるようにしています。


始めてみましょう

Q Developer transform for VMware を始めるには、Amazon Q Developer Pro サブスクリプションが必要です。詳細なガイダンスについては、「Q Developer transform for VMware 機能入門」 または 入門ページ を参照してください。VMware NSX 環境からネットワーク設定をエクスポートする場合は、「Exporting network configuration data with Import/Export for NSX」ブログも参照してください。

まとめ

このブログ記事では、Amazon Q Developer transform for VMware を使用することで、組織が生成 AI の力を引き出し、VMware ベースのワークロードをよりシンプルかつ自動化された安全な方法で Amazon EC2 に移行およびモダナイズできるようになることを強調しています。詳細については、Amazon Q Developer transform for VMware の製品ページをご覧ください。

この投稿の翻訳は Solutions Architect の有岡が担当させていただきました。原文記事はこちらです。

Rodney Bozo

Rodney Bozo

Rodney Bozoは、エンタープライズアプリケーション、移行、モダナイゼーションを専門とするソリューションアーキテクトリーダーです。IT 業界で 20 年以上働いており、高等教育機関、コンサルティング、ソフトウェア企業、クラウド企業での勤務経験があります。情報システム技術の修士号と経営学修士号を取得し、AWS や Microsoft の認定資格や Certified Information Systems Security Professional (CISSP) の資格など、さまざまな業界資格を取得しています。

Atul Modi

Atul Modi

Atul Modi は、ユーティリティコンピューティング、エッジコンピューティング、ワークロード変換の分野で 12 年以上の経験を持つ、AWS 移行および近代化グループのプロダクトリーダーです。AWSでは、Atulはソフトウェアの管理の簡素化だけでなく、生成 AIを活用したコンピューティングワークロードの変革にも注力しています。